記憶のない青年と謎の世界   作:夢幻鎧武

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第18話

 キャジャとファルコンは、神官長とともに女神様が眠る場所へやって来ていた。

 最初は渋々だった神官長だが、これ以上隠し通せないと知ってなのか、仕方なく女神がいる神殿へと案内する。

 神殿とはいっても、地下に設けているもので、豪華絢爛なものではない。

 薄暗い場所のため、女神がいるかどうかすら、不安になってくる。

 隠されているということがすぐにわかる。

 

「本当に女神様がいたのか」

 

 ファルコンのそんな問いかけにキャジャがうなずいた。

 彼らには、本当にいることなど知らされていない。

 

「そうですね。驚きましたよ。…で、そろそろかな?」

 

 もうすぐ女神様にあえる。

 そう考え、扉を開けるとそこには、リリアというあの女性神官が、鋭い視線をこちらに向け立っていた。

 その様子は、まるで女神様を守るナイトのようだ。

 神官というよりは、戦いなれた戦士の目をしている。

 

「なぜリリア、お前がここにいる。それに、なぜこの場所を知っている」

 

 神官長の言葉に、リリアは、もはや冷めた視線を向けていた。もう、神官でいる必要はないという顔をして。

 そもそも、リリアはあくまで情報を得るためと、女神を守るために神官になっただけだ。

 

 全ては陛下のため…

 本来不服だが、ビルスにも協力し、奴のいう通り潜入していたのも全て。

 

 だが、もはやその意味もない。

 女神の居場所も、記憶を取り戻したイスカス、いや陛下によって伝えられていた。

 そもそも、舞様と陛下の結び付きは強い。

 陛下の問いかけなら、舞様も答える。

 そうして、女神いや舞様を見つけた今、無理に神官を続ける意味がない。

 あくまで、本来の主は陛下と舞様であり、この神官長ではないのだから。

 これでビルスの思惑に乗らなくてすむ。

 

 そう思ったら、リリアは自然と笑みを浮かべていたが、すぐに我に返って、鋭い顔を神官長に向けていた。

 

「本来なら知り得ない事と言いたいのだろうが、生憎、女神は我らの世界にいるべき存在。封印されていても、陛下とは意思を通じあわせることができる。だからこそ、女神は陛下に全てを伝えた。私はその陛下より聞いているため、この場所を知ることができた」

 

 そう、それが当たり前のこと。

 舞の力を知っているからこそ、そんなに簡単に扱う人を信じられないでいた。

 紘汰にしろ舞にしろ、運命すら覆す、破壊と創造の力を持っている。

 人には過ぎた力。

 それを使うとなれば、いつかその代償を受けるだろうというのに…

 舞はきっとそれを恐れている。

 だからこそ、もう終わらそうと思ったに違いない。

 ただ、ここから出ることもできない。

 ここから救い出すことが出来るのは、紘汰のみだ。

 今リリアに出来ることは、紘汰がくるまで舞を守る事だけだった。

 

「陛下とはなんだ?もしかして、イスカス…いや魔王なのか?つまりお前は魔族。でも女神はなぜ魔王に?」

 

 ファルコンは訳が分からなくなっている。

 そもそもイスカスが、自分で魔王と言っていた。

 つまりあいつは敵になっている。

 この女もそう言う存在なのかもしれないと…

 

「魔王?そのような下らない者と一緒にされては困る。あの方は、我々の王にして唯一無二の存在。…あの方が魔王と自ら言ったのは、ただご自分の力を取り戻すために言ったまでの事。今頃その力も取り戻し、ここにやってくる頃だと。…あと、私は魔族ではない。そのようなくだらない存在と一緒にするな。先ほども言った通り、このような世界ではない、異世界から来たと言っただろう」

 

 それが当たり前の事だというリリアに対して、キャジャが剣を抜いて、リリアに襲いかかっていく。

 リリアの言葉は嘘だと否定するように。

 理解が出来ず動けずにいるファルコンをしり目に、激しくふるう剣をリリアは軽々と避けていた。

 

「仕方ない。本来は陛下が戻られてからと思っていたが」

 

 リリアはため息とともに、その姿を変化させた。

 赤いの長い髪に金色の目を持つ少女に。

 彼女の本来の武器である、鉄扇のようなものを構える。

 風を操ることができる、それがリリアいや、リクシアの能力だ。

 あとは、姿を変化させることができる能力をもつ。

 ビルスとは違い、他の者へ擬態することは出来ないが、髪の色や目の色を変えることくらいなら可能だ。

 そもそも、リクシアは間者として敵の中に潜り込むことを得意としている。

 そのため、紘汰のためにその力を使いたいと思っているが、彼女の主である紘汰がそれを望まないので、今までそんなにこの能力を使ったことはないが、元々紘汰のためになら、使うことに躊躇いはない。

