ハイスクールD×D 駒王学園の第三勢力 作:空☆条☆承☆太☆郎☆
「敵に代行者くずれの魔術使いがいたぞ」
あの後、結界の解除と共にグレモリー部長が眷族を引き連れて跳んできた。そして彼女たちは手負いの兵藤を回収し、俺と衛宮は敵について話をするべく雪ノ下の家と向かった。
「そう。それで、連中の企みは分かったのかしら?」
「いや…ただ、さっき話したシスターがその企みの要であることは間違いない」
俺がそう言うと、雪ノ下は頷きながらシスター…アーシア・アルジェントに関することを諳んじた。
「アーシア・アルジェント…その身に宿すあらゆる傷を癒す聖なる力によって一時期教会の一部で聖女として祭り上げられていた…しかし、手負いの悪魔を治療した為に魔女の烙印を押され教会を追放…」
雪ノ下のその顔は暗いものだった。やっぱりそれで間違いないよな…
「何だよそれ!?勝手すぎるだろ!!」
俺の隣に座っている衛宮が声を荒らげる。…そうだよな。こいつはこんな理不尽を許せない。こいつの掲げる理想からしてみれば、許せる道理ではないのだろう。
「連中は町外れの廃教会を根城にしているようね」
衛宮の言葉を流しながら、雪ノ下は写真を何枚か取り出して机の上に並べる。それは、夜な夜な廃教会に出入りしている人影を写していた。
「俺はあの子を助けに行く!」
「駄目よ、衛宮君」
「どうしてだ、雪ノ下!?」
「この連中の背後には堕天使がいるわ。独自に動いているか、組織として動いているのかで、私たちが介入できるかどうかが変わってくる。迂闊に動くと戦争になるわ」
「…っ!」
相手のバックに堕天使がいる。その言葉の意味が分からないほど衛宮も馬鹿ではないだろう。未だ大昔にあった三つ巴の戦争による、悪魔、天使、堕天使の三勢力間の睨み合いは続いている。
「…もう遅いから、あとは明日にしましょう」
雪ノ下の言葉により、今日はお開きとなった。衛宮は先に出ていき、俺は玄関で雪ノ下に呼び止められた。
「比企谷君。彼をお願い」
予想通りの言葉だな。あいつとの付き合いはそこそこ長い。この後絶対に衛宮はあのシスターを助けにいくのだろうということが分かっての言葉だ。
「…ああ。…ていうか、あいつのことは遠坂に任せんのが一番だろうに」
「彼女に任せると一緒に無茶をやるかもしれないでしょう?ストッパーになることもあれば、ブースターになることもある。だから、あなたに任せるのよ。それに、あなたと彼、似た者同士でしょう?」
「…あいつと一緒にするなよ」
そして、俺は帰路へついた。
side ISSEI
「…アーシア」
昨晩の傷を心配してか、部長に学校を休むように言われ、俺は自室に篭っていた。アーシア…いや彼女を含む教会には関わらないように部長に念を押された。…それでも、助けたい。あんな優しい娘があのクソ神父の所にいちゃいけないんだ…。
「俺が…弱いから…」
あいつを倒せる力があれば、あの娘の手を取れたのかもしれない。
「はぁ…気晴らしに外に出てみるか」
そう独り言ちて、ベッドから身を起こし身仕度を整える。
「いってきます」
家には昼間誰もいないが、いつもの習慣でその言葉が口を出た。
しばらく歩いていたが、特に行く場所を決めていなかったので、俺は今学校の近所の児童公園のベンチに座っている。
「…強くなりたい」
散歩をしながらずっと考えていた。アーシアのことや俺の悪魔人生のこと。結局どうやってアーシアを助けるのかは出てこずじまいだった。それに、アーシアがそうされることを望んでいるのかも分からない。…でもあんな野郎がいるような職場で働きたくはないだろう。…いや、これは俺個人の考えだ。
でも、やっぱり一番今思うことは、強くなりたいということだ。強くなきゃ、守れない。そうだ。強くなるんだ!この足の傷が癒えたらトレーニングを始めよう!当面はあのクソ神父より強くなることを目標にしよう!
