最後の方がちょっとあれな展開になりました
「始め!」
開始の合図と同時にドウェルグは距離を詰めて竹刀を頭に目掛けて振り降ろした。
「うわっと!」
秋斗は間一髪でそれを受け止めると、お返しと云わんばかりにドウェルグの腹に蹴りを放った。ドウェルグは蹴りを体を捻ることで回避し、そのまま一回転して竹刀を蹴り上げた。
「ちょっ」
秋斗はどうにか竹刀を放さなかったが無防備な状態になり、ドウェルグはその隙を見逃さずに秋斗の胸に拳を叩きつけた。秋斗は後方に吹き飛ばされたがなんとか体勢を整えた。
「へぇ、やるな」
ドウェルグは素直に秋斗を称賛した。インパクトの瞬間、秋斗は後方に飛ぶことによってダメージを減らした。だがそれでもダメージは大きいようで少しふらついていた。
「体術じゃ勝ち目は薄いかな」
秋斗は竹刀の当たる間合いギリギリから連続してドウェルグに攻撃した。その速度はかなり速く、常人ならなすすべなく当たるであろう攻撃は
「結構速いな……だが」
全てドウェルグに打ち落とされていた。秋斗はさらに剣速を上げていくがことごとく打ち落とされた。
「くそぉ!」
焦れたのか秋斗は大振りの攻撃をして隙を作ろうとした。ドウェルグは大振りの攻撃に合わせてカウンターをいれようとしたが
「これで!」
秋斗はカウンターにカウンターを合わせた。ドウェルグと秋斗の攻撃は僅かに秋斗の攻撃が先にドウェルグの手に当たり、ドウェルグの攻撃は逸れて秋斗に当たらなかった。
「今だ!」
秋斗はドウェルグの腕を掴んで投げ飛ばそうとした。しかし、ドウェルグは掴もうとする腕を逆に掴み返し、遠心力を使って思い切り投げた。
「ぐはぁ……!」
投げ飛ばされた秋斗は壁に激突して目の前が一瞬真っ暗になった。そして、前を見るとドウェルグが竹刀を振り降ろそうとしているのが見えた秋斗は咄嗟に竹刀を上げて防ごうとしたが、ドウェルグは
「甘ぇよ」
防御の竹刀ごと秋斗に竹刀を叩きつけた。もろに受けた秋斗は失神こそしなかったが、床に膝を着いた。
「どうする、続けるか?」
ドウェルグの勧告に秋斗は首を縦に振った。
「……参った」
「勝者、ヘグニ=ドウェルグ!」
審判をしていた部長が勝負の終了を宣告すると、マレウスがドウェルグに近付いた。
「彼、結構才能あるみたいね。流石はヴァルキュリアとレオンハルトの弟子ってところね」
「まぁな。俺とはタイプが違うが、かなりの腕前だった」
ドウェルグの剣術はパワーで押し切るのに対して、秋斗の剣術はスピードを重視しつつ、カウンターを決めるといったスタイルをとっている。今回は秋斗のスピードがドウェルグが対応可能な範囲だったので秋斗が敗北した。
ドウェルグとマレウスが話していると、回復した秋斗が会話に加わった。
「完敗だ。まさかあそこまで差があるなんて」
「いや、速さは大したもんだったぞ」
「普通の人なら完勝出来るんじゃない?」
「はは、でも櫻井さんやベアトリスさんには全く通用しないけどね……二人は櫻井さんとベアトリスさんを知ってるのか?試合前に二人の名前に反応してたけど……」
ドウェルがどう説明したらいいか悩んでいると、マレウスが秋斗に説明した。
「私の知り合いよ。ドウェルグは会ったことないけどね。名前だけは教えていたから」
「へぇ~世間って意外と狭いんだね」
マレウスの説明で秋斗は納得した。三人が部長に挨拶して剣道場を出ていこうとすると、箒が出口に立って秋斗を睨んだ。
「秋斗、篠ノ之流はどうした!お前の剣はあんなものではなかっただろ!」
秋斗は篠ノ之の道場で剣道と篠ノ之流剣術を少し学んだ。
「篠ノ之流は俺には合わなかったんだ。今のは近所に引っ越してきた人に教えてもらったものだよ」
体術もだけどね。と秋斗が告げると箒は唖然とした表情をうかべた。箒には自身と一緒に練磨した剣術が近所の人間のものに負けたことが信じられなかった。
「それじゃあ」
秋斗は箒の横を通りすぎて剣道場を出た。ドウェルグとマレウスもそれに続いて剣道場を出ていった。
(何故だ……何故秋斗は篠ノ之流ではなく訳の分からん剣術を使う……秋斗に剣術を教えた奴が悪いのか!そうだ!秋斗には千冬さんと同じ篠ノ之流が相応しいんだ!……待っていろ、私が正しい道に戻してやる!)
