ガンナーは神と踊る   作:ユング

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*最初からオリジナルばっかなので、オリジナル展開タグ付けました。オリジナルに対して憎しみにも似た感情を持つ方はご注意ください!それと、話が進まないのは仕様です
仕方ないね!

ではどうぞ


第十一話

甘粕冬馬は未曾有の事態に頭を抱えていた。一体誰がこのようなことを想定していたというのか。しかし、やらずにこのまま事態を眺めてしまえば被害はさらに甚大なものとなってしまう。

 

龍脈が乱れた。昨晩、仕事も一息つきさぁ帰って寝ようとしたとき、そのような報告が登ってきた。龍脈が乱れたと軽く一言で済ましてしまってはいるが、これはほうっておくには少々大きすぎるものだった。龍脈の乱れは天変地異を起こす。程度にもよるが、それは明らかなものだ。だから、地元の呪術師たちと協力してその乱れを正そうと大規模な儀式を行おうとしていたのだ。だが、ここで思わぬ事態となる。

この乱れに呼応するように、各地に散らばっている『大太』の封印が解けそうになったというのだ。結果的にはすぐに収まったが、問題はここからだ。

 

「これは少しばかり洒落にならないですねぇ」

 

術を用いて遠くからその様子を見ている甘粕は絶句してしまう。閉ざされた森の中、闇に蠢くそれらに。

怪異だ。目覚めかけた『大太』の、国土神達の力が漏れ出し、日本中で様々な怪異が現れたのだ。日本にて古くから語られる妖怪の姿、力を受けながら、それら妖怪とは異なる存在。それらが、創造主たる神々の封印を解くべく動き始めたのだ。厄介なのは彼ら僕使と呼ばれる存在には元となった妖怪の撃退法が通じない点にある。要するに力づくで滅する必要があるわけだが……。

 

「この数は尻尾巻いて逃げ出したくなるレベルですねぇッ!」

 

背後から飛び出してきた影に合わせて、蹴りを入れる。カウンター気味に入った蹴りで影が吹き飛ぶのを確認した甘粕は、すぐさまそこから離れる。全力で駆け抜けるッ!

一歩遅れて、様々な影が彼を追うように飛び出してくる。

奇妙な姿をした連中であった。姿形こそ妖怪だ。大常・小常やべとべとさんといったマイナーどころから有名どころまで様々いる。だが、その体を構成しているのは機械のようなものであった。妖怪に似つかわしくない、機械の体。まるでロボットだ。見えるだけでも数十体。これだけの数に囲まれるのは流石に圧巻だ。

 

「田ぁおカエセェェェエエ!」

「まぁ給料分の働きにはなるんですがねー」

 

襲い掛かってくる敵を適当にいなしながら、時に呪術を巧みに使い、静かに、そして鮮やかにその場から離れていく。その身のこなしは忍者もかくやというべきものだった。彼が上司にマスターニンジャと揶揄されるのも頷けるというものだ。

 

かくして、その場から逃げ出せた甘粕は上司に事態を報告する。だが、恐ろしいことに怪異の問題はここだけではない。他にも数箇所、県を跨いで怪異は出現している。これを収める間にどれだけ被害がでてくるのか。幸いなのは、怪異だけならまだ呪術師たちだけでも何とか対処できることだが、さもなければまつろわぬ神達の一斉蜂起も起こりうることを考えると、迅速に動かなければならない。これからしばらく忙殺されることを考えると頭の痛くなる甘粕であった。

 

 

 

 

「さっさと起きるのじゃ!」

「ぐぉっふ!?」

 

ズンッ……!

腹部に乗せられた衝撃により俺は目を覚ました。その衝撃はすぐさま波紋のように体全体へと伝わっていき、俺の意識は強引な覚醒を余儀なくされた。一体何が起こったというのか。

衝撃にむせるなか、俺はおなかにかかる謎の重みの正体を確かめるべく、目を向ける。そこには幼馴染が座り込んでいた!なんていうこともなく、ツッキーの極めて鋭い肘が突き刺さっていた。通りで息が苦しいと思った。

 

「うげっ、なんとも不愉快な眼をしておるのじゃ」

「げっほ……ひ、人に奇襲しかけておいてごほっ……それはないんじゃげほげほ……ないか?」

 

呼吸が乱れすぎていてしゃべりにくいが、言いたいことは言えた。少しずつ呼吸は収まっていくが、酷い目にあった。まさか目覚ましにエルボーくらうとか欠片も思いもしなかった。斜め上を行くツッキーには恐れ入ったよ。ってあれ?

 

「ツッキー?」

「なんじゃ?」

「俺の目、怖くないのか?」

「怖いというよりきもいじゃな」

「きもい!?」

 

そんな風に言われたのは初めてだ!いつもなら阿鼻叫喚の嵐を作り出す俺の目を前にして平然としているツッキーに俺は驚いた。どんな鋼の精神力をしているんだこいつは!

