学校嫌いな彼と鮮烈な少女たち   作:勇忌煉

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第28話「野郎、タブーに触れやがった」

「地球じゃ雨が降りまくってる時期だな……」

 

 無事に合宿を終え、ミッドチルダへ帰還してから二日後。五月も終わりを迎えるこの時期、俺たちなんとかヒルデ学院の生徒たちはある事で頭がいっぱいだった。それは――

 

「――運動会、ねぇ」

 

 そう、ミッドチルダじゃ地球とは違って秋ではなく梅雨の時期に運動会があるのだ。……初等科とは一応合同で行われるとかなんとか。

 今はその運動会の数ある競技に誰が出るのかを決め合っている最中だ。率先しているのはもちろん委員長。相変わらずしっかりしてるなぁ。

 だが、俺に言わせればこれはチャンスだ。女子の体操服姿が撮れる。もしかしたらポロリだってあるかもしれない……!

 

「ところでアイちゃん」

「何でしょう?」

「この世界の運動会って何をするの?」

「え」

 

 実を言うと去年にも運動会があったらしいのだが、俺はボイコットしていたので何をやるのかさっぱりわからない。

 地球のそれなら長距離走とか障害物競争、パン食い競争とかあるけど……こっちでは魔法を扱った競技がありそうで困る。

 なんせ俺はカメラを回す役に徹するつもりだからね。女子の体操服姿のために。

 

「……そういえばイツキさんはこの世界の出身ではありませんでしたね」

 

 ため息をつきながらもアイちゃんはご丁寧に説明してくれた。

 話を聞く限り、大体は地球の運動会とやることはほとんど変わらないようだ。一部魔法を扱う競技があることを除けば。

 魔法に関しては問題ない。というか、この学院の誰にも負けるつもりはない。

 

「――緒方くん!」

「ん?」

 

 何だと思って教壇の方へ振り向いてみると、委員長が珍しくお怒りの表情で俺を指名していた。

 俺なんかした? いや、何もしてないぞ。てかそんなことより眠いな。

 

「……何すか?」

「もうっ! さっきから呼んでるのに!」

 

 怒ってないでさっさと用件を言ってほしい。

 

「君には『長距離走』と『短距離走』と『障害物競争』と『二人三脚』と『学年対抗綱引き』と『チーム対抗リレー』に出てもらうからね!」

「おい待てやゴラァッ!」

 

 多い。多すぎる。ここまで多いと休憩時間が減る。つまり撮影時間もなくなる!

 競技名が書かれた黒板を見てからまさかと思ってもう一度委員長の方を見てみると、彼女は全てを見透かしたような笑みを浮かべていた。

 

「ふふっ、何も撮らせないから」

「悪魔めぇ……!」

 

『おいマジかよ』

『この多忙なスケジュールだとさすがの緒方もキツいぞ……』

『俺たちで何とかできないか?』

『だな。これくらいは肩を持ってやろうぜ。俺が緒方の代わりに短距離走をやります!』

『私も緒方くんに代わって長距離走をやりたいです!』

『そんなことよりおうどん食べたい』

 

「何この無駄な団結力!?」

 

 委員長の悪魔の一言にざわつき始めるクラスメイト(主に男子)。最後の奴はぶっ殺す。

 まあ、全員が俺を支援してくれるわけではなく一部は委員長を支持していた。

 上等だボケぇ……! テメエがそこまでやるってなら俺にも考えがある……!

