暗闇と優しさとファミリアと   作:久幻月

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「Fervor,mei Sanguis」(沸き立て、我が血潮)――術式起動

「では、今宵の恐怖劇をはじめよう」


今回も完全に駄文です。


二話

 冒険者たちは、この大地の迷宮に眠る宝を目指し旅を続けていった者達。自らを痛め傷つけ、滅ぼすと知ってなお、進むことを選択し続ける。

 

 はるか昔のことだ。迷宮に眠りし何かが現れる前の話だ。

 神様は人間を救いたいと思っていた。と、それと同時に憧れも抱いていた。様々な性格、様々な生き方。汚くも美しく、全てを飲みこんでなお、分岐を続ける人間。

 神様は下を向いた。

 神様は足を伸ばした。制約に己が身を蝕もうと、大切な何かに触れるように、それに手を伸ばすために。

 だがそれを蝕むものがいた。神様が得ようとするものを壊したしまうもの。

 神様は困惑した。なぜ?と。

 それは神様が作り上げた全てを破壊するもの。人間を、神様を、全てを淘汰してなお、破壊しようとするもの。

 

 抗った。

 抵抗した。

 戦った。

 

 そして得たものは掛けがえのないものと知った。

 だがそれと同時に、世界をも破壊するのは人間自身だと知った。

 だがそれでも、人間と居ようと思った。

 だってそれは、家族だから見えるもの。家族だから見えないもの。

 だってそれは、触れれるからこそ知りえるもの。きっと上で見ているだけでは知りえなかったもの。

 だから、神様は道を導くため、誤っても進むため、一緒に居るのだと思う。

 

 家族《ファミリア》はそんなものじゃ砕けないと知っているから。

 仲間《ファミリア》は……。

 

 

 

 

 

 

「すごい変なところで終わってる…」

 

 読んでいた本が読み終わり、表紙を確認する。合同出版代表、「あなたに跪き隊会長メルクリウス」と書かれた本を確認し、本棚に仕舞おうと座っていた横広いウッドチェアから立ち上がり辺りを見回し、首を伸ばし上を見る。

 周りは本、本、本。町にある図書館にも匹敵しそうなほどの本の量。個人で持っているのは此処ことロキ・ファミリアか、あるいはあるかはわからないが此処(ロキ・ファミリア)に並ぶフレイヤ・ファミリアぐらいではないだろうか。

 そんなロキ・ファミリアの本倉庫は小説から英雄譚、歴史書から娯楽用の本まで、果てには使い終わった魔道書までもが鎮座する本棚、ここはそんな場所。

 そして本を読んでいた少年、サクヤ・ロキはそんな場所が好きだった。

 

 ロキ・ファミリアの主神たるロキの名を冠する少年は、人一倍臆病で、人一倍人が好きで、人一倍人が怖かった。

 そんな少年がまともな過去を持っているわけがなく、常識を覚えるために数年間此処(本倉庫)を使用していた……いや今でも使用しているわけだから、少年は本が好きだった。

 人に触れなくても、人に触れれる。

 人と会話をしなくとも、人を知れる。そんな本が好きだった。

 

 見上げた本棚の一角に開いているスペースが、今持っている本を納める場所で、そこは十四歳の少年が背伸びをしようとも届かないのが事実で、だからズルをしてでも楽なほうを選んでしまうのも年相応のことだった。

 

「よし」

 

 一、二段と本棚の強度を手で確かめたら、そこに足を掛けようとして靴の底が本棚に触れるよりも先に、少年の頭へ拳骨が落ちた。

 

「こら、サクヤ。それはお前のいけない癖だ」

「痛!?」

 

 不意に後ろから現れた女性に怒られ、拳骨という愛の教鞭(物理)を受けた少年の手から零れた本を綺麗にキャッチし、収まるべき場所へ収めようとして女性の綺麗な顔が微妙な顔になる。

 

「また変なものを読みおって……、第一に取れなかっただろうに…」

「それはティオナお姉ちゃんが」

「あの馬鹿娘が…」

「えーっと…きっとこれおもしろいよ!直感でわかる!っていって渡してくれたけど、微妙だったよ?」

 

 はーっと、頭を抱えるのも一瞬で本を納め、新たな本を女性は取り出す。

 

「お前にはこっちのほうがいい」

 

 ほら。っと言って渡してくれた本は、冒険者が書いた日記のような内容のもの。

 そしてそれを受け取り目を輝かせる少年の脇を抱き上げ、そのままウッドチェアへと一緒に腰を下ろす。

 少年を膝の上に乗せ。

 

「わわ」

 

 急の出来事に少し驚く少年の頭を撫でれば、くすぐったそうに、でも嫌がらず目を細める。

 

「ありがとう、リヴェリア…さん」

「あぁ」

 

 そういうと少年は膝の上で本を読み始め、リヴェリアと呼ばれたエルフの女性は少年を抱きかかえるように腕を回す。

 通常少年といえど、十四歳の体、それを膝の上に抱えるということは苦行だが、それを苦としないのがレベル6のステイタス。つまるところ第一級冒険者たる所以の力だった。いくら自分が後衛タイプの魔法使いだからといえど流石はレベル6、少年一人など何時間乗せていようが足すら痺れないという事実。これが地味にリヴェリアにとって、レベル6でよかった。と思っているのは皆に言えない事だった。

 

 

 

 

 

 

「んぅ…」

 

 数時間…たったのだろうか?