 

「早く逃げろ。俺が押さえているから」

 

 キャジャがリクシアの鉄扇を、剣で押さえている。

 

「逃げられる筈ないだろう」

 

 キャジャにそう言われたが、納得できる筈もなく、ファルコンも自ら剣を抜いてリクシアに襲いかかる。

 リクシアは、その剣を逃げずに受け止めた。

 後ろにある、舞が封印されている石を守るために。

 

「やりにくい。だが、人は傷つけるなという命に従わなければならない」

 

 普段なら、リクシアの実力ならこの程度なら、平然と倒せるのだが、常々紘汰から人を傷つけてはいけないと、言われ続けていたためか、防戦一方になってしまう。

 そもそも、攻撃を仕掛けていくのは得意だが、力の加減をして守るのは不得意だ。

 

 そんな戦いの隙をついて、神官長がこっそり、舞が封印されている石に近づいたその時、目の前に二人の人物が現れた。

 神官長は驚愕の表情とともに、すぐにおびえた表情を見せる。

 

「お前は魔王」

 

 その言葉に、紘汰は苦笑するしかなかった。

 もう魔王でいる必要もないため、やめていたのだが、その言葉に頭きていたのか、ローズがさっと神官長を、ヘルヘイムの植物を使って身動きをとれなくする。

 

「ローズ、やりすぎだ。…もう魔王でいる必要がないから、とっくに魔王なんてやめてるよ。今はただ、舞を取り返しに来ただけだ。そもそも、この力は人が簡単に扱っていいものじゃない。やがてその報いを受けてしまうことになる。そろそろ頃合いじゃないか?人に過ぎたる力、もうそれに頼るのをやめるのも」

 

「な…なにを。貴様はやはり、女神様の力を狙っているのか。あの神秘的な力を」

 

「別に力なんて興味ない。俺はただ、舞を自由にしたいだけだ。あのな、舞を勝手に女神にしたてるのはいいけどな、そもそもこうやって舞を封印したのは、そこにいる男だ。俺はお前だけは許さねえ。なるほどな、そうやって皆からの信頼を得て、潜り込み、全て手に入れた後消すつもりだったというわけか」

 

 そう言って、紘汰がさっと見たのは今リクシアが戦っている二人だ。

 意味の分からない言葉に、ファルコンは手を止めているが、キャジャはリクシアに剣をふるい続けている。

 

「どういうことなんだ。あの二人が…だが、お前なんかのいうことなんて信用が」

 

「二人じゃない。反応をみたらわかるだろう。全ての元凶は奴だ。…リクシア、そいつは魔族だ。それに、マーガレットを死に追いやったのもそいつだ。舞をこんな風にしたのも、俺の記憶がなくなっていたのも、そいつが全て計画したことだ」

 

「はあ?何言ってんだ。やはり、イスカス。お前は、魔王に完全になってんだな。人類の敵が何を言ってる」

 

「それは人には効果あるかもしれないが、残念ながら、我らの陛下は記憶を取り戻されている。我らにとって陛下こそ全て。陛下の命に従い、貴様を許さない。…全力で倒すから覚悟しておけばいい。マーガレットを知っているのならば、我らの事を知っているだろう。お前たちでは相手にすらならない存在だ」

 

 先程まで人を相手にしていた時と違って、鉄扇で風を操り竜巻のようなものを起こして攻撃を仕掛けている。

 キャジャはなんとかそれをよけているが、かなり追い込まれていた。

 だからこそ、ファルコンが動こうとしたとき、紘汰がさっと右手を翳してヘルヘイムの植物で、その動きを封じた。

 

「今のリクシアに近づくのは危険だ。あんた達を傷つけたくない。…舞、少しばかり待っててほしい。俺はあいつを倒す」

 

 さっと、持っていた極キーを取りだすと、紘汰はアーマードライダー鎧武極アームズへと変身した。

 あきらかに、キャジャの顔が変わっている。

 

「くそ、魔王め。お前の好きにさせない。必ず、お前を倒す。な…何をする」

 

 そんなことを言いながら、キャジャの姿がさっとあの魔の植物がまきつき、消えた。

 すぐさま鎧武は追いかけようとしたが、もはやその居場所がわからないため、とりあえず変身を解いていた。

 

「陛下、どうなされますか」

 

 リクシアは、いつものように紘汰の傍にいくと、頭を垂れた。

 紘汰は深いため息をついて、頭を上げるように促している。

 

「あのさ、そういうのほんと、やめような。…とりあえず舞を起こして、それからあいつを追いかけよう。恐らく魔王城で待ってるってことだろう?まあ、俺一人でも平気だけど」

 

「何をおっしゃいます。また、あのようになられては」

 