「…色々無理矢理まとめたけど、とりあえずは昼飯だな」
スッキリしたので、昼飯を買いに行こうとベンチから重い腰を上げ、公園の入り口へと向かうと、長い金髪が視界に入った。
「…アーシア?」
驚きで、心臓の鼓動が早くなる。
「…イッセーさん?」
「え、えと、あの…その…」
「あ、あのご注文は…」
場所は変わって繁華街のハンバーガーショップ。アーシアとの偶然の再会から、二人でここにやって来た。彼女はこの手の店に入ったことがないらしく、注文をするのに悪戦苦闘していた。店員も同じく困っていた。
「すみません。俺と同じのでお願いします」
「わかりました」
そうして、オーダーしたあと、トレーを持って席に着いた。まあ、アーシアは日本語を話せないので、ここで手間取るのは当たり前のことだ。
「うう…ごめんなさいイッセーさん」
「いいって、別に。アーシアはまだ日本語を話せないんだから。おいおい慣れてけばいいんだよ。…さ、食べようぜ!」
早速ハンバーガーを手に取って包み紙を開けようとすると、アーシアは珍しそうにハンバーガーを見つめていた。…もしかして、食べ方知らないのか?よし!ここは一丁お手本を見せてあげるかな!
「お嬢さん。ハンバーガーっていうのはこのようにして食べるんですよ!」
包み紙を少し剥がして一気にバンズにかぶりついて見せる。おほっ、久しぶりに食べたから美味いな!
「そ、そんな風に食べるんですか!?すごいです!デカルチャーです!」
…あれ?なんだか凄くマニアックな単語が聞こえた気がするなぁ……きっと気のせいだろ…ま、まあ、喜んでくれてるようだしな。
「このポテトもこうやって手づかみで食べるんだ」
「なるほど!」
もきゅもきゅとハンバーガーを頬張り、ポテトを食べ、ドリンクを飲む。その反応一つ一つが新鮮で、可愛い。凄く可愛い!
「ハンバーガーって美味しいんですね!私、テレビでしか見たことなくて」
「そうなのか?じゃあ、普段は何を食べてるの?」
「パンとスープが主で、それに併せてお野菜やパスタのお料理も食べますよ」
質素なんだなぁ、教会の食事って。…それよりも、聞きたいことはたくさんある。けれど、それを聞くのはなんだか野暮な気もする。それに、聞くことで今楽しそうにしているアーシアを憂鬱な気持ちにさせたくないしな。
「あのさ、アーシア」
「な、なんでふか?」
急いでハンバーガーを咀嚼して飲み込みながら、アーシアは聞き返してきた。
「遊びに行こう!今日はぱーっとさ!」
「え?」
「ゲーセン行こう!」
side OUT
side HACHIMAN
「学校サボってあいつは何やってるんだ?」
今朝学校に行くと、衛宮が来ていないと雪ノ下から報告を受けて、俺が捜すことになった。遠坂については由比ヶ浜と雪ノ下がなんとかすると言っていた。件の廃教会に行ってみたが、周りを結界で囲んでいるのか入ることはできなかった。探ってみると、この町の外周部五ヶ所に起点が設定されているらしく、恐らくは衛宮はそれを潰しに行ったんだろう。
そうして、起点の一つへと向かっていると、途中の繁華街で兵藤とアーシア・アルジェントがゲームセンターに入っていくのが見えた。
「…衛宮かあいつらか…いや、今は衛宮だ」
この時俺はミスをした。その結果として、一つの最悪の結果を迎えることになるとは、この時は露ほども思わなかった。
side OUT
side SHIROU
「これで三つ目か…」
教会を囲む結界を解除するためには、あと二つ起点を潰さなければならない。既に日は傾き、もうすぐ夜が来るだろう。
「あと二時間ぐらいかかるか…くっ…」
疲労によるものなのか、身体がふらつく。こんなことで、へばってる場合じゃない!あの娘を助ける為にも!俺が目指す正義の味方になる為にも!
「…急がないと!」
胸騒ぎがする。とても嫌な胸騒ぎが。
「あった!四つ目!」
町の山に面した工事現場。そこに四つ目の起点を見つけた。ただ、起点を壊していくだけなら時間も体力もそんなには要らない。今俺の目の前には、土で出来た鎧武者が三体、起点を囲うように立っている。こいつらは、これまでの三つの場所にもいた。いや、在ったか。それとも、設置されていたと言うべきなのか…
そんなことは、今はどうでもいい!
