ガンナーは神と踊る   作:ユング

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すみません。間違えて一回消してしまいました!
では改めてどうぞ。

この学院に七不思議は存在しない。
しかし、七不思議よりもおぞましく名状し難い存在はいる。
                              とある生徒の言葉より抜粋


第三話

友達の存在が学校生活で重要な立ち位置にあるのを、他の誰よりも自負している。きっと友達一人いるだけで、学校生活は薔薇色の体を為すことだろう。俗にいう青春である。

そうなれば、昔受けたアンケートの、学校に来る理由の答えを『勉強のため』などと心にもないことを書かず、素直に心躍るような心持ちで『友達のため』とミミズが躍り狂っているような字体で書いたことだろう。あ、でもあれマークシートだったわ。

 

人という字は支えあって出来ているとは誰の言葉だったか。

そんな名言も俺に対しては大した意味を為さず、支える人も支えてくれる人もいない寂しさを、しみじみと感じ入るしかないのである。趣深さとはかけ離れていることをここで、強調させてもらう。

 

そもそも何で俺に友達がいないのかといえば、何度も言うように生まれつき持ち合わせたこの凶眼のせいである。それも他者に人間がしていい目ではないと言われるほどの凶眼である。

だからだろう。きっとこの眼と人間の体がマッチしていないから、そのギャップが不気味で気持悪い印象を抱かせるのだ。そんな事が分かったとしても、なんとかできるはずもない。どうしようもない、お手上げだ。

 

「『やあ太郎ちゃん、今日も堅気とは思えないね』」

「・・・・そういうクマさんは可愛い顔してるよな」

 

アンニュイな気分に浸っていたら、大層失礼な声をかけられた。

人が気にしていることを。

なので、俺も同じくらい失礼に返す。

顔をそちらに向けると、そこには可愛い顔立ちをした男の子が週間少年ジャンプを片手に立っていた。

男に対して可愛い感じと表現するのは何か間違っているような気がしたが実際そうなので、何もおかしいことはなかった。

 

「『酷いよ太郎ちゃん!よくも男に、それも親友にそんな心無い言葉を言えるね!僕は親友として君に物申すよ!』」

「正しく正論だけど、先に言い出したのはクマさんだ」

「『そうだっけ?そんな昔のことは忘れちゃったよ』」

「可哀想・・・・まだ高校生なのにもう痴呆が・・・・・いや、もともと鳥頭か」

 

こんな風に俺とまるで仲良しのする会話のキャッチボールを繰り広げることのできる奴は、彼ぐらいだろう。護堂君はどちらかと言えば、幼馴染で弟的な感じだから、こんな感じではない。

 

紹介しよう。

彼の名は球磨川禊。

変態という言葉が彼のためにあるのだと納得できる程度には、そっちの方にオープンな奴だ。

上着パンツ、裸エプロン、手ぶらジーンズなど様々なエロティズムを細かいところまで追求し、追究する。

彼の手にかかれば、あらゆるものがエロスに転じるだろう。

エロのソムリエとは彼の事。

そして、それゆえに彼はクラスのみんなに避けられている。

ううむ、これほどあけすけなやつなんだから、男友達とか多そうなものだけど、何故かそういった光景を余り見ない。

実はそういうのは漫画の世界だけであって、現実ではドン引きされるものだろうか?

漫画脳乙

 

あと親友です。

え?友達いない設定はどこいった?

友達はいないけど、親友はいるっていう、でっていう。

要するに彼は友達という言葉では収まらない器なのさ。

そして彼はお互いを支えあう仲というより、肩を組んでコサックダンスを踊るような仲だ。

そして二人してバランス崩して倒れる。

そんなオチだけど、何か文句でも?

