オーバーロード~割と日常で桃色な日常の結末~   作:へっぽこ鉛筆

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前回の続き、分岐形式で書くかもしれません。


オーバーロード~割と日常で桃色な日常の結末~(マーレ・エンディング)

――ぼくは、どうしたんだろう

 

 あの舞踏会から、アインズ様と一緒にいたら、胸がどきどきする。

 

 うんん、そんなことは以前からあった。ナザリックの偽装をしたご褒美に、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを貰ったときや、アルベド様に褒めてもらった時も、胸がドキドキして、体がポカポカしたけど

 

 なんだ、今回はそれとは違う・・・胸の奥がきゅっと痛くなって、お腹の奥が熱くなるような。

 

 気がついたら・・・その、すごく、むずむずして、お姉ちゃんに心配されて

 

 あの、シェイプチェンジ・ポーションの副作用なのかな

 

 あんな、女の子に変身して・・・アインズ様と・・・

 

 考えただけで、また、その、むずむずして、切なくなって

 

 

 

 

「ちょっと、どうしたのさ、マーレ?」

 

「ひゃ、ひゃいッ、お、お姉ちゃん・・・な、何でもないよッ」

 

 思わず変な声を上げて、スカートの部分を確認する。その、変になっている部分を意識してしまう。

 

 やっぱり、ぼくの身体は変になってしまったのかな?こんなこと、誰にも相談できない。

 

 お姉ちゃんが変な顔をして、僕のことを気にしてくれている。その色違いの双眸を避けるように、赤くなった顔は俯いてしまう。

 

「ねぇ、マーレ・・・あの、舞踏会の時から、アンタちょっと変だよ」

 

 舞踏会、その言葉に、小さな胸が一度はねる。そういえば、お姉ちゃんも、アインズさまと踊りたかったんだよね。それを考えると、罪悪感というものが、抑えていた胸にチクチクと突き刺さった。

 

「う、うん・・・ちょ、ちょっと、人間がいっぱいいる場所で、つ、疲れちゃった、かな・・・」

 

 気弱な笑顔を見せれば、姉は興味なさげに頭の後ろに手を組んだ。

 

 トブの大森林、仮のナザリック要塞を築く作業の途中にこのような態度なのは不敬だとは思うけど、むずむずと、落ち着きなく太ももをすりあわせながら、上の空に工事の進捗を眺めていると

 

「マーレ、危ないッ!!」

 

 ヘビーアイアンゴーレムの運ぶ丸太が、ちょうどマーレの居た位置を通り過ぎ、頭に鈍痛が走った。

 

 守護者に有るまじきことだが、そのまま大地に倒れて動けなくなった身体が、ぼんやりとだが、姉が慌てて駆け寄る姿を何処か遠くのことのように感じてしまった。

 

 

 

「軽い、脳震盪ですね。」

 

 あれから、マーレが急いで弟を運んだ場所は、ナザリックではなく、カルネ村だった。

 

 理由は、マーレの不調の原因は回復魔法よりも、医者に見せるべきだとアウラが判断したのと、カルネ村には、ンフィーレアとルプスレギナの二人がいる。そして、ナザリックの階層を行き来するより、トブの大森林をまっすぐ村に行くほうが早いと思ったからだ。

 

 幸い、マーレの症状を見たンフィーレアは軽く湿布と包帯をしただけで、大丈夫と診察し、さらに、ルプスレギナは「こんなもの、男の子なら唾つけとけば治るっすよー」と、回復魔法も使わずに、村のどこかに行ってしまった。

 

 少し、心配に思いながらも、ンフィーレアに弟のことを任せつつ、アウラは、アインズ様に任された仕事に戻っていった。

 

 目が覚めたのは、それから2時間後のことだった。

 

「君、えーと、マーレさん、大丈夫?」

 

 前髪を隠した人間が、 濡れたタオルで顔を拭いてくれたのに、それに嫌悪感をわずかに感じる。人間に触られたことと、アインズさま以外に触れられたことでだ。

 

「あ、もしかして、痛かったかな?ゴ、ゴメン」

 

「い、いえ、違うんです。ご、ごめんなさい。」

 

「そ、そうなんだ、それじゃ、何か気分が悪くなったら教えてね。」

 

 わずかに、薬草の匂いが鼻腔を付く・・・以前に舞踏会に行く直前、アインズ様に渡された女の子に変身できる薬品の匂いだ。

 

 甘い蜜に誘われるように身体で匂いを追えば、熱を吐き出すように言葉が思わず出てしまう。

 

「あ、あの・・・」

 

「へっ、ど、どうしたの?」

 

