遠い星、小さな一歩 ~ Story of Hanayo 作:Kohya S.
翌週。
花陽はひょんなことから同級生の西木野真姫の、そして穂乃果の家を訪れることになった。穂乃果の自宅で穂乃果と園田海未、南ことりの三人に改めて誘われた花陽。
アイドルへの想いは花陽の中でより一層強くなっていった。
そして凛と真姫にも背中を押され、花陽はμ'sへの加入を決断したのだった。凛と真姫も一緒に加わるという予想外の結果とともに。
その日の夜。花陽は自室から彼に電話をかけた。自分の決断を伝えるにはメールよりも電話のほうがよいと思ったのだ。
数回のコールで彼が出る。
「小泉?」と彼。
「あの、こ、こんにちは……いえ、こんばんは……」
「おう、なにか用?」
「あの、花陽……私、μ'sに入ることになったんだ」
彼は一瞬、言葉に詰まる。そしていった。
「……おめでとう」
「ありがとう」と花陽。
彼にも、背中を押してもらったな……。
「μ'sの動画、見たよ」と彼。「三人で、粗削りだけど、でもなんか、惹かれるものがあった」
彼も同じように感じてくれたんだ……、と花陽は嬉しくなる。
「あそこに小泉が入るのか」
「うん、それにね、凛ちゃんと、あともうひとりお友達も」
「へえ……星空もか。頑張れよな」
「ありがとう……」
「μ's、期待してる」
しばらく沈黙が流れた。
「じゃあ、またね」「おう」
花陽は電話を切った。
スマートフォンを抱きしめる花陽。
花陽、本当に歩き始めたんだ……。ようやく実感がわいてくる花陽だった。
・
その後、花陽たち三人に加えて矢澤にこも加わり、μ'sのメンバーは七人になった。
音ノ木坂学院の屋上、放課後。季節は春から夏に向かっていた。今日もμ'sのメンバーは練習を行っていた。
花陽はやはり運動神経については他のメンバーにかなわないようで、最初は練習についていくのもやっとだった。
しかし懸命な努力の結果がようやく表れつつあった。
「ではもう一度、最初からやってみましょう」と海未。
穂乃果を除く六人は新曲「これからのSomeday」の振り付けを練習していた。
音楽プレイヤーから流れる曲に合わせて踊るメンバー。花陽もなんとか遅れずについていく。
そして最後のポーズもしっかりと決まった。
「はい、いいですね」と海未。
花陽は昨日までどうしても遅れてしまっていたのだが、今日はうまくいった。
「花陽ちゃん、ばっちりだね」とことり。
「花陽もやるときはやるわね」と真姫もいう。
「ありがとう、南先輩、真姫ちゃん」
「かよちんやったニャー!」凛が抱きついてくる。
えへへ、ようやく足を引っ張らないで済むかな……。
「それにしても穂乃果は遅いわね」とにこ。
「なにか話があるって生徒会室に呼ばれてましたが……」海未が答える。
そのとき屋上への扉がバンッと開き、穂乃果が駆け出してきた。
「決まったよー、次のμ'sのライブ!」
「おおーっ」思わぬ知らせに皆が盛り上がる。
「近所の商店街のお祭りで、一曲、披露して欲しいって!」と穂乃果。
「やりましたね」「やったね♪」「ほ、本当ですか」「にこの魅力ね」「やったニャー」「もう、仕方ないわね」喜び合うメンバー。
「生徒会のほうに依頼があったんだって。来週の週末だよ。まあ、商店街だから、小さなイベントだけど……」と穂乃果が説明する。
「それでも七人揃って初のライブです」
「衣装も、がんばりますね♪」
にこが花陽たちにいった。
「私たち四人には初めてのライブよ。気合入れていくわよ!」
「任せといて!」
「まあ私の実力なら、問題ないわね」
「が、がんばります」と花陽も答えた。
でも、初めてのライブ……。花陽がいよいよ、観客の皆さんの前に立つんですね……。あ、なんか、もうドキドキしてきちゃったの……。
「花陽、顔、赤いわよ」と真姫。
「あ、真姫ちゃん。ライブのこと考えたら、緊張しちゃって」
「もう、花陽ったら。いつの話よ」
「えへへ、そうだよね」
今から緊張していたら、持ちませんよね。頑張って練習しないと。
それでもワクワクした気持ちが抑えられない花陽だった。
・
翌週。
気恥ずかしさもあってライブのことを彼に伝えるのを躊躇していた花陽だが、思い切って連絡することにした。
それに、結局、μ'sの活動報告ブログで知られちゃいますし……。花陽から直接、お伝えするのが、礼儀だよね。
今回は気恥ずかしいのでメールを選んだ。
近所の商店街のイベントでμ'sが歌うこと、日程と場所を書く。そしてすこし迷ったが「もしよかったら見にきてください」と書き足し送信した。
すぐに返信があった。「初ライブおめでとう」という書き出しのメール。そのあとには「必ず見に行く」と書かれていた。
彼も見にきてくれるんだ……。花陽は不思議と、緊張感や不安よりもうれしさを感じるのだった。