学校嫌いな彼と鮮烈な少女たち   作:勇忌煉

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第29話「連写は常識」

「ルーテシアさん……よろしければ一緒に帰りましょう!」

 

 放課後。俺の隣でアイちゃんが転校してきたルーテシアを誘っていた。

 でもねアイちゃん……それルーテシアちゃう。ましてや人間でもあらへん。それガリューや。

 さっき授業で召喚魔法の基礎をやっていたのだが、その際にルーテシアがカツラを被せたガリューを身代わりにして抜け出したのだ。アイツ自分の召喚獣を何だと思ってんだ。

 ルーテシアもルーテシアだが、こんな子供騙しを見破れないアイちゃんも大概だと思う。

 

「さーて、今日はどうすっかなぁ」

「行きますよ、イツキさん」

「うん。また明日~」

「行・き・ま・す・よ・?」

「……はい」

 

 最近はこの通り、アイちゃんによく連行されてしまう。お願いだから一人で帰らせてください。

 俺の首根っこを掴み、引きずりながら校門へと向かうアイちゃん。それとガリュー。寡黙を貫いてないで何かアクションを起こしてくれ。

 校門近くまで来たところで、ガリューの主であるルーテシア本人と合流した。

 

「い、イツキさん……!」

「なんじゃい」

「ルーテシアさんが二人います……!」

 

 アイちゃんの頭がとうとう壊れてしまったか。いや、文字通り筋肉だけになったのかも。

 彼女が震えながら指差した方向を見てみると、ルーテシアとカツラを被ったガリューが立っているだけだ。……ああ、なるほど。

 ルーテシアが何とかしろ、的な視線を向けてくるので口を開こうとしたら初等科組がやってきた。なんて間が悪いんだ。

 

「お待たせしました! アインハルトさん!」

「大変ですヴィヴィオさん! ルーテシアさんが二人いるんです……!」

「ちょ、ちょっと? 私が本物なんだけど?」

「……ほ、本当だ!」

「どっちが本物なのかわからないー!」

 

 このガキ共、アイちゃんが冗談を言っているとでも思ったのか悪ノリしやがった。

 さすがに我慢の限界が来たのか、少しずつ涙目になっていくルーテシア。おおっ、収穫もんだ収穫もんだ。可愛いじゃねえか。

 ルーテシアの涙目になった顔をこっそり激写していると、再びこっちを見て目で訴えてきた。

 

「………………」

 

 俺にどうしろと言うんだ。理由もなく助けるわけがないだろ。

 なんかアホらしくなってきたのでさっさと帰ろうと一歩踏み出した瞬間、ルーテシアが信じられないことを言ってきた。

 

「胸でも何でも触らせてあげるから!」

「お前らちょっとオイタが過ぎるぞ!」

 

 美少女が涙目で困っているというのに助けないなんて男らしくない。

 ガキ共が軽蔑の眼差しを向けてくるも、今の俺にはそんなものちっぽけに見えるぜ。

 ……まあ、助けたことだしとりあえず褒美をもらうとしましょうか。

 

「よーし、ではさっそく――」

「こっちに来ないで――!!」

「――ふざけんなクソッタレぇぇぇぇッ!!」

 

 なんで逃げた!? 俺は合意の上でパイタッチしようとしただけなのになぜ逃げられた!?

 ルーテシアは逃げるや否や数秒で俺の視界から姿を消した。

 まさか約束を破られるとは思いもしなかった。仕方がないので早く帰ろう。

 

「疲れた……」

 

 ちなみにこのあと、なぜかアイちゃんに説教された。叩かれなかっただけマシかな。

 

 

 

 

 

 

 

「……お前、何してるの?」

「ひゃぁぅ!?」

 

 翌日。休日ということもあって新しいカメラを買おうと街に向かっていると、近くにあった木の陰にティミルが不審者っぽく隠れていた。

 全く、小学生が一人で出歩くなんて危ないったらありゃしない。

 どうして隠れているのか聞いてみたところ、何でもヴィヴィオやアイちゃん、そしてウェズリーにはある大人モードが自分にはなく、その事をウェズリーに小馬鹿にされたことでプッツン。無謀な約束をかまして今に至るらしい。

 

「で、件のウェズリーは?」

「あちらです……」

 

 ティミルが指差した先へ視線を向けると、そこには唖然としているウェズリーとティミルを大人にしたような外見の女性がいた。

 ……いや、あれ誰よ? もしかして未来からやってきたティミルとか? だとしたらタイムマシンどこよ? 俺も乗りたいんだけど。

 

「…………」

「……あれはゴーレムです。頭から煙を出すのと連写で撮るのやめてください」

 

 いけない。つい連写してしまっていた。それにしてもゴーレムかぁ……便利なものだ。

 連写をやめて二人の様子を見ていると、ウェズリーがいきなり膝をついた。

 

「おっぱい、負けた…………」

 

 ああそうか、ウェズリーは大人モードになってもペッタンコだもんな。だが希少価値だ。

 ティミルも大人になったらあんな感じになるのだろうか。いや、なってくれ。

 あれが粘土じゃなくて人だったら良いなと思っていると、二人は遊園地に行こうとしていた。大人のデート……か?

 

「リオ×コロ……!?」

「帰るわ――」

「待ってください」

 

 寒気がしたのでその場から離脱しようとするもあっさりと捕まってしまった。

 不味い。このままだと俺までカップリングの対象にされてしまう。

 

「ここで会ったのも何かの縁。先輩には最後まで付き合ってもらいます!」

「嫌だ……って言ったら?」

「先輩の姿をしたゴーレムを作ってあることないこと言いまくります」

 

 俺に残された選択肢は一つしかなかった。

 

 

 □

 

 

「大人二枚!」

 

 遊園地の入り口まで来たのはいいが、こういうところって子供は保護者が同伴でないと入れないはずだ。ティミルはわかっているのだろうか?

