「へぇ、ヴィヴィオとねぇ……」
「はい……」
翌日。なんかアイなんとかが少しガッカリしていたので何があったのか訪ねてみた。
経緯はこうだ。ヴィヴィオと出会い、お手合わせをして勝った。そこまではよかったが、コイツにとっては手応えのない相手だったらしい。
あれ? でもヴィヴィオってそこそこやるはずなんだけど……ああ、あれは使わなかったのか。
「イツキさんなら……」
「んだよ」
「な、なんでもありませんっ!」
なんでそっぽ向かれてんの俺。
「まあいいわ。ところでアイなんとか」
「……アインハルトです」
「この数式がわからないんだけど」
「え?」
頼むからそこまで大袈裟に驚くのやめてくれ。泣いちゃうから。
しかも周りからはなんか視線を感じるし。主に嫉妬の。
「ここはこうしてですね……」
「ふむふむ」
――数分後――
「――で、ここをこうすればいいんです」
「……………………」
「頭から湯気が出ていますよ!?」
大丈夫だ、問題ない。
「大丈夫だ、問題ない。確か連立方程式をやってたんだっけ?」
「正常な判断ができていない……!」
そんなことはない。俺としては連立方程式という言葉を言えたことが奇跡なのだから。
ま、まあ、問題はなんとなくわかったから大丈夫だよな、きっと。
「んじゃ、俺はこれで」
「まだ昼休みですよ?」
ダメだ。正常な判断ができていない。
「久しぶりだな、イツキ」
「どうもザフィーラさん。今日は狼じゃねえのか」
「しばらくはこの姿でいるつもりだ」
場所は代わって八神家なう。八神さんに呼ばれて来たのだが、その八神さんがいない。
ついさっき話を聞いたのだが、どうやら仕事があるらしくてここにはいないとのこと。
「なんで呼ばれたんだよ、俺」
「あたしに聞かれてもわかんねーよ」
たった今現れた合法ロリことヴィータさんに問いかけるも、答えは出なかった。
これで年上だもんなぁ。どっからどう見てもクソガキだけど。
「なんか失礼なこと考えてなかったか?」
「さあ?」
危ない危ない。もしバレてたらゴルフクラブみたいなデバイスで殴られていたに違いない。
「師匠……。お、遅くなりました……」
俺が命の危機を感じていると、誰かを呼んだであろう弱々しい声が聞こえてきた。
最初に声がした方に振り向いたのはザフィーラさんだった。師匠ってお前かよ。
「お、やっと来たか……!?」
「ん? どうした……!?」
次に振り向いたヴィータさんが絶句した。一体なんだ? と思いつつ振り向くとそこには――
「あぅ……」
――ビキニかトランクスかよくわからないツーピース水着を着た男の娘がいた。しかも下にはスカートみたいなフリフリが付いている。
「ミウラ……な、なんだその格好?」
「…………相撲でもするのか……?」
「ふぇ!?」
ヴィータさんの反応が普通だろう。だがザフィーラさん、テメエはダメだ。
ミウラと呼ばれた男の娘はどうすればいいのかわからない、という感じでオドオドしていた。
「…………」
〈ま、マスター?〉
俺はというと、文字通り固まっていた。いやそうだろう? 今の季節で水着とかあり得ねえぞ。
しかし、それ以前に――
「なんだよ?(ブババババッ)」
――俺の命が危ない。
「い、イツキ!? なんか凄い勢いで鼻血が出てんぞ!?」
違うぞ! 決して男の娘なのに思わずときめいたとかじゃねえからなっ!
「おのれ孔明の罠かぁああああっ!!」
「お前は何を言っているんだ!? ザフィーラ! とりあえず救急箱!」
まさか着方一つで男の娘にここまでの破壊力があるとは思わなかった……!
今度アイなんとかにも話そう。そう思いながらも、意識は薄れつつあるのだった。
「は、初めましてっ! ミウラ・リナルディです!」
「あ、どうもこれはご丁寧に。俺は緒方イツキだ」
あれから数十分後。なんとか一命を取り留めた俺は男の娘リナルディと自己紹介をしている。
気弱な男……だよな? どう見ても女には見えないんだけど。
「勘違いしてるとこ悪いが、ミウラは女だ」
「バカなっ!?」
どこに女の要素があるんだ!?
「俺が知っている女というのはもっとムチッとプリっとしているはずだ……!」
ちなみにアイなんとかは無難に許容範囲内だ。初等科のガキ共は論外だけど。
「……いや、ヴィータさんみたいな合法ロリもいるんだからボクっ娘がいても不思議じゃないか」
「シバくぞてめー!?」
しまった。本音が出てしまった。
というわけで、リナルディが女子だということが判明した。
よかった。俺の性癖は正常だったのか。それにしても、なぜコイツは水着姿だったんだ?
《今回のNG》TAKE 55
「は、初めましてっ! ミウラ・リナルディでしゅ!?」
「――ごはっ!!」
「うぉい!? どうしたイツキ!?」
ヤバイ。この破壊力はヤバイ。