ガンナーは神と踊る   作:ユング

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色々と急展開。
まだ個人的に気に入らないところとかあるので機会みて改編していきたいと思います。
てわけでどぞー。
それと裏なのは仕様です。


十九話裏

日本は平和ボケしている。そう評価されるほど、日本は平和だ。

日本で紛争地帯のニュースが流れても、他人事。いや、たとえ身近に事件があっても、それが事故であっても、当事者にならない限りそれは他人事の範囲なのだ。

自分は大丈夫などと根拠ない自信がどこからか来る。それが日本という国の悪い特徴である。しかし、そんな日本が、ひっそりとまるで水が染み入るように平和が崩されようとしていた。

 

ここ最近、原因不明であるが日本の各地で海面が徐々に上昇していることが報道された。場所によっては砂浜を飲み込んでいたり、海の状態も荒れていたりとあまり良好な状態ではないが、それ以上に別のところでは低下しているという報道が注目を浴びていた。まるで、その分が日本へと送られているようであり、その怪奇現象に娯楽に飢えている人々は色んな意味で沸き立つ。地球温暖化などでその危険性が十分に伝えられる中で、その報道は人々の不安を煽り、一方ではそのうちなんとかなるだろうとそんな楽観的な思考もまた溢れていた。海岸近くに住む人間は、間近でその影響を見ているだけに心穏やかではない。日本本土から離れた小島もいつの間にか姿を消しているのだという話もあり、海面上昇に対する日本人の反応は場所によって温度差があるという。

 

だが、それだけではない。

 

全国の動物達や昆虫達がここ数日急に生息場所を移動し始めたのだ。どこを目指しているのかは分からないが、草食動物肉食動物例外なく、まるで何かの意志に導かれるように移動し始めている。魚類もその例外ではなく、普段東日本で見るはずのない魚がみられたりするということも多々あった。その弊害は近隣の市町村に大きく現れており、どこもかしこもその対処に忙殺されていた。それでも動物達や魚達は移動をやめない。人の住処を横切るように移動をする。その姿は追い立てられるようなものでもなく、まさしく移動であるといえた。そしてそれは、猫や犬が地震前に騒ぎ始めるように、もしや天変地異の予兆ではないかとTVで取り上げられるほど、目立っていた。

 

だがそれだけではない。

 

この数週間の間に、犯罪が急激に増加していることが報道された。万引きや盗み、傷害、恐喝、果ては露出狂まで出ているという。その全ての犯行は月が昇ってから深夜にかけて行われているおり、しかも毎日絶え間なく起こるため警察各所はコレまでにないほどの負担を強いられていた。ネットでは『警察が本気すぐるwwwww!あ、給料泥棒脱却おめっとさんでーす!』『警察さんちすちーっす』『警察が働いている…だと…?給料泥棒脱却をお祝いします』『天変地異の前触れか!?給料泥棒脱却おめでとうございます』などと祝福の嵐であったが、負担を強いられている身からすれば溜まったものではない。幸い殺人や放火といった大きな事件はまだ無いが、時間の問題ではないだろうかと不安は尽きない。

 

だが、それだけではない。

 

ここのところ、全国で妙な噂が絶えなかった。ある場所では熊のようなでかい鼻(?)に挨拶された、またある場所では気味の悪いロボに襲われた、これまたある場所では百鬼夜行に連れ去られたなどと、いわゆる怪談の類であったが、そういったマイナーな妖怪から有名な妖怪に襲われたというような話が連日連夜、ネットやメディアを通して広まっているのだ。最初は笑い話であったその被害報告は、日が経つごとに急激に増えていき、だからか人々はその異常性に疑いを持ち始めていた。もしや本当なのかと?

