遠い星、小さな一歩 ~ Story of Hanayo   作:Kohya S.

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3. 嬉しい? 恥ずかしい?

 音ノ木坂学院に入学してから数週間。花陽は高校生活に慣れつつあった。

 凛ちゃんとか、他のみんなが一緒でよかった、と花陽は思う。

 廃校のお知らせには、驚いちゃったけど。でも、花陽が卒業するまでは存続するって聞いて、ちょっと安心したの……。

 

 そしてこの前のμ'sのファーストライブ。高校に入学したものの、人数も少ない音ノ木坂学院でスクールアイドルが結成されるとは花陽は考えてもいなかった。

 高坂先輩、園田先輩、南先輩、素敵だった……。

 

 ある日の昼休みの教室、花陽は凛に話しかけてみた。

「あのね、凛ちゃん、この前のμ'sのライブだけど……」

「うん、かっこよかったね」

「それでね、花陽、ちょっと興味があるんだ」

「サインでももらいに行く?」

「ううん、そうじゃなくて……。あの、花陽もμ'sに入ってみようかな……って」

「うん、かよちんなら、可愛いし、アイドル好きだし、向いてるよ!」

「……凛ちゃんも一緒に、どう?」

「凛は、ああいうヒラヒラしたのはだめニャ」

 取り付く島もない凛。

 やっぱり、そうだよね。でも、ひとりじゃ……とても無理なの。

 

        ・

 

 その日の夜。花陽は自宅でパソコンを使いインターネットの動画サイトを確認していた。今日からA-RISEの「Private Wars」の宣伝PVが配信されるのだ。

 A-RISEが画面に映し出される。ビートに合わせて踊る三人。

「うわぁ……」

 花陽の目は輝いていた。やっぱり、やっぱりA-RISEって、ううん、アイドルってすごい……。

 

 何度もPVを見直す。

 そして花陽はクッションを片付け、動画に合わせてステップを踏んでみた。

 ここで右から左に手を振って、一回ターン。観客に呼びかけるように手を差し伸べる。そしてくるっと回ってからバックステップ……。

 どすん、と大きな音を立てて、花陽はしりもちをついてしまった。

「いたた……」

「はなよー、大きな音がしたけど、大丈夫ー?」階下から母の声が聞こえた。

「……うん、大丈夫ー」と答える花陽。

 

 花陽の目には涙が浮かんでいた。それは決して痛みのせいだけではなかった。

 どんくさい花陽には、アイドルなんて無理なの……。

 

        ・

 

 翌日の放課後。

 凛は部活見学に引っ張り出され、花陽はひとり帰宅の準備をしていた。教室はすっかり人気がなくなっている。

 机の中に入れてあるμ'sのライブのチラシを引っ張り出して眺めてみた。ため息が漏れた。

 

 鞄の中のスマートフォンから軽快な音が鳴った。メールだ。取り出してみると彼からだった。彼からはあの日の夜にショートメールが届き、花陽と彼はメールアドレスを交換していた。

 メールを開く花陽。

 「A-RISEのライブ」という件名のそのメールには、二枚のチケットを手に入れたことが記されていた。末尾には「小泉も行くか?」

 

 A-RISEのライブ……そのチケットは、オークションでは数倍のプレミアが付く、ともいわれています!

 花陽はすぐに「ぜひ行きたいです」と返信。

 すると間を置かずにメールが来た。「当日の15:00にUTX高校前で集合で」

 花陽は「わかりました」と返信した。

 

 A-RISEのライブに行けるなんて……夢みたい。それにUTX劇場にも入れるんですね!

 うっとりとする花陽。しかし、しばらくしてわずかに冷静さを取り戻し、気付く。

 

 あれ、でもこれって……いわゆるデートなのかな。別に、お付き合いしてないし、友達と遊ぶだけ? あああああ、花陽、どうしてなにも考えずに、行きます、って書いちゃったのー。

 

 誰もいない教室で花陽はひとり赤くなったり青くなったりを繰り返していた。

 

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