ハイスクールD×D 駒王学園の第三勢力 作:空☆条☆承☆太☆郎☆
side HACHIMAN
「なあ、神様!いるんだろう、神様!?悪魔や堕天使がいるんだ、きっと神様だっているんだよな!?だったら見てるんだろこの現状を!?」
教会内に入ると、空を仰ぎ慟哭する兵藤の姿が見えた。兵藤の前にある背もたれの半分が壊れた長椅子にはあの時のシスターが寝かされていた。しかし、その体にはまるで生気を感じなかった。恐らくは、死んでいるのだろう。
「遅かったか…」
やはりあの時、昼間この二人を見かけた時に呼び止めていればこうはならなかったのではないか。そんな今更すぎる後悔が胸の内から湧いて出る。
「あら?こんなところで悪魔が懺悔?それとも何かお願いでもしていたのかしら?」
祭壇付近から堕天使が上がってくるのが見える。
side OUT
side ISSEI
「待ってろアーシア!もう少し、あともう少しで自由になれるんだ!俺といつでも遊べるようになるんだ!だから気をしっかり持って!」
階段を上りきり、さっき神父と戦っていた聖堂へと戻ってきた。俺は抱えていたアーシアを近くにあった長椅子に寝かせ、さっきから必死に呼びかけていた。
「……わた、しは…幸せでした…少しの、間だけですけど…友だちができて…一緒に遊べて…幸せでした…」
弱弱しく微笑みながら、アーシアは俺の手を取りそう告げた。その手にはもう殆ど体温を感じることができなかった。…ダメだ。ダメだ。まだ、まだなんとか…
「…もし、生まれ変わることができたら、また友だちになってくれますか?」
「何、言ってるんだよ!そんなこと言うなよ!これからまた遊びに行くんだ!前より面白いところ!カラオケとか!ボウリングとか!まだ…いっぱい、あるんだ…」
ダメだよ…解ってしまう。この子はもう死んでしまう。失われていく体温。弱まっていく呼吸。それらが俺に残酷な現実を突き付けてくる。否定したい。これは嘘だと。そう否定したい。
「俺と、君は友だちじゃないか!ずっとそうだ!松田や元浜にも紹介するよ!あいつら、すげえスケベだけどさ、めちゃくちゃいい奴らなんだぜ?他にも、八幡とか士郎とか!いっぱい紹介したい奴らがいるんだ!絶対にアーシアの友だちになってくれる!絶対だぜ!それでみんなでさ、ワイワイ騒いでさ!」
いつの間にか、涙が溢れてきていた。もしかしたら、もうずっと泣いていたのかもしれない。
「……きっと、この国で生まれて…イッセーさんと同じ学校に行けたら…」
「ああ、行こうぜ!俺たちの学校に来いよ!」
「…私のために泣いてくれる……それだけで私、は……」
そっとアーシアが俺の頬をなでる。その手を涙が伝い、床へと流れていく。
「………ありがとう……」
その言葉を最後に、アーシアは目を閉じた。頬に触れていた手が静かにゆっくりと落ちていく。俺はそれを受け止め握りしめる。涙は依然として止まることはない。なぜだ?どうしてこの子が死なないといけない?だって、傷ついた相手なら誰でも治してくれる優しい子なんだ。
「なあ、神様!いるんだろう、神様!?悪魔や堕天使がいるんだ、きっと神様だっているんだよな!?だったら見てるんだろこの現状を!?」
教会の天井に向かって叫ぶ。答えてくれるかどうかなんて知らない。それでも、言わずには、叫ばずにはいられない!