 

だけどそれだけだ。

こんなことばかりが、報道され、ネットでもお祭り状態になっていても。

日本で何かが起きようといると誰もがそう感じ取っていたとしても。

そんなことよりも、草薙護堂にはもっともっと重大な事があった。

 

(どこに行ったんだ……兄さん)

 

彼が兄と慕う田中太朗が、ここ数日行方不明になったのだ。事件や噂が登り始めた時期と丁度重なるようにして。だからこそ思う。彼はまた何かに巻き込まれたのではないだろうか?太郎の両親はそのうちひょっこり帰ってくるとのほほんとしたものだが、護堂は妙な胸騒ぎを感じていた。

 

(いや、大丈夫だ。兄さんだから大丈夫だ。球磨川もなんとか追い出したし、もう心配事は何も無い。兄さんさえ戻ればいつも通りの日常に戻るんだ。球磨川が最後に言っていたことは気になるけど、所詮はあいつの言っていたことだから問題ない。だから、ただの杞憂。心配することなんて……)

 

だが、そういった不安は得てして考えれば考えるほど増大していくものだ。それは護堂とて例外ではない。さながら虫が果実に巣食うように、じゅくじゅくと彼の心が締め付けられる。何より、護堂には何か引っかかるものがあった。

何かを忘れているような、いや、見落としているようなそんな違和感を。

 

「草薙さん」

「万理谷さんじゃないか。どうしたんだ?」

 

放課後、教室に残る生徒もまばらである中、護堂の元を訪れる人がいた。思考を中断して顔を上げた先には最近知り合った同級生、万理谷祐理。少し前に一緒にカラオケに行き、彼女について裏のことも含めて知った。最初は慇懃であった彼女も今では態度も柔らかく、それなりに関係を結べており、時折こうしてこちらの教室に来てくれたり、最近は途中まで一緒に帰ったりしているほどだ。その都度、クラスメイト(主に男子)から嫉妬と殺意のこもった目で見られたり、妹の草薙静花にジト目で見られたりするが、居心地が悪くても、それを意図的に無視できる護堂は、流石というべきか、図太い神経をしていた。

しかし、今日はかなり焦っているようで、義理人情に厚い護堂はそんな彼女のただならぬ様子を見て、何があったのかと事情を聞く。急いできたのだろう、その白い肌には珠のような汗を浮かべ、彼女は頭を垂れる。

 

「あなたの……王たる御身のお力をお貸しください!どうか、馨さん達を助けて……!」

 

返ってきたのは彼を再び非日常へと引き込む嘆願であった。動揺からか途中から言葉にならず、それだけにその必死さがよく伝わった。

図らずも、彼の悩みの答えが、向こうからやってきたことに気が付くのはそれからしばらくしてからのことであった。まずは。

 

(草薙の野郎……俺達の聖女万理谷様に頭を下げさせてやがる!)

(どう落とし前をつけてくれヨウカナァ……)

(ただでさえいつもいつも擦り寄っているのが目に付くのになぁ!)

(誰か親衛隊に連絡を。その間に俺達はアイツを捕えるぞ!)

(アァ……ソレハイイ……。イヤ……ソレガイイ……)

「なんだよ、お前らっ!?」

 

ここから逃げ出すことを優先しなければならない。

じりじりと包囲網を敷いていく、先のとんがった覆面を被る不気味な集団から、祐理の手を引いて逃げる護堂。それが火に油を注ぐ行為であることに気が付くのは一体いつになるのか。

 

命を懸けた学園脱出の幕が今上がる!

 

 

 

 

『彼』と大太教の接触。これによって彼らの間には繋がりがあることが証明されたが、そんなことよりも驚愕に値する報告があった。

『彼』は大太の一部を自分に取り込んだ上で活動しているというのだ。一体何の冗談だと誰もが思った。

想像してみてほしい。コップがダムに溜めた水を受けることができるだろうか?

神の力というのはそういうものだ。たとえ、大太の一部となって本来の力の何割かを削がれている状態の中、神としての名とは別の『名』を与えられてさらに力を落とされた神であっても、その力を取り込むというのは自殺行為どころか、己の魂すら消し飛んでしまうほどの自滅行為だ。成功するはずのない事象であって然るべきなのだ。

だが、『彼』は受けきった!ダムから降り注ぐ何十トンもの水をコップで受け切ったのだ!それが冗談ではなく一体なんだというのか!だが、それが現実!

