ハイスクールD×D 駒王学園の第三勢力   作:空☆条☆承☆太☆郎☆

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怨恨

side ISSEI

 

 

パンッ!と雨音の中に乾いた音が響いた。部長が木場の頬を打った音だ。

 

 

「どう?少しは目が覚めたかしら?」

 

 

かなり怒っているのがよく分かる。なぜ、部長がこんなに怒っているのか。それは、木場が今日の球技大会中終始上の空だったからだ。

 

 

優勝こそできたものの、部長は木場のそれがどうしても許せなかったらしい。まあ部長がキレなかったら俺がキレてたよ。

 

 

それにしても、最近本当に変わりすぎだろこいつ。別人みたいだ。

 

 

「もういいですか?球技大会も終わりました。どうも調子が悪かったようなので、申し訳ありませんでした。夜まで少し休ませてもらいます」

 

 

「おまえ、最近マジでおかしいぞ?どうしたんだよ」

 

 

「個人的なことさ、イッセー君。君には関係ないよ」

 

 

俺が聞くと、冷たい笑顔でそう返された。

 

 

「でも、強いて言うなら…基本的なことを思い出した、いや、再確認したと言った方がいいかもね」

 

 

なんだ?再確認?意味わかんねえぞ!

 

 

「基本的なこと?」

 

 

「そうだよ。僕が一体何のために戦いっているのか、だよ」

 

 

「部長のためじゃないのか?」

 

 

そう俺は勝手に思い込んでいた。そうあって欲しいと思った。でも、木場はそれを否定する。

 

 

「いいや。復讐だよ。エクスカリバーを破壊する。それが僕の戦う意味だ」

 

 

そう言う木場の瞳には冷たく暗い光が見えた。きっとこれが、こいつの本当の顔なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡はどう思う?なあ、八幡!」

 

 

木場が出て行ってすぐに俺は八幡に意見を求めてみた。何度か呼びかけてみてやっと返事がかえってきた。

 

 

「っ…悪い、何だ?」

 

 

八幡も木場程じゃないが、昨日から様子がおかしかった。小町ちゃんに関わりのあることなんだろうな。

 

 

「木場のことだよ」

 

 

「勝手にさせておけよ。あいつの問題だろう。復讐なんて当人の自己満足なんだからよ」

 

 

「でも…」

 

 

「スイッチが入っちまったんだろうさ。それに、今あいつがあるのはその執念だ。拠り所なんだよ、ある意味な」

 

 

『そうだな。あの手の奴には周りの言葉は余程のことが無い限りは届かない。放っておくのが一番だ。…ただ、その復讐の過程で関係ない者たちまで巻き込むようなら、魔戒騎士や祓魔師(エクソシスト)が動くことになるがな』

 

 

ザルバが物騒なことを言う。でも放っておくなんて…本当に、それでいいのかよ…

 

 

side OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side YUTO

 

 

降りしきる雨の中、僕はただ歩いていた。血の上った頭にはちょうどいいぐらいだろう。喧嘩を…してしまった。自分を救ってくれた主に対して、反抗してしまった。

 

 

それでも、僕は()()()()()。いや、忘れてはいなかったさ。新しい生活の中で、鈍っていただけ。

 

 

ビシャリ、と激しく水を打つ音が響いた。そちらを見やれば、神父が倒れていた。みるからに致命傷を負っているその神父は痙攣したのち、絶命した。

 

 

「ッ!?」

 

 

瞬間、異様な気配を感じ、神器を展開する。バキャァ!と咄嗟に創った魔剣と何かがぶつかり、火花が散った。

 

 

尋常じゃない殺気を滾らせているのは、一人の神父だった。

 

 

「やあ。おひさだね」

 

 

グチャリと口角を引き上げ笑うそいつは、見覚えのある顔だった。あのイカレた白髪の神父、フリード・セルゼンだ。

 

 

「…また何か企んでいるようだね?一体何の用だい?僕は今、非常に虫の居所が悪いんだ」

 

 

本当に一々癇に障るな、あの笑みは。

 

 

「くはは。そりゃいいや。まったく!俺っちとしてはキミとの再会劇に感涙でございますよ!」

 

 

相変わらずふざけた口調だ。本当に腹が立つ。でも、この神父のことはどうでもいい。

 

 

今僕に関係あるのは───

 

 

「ちまちま雑魚の神父を潰してまわるのも飽きてたんだよね。だから、いいタイミングだよね。この俺様の()()()()()()()とおまえの魔剣のどっちが上か試させてくれんかね?ウヘヘヘヘ!お礼は殺して返すから!」

 

 

───彼が持つ聖剣だ。

 

 

side OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ISSEI

 

 

あの後、一通りの活動を終えて家に帰ってきた俺とアーシアと部長は、俺の部屋に集まっていた。そしてあらためて部長から木場について切り出されたんだ。

 