「クソ!はぁぁぁぁっっ!!!」
ガキィッと俺の強化した刀と鎧武者の刀が鍔迫り合う。残った二体も一気に襲いかかってくる。
「ぐッ!?」
それぞれが刀を振りかざし、切りかかってくるのを躱し、或いは受け止め、できた隙を突き、斬撃を繰り出す。
「うぉぉぉぉぉ!!!」
袈裟懸けに一体を斬り倒し、もう一体の腕を斬り落とすが、しとめるにはいかなかった。
「もう一体は!?」
いない!?何処だ!?地面に倒れている一体と腕を落とした一体。確認できたのはそれだけだった。
「っ!?しまった!!」
地面を掘って後ろに回り込んでいた一体の刃が迫ってくる。
「くっ!?」
だが、その刃が俺に振り下ろされることはなかった。
「間一髪だったな、衛宮」
「八…幡」
side OUT
side HACHIMAN
「間一髪だったな、衛宮」
衛宮の背後から迫る鎧武者を斬り伏せ、残る二体に向き直る。
「ありがとう、八幡。助かった…」
「一個貸しだからな、衛宮。ここの起点潰せば結界は解ける。さっさと終わらせるぞ」
「ああ」
残りの鎧武者の損傷が直っている。核を潰さないと再生するタイプのゴーレムか。
「穴掘ったり器用なプログラムを入れられてるようだが、どうにも、腑に落ちないな」
「どういうことだ?」
「簡単過ぎるんだよ。こいつらの相手が。それに、わざわざ町の外周部に五ヶ所に分けて起点を設置してあるのもな」
そう。例の廃教会から離れすぎている。ある程度の罠を置いているとはいえ、壊されることを想定しているのではないか。そう思えるほどに、簡単なのだ。
「あの、代行者擬きがシスターが計画の要になるとかなんとか言ってたろ?」
「何かの儀式でもしようっての、か!!」
衛宮が鎧武者を蹴り倒し、核のある場所に刀を突き立てる。
「恐らくはな。そんでこれが、時間稼ぎになってる!」
向かってきた鎧武者を真っ二つにしながら、そう結論付ける。
「急ぐぞ、衛宮」
「分かってる!」
side OUT
side ISSEI
「ダメよ。何度も言わせないで!あのシスターの救出は認められないわ」
部長が俺の頬を叩きながらそう言った。アーシアと遊んだあと、立ち寄った公園で、アーシアの身の上話を聞いた。そのすぐ後に、俺が悪魔になった元凶の堕天使…天野夕麻、いやレイナーレが現れ、アーシアを連れ去った。
そして、すぐに学校へ向かい、部長に事の詳細を伝え、アーシアを助ける為にあの教会へ向かうことを提案した。しかし、部長はこの件に関しては一切の関わらないと言ってきた。勿論、俺は納得なんてできるわけもなく、部長に詰め寄った。そして、叩かれた。
予想以上に、その平手打ちは痛かった。打たれた頬も。そして何より心が痛かった。あれだけ期待をしてくれた部長を裏切ることばかり言ってるからな。
「だったら、それなら、俺一人でも行きます。あいつが言ってた儀式ってのも気になるし、アーシアが危険な目にあうかもしれないから!俺はアーシアと友だちになりました。大事な友だちなんです!」
「絶対にダメよ!何百年、何千年と私たち悪魔と堕天使は睨み合ってきたのよ。あなたの行動が、私たちに多大な影響を及ぼすのよ!あなたはグレモリー眷属の悪魔なの!それを自覚なさい!」
「だったら、俺を眷属から外してください!俺独りで行きます!」
これだけは、譲るわけにはいかない。迷惑ばかりかけてるのは分かってる。でも、どうしても譲れない!