 

「これは考えられる限りの最悪の事態って奴かな?」

「目的が見えてきませんが、本当勘弁してくださいって感じですな。もしこれ以上に最悪なことが起これば辞表出してどこかへ逃げますよ、えぇ」

「例えば?」

「たとえばヨーロッパあたりの神が襲来する……とか」

「あはは、ただでさえ手一杯で問題も解決できていないのに、そんな事態になれば日本は終わることはなくても、日本史上最悪の被害になりそうだね」

「もはや発狂もんですよねー。いっそ祐理さんの報告に上がった若い王様に丸投げしたくなります」

「つい最近なったばかりの王様に現状を対処できるか凄く疑問だけどね。しかも祐理いわく本人は内面的に普通の人らしいし」

「彼らには常識が通じないと聞きますけどねぇ。でも一歩間違えれば日本滅亡フラグですか?」

「そうならないように足掻くのが僕達の仕事だろうに」

「そりゃそうですな」

 

今二人がいるのは大太の一部が封印されているとある山村。

外からほとんど隔絶されており、その村の住人は皆封印の監視者である。今はその姿は見えないのは、とある理由によるものだが、置いておこう。山村部なだけあって、少々冷たい風が二人の身体に巻きつく。着込んでなければ体が縮こまったことだろう。

あははーっと軽口を叩き会っている二人だが、しかしその朗らかな会話とは裏腹に、いつ何が起こっても対処できるように体には力を張り巡らせていた。二人は知っているからだ。今『彼』がこちらに向ってきている事を。故に二人に油断はないし、隙も見せていない。とはいっても、馨は非戦闘員であるため半ば甘粕に護られる形ではあるが。せめて心構えだけでもということだ。二人が待つこと数分、それは聞こえてきた。

ガサリガサリと踏みしめる音。まるで隠す様子もなく、迷いのない足取りで堂々としたものだった。近づいてくるにつれ、空気が押し潰すそれへと変質してゆく。周囲一体がのしかかるような錯覚を覚える二人だが、それに耐え来訪者を待つ。ガサリガサリと音がする。

一歩一歩いっそ丁寧なほどに草木を踏み潰しているのだろう。目の前を遮る障害物を押しのけて道を作るためにしては、無駄に力を込めているようであった。

風の音が止む。まるで空気すらも押し潰されたかのように。

ぞっとするほどの静けさが場を支配する。ただガサリガサリと踏みしめる音だけが響く。ガサリガサリ……。

やがて、木々の間からぼぅと滲み出るように『彼』が現れた。軽口もほどほどに、彼女達は『彼』へと話しかける。

 

「君がここに来るのはおよそ考えられる可能性の中で最も低いと考えていたんだ。考えた結果それだけは無いと思ったほどにね」

「いっそ賭けにしようかって話もありましたからね」

 

『彼』は反応しない。ただ二人の様子を自然体で近づいてくるだけだ。警戒すらしない。舐められたものだと思うが、それが当然。それだけの彼我の差が二人と『彼』の間ににはあるのだから。一歩一歩近づくたびに、世界が悲鳴を上げる。空間が歪むように、引き裂かれるように、ただただ重苦しく、耐え難い威圧に圧倒される。第三の手であるもう一つ右手が『彼』の周りをひらひらと飛んでいた。大太の右手である。苦もなく、まるで自分の体の一部のように扱っている様子から、やはり『彼』はその力を取り込んだのだと改めて思い知らされる。

それでも二人は慌てることも無く、ただ冷静に相対していた。

 

「全国が慌しい中で、ここに人手を割くなんて出来るわけないからね」

「手薄もいいところですな」

 

二人が軽口を叩く理由は二つ。一つは言うまでもなく冷静であるため。状況は芳しくないが、たとえ相手が圧倒的であっても、こちらが乱されるようではどんな場だって乗り切れないのだ。まずは自分のペースを保ち、流れをこちらに引き寄せる。

 

「でも常に最悪は考えておくべきだって今回の件で身に染みたよ」

「まだまだお若いんですし、馨さんなら次に活かしていきますよ」

「というわけでここは引いてくれないかな?正直今の戦力で君と戦うのはちょっとなぁなんて思うわけで」

「……悪いが」

「だよねー。とすると僕らは必然的に戦わないといけないわけど」

 