「頼む!頼みます!この子を連れて行かないでくれ!悪いことなんて何もしてないんだ!ずっと独りで、ただ友だちが欲しかっただけなんだ!」
やはり、誰かがこの訴えに応えてくれることはなかった。
「俺が悪魔だからダメなんですか!?この子の友だちの俺が悪魔だからナシなんですか!?」
悔しい。心底悔しい!力がないから。もっと、悪魔としての力があれば。後悔ばかりが胸をよぎる。だが、今更そんなことをしても、もう彼女は微笑んではくれない。
「あら?こんなところで悪魔が懺悔?それとも何かお願いでもしていたのかしら?」
俺の後方から聞こえてきたのはレイナーレの声だった。振り返ると、やはりそこには俺を嘲笑する堕天使の姿があった。
「うふふ、これを見てご覧なさい。ここへ来る途中、下で、『
レイナーレが左腕の切り傷に右手を当てる。すると、そこから淡い緑色の光が発せられ、傷を塞いでいく。
「素敵でしょう?これ。どんなに傷ついても治ってしまう。神の加護を失った
おい。その
「堕天使を治療できる堕天使として、この私の地位はもはや約束されたも同然!偉大なる至高の御方々、アザゼルさま、シェムハザさま、お二方の力となれる!これ以上のことはないわ!」
「知るかよ。そんなこと、知らねえよ。堕天使だとか、悪魔だとか、神様だとか…そんものはこの子には関係なかったんだ」
「いいえ、関係あったわ。なぜならその子は、その身に神器を宿した選ばれた人間だったのだから」
「……それでも、平穏に暮らせたはずだ!普通に日々を生きられたはずだ!」
「無理よ。神器なんていう異質な力を有しているものはどこにいても爪弾きにされるわ。強大な力を持っているから。他人とは違う力を持っているから。うふふ、人間ってそういうの毛嫌いするでしょう?私からすれば、こんなに素敵なモノなのに」
「…だったら、俺が。俺が、アーシアの友だちとして守った!」
「アハハハハハハ!無理よ!だって、その子は死んじゃったじゃない!あなたは守れなかったのよ!夕刻のときも、さっきも!救えなかったのよ!」
拳を握る。きつく。うんときつく。
「………知ってるさ。だから、許せないんだ。おまえも。そして、俺自身も」
すべてが許せなかった。アーシアを守れなかった自分が。アーシアを殺したレイナーレが。アーシアを救わなかった世の不条理が。「想いなさい」部長は仰っていた。神器は想いの力に応えると。
「返せよ」
たとえ悪魔であったとしても、想いの力は消えず、強ければ強いほどに神器は応えてくれると。
「アーシアを、返せよォォォォォォォォォッッ!!!!」
『Dragon booster!!』
俺の叫びに応えるように、左腕の神器が動き出す。手の甲の宝玉が眩い輝きを放ち、カチャカチャと籠手が変形する。同時に俺の体を力が駆け巡る。
「忘れたのかしら?あなたの力が二倍になったところで、私の足元にも及ばないのよ!」
俺の拳をよけながら、レイナーレは嘲笑する。
『Boost!!』
宝玉から再び音声が流れる。宝玉に浮かぶ数字が『Ⅰ』から『Ⅱ』へ変わる。脈動と共に、俺の中で二度目の変化が起こる。
「う、おおおおおおおお!」
やっぱりさっきより力がましているのか!溢れ出る力を拳に込め一気に詰め寄る。同時に、破壊力増強のために『
「ふーん。少し力が増したの?でもまだまだね!」
再び俺の攻撃は避けられる。その隙に、レイナーレは両手に光を集め、槍を形成していく。
「前よりも力を込めてあげたわ!食らいなさい!」
投げ放たれた槍を避けることはできず、両足を貫いた。『戦車』の防御力でも防ぐことはできなかった。
「いっ、が、ぐぁぁぁああああぁぁぁぁああっ!」
痛い。想像を絶する痛みに絶叫が溢れ出る。だが、こんなところで膝をつくわけにはいかない。すぐさま槍を抜こうとしてそれを握るが、ジュウゥゥッと、手の平が焼ける。
「ううっ、ぐうぅぅぅぅぅぅ!」
手からも足の傷からも煙が上り、容赦無く光が俺の肉体を蝕み焦がしているのがわかる。俺が槍を抜こうとしている様を見てレイナーレが面白おかしそうに嘲り笑う。
「アハハハハハハ!悪魔が光で形づくられたものに触れるなんて愚の骨頂よ!光は悪魔にとっては猛毒なのよ?触れるだけで身を焦がすの。あなたのような下級悪魔が耐えきれるわけがー」
「ぬぐぅ、がぁぁぁぁあああぁぁぁ!」
痛みに耐えるために歯を食いしばる。食いしばった歯の隙間から絶叫が漏れ続けているが、構わない。そうして、少しずつ槍を足から引き抜いていく。
「耐えきってやる!こんなもの!アーシアの苦しみに比べれば、どうってことねえ!!」
口の端から涎が垂らしながら、少しずつ槍を抜いていく。ぐじゅぐじゅと嫌な音を立てながら、槍は両足から抜かれていく。そして、抜き終わり手から放すと、槍は霧消していく。塞いでいたものがなくなり、両足の穴から血が噴き出す。痛みはもはや感じすぎて麻痺している。
『Boost!!』
再び宝玉から音声が鳴るも、俺にはもう立ち上がるだけの力がないのか、その場でしりもちをついてしまった。
「…そうね。下級悪魔にしては大したものだわ、あなた。なにせ私の光力は中級悪魔ですら簡単には治らない損傷を与えられるんだから。でも、下級悪魔のあなたはここで限界よ。今、私の光があなたの体中を回っているの」
