ドウェルグが聖槍十三騎士団黒円卓に入ってから三年の月日が経過した。その間、織斑 一夏改めヘグニ=ドウェルグはザミエルから戦闘技術の基礎を学び、それを独自のスタイルにして力を付けていった。殺人衝動を抑えるために紛争地域へ行ったりもした。
「して、城の外では卿ともう一人の男の話題で持ちきりというわけだな」
「申し訳ございません。まさかこのようなことになるとは……」
ドウェルグはラインハルトの前で跪き、頭を垂れていた。ドウェルグの表情は硬く、対象的にラインハルトの表情は愉快なものを見たようなものだった。ラインハルトの手にはドイツの新聞が握られており、その一面には『第二の男性適合者現れる!!』という見出しでドウェルグの姿がバッチリ写っていた。
「経緯を話せ」
「Jawohl!」
ドウェルグは何があったかを黒円卓全員に話始めた。
「え~と、買うものはっと……」
ドウェルグはドイツの郊外の街にシュピーネに買い出しを頼まれて来ていた。。ついでとばかりに他のメンバーからも頼まれ、ラインハルトとカイン、イザーク以外の買い出しをするはめになった。
「猊下は……万年筆か。そういえば壊れたと仰っていたな」
ヴァレリアは愛用していた万年筆の先端が折れてしまったのでドウェルグに万年筆を頼んだ。
「次はヴィルヘルム先輩か……トマトジュース1ダースか。先輩、トマトジュース好きだな」
ベイが頼んだのはトマトジュースだった。ベイはトマト好きであり、いつもトマトジュースを飲んでおり、ストックが切れたようだった。
「マキナ卿は……ダンベル?しかも重さが100kgとか200kgとかどこで売ってるんだよ?」
マキナはトレーニング用のダンベルだった。
「ルサルカ先輩は……魔道書?もはや買うあてすらないなこれは……骨董品屋でも行くか?」
マレウスは魔道書を頼んだ。しかしこの科学は発展した世で、魔道書などどこにも売っていない。
「ザミエル卿はっと……タバコ3カートン。未成年だけど売ってくれるかな?」
ザミエルはタバコを頼んだ。彼女は愛煙家なので、これはドウェルグにとって予想通りだった。
「シュピーネさんは確か機械の部品や基盤だったかな。かなり詳細に書いてあるな」
シュピーネは何やら機械を作る為の部品と基盤を頼んだ。ドウェルグには一体何に使う物なのかは分からなかった。
「リザさんは布と裁縫道具か。玲愛さんに裁縫を教えると言ってたっけ。後で俺も教えてもらおう」
リザが頼んだのは布と裁縫道具だった。ドウェルグは黄昏の守護者の一人である『永遠の刹那』藤井 蓮と面識があり、その関係で氷室 玲愛と知り合っていた。両者の仲は良好で、ドウェルグは玲愛に料理を教え、玲愛はドウェルグに勉強を教えた。
「さて、次はシュライバー卿か。何々……ジャガイモ、ソーセージ、胡椒……食材系か。確かシュライバー卿は料理が上手いんだっけ」
シュライバーは食材を頼んだ。シュライバーは黒円卓内では料理がとても上手く、時おり作っているのをドウェルグは見ていた(ドウェルグ、ルサルカ、リザ、シュライバーの四人以外は料理が全く出来ない)。
「最後は……副首領か。なんとなく予想出来るんだよなぁ。……プリンターのインクが全色50個にカメラのレンズがえーっと……10種類か」
カール・クラフトの頼んだものを見たドウェルグはため息を漏らした。副首領は黄昏の女神を守護する者の一人なのだが、それと同時に女神に対してストーカー行為をしており、女神も彼の行動に少々引き気味になっている。
「さて、買いに行くか」
ドウェルグは買い物を始めた。
「疲れた……」
買い物が終わったドウェルグはカフェで一息ついていた。荷物は先にヴェヴェルスブルグ城に持っていき、今は自身の買い物に来ていた。
『ニュースの時間です』
「ん?」
カフェの中のテレビから何やらニュースが聞こえた。
『先日、日本で世界初の男性IS適合者が発見されました。名前は織斑 秋斗。ブリュンヒルデである織斑 千冬さんの弟だそうです。政府は本日から男性のIS適合者を探すためにドイツ各地で起動テストを行うと発表しました。本日の開催は……』
