学校なんてクソだ。前に学校ってのは青春をまっとうする場所だと姉さんが言っていた。しかし、俺はそうは思わねえ。
くだらねえ連中にくだらねえ授業。そしてくだらねえ上下関係。
学校になんの魅力があるのか全然わからない。むしろ魅力なんてあるのだろうか?
もちろん、友達もいないが言うほど苦にはなっていない。
だから俺は、この先もずっと一人で青春を送っていく――はずだった。
「風が気持ちいいなぁ~」
通学路を歩いていると、そこそこ強い風が吹いた。もう少し強ければ女子のスカートが捲れていたかもしれない。
道の両脇には桜が――ない。地球には当たり前のようにあったんだけどなぁ。
もう少しこの気持ちよさを味わおうと思っていたら、手首につけてあるアームバンドが光った。
〈大変恐縮ですがマスター。いい加減に走ってください〉
「なんでだよ? 今ちょうど風が気持ちいいんだぞ?」
アームバンド型の
ちなみにコイツは姉さんの愛機と同タイプだったりする。
〈ですが――〉
「いいじゃねえか別に。減るもんじゃねえし」
〈――ですがマスター、ただいま盛大に遅刻してますよね!?〉
言ってほしくなかった現実を見事に言われてしまった。そう、俺は今遅刻してる真っ最中なのだ。
実は今朝、どうせ始業式だけなんだからサボってもよくね? ってスミ姉に相談したらぶん殴られた。
頬が未だにヒリヒリする。少しは手加減してほしいものだ。
「俺は走らねえぞ」
あと数分で着くしな。
〈走ってください!〉
「やだね」
〈走りなさい!〉
「だが断る」
歩いていける距離なのになんで走らなければならないんだ。解せぬ。
それから少しだけ言い争っていたが、すぐに校門前に着いてしまった。
ここからまたクソッタレな日々が始まるのか。イヤだなぁ。
〈マスター。ショボくれても仕方ありませんよ〉
「……そうだな」
「どこだっけ教室……」
俺がこのミッドチルダに来てから2年。
今はなんとかヒルデ魔法学院に通っている。ついでに言うなら今日から中等科1年だ。ピッカピカの1年生ってわけだ。
まあ、そんなどうでもいいことは置いといてだ。教室がどこにあるのかわからない。
「ここ……か?」
〈ここ……みたいですね〉
どうにか教室にたどり着けたようだ。
「すいませ~ん。遅れました~」
軽い感じで教室に入ると、これからクラスメイトとしてこの1年を共に過ごすことになるであろう奴ら全員の視線が俺に向けられた。
あらやだスゴく恥ずかしい。俺ってもしかして人気者だったりする?
「俺の席ってどこ?」
「……あそこです」
とりあえず近くにいた先生らしき人物に俺の席がどこなのか聞き出した。
ラッキー、一番後ろじゃねえか。残念ながら窓側だけど。
「よいしょ」
席につき、鞄を机に置く。しかしさっきから連中の視線がこっちを向いたままなんだけど。
さすがにイラつくな。言いたいことがあるならはっきり言えってんだ。
「オホン!」
先生がわざと咳き込むと全員そっちに視線を向けた。ありがとう先生。なんか助かった。
ふと一番窓側の席、というか隣を見てみると、結構な美少女がいた。将来的にも有望な。
しかし同時にも残念な奴だな、とも思った。だってその子、虹彩異色だもん。
「――もしかして中二病か?」
思わず口に出してしまったが、幸いにも真面目な子だったのか気づかれることはなかった。
だがその虹彩異色を含めても美少女なのは確かだ。それと――普通じゃない。
他の奴らとは雰囲気が違う。姉さん風に言うなら本物ってやつだろう。
「先が思いやられるねぇ……」
〈精進あるのみです〉
セラの言う通りだ。なんとかこの状況を切り抜けるしかない。
「あの、もう皆さん帰りましたよ……?」
「ふがっ! ……にゃにが?」
気持ちよく寝てたら誰かに起こされた。誰だ俺の安眠を邪魔する愚か者は。
ていうかいつもならセラが起こしてくれるはずだ。
〈私は起こしましたよ? 起きなかったマスターが悪いんです〉
「めんごめんご」
さてと、人様の眠りを妨げたのは――
「――中二病?」
「違いますっ!」
件の中二病だった。ていうか見るからに物静かで真面目そうな子がなんで俺を?
いや、それよりも皆帰っちまったってどういう……あ、今日は始業式だけか。
「なんでコイツなんだよ」
〈その人しかいなかったもので〉
「あ、あの――」
「他にもいたろ!?」
〈いえ、本当にその人しかいなかったもので〉
「あの――」
〈大体マスターが寝なければこんなことにはならなかったんです!〉
「なんだとコノヤロー!」
「あのっ!!」
「〈あっ、はい〉」
まだいたのかこの子。
「俺になんか用?」
「あなたのお姉さんがストライクアーツの有段者というのは本当ですか?」
「ストライクアーツの有段者ではないが、そう言われても違和感がないほど強いのは確かだな」
発言からしてスミ姉ではないな。おそらくコイツが知りたがってるのはスミ姉の妹で俺のもう一人の姉さんで間違いないだろう。
それにしてもとんだ物好きもいたものだ。あの死戦女神に興味を示すなんて。
「こんなこと聞いてどうすんの? まさかとは思うがやり合うつもりじゃねえだろうな?」
「…………お手合わせ願いたくて」
「そんで姉さんの居場所を知ってそうな俺に聞いたのか」
「はい」
マジでやり合うつもりなのか。
「あー、姉さんがいそうな場所なんだけど――」
とりあえず教えてあげることにした。最近なんか通り魔が出てるらしいけど、姉さんなら大丈夫だろう。
ていうかその通り魔が心配で仕方がない。姉さんに殺されてしまいそうで。
「なんというか、その……健闘を祈るよ」
「どうしてそんな遠い目で私を見るんですか……?」
君が心配だから。ていうか遠い目?
「え? 俺そんな目になってた?」
「はい。まるで誰かを哀れむような感じでした」
哀れだと思った覚えはないんだけど……仕方ないか。
「そんじゃ、俺はこれで」
「あ、まだ言ってないことが――」
中二病がなんか言おうとしていたが、俺はそれをスルーした。めんどいし。
こうして俺――緒方イツキの新たな学校生活が幕を開けた。ま、なるようになるしかねえな。
このあと聞いた話によると、姉さんは例の通り魔に襲われたらしい。
……通り魔あの中二病か。ごめん姉さん。あんたが襲われたの俺のせいだわ。反省しないけど。
《今回のNG》TAKE 12
通学路を歩いていると、そこそこ強い風が吹いた。もう少し強ければ女子のスカートが捲れていたかもしれない。
道の両脇には桜が――
「――あんのかよ!? すげえ咲き誇ってんぞ!?」
〈マスター! 早く写メ撮りましょう! 早く早く!〉
落ち着けセラ。デバイスってこんなに興奮するもんだっけ?
とりあえず桜を撮るとしよう。まさかこっちでもこんなに咲いてるなんて思わなかった。