 驚いたような人間の男が振り返れば、ベットから降り一歩歩み寄る。ンフィーレアが、不思議そうに首をかしげる。

 

「ぼ、ぼくに、ポーションのことを教えてくれませんか?」

 

 

 

「す、すごいんですよ。それでですね。マーレさんの知識で画期的な効果が現れたんです。それどころか、保存期間や、劣化からの保護、他にも、希少性の高い薬草の効果や鉱物をですね・・・」

 

「ああ、それはすごいな。」

 

 正直、アルケミストやヒーラーのクラスレベルを持っていないアインズにとっては、ちんぷんかんぷんだったが、すごい勢いで話しかけるンフィーレアに押されるように相槌を打ちながら、仮面の向こうにはうんざりとした表情――骸骨だが、をしていた。

 

(こいつ、こういう性格だったんだな。)

 

 どこかオタク気質な雰囲気を感じながらも、いや、趣味に没頭しながらも、エンリという恋人が居るのだから、勝ち組か・・・まぁ、そんなことで嫉妬して嫌がらせをするほどアインズも子供ではないが、いい加減に時間的に心もとなくなってきた。

 

 そもそも、マーレが作業中に事故にあったという報告を受け、久々に、カルネ村の様子を見に来ただけなのだが、とんでもない事に巻き込まれたと・・・無下に扱うほどではないが、とりあえず、話を切り上げる。

 

「いや、その話は、あとで報告してくれ、それよりも」

 

「ええ、マーレさんですね。彼も、ずいぶんと研究に興味を持ってくれて、いま、研究室にいますよ。」

 

 それだけを言えば、また、嬉しそうに薬草の話を繰り返そうとするンフィーレアを静止して、マーレがポーションに興味があることに新鮮な興味が沸く

 

 確かに、マーレの職業クラス、ネイチャーズ・ヘラルドには、薬草や自然全般の知識があったので、ポーション調合に興味があってもおかしくない。それとも、薬草学なので、ドルイドの職業かな。

 

 研究室、木製のドアを開ければ、足元にあった何かを蹴った気がする。乾いたガラスの音が、部屋に木霊し、その床板の上、褐色の肌を持つ金髪の少女、小さな少年というよりも、少女と言って良い身体が床板の上、呆けたように座り込んでいた。

 

「おい、マーレ…なのか…?」

 

 声をかければ、オッドアイの双眸が、うるみを持ちこちらを見上げる。ほっそりとした少女の姿からわずかに妖艶さと熱を感じ、心配になったアインズがしゃがみこめば

 

「――ア、アイン、ズ・・・さま・・・?」

 

 わずかに濡れた唇が動けば、首に回された腕がマスクを外す。あっけにとられたアインズは、冷静に対処しようとしたが、次の瞬間、想定外の衝撃に、思わず精神を麻痺させてしまった。

 

 まったく、自然な動きで・・・恋人に交わすような、熱い抱擁とともに交わされたキスが、一瞬で、精神の動揺のリミッターを振り切り思考が混乱する。その行為の中、研究室の扉が締められる。見れば、ンフィーレアとエンリがいつの間にか部屋の前に来ていたのだ。妹のネムも来ていたのだろう。無邪気に「アインズさま、お姉ちゃんとンフィーと同じことしてたね」との声が聞こえた。

 

 その時、冷静な頭の片隅に、仮面を外していることを思い出すが、いや、皮膚や肉の感触を全身に感じる。舞踏会に行った時の薬品の効果、ペロロンチーノさんのことを何故か思い出した。そうだ、キスと同時に・・・

 

「マーレ・・・お前、ポーションを・・・」

 

 少年の、いや、少女の唇の端からヨダレの様に流れたポーションを手で拭えば、精神の動揺、久方ぶりに感じる興奮が、馬乗りになるマーレの腰に当たる。

 

(これじゃ、まるで性転換のエロゲーじゃないか)

 

 いや、ペロロンチーノさんに言わせれば、男の娘は別腹らしいが、乱れたマーレの衣装から、少女らしい膨らみが見える。

 

(まずい、これは、非常にまずいぞ・・・ッ)

 

 

「アインズさま・・・僕じゃ、ダメでせすか・・・シャルティアさん、や、アルベド・・・さん、みたいに・・・ここも、大きくないです、けど・・・はうっ」

 

 熱っぽい息がかかる。精神的に危機感を感じながら、押しのけようとするが、基礎的な物理攻撃力や体力がマーレの方が上なので上手くいかない。ローブの腰のあたりに、マーリの細い腰が絡められ、どう対処すればいいのかわからない。

 

「ちょつ、マーレ、ヤメ・・・」

 

「アインズさま・・・ぼく、アインズさまが・・・大好き、ん、ちゅっ・・・」

 