そうかよ。でも確かにこいつの言う通り、体内がズキズキ痛む。少しでも気を抜くと、頭がどうにかなりそうだ。でも、そんなもん関係ねえ。
「さっきは神様じゃダメだったからな。それじゃああれだ。魔王さまだったら俺の頼みを聞いてくれますよね?」
「いきなり何を言い出すの?本当に壊れたのかしら?」
「今からこのアバズレを殴り飛ばしてやりたいんで、邪魔が入らないようにしないでください。増援もいいです。マジで一発だけでいいんで。…殴らせてください」
言い終わると同時に、足に力を入れる。ふらふらと少しずつ立ち上がる。
「なっ…嘘よ!立ち上がれるはずは!?」
「色々言いたいことはあるけどよ…体が持たねえからいかせてもらうぜ!」
『Explosion!!』
音声が終わると宝玉の輝きがより一層増した。足からは相変わらず血が出続け、一歩踏み出したついでに血を吐いた。
「ありえない。そんなわけない。その神器は宿主の力を倍にするだけの『
今俺はそんなことになってんのかよ。この神器はただの神器じゃないのか?…まあいいや、そんなことは。
「嘘よ!こんなの嘘よ!私は至高の存在!この神器を宿し、アザゼルさまとシェムハザさまからの愛を受ける資格を手に入れたのよ!」
言いながらレイナーレは光の槍を放ってくるが、俺はそれを横に薙ぎ払った。それを見てレイナーレは一層青ざめる。
「い、いや!」
レイナーレは黒い翼を羽ばたかせ、飛び立とうとする。逃げる気かよ。さっきまで散々俺を馬鹿にしていただろうが。少しでも勝機がないと判断すれば即撤退かよ。いいご身分だな!
「逃がすかよ!」
飛び立とうとした瞬間にその腕を引き、さらに間合いを詰める。
「私は、至高の!」
「うるせえ!吹っ飛べ、クソ堕天使!」
「おの、れぇぇぇぇぇ!下級悪魔がぁぁぁぁぁぁぁ!」
「でぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
左腕の籠手が一気に力を解放し、俺の中で爆発する。拳にそれを乗せ、堕天使の顔面に抉りこむ。メリメリと拳に感触が伝わり、レイナーレは大きく後方へ吹っ飛び、ゴッシャァァァァァ!!と派手な破砕音を立てながら壁を突き抜け地面に転がる。
「ざまーみろ」
自然と口角が緩むが、涙もすぐにこぼれてきた。もう二度と笑わないアーシアの笑顔が脳裏に蘇ったからだ。
「お疲れさん」
くずおれそうになる俺の肩を誰かが支えてくれた。よく見れば、それは八幡だった。
「無事だったか。よかった」
振り返れば、祭壇の側の階段から木場たちが上がってくるのも見えた。
side OUT
side HACHIMAN
『すごいな。あの小僧本当に格上相手に勝っちまった』
「そうだな。途中何度か冷や冷やしたがな」
『おまえさんが「これは、あいつの戦いだから手を出さん」とか言った時には俺様どうしようかと思ったが』
「ヤバそうになれば助けに入るつもりだったんだよ。それに、ちゃんと勝てたんだし結果オーライだろ」
そう。最初は加勢することも考えた。ただ、兵藤にはなんとしてもあの堕天使に一矢報いてほしかったから俺は手を出さなかった。
「ざまーみろ」
そう呟いて兵藤はくずおれそうになる。その肩を受け止めてやる。
「お疲れさん」
「八幡。無事だったのか。よかった」
「まあな。おまえも、倒せたみたいだな」
言いながら、俺は親指で破れた壁のところに転がっている堕天使を指差した。
「かなりギリギリだったけどな」
土壇場で見せた兵藤のあの力。あれはただの龍の手で為せるものじゃない。
「衛宮も無事か?」
「ああ。なんとかな」
服はまあ最初からボロボロだったからな。見たところ疲労の色は濃いが深傷を負っているわけではなさそうだ。
「どうやら堕天使を倒せたみたいね、イッセー」
一番最後にグレモリー部長が地下から姫島先輩を伴って上がってきた。この人らがいるってことは、雪ノ下の方も片付いたってことか。
「あらあら。教会がボロボロですわ。部長、よろしいのですか?」
姫島先輩が困った顔をしている。それを聞いて兵藤が狼狽する。
「…なんか、ヤバいんすか?」
「教会は神或いはそれに属する宗教のものだし、今回のように堕天使が所有しているケースがあるでしょ?そういう時、悪魔が教会をボロボロにすると、報復の為に刺客から狙われることがあるのよ」
「マジすか!?」
「でも安心なさい。今回はそうならないでしょうから。ここは元々捨てられたものだったわ。そこを堕天使たちが勝手に間借りしていたわけで、私たちはそこでちょっとしたケンカをしていただけよ。相手の公領へ戦争を吹っかけたわけではないわ。あくまで、いち悪魔といち堕天使の小競り合い。そんなのものは年中どこでも起きているわ。ただそれだけのことよ。ねえ、ユキノ?」
「はい。この教会は今は本部の管轄を離れています。ですから、ここで起きたことは外側の問題となるので。今の所は構いません」
部長の確認に、入り口から歩いてきた雪ノ下は答える。右手には何か袋を持っている。…なんかそれ、下から何か滴ってるんだけど…?
