メトロンと俺   作:鈴木閣下

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つづいた・・・


カプセル怪獣と俺

地球を未知の脅威から守るべく結成された組織、ウルトラ警備隊。

モロボシ・ダンはそんな組織の一員である。

であるからして・・・

 

 

「この状況はすこぶる悪い・・・」

 

 

モロボシ・ダンはちゃぶ台に頬杖を付きながらぼやいた。

日頃の活力にあふれた姿からは想像ができないほど今の彼は弱弱しい。

といっても、最近の彼は自宅に帰ると常にこんな感じなのだが。

 

 

「どうしたんだい、ウルトラセブン。君らしくないな」

 

 

そんな彼に声をかけたのは、彼の対面に座る、赤毛の少女だった。

大きくも切れ長の瞳は凛々しく、麗人といった言葉がよく似合う。

体の凹凸は平均的だが、すらりと伸びた四肢は芸術品のようだ。

 

文句なしの美少女だ。加えて、サバサバとした性格もモロボシの好みだった。

 

しかし、しかしである。

 

 

「誰のせいだと思っている。異星人」

 

 

そう彼女は何を隠そう地球上の生物ではない。

地球を侵略するためにやってきた異星人、メトロン星人なのだ。

 

 

「その言い方、まるで私が君を困らせているみたいじゃないか」

 

「みたいじゃなくて困ってるんだ」

 

「何を困ることがあるというんだい?

 私がいることで君は快適な生活を送っているだろう?」

 

 

その言葉に思わずモロボシは黙ってしまった。

確かに、モロボシの私生活は劇的に良化していた。

帰ってくれば上手い飯と言い湯加減の風呂が用意され、服はいつも清潔で布団は柔らかい。この異星人、こと家事に関しては完璧と言ってよかった。

 

 

「それにだ」

 

 

そう一言置くと、メトロン星人はグッと顔を近づける。

 

 

「見目麗しい異性と共にいれるのだ。これほどの喜びはないだろう?」

 

 

メトロンの生暖かい吐息が感じられるほどの距離。

その頬はほんのりと赤く染まり、その瞳には挑発するような情欲の光がある。

思わずクラリとするほどの強烈な色気であった。

もし普通の人間であれば、男女関係なくその魅力に堕ちていただろう。

 

しかし、彼は腐っても光の戦士であった。

 

 

「異星人に言われたところでなにも嬉しくはない」

 

「・・・全く、つれない男だ」

 

 

モロボシの呆れを含む冷ややかな視線を前に、メトロンは何もなかったかのように肩を竦めて顔を放した。

すっかりとおなじみになってしまったやり取り。

モロボシは慣れつつある自分に若干の不安を感じた。

 

 

・・・と

 

 

 

「な、なにをやっているのですかーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

部屋が揺れるほどの大声量。

見れば玄関に一人の女性が立ち尽くしていた。

サラリと長い銀髪に同色のメガネをかけ、本来は理知的な雰囲気を漂わせるであろう怜悧な美貌。

しかし今は全身をガクガクと震わせ、その顔は驚愕で歪んでいた。

彼女の名はウィンダム。カプセル怪獣と呼ばれる正義の怪獣である。

 

 

「うるさい奴がきたね・・・」

 

 

「あ、あなた!あれほどご主人さまに卑猥なことをするなと言いましたのに!」

 

「何もしていないよ。そうだろう、ウルトラセブン」

 

「黙りなさい!あなたごときがご主人さまのお名前を気安く呼ばないでください!」

 

「三下風情が。私にかみつくというのかい?」

 

「上等です」

 

 

メトロンが立ち上がり、ウィンダムとにらみ合う。

モロボシの目にもはっきりと火花が見えるほどの圧力だった。

 

一触即発の危険な雰囲気。

だがそんな危機的な状況を能天気な声が引き裂いた。

 

 

「ご主人様ーーーー!」

 

 

モロボシに突っ込んでくる小柄な影。

その衝撃はすさまじく、モロボシをして全力で踏ん張らねばならないほどだ。

しかし、当の本人は頬をだらしなく緩ませながら、モロボシの胸にもたれかかっていた。

 

長い黒髪と大きなまん丸の瞳が特徴の褐色少女。

彼女の名はミクラス。ウィンダムと同じカプセル怪獣である。

 

 

「ご主人さま、ミクラス頑張ったよ!頭なでて!」

 

 

輝くような満面の笑顔。

元気と笑顔がミクラスの最大の美点である。

 

モロボシが頭をなでてやると、ミクラスは気持ちよさそうに頬をモロボシの胸にこすらせた。まるで子犬のような姿だ。

 

 

「うわ~・・・ミクラスにとられた。マジ鬱だわ~」

 

 

その言葉と共に、モロボシの背中に柔らかい感触が広がった。

振り返ればすぐ目の前に広がる眠たげな瞳と桃色の髪。

彼女はアギラ。彼女もカプセル怪獣だ。

 

 

「アギラ、ちょっと近すぎるぞ」

 

 

怪獣とはいえ見た目は絶世の美少女だ。照れからくる頬の熱さを感じながら、モロボシは言った。

しかし、アギラはその眠たげな瞳を若干不機嫌そうにゆがめ、彼女の平均をはるかに超える肉体をさらに密着させてきた。

後ろにはアギラ、前にはミクラス。

美少女を侍らす世の男の敵の姿がそこにはあった。

 

 

「ミクラス!アギラ!ワタシを助けもせず何をやっているのですか!」

 

「オマケごときがそんな羨ましいことを・・・私もまだしたことないのに」

 

「まだも何も、そんな機会は永遠にありません!」

 

「君にかまっている暇はない!

 ウルトラセブン、私にも同じ、いやもっと凄いことをしてくれないと許さないぞ!」

 

「ミクラス、眠くなってきた~・・・」

 

「至福至福」

 

 

姦しいどころか騒音ともいえるにぎやかさの中、そっとモロボシは溜息をついた。

 

 

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