 暴れた拍子に、テーブルの上に置いてあった薬液が溢れる。

 

 実際に、アインズが置かれた状況を表すように、床に緑の液体が広がった。

 

 

 

 

 ――後日

 

 エ・ランテルを中心としたアインズ・ウール・ゴウン魔導王国は、活気に包まれていた。

 

 それもその筈で国民は、複雑な気持ちながら魔導王国王妃に喝采と歓声を上げている。

 

 街の大通りを走る六頭立ての馬車がゆっくりと通り過ぎる。護衛は、黄金と白銀で飾り付けたLV80程の昆虫騎士(インセクト・ナイト)が脇を固める。どちらかといえば、護衛というより豪華さを重視した儀仗兵的な存在だった。

 

 さらに、数名の騎乗した人間の騎士が見事な隊列を組み、馬車を先導し、その花道を解放奴隷のエルフ女性たちが花を撒きながら先行している。

 

 街頭を覗く人間は、好奇心半分、恐怖が半分という具合だった。アインズの容姿は以前に死の支配者というのがふさわしい骸骨の容貌で、恐怖によるものも大きいが統治自体は申し分なく行われているからだ。村落では自治を大幅に認め、労働力の貸出や街道の整備や警備などは、王国時代よりも評価するものが多いくらいだ。

 

 さらに、今日の祝典・・・エ・ランテルの住民にとっては複雑な思いを持ってはいるが、人間らしい婚姻という儀式については祝福していた。

 

 もっとも、影では少女は生贄にされるのではないか、死の花嫁として奴隷にされるのではないかと噂はあったが・・・ 

 

 馬車が通り過ぎれば、通りに向かい、紙吹雪や花束が投げられ、その歓声にオロオロと見回す少女、白いヴァージンホワイトのドレスからの続肌は褐色で、ヴェールから覗く耳は、馬車を馭者の少年と同じダークエルフだとわかる。

 

「ほら、マーレ・・・マーレさま、民衆に手を振ってください。」

 

 なにか、なれない言葉で骸骨の主人と、ダークエルフの少女が楽しく笑い、民衆たちに手を振った。

 

「マッタク、あうらヨ、魔導国正妃、まーれ・べろ・ふぃおーねサマニ不敬デハナイカ・・・」

 

「良いのだ、コキュートス・・・私の妃になったとしても、アウラは姉であることには変わらぬのだから・・・ははっ、そういえば、私の義姉にもなるのだな。」

 

 楽しげに笑えば、「ア、アインズさまのおねえさんッ――」と、声を漏らす。

 

 最後尾、馬車の後を警備するコキュートスが、顎を鳴らし機嫌よく騎乗蟲を前進させた。一瞬、困ったような、しかし、不快ではない感情に襲われたアインズが息をつく、それに気づいたのか、花嫁・・・正妃となったマーレの色違いの双眸が覗き込む。

 

 思わず、あの初めて少女と結ばれた時のことを思い出す。

 

 あれから、シャルティアやアルベドにはない、マーレの魅力に惹かれ、罪悪感を感じながらも、重ねた日々は、リアルの鈴木悟の心をつかむには十分だった。

 

 さらに、既成事実という乗り越えられない壁によって、プロポーズをするにいたり、ナザリック内では、割れんばかりの祝福を受けたものだった。(若干名、卒倒、自棄酒を煽るものもいたが)

 

 そんな、甘酸っぱいモノを思い出しながらも、アンデットでありながら胸の中をくすぐる感情に、わずかに居心地の悪さも感じていた。

 

「アインズさま、どうなされたのですか?」

 

「いや、マーレよ・・・私も、幸せだな。と、思ってな」

 

 マーレは少し照れたように、アインズに薬品で生まれ変わった身体を寄せた。馬車の上、どちらかとなく瞳が交差して、歓声を受けながら少女と死の支配者はキスをした。

 

 

 

 




ちょっと解説

シェイプチェンジ・ポーション

ようするに変身薬、マーレが最終的に飲んだのは強化型で、エターナル・シェイプ・チェンジ・ポーションなるモノ・・・永続効果のあるポーションで、生涯女性になったので、男の属性はなくなった。だが、アイテム効果を無効化する魔法とかをかけられたらどうするんだろうと、ちょっと考えたりもした。

昆虫騎士

カブトムシとクワガタムシのちょっと見栄えのいいシモベ



さらに後日

マーレが双子を出産したり、その後に、アルベドが同じ手段(逆レ●プ)を使って、第二王妃に収まったり、さらに、マーレの子供が、エルフや亜人の王国を作ったり、双子の男の子がコキュートスの弟子になったりなど、考えてたりなかったりです。

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