「取れたのか?言質」
「私を誰だと思ってるいるのかしら?それと、衛宮君。遠坂さんが後でゆっくり話し合いましょうと言っていたわ」
そのワードを聞いた瞬間衛宮はビクッと肩を震わせ、大量に汗を流した。
「…分かってたけど、なんでさ…」
「まあ、なんだ…頑張れ」
項垂れる衛宮にそう声を掛ける。何かズルズルと音がするのでその方向を見ると、塔城がさっきの堕天使をこっちまで引きずっている音だった。…なんてアグレッシブなんだ…
「部長。持ってきました」
塔城はぽいっとそれを部長の方へ放った。
「ありがとう、小猫。朱乃、起こしてあげなさい」
「はい」
姫島先輩が手を上にかざすと宙に水の球が生まれる。悪魔式の魔法か。そして、それを堕天使の顔に浴びせかける。バシャッ!という音と共に、思いっきり水を吸い込んだ堕天使がむせ返り、目を覚ました。
「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」
「……グレモリーの娘か……」
「はじめまして、私はリアス・グレモリー。短い間だろうけど、お見知りおきを」
笑顔で自己紹介する部長をレイナーレと呼ばれた堕天使は忌々しげに睨んでいる。が、すぐに口角を歪め部長を嘲笑う。
「してやったりと思っているんでしょうが、そうはいかないわ。この計画は上には内密にしてあるけれど、私へ賛同してくれる堕天使もいるわ。私が危機に瀕すれば、彼らは助けにー」
「来ないわよ。カラワーナ、ミッテルト、ドーナシーク。彼らは私とそこのユキノが始末したから」
「嘘!」
部長の言葉を否定する堕天使だが、部長が懐から出した三枚の黒い羽と、雪ノ下が袋から取り出し放り投げたモノを見て一気に表情を曇らせる。
「これは、ドーナシークの首!?それに、この羽も!?」
「以前イッセーを襲ったドーナシークと会ったときから、この町で複数の堕天使が何かを企てているのは察していたわ。最初はあなた達全体の計画かと思っていたんだけど、こそこそしすぎていたから。私は朱乃を連れて話をしに行ったの。そしたら、すんなり独自の計画だと吐いてくれたわ」
「そうね。私も裏を取ろうと思ってグレモリー先輩方と共に彼らに接触したんだけれど、聞いてもいないことを勝手にしゃべってくれたから、とても楽だったわ。もう少し頭の良い仲間を見つけるべきだったわね」
堕天使は心底悔しそうに歯噛みする。
「最後に一つ教えてあげるわ」
「何?」
「あなたの敗因よ。…それはね、この子の宿した神器が龍の手ではなく、『
「なっ…あの赤龍帝の籠手、ですって!?」
兵藤の宿した赤龍帝の籠手か…元老院長の星詠みに現れた波紋の中心。これなら合点がいくか…
「イッセーくん!私を助けて!この性悪の悪魔が私を殺そうとするの!」
いよいよ殺されそうになってか必死に堕天使が兵藤に媚びはじめる。
「お願いします、部長…俺、もう限界っす…」
「…そうね。私のかわいい下僕に言い寄るな。消し飛べ」
黒い魔力が部長の手の平に集まる。
『すんません。俺がやります』
「あなた、ハチマン!?…別に構わないけれど」
俺にも思うところはある。兵藤は、こんな俺を友だちだと言った。言ってくれた。そうなのだとしたら、きっと今この堕天使に対して抱いている感情への説明がつく。そう、きっとこれは…
『俺の怒りだ。死ね、堕天使』
牙狼剣を振り下ろす。堕天使は断末魔と共に、傷口から煙を迸らせ霧消していく。後に残ったのは宙に浮かぶ淡い緑色の光だけだった。
魔戒列伝毎週楽しみなんですよね。BLACK BLOODの二人とレオとの絡みよかったです。でも、今のところジンガとアミリの回がベストですね。