「そんなことができるはずないでしょう!どうしてわかってくれないの!?」
激昂する部長と睨み合う。視線をずらさずに、真っ正面からじっと見つめる。
「あなたが、どれだけあの子のことを敵ではないと言っても、その立場がそれを許さないわ。イッセー、彼女のことは忘れなさい」
そんなことを言われても忘れられるわけがない!と、そこへ部長に朱乃さんがそっと近づき、耳打ちする。
「大事な用事ができたわ。私と朱乃は少し外へ出るわね」
「部長!まだ、話は終わりじゃー」
言葉を遮るように、部長は人差し指を俺の口元へ添える。
「イッセー、一つ話しておくわ」
そう部長は前置きし、話を続ける。
「あなたの駒『兵士』は、決して弱い駒じゃないわ。この駒には他の駒にはない特殊な力があるの。それは『プロモーション』よ」
「『プロモーション』?」
「ええ。実際のチェス同様に、『兵士』は相手の陣地の最深部へ進入した時に、『王』以外の駒に昇格することができるの。だからイッセー、あなたは私が敵の陣地と認めた場所で、『王』以外の駒に変ずることができるの」
なるほど!すると俺は、木場の『騎士』や小猫ちゃんの『戦車』、或いは朱乃さんの『女王』にもなれるってのか!
「まだあなたは悪魔としての日が浅いから最強の駒たる『女王』には負担がかかって現時点ではなれないでしょうが、それ以外の駒には変化できる」
『女王』以外か。それなら、その場に合わせて他の駒に随時変化していけばいいのか!それと、俺の
「それともう一つ、神器についてよ。これだけは覚えておいて」
部長が俺の頬に優しく触れる。
「想いなさい。神器は想いの力で動き出すの。あなたが悪魔でもその力は消えない。強く想えば想うほどに、神器は応えるわ」
想いの、力。それが強ければ、こいつは動いてくれるのか。俺の左腕に宿るこいつが。
「最後にイッセー、絶対にこれだけは忘れないこと。『兵士』でも『王』を取れるわ。これは、チェスの基本で、悪魔の駒でも変わらない事実なの。あなたは、強くなれるわ」
それだけ言い残すと部長は朱乃さんと共に魔方陣から何処かへジャンプしてしまった。部室にいるのは俺と木場と小猫ちゃんのみ。
「行くのかい?」
立ち去ろうとする俺を木場が呼び止めた。
「ああ。行かないといけない。アーシアは俺の友達だからな。俺が助けなきゃならないんだ」
「死ぬよ?いくら神器を持っていても、プロモーションを使っても、祓魔師の集団と堕天使を一人でなんて相手にできない」
そりゃそうだ。んなもんは分かってる。あのクソ神父一人相手でもボコボコにされたんだ。
「構いやしない。死んだとしても、アーシアだけは逃がしてみせるさ」
「いい覚悟、と言いたいけれど。無謀だよ。それは」
「だったら、どうしろっていうんだよ!」
「僕も行く」
「はぁ!?」
予想外の言葉に俺は一瞬言葉を失った。だって、完全にこれは俺の我儘なんだから。当然止められでもすると思ったし。
「僕は、そのアーシアさんをよく知らないけれど、君は僕の仲間だ。部長はああ仰ってたけど、僕はキミの意志を尊重したいとも思ってる。それに、個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。それこそ憎いほどに、ね」
そう言う木場の瞳には暗い影が見えた。こいつにもきっと過去に何かあったんだろう。
「部長もおっしゃっていただろう?敵の陣地と認めた場所では王以外の駒になれるって。それはつまり、遠回しに『その教会をリアス・グレモリーの敵がいる陣地だと認めた』ってことだよね」
「あっ」
なるほどね。やっと気づいたよ。これで俺のプロモーション発動条件が整ったってことか。
「部長はキミに行ってもいいって遠回しに認めてくれたんだよ。僕にキミのフォローをしろってことも込みだと思うけど。部長にも考えがあるってことだよ。そうじゃないなら、力づくにでもキミを止めると思うよ」
苦笑しながら木場はそう言った。ありがとうございます、部長!
「……二人だけでは不安なので、私も行きます」
「こ、小猫ちゃん!ありがとう!俺は猛烈に感動したよ!」
無表情で何を考えているのか分からないけれど、その内に秘めた優しさしに触れられた気がするよ!
「あ、あれ?僕も行くんだけど……?」
放置されて、引きつった笑みを浮かべる木場を見て、困ってるイケメンってちょっと可愛いとか思ってしまったが、これならいける!いけるぞ!
「よっしゃ!三人で救出作戦といきますか!待ってろ、アーシア!」
こうして、俺たちは教会へ向かって動き出した。
side OUT
恐らく、次で一巻の内容を終えられると思います。
できれば、近日中にあげられるように頑張ります。