それはメトロン星人がモロボシ=ダンの家に住み着く前の話である。
木曽谷と呼ばれる場所に謎の物体が落ちたとの情報を受け、ダンはウルトラ警備隊の一員として調査に向かった。
そこで彼は一人の女性と出会うことになる。
薄い金髪が映える切れ長の目が印象的な美人。
それに加え日本人離れしたスタイルと退廃的な雰囲気も相まって、強烈に印象に残る女性だった。
初めて彼女を目にしたときダンはただ呆けたように彼女を見つめた。
ダンのドストライクだったのだ。
そんなダンに気づいた彼女は、そのままダンに近づくと、その右手をおもむろにつかんだ。スベスベとした感触と温かさに、ダンの心臓が踊り狂う。
そんなダンに彼女は少し顔を近づけると、その可憐な唇から少し低めの美声で言った。
「・・・ビリ」
と、そこでダンの意識は覚醒した。
見渡せばいつもの自宅の風景にフトン、そして汗でシャツが引っ付く感触。
どうやら夢であったらしい。
(嫌なことを思い出させる)
ダンは大きく溜息をついた。
時計を見ればまだ朝の5時だ。
メトロンやカプセル怪獣の姿もまだない。当初、彼女たちはダンと同棲する気満々であったが、腐っても日本男児であるモロボシ=ダン、そこは最低限のラインだと彼女たちを強引に押しのけ、一人の夜を勝ち取ったのだ。
そのため彼女たちはダンのすぐ隣の部屋にそれぞれ部屋を借りている。
とはいっても6時になれば勝手にやってくるのだが。
すっかり目の覚めてしまったダンは、新聞でも読もうと玄関のドアを開けた―――と
「・・・や」
「・・・・」
・・・・・バタン。
そのまま扉を静かに閉めた。
(きっと見間違いだきっと見間違いだきっと見間違いだ・・・)
そして再びドアを開けた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ダンの悲鳴が響きわたった。
「どうしたんだい、ウルトラセブン!」
「ご主人さまどうされました!?」
「・・・ミクラス眠いぞ~」
「zzz」
おもいおもいの表情で駆け込んでくるいつもの顔ぶれ。
そんな彼女たちが見た物は、布団に丸まって隠れるダンの姿と、それをゆさゆさと揺する薄い金髪が特徴的な女性の姿だった。
一瞬あっけにとられる彼女たち。
そんな中、いち早く声を上げたのはミクラスだった。
「あー!エレちゃんだ!」
「・・・久しぶりミクちゃん」
そんなミクラスにアンニュイな表情のまま気さくに答える美女。
ミクラスの声の後にようやくウィンダムも反応した。
「あなたエレキング!どうしてここに」
そう彼女こそ木曽谷でダンが出会った少女であり、彼を苦しめた宇宙怪獣エレキングなのだ。
そして彼の今日までいたる怪獣娘不信は彼女が原因だったりする。
何故ならダンは冒頭の場面の後、体に電撃を流され昏倒し、変身に必要なウルトラ・アイを盗まれるという大失態を犯してしまったからだ。
その後、無事事態は解決されたが、その時の記憶が軽くトラウマになってしまっているのだ。
「エレキング・・・確か電気を操る宇宙怪獣だったね」
「・・・そのとおりですけど、なぜあなたが知っているんですか?」
「ふふ、ウルトラセブンのことで私が知らないことは生まれた星くらいだよ」
妖艶に、しかし濁った瞳のまま笑うメトロン。
さすがのウィンダムも冷や汗を流すほどのアレ具合だ。
「と、とにかくご主人さま!出てきてください」
「いやだ!俺は断じて女に弱いわけじゃない!」
「・・・どういうことなのです、エレキング?」
「・・・たぶん、ピットさんのせいだと思う。
可愛い女の子が好きなのね、このムッツリ!って言ってた」
「やめろおおおおおおおおおおおおおお!」
絶叫とともにダンは飛び起き、そのまま外に駆け出してしまう。
遠くから「ムッツリじゃない~!」と聞こえたような気がした。
「それで君はどうしてここに?」
「・・・彼のことが忘れられなかった」
「・・・ほう」
ぼんやりとした表情のエレキングをメトロンが鋭い瞳で射貫く。
何故なら彼女にはエレキングのそれが単なる好奇心を大きく上回っているとわかったからだ。
場の緊張感が高まる中、さらにエレキングが口を開いた。
「・・・彼に刻み付けられたときの衝撃が忘れられない。責任をとってほしい」
「・・・・・・・それはもしかしてカッターみたいなやつ?」
「・・・そう」
「同士!」
輝いた笑顔でがっちりと握手するメトロンと不思議そうに小首を傾げるエレキング。
そんな彼女たちをウィンダムはゲンナリと、ミクラスは何も考えていないような顔で見つめていた。
ちなみにアギラは終始夢の中である。
そしてダンはというと・・・
「俺はムッツリじゃなあああああああああああああい!!!!」