そしてもう一つは――――。

 

「残念だけど僕達の勝ちだ」

 

その宣言と同時に、『彼』の足元が青白く光り始めた!甘粕は馨を抱えて一気に後方へ飛び退く。

 

「……もう少しまとめな抱え方はないのかな?お姫様だっことかさ。これでも僕は女なんだけど」

「あっはっは。そんな余裕ありませんて。いつか白馬の王子様にしてもらってくださいよ。私はただのスーツのおじ様でしかないわけで」

「三点」

「これは手厳しい」

 

馨が雑な扱いに抗議している間も、状況は進む。

『彼』を中心に線が走る。線は孤を描きやがて何重もの円を作り、そして半球が『彼』を覆う。甘粕と馨の二人はその外側におり、『彼』だけが内側に残る。大きさにして直径約10mの結界に閉じ込めたのだ。

気が付けば、何十人もの人間が姿を現し、『彼』に手を向けて囲んでいた。

この地における大太の封印を護る術者たちだ。

そう、もう一つは時間稼ぎだった。

彼ら術者たちが術を発動するのに必要な時間をかけるために時間を稼ぐ必要があった。

勿論、古くから各地の大太の封印を護る呪術師たちは、当然如何なる襲撃があってもすぐさま対処できるよう色々と練っている。瞬時に対処できないようでは存在の意味がないのだ。今回だって、本来であれば一瞬で発動できる。しかし、『彼』と相対するに当たってはただの結界だけでは無意味!

 

『彼』は瞬時に状況を理解すると何かを握り締める。凄まじい勢いで木が成長し始める……はずであった。

 

「!?」

「君の生み出す力は厄介だ。こちらの術を無力化する。ほとんどの術は君の力の前では無意味だ。でも、僕達もただ手をこまねいていたわけじゃない!この結界の中では呪術は発動しない!」

 

どれほど珍しい呪術・魔術であろうとも、『彼』の力が呪力によるものである以上、対処はできる。とはいえ、このように呪術を発動させない類の結界を使うには条件がある。それは対象となる術を指定し、かつその呪術について詳しく知らなければならないということ。さらに予め場所を定めて準備をしなければならない上に、発動には時間が掛かるのだ。かなり使い勝手が悪く、使用するにも応用が効かないため、使いどころが難しいが、一度型にはまるとこれほど心強いものもない。そして『彼』は正史編纂委員会が長年監視してきた対象だ。その過程で『彼』と戦い、散っていった仲間達が少しずつ残してくれたものが今こうして報われた。

 

しかし、そこまでしても彼らは油断しない。

なぜなら本当に厄介なのはもう一つの力だからだ。あくまで封じたのは呪術であり、あの全てを圧縮する力はその限りではないのだ。呪力を使わない、彼らが『異能』と称するもの。これについても、いくらか対処は出来る。『彼』があの力を出すときは、釘を媒介にして、突き刺すことで発動させている。だから、この結界は、数十人で維持することで物理耐性を極限にまで上げており、釘は刺さらないようにしていた。そうすることで結界を崩させないようにして。

また、別の術者は『彼』の集中を阻害し、意識を乱していた。その成果があってか、今の『彼』は動きが鈍く、異能を使う様子は未だに無かった。効いているのだと、彼らは確信を深める。だが『彼』に対しては油断などしてはいけない。一番の対処方法は発動される前に押し切ること。よって、術者たちの動きは迅速であった

まるで彼の魔王たちを相手取るように、その場にいる者達は『彼』を扱っていた。大太の力を取り込んだ時点で、それだけの相手だと、それほどの相手であると誰もが認識しているからだ。

 

「正直な話、ここへ来るなんて思わなかった。いや思いたくなかったよ。たとえ君が大太に協力して各地の封印を解きまわっているといっても、ここは、ここだけは絶対に最後にすると思っていたんだ」

 

ここに眠る大太の一部は、他のどの大太の一部よりも厄介きわまりない、最悪の化身であった。目覚めさせてしまえば間違いなく軽く町一つが滅ぶレベルだ。故にこの封印だけはなんとしても護らなければならない。