ニュースの内容は初の男性適合者についてだった。しかも、それがドウェルグの元兄だったので耳にしたドウェルグは店員に織斑 秋斗について聞いた。
「彼はいつISが動かせると発覚したんですか?」
「確か2か3日前だったかな?結構話題になって連日ニュースになってるけど、お兄さん知らなかったの?」
「最近まで結構忙しくて。なんかテストがどうとか言ってましたけど」
「きっともう一人か二人は男性適合者がいると思ったんだろうね。会場は近くだからせっかくなら行ってみたら?」
「ありがとうございます。せっかくなんで寄ってみます」
ドウェルグは会計を終わらせ、気まぐれで起動テストを行っている会場に向かった。
「此処か……結構人がいるな」
会場には結構な人がおり、それぞれがISに触れては落ち込んだりしていた。
「次、さっさとしなさい」
受け付けの女性の態度にドウェルグはキレかけたがなんとか落ち着いて第二世代IS『ラファール・リヴァイブ』の目の前に立った。
「どうすればいいんですか?」
「触れるだけでいいわ」
ドウェルグがラファールの装甲に触れた途端、頭の中にISの情報が流れ込んだ。そして、気がついたらラファールを纏っていた。
「あ……新しい適合者!!政府に電話しないと!!」
「やべぇ……とりあえず逃げよう」
ドウェルグは全力疾走で会場から出ると、近くの建物の陰に隠れた。
「まずいことになった。ヘタしたらIS学園に入れられるぞ」
ドウェルグは追手から逃げつつ、なんとかヴェヴェルスブルグ城に戻ることが出来た。
「……以上です」
ドウェルグの報告を聞いたベイとマレウス、シュライバーは大笑いし、ヴァレリアとバビロンは苦笑し、ラインハルトはシュピーネを呼んだ。
「シュピーネ、卿は確かISを研究していたな。その過程で出来たコアとISをドウェルグに譲渡せよ」
「りょ、了解しました!」
シュピーネはラインハルトに怯えながら頷いた。
「ドウェルグ、卿はIS学園なるところに行き、経験をつんでくるがいい。卿に足りないのは経験だ」
「Jawohl!」
「それについてだが獣殿、一つ提案があるのだが」
ドウェルグのIS学園入学が決まった時、カール・クラフトが提案をだした。
「誰か同行者を連れていくというのはどうだろうか?なに、女神に治世された世界の動向を見たくてね。報告してくれる者が多いほうがいいのだよ」
「ふむ、誰かいないか?」
カール・クラフトの提案に手を上げる者は殆どいなかった。カール・クラフトは黒円卓の中でかなり嫌悪されており、ドウェルグとラインハルト以外の全員が『また何か企んでいるのでは?』と考えていた。だが
「ほぉ、卿が名乗り上げるとは」
一人が手を上げていた。
「かの学園に入るまで、ドウェルグは黒円卓全員と存分に殺し合うといい」
それを聞いたドウェルグは顔が真っ青になった。ドウェルグの相手はベイかマレウスが多く、極たまにマキナに挑んでは返り討ちにあうことが多かった。通常の団員相手なら勝てないまでも多少は勝負になるが、大隊長であるザミエルとシュライバーが相手だと勝負すら成立しない。ザミエルが相手なら遠距離から一方的に蹂躙され、仮に近づけたとしても剣と体術で圧倒される。シュライバーはそもそも攻撃が当てられず、勝負にならない。
「卿の奮闘に期待する。Sieg Heil!」
『Sieg Heil!』
ラインハルトの号令に全員で返し、会議は終わった。ドウェルグは全速力で部屋を出ようとしたが扉の寸前でザミエルに捕まった。
「貴様の危機管理能力をもう一度叩き直してやる」
ザミエルはドウェルグの首を掴みながら闘技場へ向かった。
ドウェルグはIS学園入学式前日まで黒円卓の戦闘員全員の相手をしながらISの基礎を勉強した。そして、とうとう入学式当日を迎えた。
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