アンケート?親友のためなんて書けるか、はずかしい。あっ、あれマークだったわ。

 

そんなこんなで、だべりながら、親友であるクマさんと一緒に時間を潰す。朝早くから来ただけあって、教室には誰もいない。

 

「『それにしても太朗ちゃんは真面目だよね。毎朝毎朝早く来てさ、僕だったら到底耐えられないような生活習慣だよ。気が狂ってるとしか思えないや』」

「そうはいってもクマさんだってみんなが来るより早く来ているじゃないか。俺が真面目なら、クマさんも真面目になるが?」

「『僕がかい?おいおいやめてくれよ。僕ほど真面目からかけ離れている奴なんてこの世界にそうはいないさ。僕がこの時間に来ているのは妹に無理矢理登校させられているからだよ』」

「クマさん妹いるんだ」

「『いるよー、超いるよー』」

「へぇ、今度紹介してよ」

「『それはやめておいた方がいいかな』」

「何で?」

「『だって・・・・いや、これは言わないほうがいいだろうね。太朗ちゃんのせいで妹が発狂するなんていったら、見た目と裏腹に繊細な太朗ちゃんのことだ、きっとロープにぶらさがるだろうしね。吊り的な意味で』」

「ふー・・・・・・久々に切れちまった。体育館裏に来いや」

「『やめてよねー、何でもかんでも暴力に訴えるなんて平和主義者の僕からしなくてもとんでもない暴挙だ。そうだ!ここは平和的に話し合いで解決しようよ。人間みんな話し合えば分かるってどこかのだれかがいってた気がする』」

「突っ込みどころ満載だけど、言っていることは正しかった。それもそうか。大体俺らみたいなもやしだと、体育館裏に行くまでに倒れちまう」

「『もや・・・し・・・?君が・・・?』」

「何か?」

「『今度ググール先生にもやしについて聞いてみるよ』」

「言わんとしていることはわかるけど失礼過ぎるわ。お茶目なジョークだ」

 

何か信じられないようなものをみたとばかりに、大げさに目を見開いたあと、すぐにいつもの素敵笑顔に戻るクマさん。いや、自覚しているけど、冗談でいうくらいにはいいじゃないか。それとも俺は冗談を言うことも許されないのか?訴訟も辞さない!

 

まぁ実際クマさんがいうように、俺はもやしではない。

勿論、それには理由がある。単純に神様特典の一つさ。それだけの話だ。

だから、身体鍛えたとかではないのに、この身体は凄まじいスペックを誇っている。

何が凄いって漫画みたいな動きを可能にするところが凄い。

たとえば・・・・・・あっ、ダメだ。パッと浮かばん。まぁとにかく凄いんだ。

 

「『ところで太朗ちゃん、大事な話があるから今日の放課後、屋上に来てくれないかい?』」

「特に用事はないからいいけどクマさん屋上まで体力持つの?」

「『あはは。一度、太郎ちゃんの中の僕がどれだけ体力ない存在なのか見てみたいね』」

「え・・・やめてよね、こんな朝からそんな・・・・俺の中を見たいだなんて・・・いくら俺とクマさんの仲と言っても親しき仲にも礼儀ありって言葉が」

「そんなに頭に螺子込まれたいのなら、いつでも螺子込んであげたのに」

「ごめんなさい。もう言いません。許してください」

 

笑顔を消したマジ顔で、どこからともなく出した馬鹿でかいを突きつけてくるクマさんを見て、素直に謝る。

この顔のクマさんはいつものひょうひょうとした笑顔のクマさんと違って変な凄みがあるため、下手に逆らえないのだ。

きっとこの顔で『のいて』なんて言った日には誰もが道を開けるんだろうな。

 

しかし、いつも思うけどこんな太くてでかいもの、一体どこから出し入れしているのか。

いつ手に持ったのか見えなかったのもそうだけど、おまえ具現化系能力者なんじゃないかってくらいぽんぽん出しているのも不思議な話だ、常識的に考えて。

まぁでも『クマさんだから』で納得できてしまうのが彼の凄いところ。

クマさんは恐ろしいお方・・・。

 

「『全く。太朗ちゃんは僕に対して失礼すぎるよ。同じ見るなら、女の子に限るのさ。いつの日か、女の子一人一人に似合うパンツを選んであげるのが僕の夢さ』」

「あー・・・。とりあえず放課後に屋上に行けばいいんだな?でも、何でわざわざそこでやるん・・・はっ、まさか!?」

 

今俺は恐ろしい想像をしている。想像は想像でしかないが、僕の心のどこかがこれを真実であると告げている。

二人っきりの屋上というシチュエーション。ここから連想されることは唯一つ!!

