東方地霊殿 〜Terrene Animism.【完結】 作:LOORUME
あと、この作品の質を下げないためにわざと弾幕ごっこの描写を省いています。ご了承をば。苦手なんですよねえ。
極上の人間。もちろんそんな者は博麗神社に居る訳無いし、よしんば居たとしても食わせる気などない。
ではなぜ嘘をついたか。それは、霊夢に匿ってもらうためだ。ルーミアと戦う意気地など全くもって無い。ビビリだとかどうとでも罵ってくれ。
博麗神社についた頃にはもうすっかり陽が登っており、霊夢と思われる人物は箒で境内を掃いていた。
「はぁっ、っはぁ……」
「あららバテてる。弱いね、人間は」
「うるさい、妖怪が強すぎるんだ」
博麗神社の階段はもう登りたくない。数百段なんて降りるのさえ嫌になってしまう。途中で悟りを開けそうなほど長かったぞ。
「ん、ルーミア?その人誰?」
息を整えていると、霊夢がこちらに気づいた。
「あ、れいむ。外来人だよ。なんかね、極上の人間を食べさせてくれるんだってさ」
「極上の?」
霊夢は怪しげな目線を僕に向けてきた。匿って欲しいから嘘をついた、とアイコンタクトを送る。
「どうしたの?目、乾いてるの?目薬いる?」
ちがう、そうじゃない。
ええい、ままよ。俺は走って霊夢の後ろまで行き、盾のようにしてルーミアから隠れる。そして叫ぶ。
「助けてくださいっ。霊夢さん!」
「あぁ、そういうことね」
やっと理解してくれた。
霊夢は肩の上に乗っている僕の手を持ち、言い放つ。
「男ならシャンと戦えや!」
ひどいや霊夢。その上、気合の一発じゃ、などと言って僕の頬に紅葉を作る。
「安心しなさい、命は保証してあげるから。あなた、私の勘では弾幕ごっこをできるわ。だから、戦いなさい」
優しい博麗の巫女など、期待した僕が馬鹿だった。あくまで平等な巫女らしい。いやビンタ食らうって平等か?
色々あって、反論したけど相手にされず強制的に弾幕ごっこ開始。省くけど一応勝った。この時、弾幕の出し方も飛び方も一緒に覚えた。
「わはぁ、負けたのかー」
負けたルーミアは、けれどどこか楽しそうだった。
秋の空には夕陽があり、飛んで帰ったルーミアの金髪がきらきらと光って綺麗だった。
○○○
ルーミアが帰って暫らく、僕は縁側でゆっくりとお茶を頂いていた。
「ま、勝ったんだし一晩くらい泊めてあげるわよ」
「本当ですか、霊夢さん!」
「だから、霊夢で良いってば」
けれど、見たところ霊夢は年上なのだ。まあいいか、年上なんて幻想郷にはザラだ。
「わかった、霊夢」
「じきに夜になるし、わざわざここまで来た奴を放ってはおけないから。ところでアンタ、名前は?」
「尾反夜霧」
「ふん、名前の通り怖がりねぇ」
なんだかこの霊夢は辛く当たってくる。耐えろ、耐えるんだ僕のメンタル。
「はぁ、すいません」
「まぁいいわ。お風呂に入りなさい。こっちに来てから入ってないんでしょ?」
「はいっ」
この日は紅葉と一緒に湯船に浸かった。頬が染みる以外は極楽である。
そうして夕食を作らされ、食べ、布団に放り込まれた。
彼女曰く、あまり優しくすると男はすぐつけあがる、だそうだ。
布団の中で泣きそうになったのを我慢する。
さて、幻想郷に来たのならば、自分の夢を叶えなければなるまい。
夢は、こいしちゃんに会うこと。
地霊殿EXをプレイした時に胸を射抜かれてしまったのだ。それからしばらくはプレイに集中できなくなり、EXクリアが大分長引いてしまったという話。
だから、とりあえず明日は霊夢に地底への行き方を教えてもらって、向かおう。
そんなことを考えながら、僕は眠りについた。
○○○
「地底?なにそれ」
「えっ」
「えっ」
朝ごはんを強制的に作らされながら、地底はどこから侵入できるのか、と尋ねてみた。すると先述の返答が帰ってきた。あれえ?
「じゃ、じゃあ地霊殿はどこですか?」
「そうねえ、ここから二、三十キロメートル西へ進んだあたりかしら」
この言い方だと、まるで地霊殿が地上にあるみたいじゃないか。
…飛んで行けそうな距離だな。
「あんた、そこに行こうっていうの?やめときなさい、鬼に見つかったら何されるかわかったもんじゃないわよ」
「えー」
「えー言うな。それに、あんた元の世界に帰らなくていいの?」
元の世界。外の世界、それについて思考するのをどこかで拒否していたのかもしれない。残るか、帰るか、二つに一つだ。
「残ります」
いや、選択肢など最初から一つしかない。折角幻想郷に来たのなら、誰が何と言おうとこいしちゃんに会わねばなるまい。
「そ。だったら、食べ終わったら出かけるわよ」
「何処にですか?」
「人里」
○○○
彼女が言うには、幻想郷に残る以上人里に住まわなければ何時喰われるかわかったものでないらしい。物騒な世の中だ。
だからこそ、慧音さんに挨拶し、家を見繕ってもらう必要があるらしい。
「ねぇ、にしてもあんな紹介の仕方は無いですよ」
「いいじゃない、少し奇天烈なほうが慧音もいい家くれるわよ」
敬語は、しっかりこれで定着してしまったのでもう手遅れだ。
「だからって『極上の外来人』って何ですか」
「うるさいわね。わたしが不在だったら『極上の人間』になってたのはアンタなのよ?」
つまり、わたしが居なかったらあんたルーミアに喰われてたわよ、ってことか。
それに関しては頭が上がらない。だから敬語にもなってしまうというものだ。
「すいません…」
「もう、いいわよ。さて、住所によるとここがアンタの家っぽいわね…」
「あれ、大きくないですか?」
「大きいわね」
「こんなの一人だから住めませんよ」
「ばか、これは慧音なりのメッセージよ」
「なんというメッセージですか?」
「………」
「慧音さんに他の家を教えてもらいますね!」
「ま、待ちなさい。こんなに良い家なんだから。なんならわたしが時々お邪魔するわよ。友達を連れてね」
「それならいいですけど…」
「うん、よし。ってなんでわたしが家の擁護してるのよ」
ってなもんで、僕の家は無事決まった。未成年だけど男のドリーム叶えちゃった次第。
「はあ、女の子だったら神社に住まわせてあげるんだけどね」
などとぼやいてたのは気にしない。そんなに男嫌いなのだろうか。
○○○
その夜。
人々は寝静まり、俺は眠れる人里をこっそり抜け出した。なに、たった一晩居なくなるだけ。すぐに帰ってくる。
頭の中に地図を思い浮かべ、博麗神社から西に二、三十キロメートルの位置を目指した。
人里からは、さらに近い。
けーね先生はなにかとカットされやすい。