 まあ、俺は姉さんほどではないが充分に長身だからいける。……子守りとかめんどくせえな。

 

「大人一枚と子供一枚で」

「畏まりましたー」

「……あっ」

 

 たった今遊園地の入り口に来ていることに気づいたティミル。

 これ俺がいなかったら今ごろティミルは門前払い食らってるぞ。確実に。

 受付のお姉さんから券を受け取り、ついでにお姉さんをこっそりと撮影する。抜かりはない。

 

「あ、ありがとうございます……」

「貸しイチな」

 

 ただで奢るほど俺は優しくない。

 

「先輩のケチッ!」

「はいはいワロスワロス」

 

 大人モードのウェズリーとティミルもどきをバレないようにつけながら軽口を叩き合う。

 どうやら最初はウォーターライドに乗るようだ。……ウォーター?

 

「おいティミル」

「はい?」

「あのゴーレム、水はいけるのか?」

「…………あ」

 

 ダメらしいな。材質が粘土だから水はどうかと思っていたがやはりダメらしいな。

 

「……俺達も乗ろうぜ」

「……はい」

 

 とりあえずウォーターライドに乗ろう。水が掛かるのは確実だが、祈るしかない。

 それにしても懐かしいな。地球の遊園地にもこういうのはあったが、乗るとなるといつ以来かわからないほど懐かしい。

 そこそこ大きいボートに乗り、それが動き出すと同時に落ちないように掴まった。

 

「……しまった! これ、よく考えたら俺達もずぶ濡れになっちまうぞ!」

「今さら何を言っているんですか!?」

 

 忘れていたのだからしょうがない。

 

「お、おう――!?」

「ひゃぁ――っ!?」

 

 ボートがブレーキしたかのように前のめりになった瞬間、発生した水しぶきが俺達を襲った。これ水しぶきじゃなくて波だろ!?

 当然、俺とティミルはずぶ濡れになってしまった。……風邪引いたらどうしよう。

 

 

 □

 

 

「最後はお化け屋敷!」

 

 あれから様々なアトラクションを回る大人ウェズリーとティミルもどきを尾行しつつ、二人と同じアトラクションを楽しんだ(?)俺とティミルはお化け屋敷に入っていく二人を陰から見つめていた。……定番だな。

 ていうか、ウェズリーはアウトドア過ぎるわ。さっきだってジェットコースターに三回も乗ってたし。俺なんか吐きかけたぞ。

 ティミルによれば水をモロに浴びたらしいティミルもどきは限界が近いらしく、粘土の部分が表面に出つつあるとか。

 二人を見失わないようすぐにお化け屋敷へ突入する。……仕様はなかなか本格的だな。まるでテレビの向こう側に来た感じだ。

 

「ティミル。とりあえず俺の右腕に引っ付くな」

 

 怖いのはわかるが引っ付かれると歩きにくい。それともこういう形でご褒美を味わえと?

 俺らの少し前を歩いている大人ウェズリーは大袈裟に怖がるふりをしてティミルもどきにくっついている。クソッ、なんて羨ましいんだ……!

 

「…………」

「ティミル、痛い。痛いから腕をつねるのと足を蹴るのやめてくれないか」

「ウボアアアアアア」

「っ……!!」

 

 ゾンビが不意討ちでティミルの背後から飛び出した瞬間、彼女は悲鳴を上げないように頑張って俺にしがみつく力を強めた。

 ……何だかんだでコイツもガキんちょだからなぁ。怖くて当然か。

 その後もホッケーマスクの殺人鬼やハロウィンマスクの殺人鬼の不意討ちでビビりまくるティミルをカメラに納めながら進んでいき、出口が見えたところで彼女がいきなり話しかけてきた。

 

「さっきから平然としてますけど、先輩は怖くないんですか……?」

「全然」

 

 ぶっちゃけ二人の姉の方がよっぽど怖い。

 

「ほら、出口はすぐそこだ。安心しろって」

「先輩は油断しすぎです……! こういう時ほど大物が待ち受けて――」

 

『ギャ――ッ!!』

 

「――いるはずなんです……!」

「今の悲鳴をスルーするか」

 

 スルースキルを磨けばお化け屋敷も何のそのになるかもしれないぞ。

 ていうか、今のはウェズリーの声だった。コイツの言う通り大物でも出たのだろうか?

 最後の曲がり角を曲がり、光が差し込む方を見てみると、

 

「あぅ~……」

 

 気絶しているらしいウェズリーが目に入った。その隣には水で溶けたティミルもどきが立っている。何あれめちゃくちゃ怖いぞ。

 

「せ、先輩っ!! ほら、やっぱり大物が出てきましたよ……!!」

「落ち着け。ありゃお前のゴーレムだ」

 

 恐怖のあまり周りが見えていないティミルは水で溶けた自分のゴーレムを幽霊として認識してしまっていた。確かに怖いけどさ。

 このあと俺とティミルは気を失っているウェズリーを引きずって遊園地から退散した。

 ちなみにその後日、ウェズリーは休んだという。ティミルもどき恐るべし。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 1

「ティミル。とりあえず俺の右腕に引っ付くな! 関節があらぬ方向へ曲がってるからやめいだだだだだっ!!」

 しばらくの間、俺の右腕はゾンビのようになってしまった。……痛い。


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