記憶のない青年と謎の世界   作:夢幻鎧武

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第19話

 魔王城は、すでに魔物と呼ばれるインベスに近いもので囲まれていた。

 本当は魔王城の内部に移動しようとしたが、なんらかの力が干渉して外部にまでしか行くことはできなかった。

 とはいっても、もはや葛葉紘汰として、その力を取り戻した紘汰にとって、魔物など敵ではない。

 

「主様、わざわざこんな雑魚に貴方様の力を見せる必要はありませんわよ。ここはワタクシにお任せ下さいまし」

 

 ローズがさっと鞭を取りだすと、紘汰の前にでる。

 とはいっても、敵の数は100を超えている。

 

「いや、お前だけに任せちゃおけねえ。俺だって戦う」

 

 さっと紘汰は目を閉じる。

 

「変身」

 

 その一言だけで、アーマードライダー鎧武極アームズへと変身した。

 さっと鎧武は、魔物を見据える。

 

「とっとと、頭、あんた一人良い思いしようなんざ、このワシが許しませんぜ」

 

 自分たちの背後から投げかけられた言葉に、鎧武とローズがさっと後ろを振り向くとそこには、スキンヘッドの大男が笑っている。

 聖騎士だったときとは違う、どこか嬉しそうな顔をしたゼクスというあの男だ。

 

「あああ、きちゃったのか…折角、久しぶりに戦えると思ったんだけどな。折角の活躍の場とられるとは…しゃあないか」

 

「頭、そりゃないですぜ。折角助けにきてやったのに」

 

 あの巨大な鉄槌を軽々操ると、近くの魔物たちを軽く倒している。

 

「てか、頭は俺じゃなかったんじゃないのか?散々言ってたじゃねえか」

 

「あれは、あんたが記憶がなかったからで…って、わかって言いますか。そんなにいじめるなんて、ひどいですぜ。頭」

 

「冗談はさておいて、任せたぜ。ゼクス、ローズ。俺は先へ行く」

 

 その言葉に二人は笑って頷いていた。

 

「もちろんですわ。主様の邪魔をするものはワタクシたちにお任せください」

 

「頭のためにも、こっからは本気でいくとしますかね。頭、せいぜい気を付けて」

 

「誰に言ってんだ。ゼクス、お前も気をつけろよ。とっとと片付けて、皆であの世界に戻ろう」

 

「へい」

 

「かしこまりました」

 

 二人の言葉を聞いたのち、二人は紘汰のために道を開けるため、手短の魔物たちを次々と倒していく。

 これでも本来の力の十分の一ほどの力。

 魔族というあの存在のためにも、力を全て見せているわけではない。

 だからこそ、紘汰は安心してこの二人に全て任せ、先へと進んでいく。

 そこに、不安などない。

 

 城の中に入ると、外側とは違って静まり返っている。

 鎧武の足音だけが、静まり返った城の中に鳴り響く。

 

「まさか、記憶を思い出すとは…計算違いだった」

 

 キャジャいや、ガルジャという魔族がじっと鎧武を睨みつけている。

 鎧武もじっと、ガルジャを見返していた。

 

「端から、マーガレットをはめる気だったんだな。あんたの狙いは、俺の力。…最低だな」

 

 そう、あの時と同じ。

 あの時、こいつは嘲笑っていた。

 紘汰や舞が封印される様子を、ただ嘲笑してみていた。

 その時の光景が、ずっと目から離れないでいる。

 

「お前、肝心な事を忘れていないか?」

 

「何のことだ」

 

 ガルジャが何かの合図をすると、そこから水色の髪の青年がリールをつれてやってくる。

 うつろな目をしたリールをみた、ガルジャがふっと笑った。

 

「さあ、その変な姿から元に戻れ。貴様の戦闘形態がそれだということは、マーガレットより聞いてある」

 

「貴様…」

 

 悔しかったが、紘汰は仕方なく変身をといて、はじまりの男と呼ばれるあの姿でガルジャを睨みつけた。

 

「さて、もはやお前を封印することは出来ない。ならば、我らと共にきてもらおうか?」

 

「断る。お前らのいいなりになるつもりはない」

 

 その言葉に、青年がナイフを持ち出す。

 リールのその首に、すっと赤い一筋の線をつけた。

 リールは操られているためか、傷つけられても全く身動きをしない。

 

「それ以上言うと、この子の命ないぞ。俺にとって人間なんて取るに足りない存在なのは、知ってるんだろう?」

 

 紘汰はただ黙って、冷たい目をガルジャに向けている。

 冷たい闘争心にもえる、その赤い目に怒りの感情がほとばしる。

 その様子がよほどおかしいのか、ずっと笑い続けていた。

 

 だがその笑いが凍りつくことになる。

 突然、水色の髪の青年がばたりと倒れていた。

 ガルジャは隣で起こる恐ろしいことに、驚愕の表情を見せる。

 あのすべての感情を失っているはずのリールが、冷たい目で青年に自分に突きつけられていたはずのナイフを刺していた。

 