 

「どんな手を使ってでも絶対にベストショットを撮ってやるからな! 覚悟しとけよ!」

「なんで諦めないの!?」

 

 皆の期待を一身に背負ってるんだ。ここで諦めたら後が怖い。

 

『緒方! 俺たちの希望のためにも頑張ってくれ!』

『委員長! 皆のためにも彼を止めて!』

 

 何この小規模派閥。『イツキ派』と『委員長派』に分かれてしまったぞ。

 わりと乗り気になっている委員長だが、それは俺も同じだ。ちなみにアイちゃんは『委員長派』につきやがった。裏切り者め。

 

「昔はもう少し荒れていたのに……なんで今はこんな変態になってしまったの……?」

「そんなの俺が知りてえよ」

 

 しばらくの間、教室内で『イツキ派』と『委員長派』による大口論が行われたが何事だと担任が駆けつけたことでようやく幕を閉じた。

 結局、俺は委員長に言われた競技のほとんどをやるはめになってしまった。ちなみに除外してくれたのは『障害物競争』だけである。

 

『早く教室に入りなさい!』

『え、ちょ!?』

 

 担任が授業を始めた瞬間、教員の声と妙に聞き覚えのある声が聞こえ――

 

「ととっ……!」

 

 ――一人の女子が押される形で教室に入ってきた。長めの紫髪に(年齢のわりには)結構発達した胸。それにあの独特のリボン。

 

「なんですかあなたは!?」

「あ、その……転校生ですっ!」

 

 間違いない、ルーテシア・アルピーノだ。でもアイツ、確か14歳だったよな? もしかして留年真っ最中だったりする? ていうかなんでミッドチルダにいるんだ?

 本人はやってしまった、という顔だが担任はそうでもないらしい。信じちゃってるよ。

 担任が指定した席へ座ろうとするルーテシア。チッ、かなり近いな。

 

「あの……?」

「あ、お隣よろしく――アインハルト!?」

 

 マズイ。このままいくと俺がいることにも気づいてしまう。

 すかさず持っていた教科書で顔を隠し、上からも顔が見えないように机に突っ伏す。よし、これでしばらくは見つからないぞ。

 

「お、同じクラスだなんて奇遇ね……」

「……あれ? ルーテシアさんって確か年上」

「次の授業は何かな~!」

 

 さすがのアイちゃんでも年齢の違いには気づいたか。

 ……マジで眠たくなってきたな。せっかくだし寝ちゃおう。

 

 

 □

 

 

「よく寝たわ……」

 

 昼休み。あれからホントに熟睡した俺は未だに机に突っ伏していた。

 このままいけば今日は見つからずに済むかもしれない。なんで隠れてるのかは俺自身もわからないけど。そろそろ起きようかな?

 

「そう言えばアインハルト。さっき教科書を見せてくれたときに憧れてたとか言ってたよね?」

「あ、はい」

「もしかして……あなた友達いないの?」

「…………」

 

 野郎、タブー中のタブーに触れやがった。

 

「ご、ごめん……あっ、イツキはどうなの?」

「イツキさんは友達というより……教え子、でしょうか?」

「教え子?」

 

 めちゃくちゃ否定したい。俺はお前の教え子じゃないと。

 その後もアイちゃんとルーテシアは他愛もない会話をしていたが、ルーテシアの何気ない一言で状況は動いた。

 

「イツキはどこのクラスにいるの? ここにはいないようだけど……」

「………………私の隣の席で寝ているのがイツキさんです」

 

 野郎、最大級のタブーに触れやがった。

 

「えっ? そんなに近くにいたの!?」

「バラすなよお前……このまま完全不干渉でいこうと思ったのによ」

「いずれこうなっていたので問題はありません」

 

 大アリです。主に俺の学校生活に影響が出てしまいます。

 というか、ホントに気づいてなかったのかルーテシアよ。演技でもしてるのかと思ったよ。

 

「ま、お休みということで――」

「いやいや待ってよ。イツキにも聞きたいことはたくさんあるんだから」

 

 このあと何度も寝ようとしたが結局ルーテシアに捕まってしまい、さらにアイちゃんのせいでいろいろと付き合わされるはめになったのだった。

 ……なんでだろう。美少女二人といたのに全然嬉しくなかった。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 23

「ふふっ、何も撮らせないから」
「悪魔めぇ……!(パシャッ)」
「言ってるそばから私を撮らないの!」

 なんでやねん。


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