こいつッ、俺に告白するつもりだ!!

 

「『冗談は顔だけにしてよねー。まぁ告白といえば告白だけど君の考えているようなことじゃないよ』」

「その言葉が聞きたかった」

 

で、なんでわざわざ屋上でするのかといえば、あそこが一番誰にも邪魔されない場所だからなんとか。

意味深なこの発言も、発言者がクマさんではさしたる意味はない。

 

「ん?」

「『どうかしたかい、外なんか見て?はっ、まさか有名な死のノートが!?』」

「いい年した高校生が現実と作り話をごっちゃにしちゃいけない。いいかいクマさん、あれは漫画だ。現実じゃあない」

「『ネタにマジレスされると萎えるの・・・』」

 

しょぼんとするクマさんである。

 

「それはそれとして、ちょっと用事が出来たから、行って来る」

「『ん~、僕はジャンプでも読んで友情、努力、勝利について勉強しておくよ。太朗ちゃん、ほどほどにね!』」

「任せろ」

 

何をほどほどになのかはわからんが、とりあえず頷いて席を立つ。

しん、となる教室。そして、視線が俺に集まる。

一瞬、体が強張るも、気にしないで歩き出す。

俺が学校についてから一時間は経過し、既に校内には結構人で溢れかえっていたが、だからこそ余計に静かになった感じがする。

教室から出ると、またもや静寂に包まれ、俺に視線が集まる。

そして、飛びのくように道を開けてくれた。

・・・・・・サングラスしていてもやっぱり怖いのだろうかと考えると、切なくなる。

まっ、いつものことだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

廊下にいた生徒たちは、壁に寄りかかりながらその背中を見送った。

千差万別な人間のいる世の中だ。

簡単なことで仲良くなれるようなやつがいれば、逆にどんなに接しても仲良くなれそうにないやつもいる。それでも最初は相手を知ろうとするものだ。

そんなことは誰しも理解できていることだ。

だからこそ彼らは思う。

 

――――やっぱ怖いわあいつ・・・。

 

この学院には触れてはならない存在がいる。

一人は田中太朗だ。

彼と相対した時、彼の醸し出す重苦しい雰囲気、あるいは迫力というべきものによって、ほとんどの人は萎縮してしまうのだ。そこに長身痩躯な図体とサングラスも合わされば、まず堅気には見えない。

 

誰もが言った、『彼の前に立つだけで潰されそうになる』と。

 

学校での田中太朗の評価は概ねこんな感じである。

この学院において、彼に接する人物はクマさんこと球磨川禊と後輩の草薙護堂以外にはいないといっても過言ではない。

教師ですら眼を逸らし、避けるようにして極々最低限の関わりしかもっていない。

彼が彼らに対して直接何かをしたことは一度もない。

だが、まことしやかに囁かれている、とある噂話が今の評価を作り上げていた。

 

田中太朗は極道の跡取りである。

 

無論事実無根の噂話であり、彼の家は一般家庭である。

だが、いくつかの要素によって、彼は、彼らの中で極道の跡取りにされてしまった。

 

太朗はいつもサングラスをしている。

晴れの日も雨の日もどんな日でも彼がサングラスを外した姿を見たことがない。

そして、授業の時つけていても、教師に咎められることもない。

当然、他の人がおしゃれで付けたサングラスは没収された。

彼だけが学校でサングラスを許されている理由は何なのか?

教師が彼に対して大きく出れないのは何故なのか・・・?

その不可解さが、生徒たちの想像力を加速させた。

それだけではない。

学校で流れている彼の噂話が想像を超加速させたのだ。

具体的には以下のよう噂話だ。

 

曰く、『不良に囲まれていたと思ったら、いつの間にか不良たちが泣いて許しを乞いていた』

曰く、『警察も泣いて許しを乞いていた』

曰く、『暗闇の中、お前何処でそれ買ったっていうくらい馬鹿でかい釘で誰かを刺していた』

曰く、『おい、あいつの右手のアレ、まさか銃なのか!?』

曰く、『ものすごい勢いで坂を駆け抜けていた』

曰く、『この間は森で何かごそごそしていた』

曰く、『あれ、錯覚か、奴が二人いるぞ・・・?あ、やっぱ一人だった』

曰く、『路地裏で消えた・・・?』

曰く、『赤い液体が垂れた、人一人分入りそうな袋を何個も持ち歩いていた』

曰く・・・・

 

