博麗霊夢の妹になっていました   作:冷水

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姉妹の日常

 語り手のいない歴史、あったかもしれない幻想の物語。

 

 今回は博麗の姉妹が、10歳になる前のお話である。

 この頃の幻想郷にはスペルカードが存在せず、人口の減少に伴い妖怪達が人を襲うことを自重し、そして緩やかな滅びへと向かっていた時代。

 焦る妖怪達と、日ごと妖怪による被害が減ってゆき、平和になっていく人間達。

 

 願わくは、この平和な日々が永遠に続きますようにと、ある人物は願っていた。

 

 

 

 

--

 

 博麗霊夢は日中、空を見上げている事が多い。そしてお茶を飲みながら、まったりと過ごす一日が好きだった。

 十歳に満たない少女としては、どこか枯れているような趣味である。

 

 妹の美奈は午前中、神社の掃き掃除をしている。炊事と洗濯も美奈の担当である。

 霊夢は数日に一度、人里に下りて妖怪退治の依頼を受けてくる。二人分の生活費を稼がなくてはならず、主に食費に一番お金がかかっている。

 霊夢は自分一人であったのなら、質素にお茶漬けと漬物だけでいいと考えていた。しかし、霊夢に比べて体が小さく、身長も伸びない妹のことを考えれば、しっかりしたものを食べさせなくてはと考えていた。それほど多くはないにしろ、妖怪退治の仕事を定期的に受けなくてはならない。

 

「お姉ちゃん、掃除終わったよ」

 

 霊夢の隣に腰掛け、休憩に入った美奈。歳は一つしか違わないはずなのに、霊夢は小さい妹を見おろしながら美奈の分のお茶の用意をする。

 

「お茶でも飲みなさい」

 

 霊夢から見て、妹は人里で働けるとは思えなかった。人前に出れば対人恐怖症で上手く話せなくなる妹。そして家事以外のことは不器用で、霊夢が甘やかしすぎたのか、体力も全然ない。

 

「ありがとう」

 

 美味しそうにお茶を飲む妹の姿を見ながら、霊夢は美奈の頭に手を乗せて撫でていた。

 くすぐったそうにする美奈は、抵抗せずに霊夢の方へ体を傾けてくる。

 

「どうしたの?」

 

 美奈がそう問いかけるも、霊夢は「なんでもない」と言う。

 神社には滅多に人が来ないし、霊夢はともかく美奈は神社から出る事もない。

 まったりした時間が過ぎていく。

 

 

 

 

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 美奈は思っていた。自分は、このままじゃダメ人間になると。

 

 家事のスキルは上達し、掃除や洗濯などは素早く終わらせられるようになった。しかし、前世でも人と会話するのが苦手だったが、幻想郷に生まれ直してからは、ほぼ姉の霊夢以外と会話していない為に、前世での対人恐怖症に拍車がかかっていた。

 お店に行っても、声が小さすぎて聞き取ってもらえない。体格が小さい為に、道を歩いていると誰かとぶつかりそうになる。

 声の小ささゆえに、誰しもが美奈の言葉を聞き返し、さらに会話が難しくなるという負のスパイラルに陥ってしまう。

 

「何やっているのよ美奈。しょうがない子ね」

 

 過保護にも「一人で大丈夫」と言って出かけても、姉がいつの間にか着いて来ていて、手を引かれて歩いている。

 精神年齢では霊夢より年上だと思っている美奈であるが、姉の事が頼りになりすぎてどうしようもない。

 

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「ねえ、お姉ちゃん。私このままじゃダメ人間になっちゃうと思うんだ」

 

 真顔で霊夢に相談したこともあった。

 

「人には努力で何とかなることと、ならないことがあるのよ」

 

 そう言って、悲しげな表情で答えられた。美奈は内心で「もうどうしようもならないの!?」と愕然とした。

 

「大丈夫、美奈はいいお嫁さんになるわ」

 

 美奈は「まず、私の対人スキルで結婚できるのか?」と疑問に思ったが、怖くて口にはできなかった。

 もしその先を聞いてしまったら、どうしようもならないような気がした。

 無職で家禄の類もない。博麗の巫女の妹だとしても、退魔師になれるような能力もない。家事以外に取り柄が無く、体も小さくて発育が悪い。おまけに体力もない。

 

---

 

 霊夢からのダメ人間宣告を受けた次の日、美奈は姉への細やか反撃を思い立つ。霊夢は美奈の語る「怪談」が苦手で、その話をすることにした。

 ホラー映画やゲームが好きで、いくつもある知識の中から特に怖い話を聞かせると、霊夢は涙目になることがあった。

 

「ねえ、お姉ちゃん。新しいお話考えたんだ」

 

 美奈は前世で聞いたことのある物語を、霊夢に語って聞かせる事があった。

 娯楽の少ない幻想郷では、おとぎ話の類でも立派な娯楽となる。

 

「怖い話じゃなければ、聞くわ……」

 

「私は怖くない話だよ」

 

 そして5分後、霊夢は美奈の「わあ!」という言葉に耳を抑えて涙目になっていた。

 

 霊夢は大抵のものには恐怖を示さない。それは妖怪退治を仕事にしているということもあり、生半可な怪談では恐怖すら抱かない。

 しかし、美奈の話す怪談だけはどうにも駄目だった。

 

 霊夢は仕事柄、妖怪が人を襲う現場や食われる場面など、生々しい現場を見る事もある。そんな描写をされたとしても、気分こそ悪くなるものの怖いとは思わない。

 

 しかし、美奈はどうやったらそんな話が思いつくのか、霊夢ですら怖い話をしてくる。

 

 例えば、悪霊が人を操る。それだけなら怖くないのに、人間が皮を剥がれた上で主人公を道連れにしようと追いかけてくるとか。

 他にも退治したと安堵した瞬間、現実にはありえない怪異が襲い掛かってきたり。

 

 リアルに想像してしまうと、気味が悪くなってくる。その上、絶妙なタイミングで美奈が脅かしてくる。

 満足気な表情でお茶をすする美奈は、復讐成功とばかりに満足気である。

 

「お姉ちゃん、大丈夫。作り話だよ」

 

 姉の頭を撫でながら、泣いている霊夢をなだめる美奈。

 

「美奈のうそつき、怖い話、しないって言ったじゃない!」

 

 それでも律儀に最後まで聞いてくれるのだから、霊夢は良いお姉さんをしている。

 

「ごめん、今度は楽しい話するから。機嫌なおして……ね?」

 

 その日、霊夢は怖くて眠れず、姉妹そろって眠った。

 まだ十歳にもならない姉妹は、些細なことに一喜一憂しつつ、幻想郷の毎日を過ごしていく。

 

 

 

 

 

 

 




==作者のつぶやき==
 最近、マイページとリンクしようかと考え始めた冷水です。
 回答頂けるかはともかく、アンケートやってみたいです。
 ただ、匿名設定での名前は変えたくはないので、ユーザIDだけ載せてます。興味のある方のみ、もしよかったら覗いてってください。
 ID:102727
 匿名機能使いつつ、マイページにも誘導するのは違反ではないはず。
 類似の記述で、挿絵の注意事項に「匿名性」が失われますとありましたが、ペンネーム的な意味でしか使ってないので、失われても構わないと思っています。
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