 先に目が覚めたのはリヴェリア。

 リヴェリアも、膝の上に居た少年もいつしか体勢が変わり、寝付いてしまっていた。大きなウッドチェアだったためか少年は体を丸め、いまや膝の上に乗るのは少年の頭だけ、所謂膝枕というものだった。

 

 優しく、優しく、撫でる。

 あの時、恐怖と力に飲まれて怯えているだけの少年は、今ではこうやって自分に触れて、心休まるというように眠っている。

 その当たり前が、どれだけ嬉しくて、どれだけ幸せなことか。

 近寄れば怯え、触れれば目を閉じ懇願する。

 

「おねがいです」

「さわらないでください」

「ぼくはひとをころします」

「おねがいだから、ぼくにふれないで」

 

 そう言いながら、言葉を吐くたびに溢れる涙を見てきた。

 それを見てどれだけ私たちが胸を締め付けられたか、愛されて当然を否定され、触れることが当たり前を拒絶され、それでも近づいてきたものを全て血の海にかえ、死ぬことすら出来ず、生きていた。

 そうであるような生き様を辿ったであろう少年を見て、レベルがあれど、殺されない強靭な肉体があれど、少年の心を癒すこが出来ないリヴェリア達は自分を呪った。戦うことしか出来ない自分たちを呪いたくなった。

 でもきっと奇跡なんてものじゃなくて、自分たちの手で救ったことで。

 

 だからこそ、今を見て、未来を想像すれば涙が溢れそうで、良かったと、救えて本当に良かったと思えば、(いと)しい気持ちが溢れて、気づけば、

 

 少年の頬に雫が落ちる。

 

 いつもの光景、当たり前の光景を少年が謳歌するところを見るだけで、いつも涙が溢れそうになる。

 つらいわけじゃない、苦しいわけじゃない。

 ただ、痛い。心が痛いほど締め付けられる。

 嬉しいのに、幸せなのに涙が出る。

 

 流れる涙を拭こうとして自分の手より先に、何かが当たる。

 それはたどたどしく頬を流れていた涙を掬えば、離れていく。

 

「サクヤ…」

「泣かないで…僕は幸せだよ?リヴェリア…さんがいて、アイズさんやロキさん、ベートさんにフィンさん達が居る。もう四年前とは違うよ?」

 

 あぁ、あぁ。知っているとも、わかっているとも。ずっと見てきたから。

 

「たまに…、本当にたまに、泣きそうな顔を見たことあるよ?」

「気づいていたか…」

「うん」

「最初はな、ただ可愛そうと思っていただけだった。でも触れてみれば、近寄ってみれば、なにもかもが違った。お前と触れ合う日々は冒険者としての私ではなく、ただの私として生きているような気がして、ただの自己満足だったのかもしれん、だが今ではもうただの自己満足ではないのだ」

 

 手を伸ばせば触れれる存在。冒険者というポテンシャルすら意味を持たない存在、それは当時レベル5だったリヴェリアには驚愕の自体だった。だが最初のそれはほぼ好奇心だったのだろう。きっと同情もあった。

 そんな彼女の独白を受けても少年は変わらない、でも言葉を吐けば表情が崩れる。

 

「うん。フィンさんに、ガレスさんに、ロキさんに…それにリヴェリア…さん達に一番迷惑掛けた。一番わがまま言った。でもね、でもね?」

 

 泣きそうに、溢れそうに、涙をこらえて。

 

「初めてだった、迷惑掛けるのも、わがまま言うのも、それで、優しく、怒られるのも!」

 

 全部、全部、初めてだった。

 だから戸惑って怯えたし、逃げた。でもそれでも諦めない人たちを見れば、もっと、もっといいのかなって思えば、少し近づけて、一歩踏み出したらあとは長いけど簡単で。

 きっとその時から、少年の涙も同じで。

 

「嬉しいのに涙がでるは初めてだったんだよ?だからわかるよ?リヴェリア…さん、ううんリヴェリア母さんが嬉しそうに泣いてるの」

「母さん…か、私はそんな大きな子供を持ったことはないのだがな」

 

 それでも、いやな気持ちになどなるはずがなかった。

 同じだった。涙の意味が。それだけで気持ちが溢れた。

 

「ありがとう」

 

 母が子を思うように、子も母を思うそれは当たり前なこと。

 

 優しく抱きしめるリヴェリアの腕の中でサクヤは嬉しそうに涙を流しながら笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんや、もう戻るん?」

「…ちっ、いつまでも見てたってしょうがねぇだろうがよ」

 

 母と子が抱き合ったところで、狼の耳を持つ青年は閉まっている(・・・・・・)ドアから身を返す。

 

「ま、そらそうやな」

 

 それを追いかけるように主神も腰を上げる。

 

「ていうかよ、こんなことにまで神の力(アルカナム)使ってまでも覗くことなのかよ」

「例外中の例外っちゅうやつや、サクヤたんだけはな~」

「……そのだっせぇ呼び方やめろや」

「ええやろべつに?サクヤたん嫌がらへんし!」

 

 あいつがお前のこと嫌うないし嫌がることなんかあるわけねぇだろ。と心の中で呟き、主審をおいていくように歩き出す。

 

「ちょ、ベートはや!?」

「ちっ」

「なんやほんまにいらだっとんな?あ、あれか?オカンにサクヤたんの悩みどころ全部持ってかれたからか?」

「そんなんじゃねぇ……ただ約束を果たせなかったそれだけだ」

「え、なんや?その約束って!」

 

 なんや!なんや!と騒ぐ主神に苛立ちマークがぴくぴくと増えていき吼える。

 

「だぁあああ!うっせええぇえええ!」

 

 今日もファミリアは平和です。




ベート君が早歩きで歩くさまはポケットに手を突っ込んでガシガシ?と大またで歩いていくさま。

しかし休日より捗る内容の設定。仕事捗らないわ~
あと関西弁わかりましぇーん、指摘くださったら直します

自分で書いててもういみわかんねぇな…後半もう文章めちゃくちゃでどう収めればいいのかわからなかったわい


副題 涙の理由
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