ドウェルグ達が出ていった後、箒は自分勝手な決意をしていた。
「あ!此処にいましたか」
剣道場を出た三人の前に真耶が走ってきた。どうやら三人を探していたようだった。
「どうしたんですか、山田先生?」
「寮の部屋の鍵を渡し忘れてました。これがそうです。」
鍵を出した真耶に秋斗は疑問を思った。
「一週間は自宅から通学と聞いていたんですけど……」
「それが……寮の方が警備しやすいとのことで……政府から聞いていませんか?」
最後の方は秋斗にだけ聞こえるように耳打ちした。秋斗は聞いていないと首を横に振った。
「そうですか……これが織斑君の部屋の鍵です。部屋の番号は1025ですので間違えないでくださいね」
真耶は秋斗に部屋の番号が書かれた鍵を渡した。そしてドウェルグの方を向いた。
「ドウェルグ君とシュヴェーゲリンさんははずれの教会でいいんですよね?」
「はい。要望を聞いていただいてありがとうございます」
ドウェルグは学園に入学する際、寮ではなくはずれにある教会にマレウスと一緒に住むことを要望した。
IS学園には世界各国から生徒が集まる。よってそれぞれの宗教に配慮した構造になっていた。教会はそれの一環として建設されたが、つい先日に管理人が定年退職してしまい、誰が管理をするか話し合われていた。ドウェルグは教会を管理する条件としてマレウスとの同居を学園側に持ちかけた。学園側は最初は渋ったが、急遽管理人を見つけることが難しいと判断してドウェルグの要望を承諾した。
「ちょっと待ってください。俺はドウェルグさんと同じ部屋と思っていたんですけど……もしかして、同居人は女子ですか?」
男同士、同じ部屋になると思っていた秋斗はドウェルグと真耶の会話に驚いた。真耶は申し訳なさそうに頷いた。
「同居人が誰だか分かりますか?」
秋斗にとってそれは重要なことだった。入学初日から精神的にストレスがすごいことになっている秋斗にとって自室は正にオアシスと言っても過言ではない。同居人が女子というのはこの際抜きにしても、親しくない人と同室になった場合、一週間も持たないと秋斗は思っていた。
だが真耶が告げた名前は秋斗にとって最悪のものだった。
「確か……篠ノ之さんでしたよ。昔からのお知り合いでしたよね?」
箒の名前を聞いた秋斗の表情がみるみる死んでいった。更に追い討ちをかけるようにカバンを持った千冬が三人の前に現れた。
「貴様ら、まだこんな所にいたのか。さっさと自分の部屋に戻れ」
「織斑先生、俺は自宅から通学するものだと思っていたので荷物がまだ自宅にあるんですけど?」
秋斗は学園に持っていく私物を纏めてはいたのだが、まだ学園に持ってきてはいなかった。今秋斗が持っているのは教科書やノートの勉強道具と財布だけだった。
「お前の荷物はここにある。着替えると携帯の充電器くらいしかないが……後は購買で揃えるか週末に取りに帰れ」
そう言って千冬は持っていたカバンを秋斗に渡し、秋斗は落胆した表情でそれを受け取った。態々リビングに纏めた荷物ではなく自室に置いていたバックを持ってきた千冬に内心うんざりしていた。
「(千冬姉さん……リビングのスーツケースを持ってきて欲しかったよ。このカバンって確か使おうと思ってリビングに出しておいたけど、中身は入れてなかったような……ってことは勝手に部屋に入ったってことか)ありがとうございます。」
秋斗がお礼を言うと千冬は満足そうな表情で何処かに行った。真耶も千冬を追いかけていった。
「……まぁなんだ、ドンマイ」
「思春期男子には足りないものがあるわねぇ~例えばぁ~そうね、Hな本とか」
「いやいや、そんなもの持ってこないよ!」
「持ってこないってことは持ってるってことよね。いや~ん」
「ちょっと待ってよ!」
マレウスは秋斗をからかうとスキップしながら教会に向かった。
「すまねぇな」
「いやいいよ……暇があったらまた手合わせしよう」
「とりあえず一週間後の決闘が終わったらな」
ドウェルグと秋斗は再戦の約束をして各々の目的地に向かった。
「此処か……ちょっと小さいな」
学園のはずれの教会を見たドウェルグはそう呟いた。教会の大きさはあまり大きくなかった。
「さて、アンナは……いたいた」
マレウスは教会の扉の前で待っていた。教会の鍵はドウェルグが持っていたので先に来たマレウスは教会に入れなかった。
「遅いわよ~」
「すまねぇ、今開ける」
ドウェルグは鍵を取り出して扉を開けた。扉を開けた先は礼拝堂だった。そしてまず目にうつったのは奥にある十字架で、その横に扉が三つあり、二つが二人の寝室になっていて、もう一つはシャワー室になっていた。
「まぁ今日のところはさっさと寝るか。掃除は明日でいいだろ」
ドウェルグはそう提案すると、自身の寝室に向かった。だが
「なぁアンナ」
「なぁに♪」
「何で俺の寝室に着いて来るんだ?」
「だって一人じゃ眠れないんだもん♪」
マレウスがドウェルグに付いて彼の寝室に入ってきた。しかも
「じゃあ早く寝ましょ?」
いきなり服を脱ぎ出した。ドウェルグは顔を真っ赤にしてマレウスを止めようとしたが
「おっと♪」
逆にマレウスがドウェルグをベッドに押し倒した。
「おい!アン……っ!」
マレウスはドウェルグの唇に自身の唇を重ねた。
「どういうつもりだ?」
「入学祝いよ……今夜は寝かせないから、覚悟しなさいよ♪」
ドウェルグは溜め息をついたが、その顔はまんざらでもない表情をうかべていた。
翌日、二人は寝坊して危うく遅刻しかけた。
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