遠い星、小さな一歩 ~ Story of Hanayo 作:Kohya S.
ライブ当日。朝から青空が広がっていた。
街中の公園が商店街の商業まつりの会場だった。
花陽たちμ'sのメンバーは時間のしばらく前に公園に集合した。
公園の一角にはステージが設けられていた。ステージではトークショーなどのイベントが行われる。μ'sのライブもそのひとつだった。
そのほか福引きの抽選所、商店街のお店の直売所などがあり、屋台もいくつか出ていた。
会場では地元のおばさんたちが談笑していたり、子供が走り回っていたり、かなりの人出だ。
公園に着くなり「屋台に行く!」という凛。
「せめてライブが終わってからにしなさいよ」にこがあきれたようにいう。
「穂乃果ちゃんのおうちは、出店してないの?」とことり。
「穂乃果の家は、別の商店街なんだ。売り上げ拡大のチャンスなのにー」穂乃果はほんとうに残念そうだ。
用意されていた控室、というか近所のお店の一室で衣装に着替える。
「ちょっと狭いわね」
「凛、もうすこしあっち行きなさいよ」
「すぐ着替え終わるニャ」
「ことりちゃんの作ってくれた衣装、今回もいいね!」
「えへへ。ありがとう♪」
「今回はスカートではないので、多少マシですね……」
「花陽、足が太く見えないかな……」
衣装は不思議の国のアリスをモチーフにしたものだ。
花陽とことり、にこはワンピースにエプロンのアリス風、海未と凛はバルーンパンツに燕尾ベストで三月ウサギとチェシャ猫。穂乃果と真姫はベストとスカートでクイーンをイメージしている。
花陽は最初にことりから見せてもらったときから、たいへん気に入っていた。
でも……花陽だけアンクルソックスで生足なのはどうしてなの……。
公園に移動しステージ裏で待機する。
「みんな、準備はいい?」と穂乃果。
「はい、もうどうにでもなれ、です」と海未。
「き、緊張する……」
花陽にとって最初のライブだ。足が震える。
「かよちん、大丈夫だよ」凛が花陽の手を握る。
「凛ちゃん、ありがとう」
いっぱい、練習してきたもの……自分を信じなきゃ、ですよね。
「続いて地元、音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sの登場です!」
アナウンスが流れた。穂乃果を先頭にメンバーはステージに上がる。拍手が沸き起こった。
「音ノ木坂学院、μ'sです!」と穂乃果。
「音ノ木坂学院は生徒数が減って、いま廃校の危機にあります。でも、私たちは、そんな学院を救いたい!」
花陽は、つい会場を探してしまう。彼が……あ、端のほうにいます。やっぱり来てくれたんだ……。
穂乃果が続けた。
「ここにいる中学生のみんな、私たちが廃校になんてさせないから、音ノ木坂にきてね!」
ひときわ大きな拍手が上がった。
「行きます!」と穂乃果。
花陽は気を引き締めた。隣の凛とちらっと視線を交わす。
メロディーが流れ始めた。振り付けはもうすっかり花陽の体にしみ込んでいた。
『♪~♫~』
海未が歌い始めた。ことりが続く。
そして花陽のソロ。
『♫~♪~♩~』
みんなが花陽を見てます……。
『……♫~♪!』
曲が終わり全員で最後の決めポーズを取る。歓声が沸き起がった。
「ありがとうございました!」とメンバー全員で観客に向かって一礼した。
「μ'sの皆さんでした。もう一度、盛大な拍手をお願いします……」
観客の拍手に手を振って答えながらステージ裏に下がる。
「やったー、大成功だよ!」「大好評でしたね」「はい♪」「当然の結果よ」
口々に喜び合うメンバーたち。
「……」花陽はなにもいえなかった。
「かよちん、泣いてるの?」と凛。
「……花陽、嬉しくて……」
なんとか失敗せずに、ライブを成功させることができました……。
「うん、がんばったね、かよちん」
「花陽、あなた、誇っていいわよ」と真姫。
涙をぬぐう花陽。
臆病でみそっかすの花陽も、アイドルになれたのかな……。
その日はそれからカラオケボックスに移動してライブの成功を祝った。
・
その後、新曲のPV撮影も無事に完了し動画が公開された。なかなか好評らしいという、にこと花陽の報告にメンバーは喜んだ。
数日後。
花陽のスマートフォンに彼からのメールがあった。先日のライブがよかったこと、そして次の週末に花陽に会って話がしたいことが書かれていた。
お話し……ライブの感想かな。彼なら、鋭い批評がもらえそう。
花陽はぜひ会いたいと返信を書いた。