このように彼にまつわる噂話が事欠かなかったのだ。

そして、普段のあの迫力である。

彼らが何をどう想像していったのか、わかるというものである。

極道の跡取り、田中太朗の誕生の瞬間である。

勿論そんな事実はないが、必死になって否定する先生たちの態度が逆に拍車をかけた。

生徒たちからの理解の目をされて、何も言えなくなってしまう先生たちがいることはまた別の話。

ただ、一ついえることは、実は彼が成績優秀者であることを知る人間は少ないといことである。

 

さて、ではもう一人は誰なのか?

彼がいなくなったことで、ようやく動き出す場の空気。

その場の何人かは太朗が出てきた教室に入る。

 

「『くっ、さすがネガ倉君だ。まさかあそこから、こんな熱い展開に持っていくなんて、さすがの僕も戦慄せざるをえないね・・・!』」

 

教室を入って、入り口から最も遠い右奥の机。

そこには、球磨川禊がジャンプ片手に一人汗を拭う仕草をしていた。

だが、ただ一人として彼を視界に入れようとはしなかった。

 

この男こそ、もう一人の触れてはならない存在であった。

太朗とは別に、彼についても別の意味で彼らは恐れていた。

 

何故なら、気持ち悪いからだ。

何が、とは明確に言えない。

だが、確かに何かしらが気持ち悪いのだ。

例えるなら、ゴミにたかる蛆虫の大群を見たような、そんな気持ち悪さがある。

そして、気持ち悪いものを好き好んで視界に入れようなんて酔狂な輩はこの場にはいなかった。

 

最初は、そんなこと微塵も思っていなかったが、しかし同じ空間で過ごすにつれて、その異常性に気付いていった。

あのへらへらした笑顔のしたで何を考えているのかがわからないが、普通はやらない狂気染みたことを何のためらいもなく仕出かしそうな、そんなおぞましい空気を誰もが感じ取っていったのだ。

今では誰も関わりあいたいと思わない。

どんな形であっても、あんなのと関わることになるくらいなら、なりふり構わず全力で逃げる。

あの男と関わったら、自分までああなってしまうのではないかという恐怖も、その気持ちを後押ししていた。

 

さっきも巨大な螺子を何処からとも無く取り出して、相手の顔面に突き刺そうとしていたのも狂気の沙汰だ。

そんなことしたら、スプラッタどころではない。

しかもそれを何でも無い顔して、指二本で白刃取りした太朗も絶対おかしい。

だからこそ、こんな奴と平気な顔で付き合える太朗はやはり普通ではないというのがみんなの共通見解であった。

 

幸いなことに、二人とも特にこちらに対して何かするということがない。

球磨川の方は太朗がいればおとなしいし、太朗の方も直接何かされたことはない。

だが、いつそれが崩れ去るか、そんな不安との戦いの毎日である。

願わくば今年一年、いや今日一日だけでも平和な日であるように、祈ることしか彼らには出来ない。

今日も今日とて、こんな奴らのいるクラスになってしまった自らの不運を嘆く彼らなのであった。

 




おまけ
「ねぇ聞いた?あの話」
「どの話?」
「あれよ。最近この当たりで幅利かせてた不良たちの話よ」
「それってもしかしてあれ、今までが嘘みたいに正反対に真面目になっちゃったっていう噂の・・・?」
「そう。あれ噂じゃなくて実話だったみたい。この前あいつらにカツアゲされてた知り合いが家で土下座までされたんだって!しかも、お金もバイトして返すとかなんとか」
「うわぁ。それってやっぱりまたあの人が・・・?」
「みたいよ」
「さすがは極道。一体どんな恐ろしい目にあわせたのやら」
「想像したくないわね」

こうして太郎の新たな噂は広がっていく・・・。

*球磨川さん難っ!
球磨川さんのキャラを表現しきれない自分が申し訳ない・・・。
もっと精進します。
では、また次回もよろぴく(0ω<)ミ☆
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