「な…なにが」

 

「なにが?簡単な事。あんた達がこの女を狙う事は見え見え。ならば、私がこの女に化けたまで。…まあ、この能力は、私とビルス様のみ使えるが…」

 

 そう言ってさっと自分に手を当てると、その姿が変化する。

 緑色の瞳に緑色の髪をもつ女性に…

 その姿に、ガルジャは見覚えがあった。

 

「き、貴様は、ルーシャ。ならば、リールは」

 

「我が名はサリア。ビルス様にのみ使えしもの。リールは、ビルス様が守ってる。まあ、貴様のような下賤なものが勝てる訳がない。…さて、後は任せた。別にお前を認めた訳ではない」

 

 そう言って、さっと紘汰を冷たい目で見つめている。そもそも、言葉通りサリアはビルスにのみ使えている。紘汰のことはただの弱い存在だという認識しきされていない。

 だからこそ、サリアの言葉に紘汰は苦笑していたが、やがて笑みを浮かべた。

 

「ありがとうな、サリア。ビルスによろしく伝えてくれ。…さてと、そういう訳で、もはや遠慮いらないんでな。全力でお前を倒す。お前だけはぜってえ許さねえ」

 

 マーガレットにしてきたこと、そして、舞を封印したこと。

 さらには、この世界にしてきたことの数々を考えれば、到底許されないことだ。

 それも、目的は私利私欲のため。

 だからこそ、このガルジャに対しては手加減をしないですむ。

 何より、ガルジャは魔族。

 自分に近い存在だからこそ、遠慮する必要もない。

 

「ま…待ってくれ。は、話し合えばわかる」

 

 ガルジャは焦っていた。

 正直、紘汰に敵わないことは一番知っていた。

 マーガレットから聞いていたのと、実際にその力を見たことがあったためだ。

 

「話し合うだと…散々こんなことしてきて、今更何いってんだ。そもそも、マーガレットは俺達の世界の住民だ。それをあんな目にあわせて、待ってくれなんて、都合よすぎるだろ?さっきも言った通り、お前だけは許せねえ」

 

 自然と拳に力がこもる。

 全ての現況であり、マーガレットを追い込んだもの。

 自分にも責任があるが、最後マーガレットを死に追いやったのは、こいつである。

 

「変身」

 

 力強い言葉と共に、紘汰はまた、アーマードライダー鎧武極アームズに変身する。

 とはいっても、もう勝負はついたようなものであった。

 ガルジャは、なんとか戦おうとしたが、そもそもの実力の違いから、もはや戦いにすらならなかった。

 

「そ…そんな」

 

 そう言って消え去っていく、ガルジャを見ながら、変身をといた紘汰の目からは涙がこぼれ落ちていた。

 

「マーガレット…ごめん。こんなことで、報いにもならないだろうけど。せめて、安らかに」

 

 死んだものを蘇らせる力など、紘汰でも持ち得ない力。

 もう、マーガレットは蘇ることもその姿を見ることもできない。

 だから、これで…

 

「何を泣いて、立ち止まっている。お前は我々の王だ。こんなところで止まる暇はないだろう」

 

 さっと姿を現したのはビルスと、ルーシャいやサリアに似た女だった。

 紘汰はビルスにふっと笑うと、そっとサリアに似た女によると、虚ろな少女に右手を翳す。

 その瞬間姿がリールの姿となり、そのまま倒れそうになる。

 紘汰はさっと黒い髪の、イスカスの姿へと変化するとさっとリールを抱えていた。

 

「やっぱり…この子」

 

「オーバーロード。この世界では魔族と呼ぶべき存在だといいたいのだろう?」

 

「そうだな。…変化させられたというより、元からのようだ。かなり無理してたんだな。力を押さえてなんとか味覚も…でもそんなに味しないだろうし。徐々にならしてたんだろうな」

 

「つまり、この世界にはやはりヘルヘイムの植物の浸食があったということか…だから、女神や救世主などの伝承があるというわけか。つまり、魔族はこの世界に残っていたオーバーロードの進化したものか、独自に残っていたもの。なるほど、からくりが解ければ単純だな」

 

「まあ、単純なのかもしれないけど、それに振り回された人たちが可哀そうじゃないか。…さあ、どのみち終わったことだ。リールをルシスの元に送ったら、この世界の植物を全て撤去して戻るぞ」

 

 その言葉に、ビルスがため息をついている。

 

「甘い」

 

「なんとでもいえ、まあいいたいことは後で聞く。どうせ、あの世界では腐るほど時間あるしな」

 

「では、憂さ晴らしに残党狩りといくか」

 

 やっぱりイライラはたまっていたようだ。

 残っている魔族と魔物を全て、倒すという意気込みでいっている。

 それを苦笑しながら見送った紘汰は、イスカスの姿でそっとルシスの元に移動した。

 

 

 

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