「皆さん、入学おめでとうございます。私はこの一年一組の副担任、山田 真耶です。一年間よろしくお願いしますね」
「「「………………」」」
IS学園入学式当日、入学式が終わり新入生は各々の教室で初めてのホームルームを受けていた。ここ一年一組でも副担任と名乗る緑髪で眼鏡をかけた小柄な女性、山田 真耶が自己紹介をして生徒の反応を見ようとしたが、全く反応しなかった。全員が教卓の目の前の席に座っている
「え~と、それでは出席番号順で自己紹介をしていってください」
真耶は困惑しながらも自己紹介を促した。それを聞いた生徒は一人一人自己紹介をしていった。そして
「織……君?……斑……」
真耶はその男に声をかけるが全く反応が無く、入学式当日に心が折れそうになった。件の男、織斑 秋斗は
(何でこんな席なんだよ!目立ちまくってんじゃねえか!)
自分のことでいっぱいになっていて真耶の言葉を聞いている余裕がなかった。
「織斑くん、聞いていますか?」
「……あ……すいません。ちょっと頭がいっぱいになってました」
「大丈夫ですか?自己紹介、織斑くんの番までまわってきましたよ?自己紹介してくれますか?」
真耶は泣き顔で秋斗に頼んだ。その様子はとても教師とは思えなかった。
「わっ分かりました」
秋斗は席を立って振り返ると教室にいる生徒全員の目が光った。秋斗はそれに驚きながらも自己紹介を始めた。
「え~と、織斑 秋斗です。なんかISを動かせてしまったので此処に入学しました。知識は殆どありませんが頑張っていきたいと思います」
「「「…………」」」
「……?あの~?」
自己紹介したにも関わらず、何の反応もないことに秋斗は疑問を抱いたが、すぐに
「「「キャァァーーーー!!!」」」
叫び声が教室に響き渡った。
「カッコいい~!」
「イケメンだ!」
「お母さん、同じ年に生んでくれてありがとう!」
次々に出てくる歓声は教室に一人の女性が入ってきて唐突に終わった。その女性は黒のスーツを着て、手に出席簿を持っていた。
「騒がしいと思ったらお前だったのか、織斑」
「織斑先生、職員会議は終わったんですか?」
「ああ、山田くん。ホームルームを押し付けてすまなかった」
「諸君、私が担任の織斑 千冬だ。諸君らをこの一年で使い物になるようにするのが私の仕事だ」
この女性こそ、第一回と第二回モンド・グロッソ優勝者にして『ブリュンヒルデ』の称号を持った織斑 千冬だった。千冬を見た生徒はまた歓声を上げたが、すぐ千冬によって静かになった。
「山田くん、もう一人の男とあそこの席の生徒は何処だ?」
「彼なら少し遅れると連絡がありました。何でも昨日のチケットが取れなかったとか。隣の席の子も同じです」
「そうか」
千冬と真耶の会話を聞いていた秋斗は教室後方の席が二つ空いていることに気付いた。
(そういえばもう一人男性適合者が見つかったんだった)
秋斗がそんなことを考えていると、教室のドアが叩かれた。そして、男の声が聞こえた。
「遅れてきた二人だが、入ってもいいか?」
「構いませんよ」
「では失礼する」
教室に入ってきたのは黒髪黒目の目付きの悪い男と
「失礼するわ~」
とても高校生には見えないかわいらしい少女だった。
「今は自己紹介の時間ですか?」
「そうですね。ドウェルグさんとシュヴェーゲリンさん、お願いしますね」
「分かりました」
「分かったわ」
二人は教卓の前に立った。その際、千冬と目が合ったドウェルグは一瞬だけ殺気だったがなんとか押さえ込んだ。
「ヘグニ=ドウェルグだ。織斑 秋斗が発見されてすぐにドイツで適性が発覚した。女尊男卑のやつは話しかけるなよ、勢い余って殺しかねんかもしれんからな」
ドウェルグの自己紹介で教室の空気が凍りついた。今世界で蔓延している思想に正面から喧嘩をうったドウェルグを生徒達は怪訝な表情で見た。
「まったく、次にする人のことを考えなさいよね」
ドウェルグと一緒に来た少女は溜め息をつきながらも自己紹介を始めた。
「ルサルカ・シュヴェーゲリンよ、まあよろしくね~。あとは~……ドウェルグとは男女の関係だから、あんまりちょっかいかけないでね」
マレウスは明るい調子で自己紹介した。鈴が鳴るような美声に生徒達は同性にも関わらず魅了された。しかしドウェルグとの関係を聞いた一部の生徒は落ち込んだ。
「ドウェルグくんとシュヴェーゲリンさんの席は後ろの席ですよ」
いち早く立ち直った真耶が席を言うと、二人は各々の席に向かおうとしたが、ドウェルグが突然振り返って腕を上げた。
「ちっ」
「いきなり何なんだよ、ブリュンヒルデさま?」
上げた腕に出席簿が振り降ろされたが、ドウェルグは痛がる様子もなく受け止めた。
「ろくな自己紹介も出来ないやつに罰をくれてやっただけだ」
「俺が何を言おうと自由だろうが」
「……まあいい」
ドウェルグとマレウスが席に座ったタイミングでホームルームが終わった。
「ウゼェ、視線が鬱陶しい」
「我慢しなさいよね。まぁ、月乃澤学園の時よりも注目されてるかもねぇ」
休み時間にドウェルグとマレウスが談笑していると、秋斗がドウェルグに声をかけた。
「すまない、少しいいだろうか?」
「ん?何だよ?」
「いや、もう一人の男性適合者が気になってね。気を悪くしたらすまない。」
「別に。てめぇも大変だな、こんな所に強制的に入学させられてよ」
「まったくだよ。本来受験した高校に合格してたのに……」
「あ~御愁傷様」
「む~お姉さんを除け者にして~怒っちゃうわよ」
「悪いなアンナ」
ドウェルグと秋斗が会話に夢中になっている様子にマレウスは頬を膨らませて怒っているアピールをした。それを見て謝罪するドウェルグの言葉に秋斗は違和感を覚えた。
「アンナ?確か彼女は……」
「ああ、アンナって言うのは……あれだ、あだ名みたいなもんだ」
ドウェルグは咄嗟に言い訳を言った。秋斗は納得して引き下がった。すると
「秋斗!!何故私に話しかけずにこの男と話している!」
ポニーテールの少女が何やら秋斗に怒鳴り付けた。秋斗は溜め息をついてその少女の方を向いた。
「篠ノ之 箒さん、いきなり会話に割り込まないでくれないか?俺は今ドウェルグさんとシュヴェーゲリンさんと話しているんだ」
篠ノ之と呼ばれた少女は秋斗の対応に怒りだし、マレウスを睨んだ。
「私よりもこんなちんちくりんの女と男の方が大事だと言うのか!」
ちんちくりん扱いされたマレウスは
「結構気にしてるのに……酷いわ~」
泣き真似を始めた。周りは何事かとマレウスを見て、箒に非難の視線が集まった。それを受けた箒は舌打ちをしたあと、自分の席に戻った。
「なんか……ゴメン」
「お前が気にすることじゃないだろ」
「あんなのでも一応幼なじみだからね」
「そうか……そろそろ戻った方がいいんじゃねえか?」
時計を見ると、チャイムが鳴る寸前だった。秋斗は礼を言ったあとに席に戻った。
「なんかあの子感じ悪~い」
「元からあんなんだったが、ひどくなってたな」
ドウェルグとマレウスが箒について悪態をついているとチャイムが鳴り、千冬と真耶が教室に入ってきた。
感想等あればお願いしました