だけど、とも思った。それは大太の神たちも困るのだと。

しかし、馨は一抹の懸念により可能性の低いこの場へと自ら赴いた。それは、常人が考えはしても、実行に移さないであろうことを、『彼』なら度外視する可能性に思い至ったのだ。可能性が低いからこそ、『彼』は来る。なかば確信ともいえる予感に突き動かされるように彼女は行動を起こした。正史編纂委員会から動かせる人員は少なく、また彼と相対しても無事であるとなればもっと少なくなる。適切な人材を引き連れて、大太の封印を護る術者達と連携を見せながら、外れてほしいと願っていた。だが、現実は残酷である。予感は正しく、彼女の願いは踏み躙られ、いっそ清々しいほど堂々と『彼』は姿を現した。故に彼女は決断する。するしかなかった。

 

「君には大太の一部もろとも眠ってもらう!」

 

馨は覚悟を決めていた。大を救うために小を切り捨てる覚悟を。いくら大人びているとはいえ、まだ十八歳という年齢でありながら、人一人を断罪するという重責を負おうとしていた。彼を今放っておいたらこの先何人もの犠牲者が出てしまう。ここで仕留めなければならない。

恨んでくれて構わない。彼女はそう口に出した。いくら『彼』が悪人といえども、割り切ることなどできない。なら彼女にできるのはそれを受け止めるだけだ。

彼女は印を組み、大太に封印を施そうと呪力を練る。馨に呼応するように、術者たちも呪力を練り始め、彼女へ呪力を集める。馨が封印術の中心となり、術を束ねるのだ。この役割は媛巫女にしかできず、『彼』を前にしても冷静でいられる馨が適任であった。

 

「この心臓の秘密舎利の宝篋へ!」

「「心は心臓、秘密は悟り、言葉に及ばぬ全身舎利!」」

「「「「「多宝神たる大太羅男尊によって、加持させられたる舎利尊よ、円満したまえ、円満したまえ!」」」」」

「「「「「「「「「「「成就あれかしや!」」」」」」」」」」」」」

 

謳うように、歌うように、祝詞を唱える。最初は馨だけであったのが、一人二人と増えていきやがて周囲の術者全員が唱えていた。

結界内の様子も変わっていく。大地が、泥のように柔らかくなり『彼』を引きずり込まんとする。大地に取り込まれていく『彼』は抵抗らしい抵抗も見せずに為されるがまま。やがて彼の体は頭まですっぽりと沈みこんでしまう。

そのまま地下深くまで引きずり込まれて、夢へと誘う。そして二度と日の目をみることはできなくなるのだ。同時に結界も彼と共に沈んでいく。彼が自力で封印を解除しないようその呪術を封じるために。

力を封じ、肉体を封じ、精神を封じる。この三重の封印を以って、術は為される。彼は大太と共に、永い夢の世界へと旅立つのだ。

この上なく『彼』に有効な封印であった。

 

―――誤算があったとすれば……。

 

「フルべユラユラユ……っ!?」

 

このまま『彼』と大太の一部が封印されると思われた矢先のことであった。

 

パリンッ……

 

土が消え、ガラスが割れるような音と共に、結界も封印もあっさりと崩壊した。

一拍置いて、巨大な木が地面を押し上げて成長していく。その成長は止まることを知らず、家屋をも飲み込んでいく。

巨大な木の成長が止まったとき、その頂にはこちらを嘲笑し、見下すように仁王立つ『彼』の姿があった。

『彼』は月を背に、先刻までつけていたサングラスを外し、その凶悪な目が晒された。

その姿から、誰もが脳裏に全く同じ単語を連想した。

その単語は畏れ多く、しかし、これ以上ないほど相応しい風格を以って、『彼』という人物をあらわしていた。

 

―――――魔王、『田中太朗』ここに在り

 

誤算があったとすれば、彼の異能がこの世で最も唾棄すべきものであることに気がつけなかったことだろう。

 




最後の一文に関しては、クマさんの大嘘憑きも相当ですけどね(>ω<)
却本作り?あれはご褒美でしょうJK。なんてね。
ではまた次回!
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