「もう朝かよ……」
〈早く支度してください〉
昨日の深夜辺りからちょっとした筋トレをしていたのだが、いつの間にか朝になってしまったようだ。
仕方がない。とりあえずリビングに行こう。こっちに来てからはスミ姉こと緒方スミレと二人で暮らしている。
姉さんはスミ姉のことをジークさん以上の風来坊と言っていたけど、あれは半分間違いだ。
実際は仕事で次元世界を適当にうろつき、それ以外のときは家にいる。それだけだ。
「おはよーイツキちゃん」
「ちゃん付けやめろ」
「えー? だってこうしないと不公平じゃん」
リビングでは朝飯を作り終えたらしいスミ姉が座っていた。久々に会ったときは驚いたよ。
だって女の子みたいな人になってたんだから。俺と姉さんの知るスミ姉は尋常じゃなかった。
こっちではJS事件とかいう大きな事件の当事者だし。ホント、何があったんだよ。
「早く食べなよ」
「へいへい」
今日の朝飯は和食か。地球の料理が多いけど、俺的にはそれでいいかな。
……相変わらずうめえな。俺も人並みには料理するけどここまでの味は出せない。
「今日は遅刻しちゃダメだよ」
「わかってるよ。ていうかこんなに早く起きたらイヤでも遅刻できねえってんだ」
「嘘はいいから」
「はい」
さすがの俺もスミ姉の前だと大人しくせざるを得ない。いろんな意味で。
「んじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃーい」
俺もいつか姉さんみたいに一人暮らししてえなぁ。
「今日はどうやって回避しようか……」
〈……少し前向きに考えてみては?〉
通学路なう。欠伸をしながら今日の授業をどう回避しようか考えていると、セラにそう言われた。
前向きねぇ……。うん、ちょっと前向きに考えてみよう。
楽しい連中に楽しい授業。そして――楽しい上下関係。
――俺はすぐに考えるのをやめた。
「ふざけんな! ひたすら空しいだけじゃねえか!」
〈何をどう考えたらそんな答えが出るんですか!?〉
何が楽しいだちくしょう。やっぱり前向きに考えても意味ねえな。
とはいえ、さすがに学校自体をサボるわけにはいかない。姉さんじゃあるまいし。
「あの……」
「なんだコノヤロー」
後ろから声をかけられたので思わず条件反射で振り向くと、そこには例の中二病がいた。
今日も輝いてるな、その虹彩異色。
「おはよう、中二病」
「おはようございま――私は中二病じゃありませんっ!」
「え? 違うの? てっきり中二病って名前かと思ったよ」
「私の名前はアインハルト・ストラトスです!」
「いや、まるで前にも言ったかのような振る舞いで言われても困るんだけど」
たった今初めて聞いたんだけど。
「昨日言おうとしたらあなたが帰ったので言えなかったんです」
「……そう。で、名前なんだっけ?」
「…………アインハルト・ストラトスです」
「あ、アイ……アイハ……はにゃ?」
ごめん。ほとんど覚えられなかった。えーっとアイなんとか……あれ?
下の方なんだっけ? ストライク? ストライキ? ストライカー? まあいいや。
「じゃあな。早く行かねえと遅れんぞ」
「あ、はい」
〈昨日思いっきり遅刻した人の言うことではありませんね〉
否定はしない。
「……あのさ、なんでついてきてんの?」
「私の校舎がこちらにあるからです」
「いや、俺もこっちなんだけど……ああ、クラスメイトか」
「そういうことです」
どうりで同じ教室にいたわけだ。信じたくなかったけど。
つーかコイツ、感情表現乏しくねえか? ぶっちゃけ笑顔とか想像できねえぞ。
「……どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
言えない。君の表情を観察してたなんて言えない。言ってしまえばただの変態になってしまう。
いや、俺は変態じゃねえぞ? ついでに言うとホモでもない。女子には興味あるし、エロほ――参考書ぐらいは普通に読む。
その参考書の半分はなぜか姉さんに盗られたけど。何がしたいのあの人。
「あのさ中二病」
「アインハルトですっ!」
「あのさアイなんとか。どうすれば授業を回避できると思う?」
「………………え?」
あれ? 俺なんか変なこと言った?
《今回のNG》TAKE 5
「……そう。で、名前なんだっけ?」
「…………アインハルト・ストラトスです」
「あ、アイ……アインハルト・ストラトスか!」
〈バカなっ!? あのマスターが人の名前をちゃんと覚えただと!?〉
なに言ってんのお前。