「……なるほどのう。それが妾を助けた時に使った貴様の力の正体か」

「!」

 

なんか言い出した!?

 

「隠しても無駄じゃ、妾は時すらも観測する神ぞ。その程度のこと分からないはずがなかろう!……思っていた以上におぞましい力じゃ。そんな状態で平然としている貴様の正気を疑うぞ?」

「……酷い言い草だ」

 

まぁ、俺の負倶帯纏(コンプレックス・コンプレッサー)に限って言えばそうだけどな。

負倶帯纏は特典ではなく、生来のものだ。この力はあらゆるものを圧縮するというなんとも物騒な力だ。そういう意味では、おぞましいと言われても仕方がないのかもしれない。それにこの力、中々制御し辛い上に、常時発動している。ちょっと気を抜くと周囲のものを容赦なく圧縮してしまうから困る。一回やらかしたことがあって、それ以来意識して限界まで抑えているし、使うときは力を釘の形にして使っているからよほどのことが無い限り暴走することはないと思う。

 

けど断じて俺のこの凶眼とは関係はない!ツッキーの知ったか入りましたーッ!でも俺はあえて突っ込まない。その勘違いを胸中でによによと笑ってやる。

 

「神様(笑)」

「?なんか言うたかの?」

「何も」

 

目の前で首をかしげている彼女の顔を見て思う。うん、何処にだしても立派に恥かしいアホ面だ。これを見てると昨晩のことがあやふやになってくるな。本当にあれは現実だったのだろうか?

考えてみると、お月さんとツッキーで違いがあまり無かったりするのかもしれない。なんていうか、ノリがツッキーと対して変わらない気がする。なんとなくだけど。二重人格とはいえ同じツッキーだからかな?

 

「どうしたのじゃ?妾の顔をまじまじと見つめて?ようやく妾の虜になったのか?」

「ないない。片腹痛いって」

 

……ま、でもこうやって平然としてくれるのは若干、いや正直涙出るほど嬉しいけどね。案外本当に神様だったりしてな。なんて戯言を呟いてみる。俺だって冗談を言いたくなるときはあるのさ。即答されたことに腹立てたのか、ツッキーが無言でぺしぺし叩いてくるが、痛くもかゆくもないので好きにさせる。

 

それにしても、自宅謹慎をくらっている以前に今日は休日、起きてもやること無いんだよなぁ。……顔洗うか。

 

 

 

 

 

さて、こうやってツッキーに起こされてしまったわけだが、しかし休日をはさんでもしばらく学校に行く必要もないため何もすることがない。そうなると今後どう暇を潰すかが問題になってくる。

復帰した時に遅れないために勉強するにしても、あんなことがあったのでは身が入らない。というかやる気でない。こうなるとどう暇を潰すか迷ってしまう自分の趣味の無さに愕然としてしまう。

ツッキー誘って遊びにいくか?謹慎中の身だけど、近く散歩するくらいなら別にいいだろうし。いやでも、罪悪感が半端ない。だが、暇だ。

娯楽と呵責、どっちを優先すべきか。

 

そういえば、ツッキーといえばだ。何故月読尊なんだろうか?

月読尊。寝る前にツッキーが名乗る名前しかしらないその神について調べてみたところ、驚くほどに情報が少なかった。何故そんな名を名乗るのか不思議なほどに月読尊には活躍がない。面白い説は色々とあるんだけど、彼女の姉であるアマテラスや弟であるスサノオノミコトの方が逸話に比べると、ね。

というか、月読尊って男説が浮上しているんだけど、ツッキー実は男の娘なん?あの少しだけ自己主張している胸を見るとそう信じたくないのだけど。神話の中の話だし実際は性別に関しての描写が一切ないようだから、女であってもおかしくないとは思うけど。どこかで、月は陰性、すなわち女を象徴すると聞いた事があるし。でもそうすると陽である太陽は男になってアマテラスが女であることに矛盾が生じるわけだけど、そうなると実はアマテラスは漢女だったりするのかな?ふわりとした衣装を纏った筋骨隆々な漢女の姿が脳裏をよぎる。……深く考えるのはやめよう。にわかにとってこの問題は難しすぎる。

 

話は戻って、昨日直接何故ツッキーはツッキーなの?と聞いてみたけど、その時に馬鹿を見る目で見られたので直接聞くことはしたくない。けれど、気になる。よってその理由を推測するとして、遠回しにいくつか質問してそこから考えていこうと思う。早速、リビングでシロとクロと戯れている彼女に聞いて見る。

 

「ツッキーには兄弟がいるのか?」

「急になんじゃ?…まぁいるがの。姉と弟がな」

「兄弟仲は良かったりするのか?てか、ここにいて心配とかされたり」

「…ふん、あんな引きこもりと野蛮人のことなどどうでも良いのじゃ!」

 