「まて、キャジャはお前を魔王だと言っている。私はイスカス、お前を信用できない」

 

 ファルコンにそう言われた紘汰は、ふっと笑ったのちにそのまま、石に封印されている舞の元にやってきている。

 

「やめろ、女神様がいなくなったら、この世界は…やはり、力が目当てか?」

 

 神官長の言葉に、ローズがさっと鞭を取り出し、今にも攻撃しかかっていたので、紘汰がさっとそれを止めた。

 

「やめろ、ローズ。…俺はもう舞から力もらってるから、これ以上必要ない。それに、力が目当てで利用してたのはあんた達だろう?まあ、詳しくは女神様から聞けばいいんじゃないか?」

 

 そう言って、さっと移動し舞の前に現れる。

 愛おしそうに、その石に眠る舞を見た後、そっと笑いかけた。

 

「遅くなってごめんな。迎えにきたよ、舞。さっさと終わらせて、俺達の世界に戻ろう」

 

 そう言って石に手を翳しただけで、その石にひびが入り割れる。

 すると、今まで固定されていた舞が、ふらっと倒れてきた。

 紘汰はすぐさま、優しく受け止めると、そっと笑いかけていた。

 

「遅いよ。ずっと待ってたんだからね」

 

「ごめん。ほんとに…あと、マーガレットの事は…」

 

「しってる。それは紘汰だけの問題じゃない。傍にいて気付いてあげられなかった私にも責任がある。…でも、許せないから、敵はとってあげよう」

 

「そうだな。俺も許せない」

 

 まさか本当に女神と親しげに話すなどと思ってもみなかった、神官長とファルコンは口をあんぐり開けている。

 

「待ってください。女神様。…貴方がいなくなれば、この世界の結界が…」

 

「それは魔族を倒し、魔の森を紘汰がなんとかするまでの間は、私が維持するから大丈夫。…でも、それが終わったら、もうこの力を利用しないでほしいの。これはそんな単純な力じゃない。人には過ぎた力だから。あと、さっき紘汰が言ってたことは本当よ。全てキャジャとかいうあの男が仕組んだこと。紘汰には私の力、必要ないしね」

 

「じゃあ、イスカスは一体何なんだ?女神の力を必要としない…でも魔王でもないって」

 

「俺の本当の名は、葛葉紘汰。異世界からきたものだ。まあ、ちょっと罠にかかって、記憶なくして力を封印されてたけど、もともと俺は異世界と関わるの好きじゃないから、距離おいてたんだけどな…だから、これが終わったらもうここへ来ることはない。…それから、魔王じゃないけど、似たようなものかもな。まあ、別にそれを信じてもらわなくてもいい。自分がしたいから、この世界を救う。リールのためにもな」

 

 そういうと、さっと右手を翳すと、二人の拘束をといた。

 実際、ありえないほどの力の違いをみて争う事はやめているが、信じていいのかファルコンは正直迷っていた。

 

「主様、そろそろ参りましょう。魔王城で全てを終わらして方が、人の被害も」

 

「ローズ、そうだよな。…リクシアは、舞を守ってほしい。舞は、この世界の人を頼んでいいか?俺はあいつらを倒す」

 

「わかった。ただ、気を付けてね。またあんな風になったら」

 

「もうならないよ。今度はもう、気にすることはないから」

 

 前と違い、マーガレットがいたり、舞が捕まったりしているわけではない。

 それに、キャジャがガルジャという魔王に近い存在であり、魔族を束ねていることも知っている。

 あいつの本心も。

 だからこそ、迷う必要もなかった。

 

「なんで、人を助ける。お前たちには関係ない事じゃあ」

 

「困っているのに助けないなんて俺にはできないし。今までよくしてもらったからな。それじゃおかしいのか?」

 

「紘汰。きっとこの人たち、あんたの事知らないから。分んないと思う。紘汰って、こういう性格だから。あんま気にしないで。…だけど、安心して。紘汰は必ず約束は果たすから」

 

「よくわからないが、結局我々は…」

 

「相手が悪い。奴らは魔族なんて名乗ってるけど、俺達と似た存在。人が敵う筈がない。だから、まあ勝手に助かったと思ったらいい」

 

 そこまで言うと、紘汰はローズと共にその姿を消していた。

 ファルコンと神官長はまるで狐につままれたような顔をしている。

 

「しかし、女神と同じ力をもつとなれば…英雄ではなく…か…神!」

 

「あいつはそんなつもりないから。私だって、貴方たちが勝手にそう呼んだだけでしょ?その呼び名、私もあいつも苦手だから」

 

 その答えに何とも言えない顔を神官長とファルコンはしていたが、もはや信用するも何も、紘汰達にすべて任せるしかなかった。

 

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