東方地霊殿 〜Terrene Animism.【完結】 作:LOORUME
化緑伝も一区切りついたし久しぶりの更新。
『無意識』とは何か、と私は考えた。それは、意識しないこと。もしくは、意識が無いこと。
では『故意識』とは何か、と私は考える。
それは、わざと。もしくは―――
○○○
今日、とある異変が起きた。
橋姫として橋を守っていた時、近くで人だかりができていることに気付いた。気になったわたしは人をかき分け、中心を、人の注目の的を見ようとする。そこにあったものは――灯籠であった。
地霊殿周辺および旧地獄には、夜を月と共に妖しく照らす灯篭が名物になっていた。一直線に並んでいる道などは、幻想道百選にも選ばれるほどだ。
まぁ、それはいい。今はどうでもいい。
それよりも今、大切な事は、その灯篭が元気にスキップしていることだ。
ぴょんぴょんと楽しげに飛び跳ねる灯籠。手も足も無いのに、どうなっているのだろうか。いやいや、そういう摩訶不思議で説明無理な超常現象は良くある。ただ、そう、どうして、っていうところが問題だ。
本当、誰が何のために。
○○○
一言で言い表すと、ビックリした。
昼になる少し前の頃に、居酒屋の表の道で目を覚ますと、家屋が合体していた。人型に合体していた。
最初は、まだ夢の中かと思って目をこすってみたけど変わらなかった。
次に、情けない話だけど昨日の酒が残っていて、幻覚を見てるのかと思って頭をぶんぶん回したけどやっぱり変わらなかった。
なんじゃあの怪物は。
周りの人はかなり騒ぎになっていたから、あれを壊して止めようかと思ったけど、一応人の店屋だと思って壊すに壊せなかった。
まあ、結局乱神怪力で倒したんだけど。本当、何だったんだろう。
○○○
なにやら、旧地獄街道で騒ぎがあったようです。うちのスリッパがタップダンスを踊り始めたことと、何か関係があるのでしょうか。
お燐と、お空に情報収集させたところ、各地でそのような異変が起こっているようです。
はあ、とついついため息が出る。
本当に、面倒だわ。
今回面倒くさいのは、犯人当てじゃない。それはもうほぼほぼ分かっている。
それよりも面倒なのは、犯人探し。犯人は――彼女は、神出鬼没なところがある。ずっと探しても見つけられない時は見つけられない。逆に、来て欲しくない時に限って現れる。……ああ、あのケーキは一人占めしたかったのになぁ。
まぁいい、探す他はない。急いで見つけ出し、早くやめさせないと。そして、どうしてこんなことをしたのか、聞き出さないと。
○○○
夕焼け小焼け。赤とんぼ。
大気によって橙色に染められた太陽は、わたしのことも染める。
旧地獄街道で、嬉しそうに輪になって盆踊りをする提灯をぼーっと見つめる。バチが太鼓を叩き、物の祭りを盛り上げる。
本来、物は意思を持たない。意思を持つ物もあるが、それは付喪神、百年以上経た物だけだ。今、旧都、旧地獄、地霊殿で動き回っている物々は、それほど経っていない――生きていない。
小さな祭りをしている物を見ていると、どこかわたしも嬉しくなってくる。なんてったって、願いをかなえさせてあげられたのだから。
そんなわたしの楽しみを遮るように、広場にとある人物がやってくる。私のよく知るその人物はやがて私の近くにやってきて、話しかけてきた。
「犯人は、あなたね。こいし」
○○○
「ここに来る途中、散々物の心を読んだわ。相当、喜んでいたわよ」
「そう!それは良かったわ。願いを、思いをかなえさせられることができて」
「願い?」
「そう、願い」
願い。どういうことだろうか。意思の持たない物の願いを知ることなど、できるはずがない。
「わたしの能力、知ってるよね?」
「ええ。『心を読む程度の能力』と『故意識を操る程度の能力』、よね?」
半分確認するように言う。
「そうそう。でさ、無意識ってどういうことだと思う?」
「無意識、……一言で言うと、『つい』とか『うっかり』かしら」
「うん、概ね正解。意識しないこと。それと、意識が無いこと。
じゃあ、故意識ってどういうこと?」
「…『わざと』ってことかしら』
「そうそう。意識すること。それと――」
「意識が在ることだよ」
やっぱりか。と私は思った。この旧地獄でこういうことが出来るのは、彼女しかいない。
「わたしは、意識を在るように、操れるの。だから時々、物に意識を持たせて遊んでたの。だけど彼らは、意識を持っているだけだから喋ることが出来ない。だからわたし、心を読んで――」
「心を読んで、もっとみんなで動きたい、っていう願いを知ったわけね」
「そうよ」
「こいし、今すぐやめなさい。旧地獄中が混乱に陥ってるわ」
「ねえ」
「なによ」
「わかってるんでしょ?」
「……」
………。
「だって、物の心を読んできたんでしょう?その時に、約束のことも知ったんでしょ?」
「ええ、そうよ。知ってる。物が動けるのは、せいぜいあと2時間」
「そうよ。それがわたしの限界なの。だからさ、なんであともう少しだけでも動かさせてあげないの?」
「言ったでしょ。旧地獄が混乱に陥ってるって――」
「違う! もっと理由があるはず。だから、心を読ませて。お姉ちゃん」
「やめなさい。こいし」
「!」
○○○
そうか。そうだったんだ。お姉ちゃんは、やっぱり優しい。優しすぎる。
「そっか、お姉ちゃんは、これ以上物の願いを、純粋すぎる想いを聞きたくなかったんだね。
お姉ちゃんは、純粋な願いをかなえさせてあげたくなるから、早くわたしにやめさせようと、したんだね」
「ちがっ」
「違わない!これがお姉ちゃんの想い。純粋な、心の奥底からの想い」
お姉ちゃんはいつでも、お姉ちゃんだ。だから。
わたしのしようとしていることに気付き一瞬止めようとしたようだけれど、もう止まらない。
わたしは、能力を解除した。
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次はいつになるか分かりませんが、見守ってくださるとありがたいです。