あ、察し……。これは駄目だ。明らかに地雷を踏んだ気がする。どうも兄弟仲は良くないと見える。そして、苦労しているようにも見える。不機嫌になった彼女をどう宥めようかと考える傍ら、ツッキーが月読尊を名乗る理由が色々見えてきてしまった。

日本神話と同じような家族構成と二重人格、そして普段の言動。つまりはそういうことなんだろう。俺はそれ以上自分の中で追求することはやめた。ツッキーはツッキーなのだから。この話題はもうやめにしよう。

 

折角のいい天気だし、気分転換に散歩にでも誘おうかね。ご機嫌取りと暇つぶしも兼ねて。

 

「ところでツッキー、今から外出するのだが一緒にいくか?」

「断る。妾は今愛でることに忙しいのじゃ」

 

そういってシロとクロの喉を掻くツッキー。こちらに顔を向けずに、この即答である。なんというでれでれした横顔。所詮俺のお誘いは子猫に比べれば塵も同然なのさ。喉をごろごろ鳴らす2匹を横目に、俺は空しい気分になった。

 

「というか貴様、じたくきんしんとやらで家を出てはいけないのではなかったのか?」

「家にいても暇だし、母さんもいるから何か連絡あっても大丈夫。バレなければ問題ない」

 

とはいっても、俺悪い意味で目立つからばれる可能性が高いけどね。だから行くとしたら家周辺になるわけだけど、そうなると行く場所は限られてくるな。

 

「タロ、どっか行くのならついでに頼まれ事されてくれないかしら?」

「買い物とかなら嫌だ」

「届けてほしいものがあるのよ。これなんだけど」

 

そういって手渡されたのは、紙袋であった。袋には古臭い本が色々と入っていて、結構な重さになっていた。

 

「一朗さんから借りていた本なのだけど、返そう返そうって思ってもなんだかんだ忙しくてついつい先延ばしにしちゃったのよ。代わりに返してくれないかしら?」

「任せろ」

 

一朗さんの名を出されてしまったらしょうがない。あの人は俺にとって神様みたいなもんだからな。いや、どちらかといえば仏様か?

 

「一朗とは誰じゃ?」

「神様です」

「妾を差し置いて定命の存在が神を名乗るか!そのような不届き者、妾が成敗してくれいたッ!?何をするんじゃ!?」

「余計なことはしなくてよろしい。それに俺が勝手に崇め奉っているだけだから。ツッキーも会えば気に入ると思うぞ」

「ほぅ?ということは真の神たる妾のことはそれ以上に敬っているということじゃな?」

「んなわけあるか、このすかぽんたん」

「ええいっ!そこになおれぇい!今一度神の何たるかを教えてやるわ!」

 

ぎゃーぎゃー喚いているツッキーは無視して、出かける準備を進める。上着よし、鞄よし、携帯よし、財布よし、腕時計よし。

 

「ならば!」

 

俺が準備している横で、顔を真っ赤に染めたツッキーが急に立ち上がる。

 

「お主がそこまで言うその一朗とやらを妾が見定めてやるわ!」

 

一朗さんに興味を持ったようです。そう宣言するや否や、彼女はクロとシロを肩に乗せて、準備万端といわんばかりに玄関へ駆けていく。どうやら一緒に来るみたいだ。なら、一朗さんにあってその垢抜けっぷりを存分に味わうといいさ。

 

「いいの?ツッキーちゃんも一緒に連れて行っても?」

「?何か悪いことでもあるのか?」

 

別に何の問題もないと思うけど、俺の気付いていない何かがあるのだろうか?

俺の純粋な疑問と裏腹に母さんがなにやらあくどい笑みを浮かべていた。一瞬悪魔の尻尾のようなものが見えたような見えなかったような……?母さんが何か含んだような表情が妙に癪に障る。

 

「一朗さんはまぁ年が年だし大丈夫だとは思うけど、護堂君ならどうでしょうねぇ?」

「何の話か分からないんだけど……?」

「あらあら、分かっているくせにこのこのぉ」

 

意味不明なことを言ってこちらを小突くのはやめてくれませんかね、マイマザー。地味にウザイのだけど。

 

「ツッキーちゃんを護堂君に取られないようにしっかりキープしておくのよ?」

「……別にそんなんじゃないんだが」

 

ようやく言わんとしていることが分かったが、別にツッキーはそんなんじゃない。一緒にいて楽しいし落ち着く相手ではあるけど、母さんが思っているようなことは一切ない。そのことを分かりやすく伝えたが。

 

「まぁそういうことにしておいてあげるわ」

 

そういって取り合ってくれなかった。結局ツッキーから早く案内せいと言われたため、誤解はそのままになってしまったが、まぁいいか。

 




この辺りから足洗い邸のキャラを出していきたいと思います。
今のところ読んでの通り神様関連だけですけどね。

日本神話ややこしいの……
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