 

「あなたたちにも祐斗のことを話しておくわね。あの子が聖剣を憎む原因となった聖剣計画について」

 

 

「聖剣計画?」

 

 

「そう。数年前まで、キリスト教内で行われていた聖剣エクスカリバーの担い手を育てる計画が存在したの」

 

 

「……初めて知りました」

 

 

アーシアはこの計画を知らなかった。まあ、聖女として祭られていた彼女の耳にまでこんな極秘っぽい計画が届くわけないか。

 

 

「聖剣は悪魔にとって最大の兵器よ。ハチマンの魔戒剣と同じね。聖剣に触れるだけで私たち悪魔は身を焼かれるわ。斬られたとなれば、待つのは消滅だけ。神を信仰し、悪魔を敵視する使徒にとっては正に究極の兵器なの」

 

 

聖剣か…。ゲームとかラノベとかによく出てくるよな。俺も悪魔だし、今のところ一番危ない武器ってことだ。

 

 

「聖剣はその出自は様々だけれど、有名なのはアーサー王が振るったエクスカリバーね。でも、使いこなせる人間はそういないわ。聖剣が担い手を選ぶから」

 

 

「だったら木場の魔剣創造(ソード・バース)みたいに聖剣を創り出せる神器(セイクリッド・ギア)はないんですか?」

 

 

そうなんだよな。魔剣の神器があるんなら、その逆もあるんじゃないかっていう短絡的な思考だ。

 

 

「あるにはあるわ。でも、現存する聖剣と比べると、出力が足りないのよ」

 

 

なるほどな。だから、純粋な聖剣の担い手を教会は欲するわけか。

 

 

「祐斗は聖剣───特に()()()()()()()()()()と適応するために人為的に養成を受けた者の一人なの」

 

 

「教会の?どういう意味ですか?」

 

 

「教会の所有しているものは大昔の戦争の時に作られたもので、その時には呼称が無かったの。だから、戦争が終結してから便宜上エクスカリバーと呼ばれるようになったのよ」

 

 

「なるほど。それで、木場は聖剣を使えるんですか?」

 

 

俺の質問に部長は首を横に振る。

 

 

「祐斗は聖剣に適応できなかった。それどころか、祐斗と同時期に養成された者たちも全員適応できなかったようだけれど……」

 

 

そうなのか…。あれだけ剣に精通し、数多くの魔剣を扱うことのできる木場でも聖剣はダメだったのか。

 

 

「適応できなかったと知った教会関係者は、祐斗たち被験者を『不良品』として処分したの」

 

 

───処分。聖剣を扱えない。それだけの理由で、彼らはその生を奪われた。これが人間のすることかよ!?

 

 

「…そんな、主に仕える者がそのようなことをして許されるわけがありません」

 

 

その情報はアーシアにとってショックだったようで、目に涙を浮かべている。それもそうだ。自分の信じていたものがこうも立て続けに裏切られると泣きたくもなるだろう。

 

 

「教会の者たちは私たち悪魔のことを邪悪な存在だと言うけれど、人間の悪意こそが、最も邪悪だと思うわ」

 

 

部長の瞳は憂いを帯びている。部長は悪魔だ。それでも優しい。とても優しい。長い間人間界にいるから、人間のような感情を持ってしまったおっしゃっていたけど、きっとそれだけじゃないんだろう。きっと部長は生来優しい女性なんだ。

 

 

「私が祐斗を悪魔に転生させた時、強烈な復讐心を持っていたわ。小さい時に聖剣にその才能を、人生を狂わされたからこそ悪魔としての生でそれらを有意義に使ってもらいたかった。あの子の剣の才能は、聖剣にこだわるにはもったいないものね」

 

 

聖剣に人生を狂わされた木場のことを部長は少しでも救ってあげたかったんだろう。聖剣なんかにこだわらずに、悪魔として力を振るい生きてくれと。でも、木場は結局───

 

 

「あの子は忘れられなかった。聖剣も、それに関わった者たちも」

 

 

神父を毛嫌いしていたことも、聖剣の情報にこだわったのも、結局木場は未だ囚われているんだろう。

 

 

それも当然だろうな。まっとうに生きることもできたはずなのに、全てを狂わされた挙句に殺されたんじゃ怨みも相当なものだろう。

 

 

そして部長は大きく息をついた。

 

 

「とにかく、しばらくは見守ることにするわ。今は聖剣のことで頭がいっぱいでしょうから。普段のあの子に戻ってくれるといいのだけれど」

 

 

そうして、部長の話は終わり俺たちは床に就いた。

 

 

side OUT




二章最終話は時間軸がバラバラになってるんで、あれ?と思うかもしれませんがご容赦下さい。


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