マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 今後の展開への布石になる 繋ぎのお話しです

 「独自解釈」「捏造設定」等が含まれています。ご注意ください


2年目:マイス「変わった依頼書」

 

 

***マイスの家***

 

 

 『冬の野菜コンテスト』を無事終えてから、それなりの時間がたった

 リオネラさんはまた旅に出ていった。季節は春へと移り変わり、暖かくなって 過ごしやすくなった。朝、顔を洗う水も 身を切るような冷たさではなくなっていた

 

 

 

 そんな中、僕は困っていた

 その理由はといえば……

 

「…どういうことなの」

 

 僕の家(ウチ)に来たクーデリアが 僕に渡してきたのは、1枚の依頼書だった

 依頼書自体は『冒険者ギルド』で(あつか)っているものと同じ用紙、だから別に問題無く正式な依頼書なんだけど…

 問題はその内容だった

 

 

「依頼内容が「護衛」って、初めて見るんだけど」

 

 普通、依頼は内容によって「調達依頼」「調合依頼」「討伐依頼」に分類されているんだけど……渡された依頼には「護衛」とデカデカと書かれていた

 

「しかも、期限が「不定期」って…」

 

 それって期限じゃないんじゃないかなぁ…?

 それに「不定期」って……どうすればいいんだろうか

 

 

 

「で、当然 受けてくれるわよね?」

 

「いや、ちゃんと説明しようよ…」

 

 眉間にシワを寄せて「面倒ね」と吐き捨てるように呟くクーデリアに、どうしても苦笑いをしてしまう。その苦笑いを見られてしまったようで、一層鋭くなった目で睨まれた…

 

 けど すぐにクーデリアは睨むのを止め ため息をついて、クーデリア自身から空気を変えてくれた

 

「それじゃあ、説明するわよ。1回しか言う気無いから しっかり聞きなさい?」

 

「……はい」

 

 ちょっと言いたいことも あるにはあったけど、クーデリアの その有無を言わせない雰囲気が漂っていて、YESとしか言えなかった…

 

 

 

「『冒険者』の制度は 問題があってまだ未完成…というか調整が必要なのは知ってるわよね?」

 

「うん、それは知ってるよ」

 

 例えば、『ペーパー冒険者』と呼ばれる類。冒険者免許を貰うだけ貰い、ロクに活動せずに『冒険者』への補助(サポート)だけを上手く受ける人たちだ。国営である『冒険者ギルド』は基本 国民からの税収の一部から お金が降りてくるのだけど、彼らは それを何もしないでむさぼっていた

 (ゆえ)に、『冒険者ギルド』は『ペーパー冒険者』を排除するために冒険者免許に期限を付けた。それと同時に すでに免許を取得している『冒険者』の中で『一定ランク以下で、一定期間中 一度もランクアップが無い冒険者」たちにも目を光らせ、必要とあれば免許を没収するという対策をとった

 

 それで一応は『ペーパー冒険者』への対策はできたわけだけど、実のところ、まだまだ他の問題がある……というのは、クーデリアと飲みに言った時なんかに愚痴(ぐち)で聞かされたことがあるので知っていた

 ここで ある考えに思い当たる

 

「もしかして、近いうちに また何かの問題に対して対策を(こう)じるつもりなの?」

 

 僕の言葉にクーデリアは頷いた

 

「まだ「予定」としか言えないけど、近いうちにね」

 

「何の問題に対してなのかは知らないけど、この「護衛依頼」が対策を実施する前段階で必要になるってことか…」

 

「あら、思ってたより理解が早くて助かるわ」

 

 言葉自体は驚いているようにも感じれなくもないが、クーデリアの顔を見れば「まぁわかって当然」と言っているのがよくわかる

 

 

 

 でも、いったい誰を護衛するんだろう?第一、誰かを護衛することで 何かの問題が解決できるとは到底思えない。それに「不定期」っていう文字が謎を深めてしまっている

 

 そんな僕の考えを読み取ったのかどうかは(さだ)かではないけど、クーデリアが依頼の詳細について 口を開いた

 

「今回出した依頼は 採取地をまわるあたしの護衛よ」

 

「えっ、クーデリアが 採取地を?」

 

 いったいどういうことなのか僕が聞く前にクーデリアは言った

 

「あたしがあたしの仕事に集中するためにも護衛が必要なの。例えば、『冒険者』たちが書いてきた地図をまとめて整理して作った 正式な地図に間違いがないか確認するのに、あたし1人だと モンスターのこととか色々面倒なのよ」

 

「でも、地図の確認とかって、それこそ『冒険者』に任せればいいんじゃない?」

 

「確認だけならね。あくまでついで。あたしの本当の仕事は、採取地の難易度の再確認と『冒険者ポイント』の見直しよ」

 

 『冒険者ポイント』というのは、冒険者免許の『冒険者ランク』をランクアップさせるために必要なポイントだ。その『冒険者ランク』の冒険者が 活動の中でやるべき事ごとにポイントが(あらかじ)め決められていて、それらを達成し ポイントをためていくことでランクアップできるのだ

 …で、そのポイントを見直すってことは、何かしらの不都合ができたのだろう

 

 

 これで おおよそではあるもののクーデリアが採取地をまわる理由はわかった。だけど…

 

「冒険に出るってことは、ギルドのカウンターをそれなりの期間空けることになるけど……大丈夫なの?」

 

「そこが心配なのはあたしもなんだけど、『冒険者ポイント』の項目内容をちゃんと把握できてるのがあたしだけだから、あたしが出るしかないのよ…」

 

「そうなんだ…」

 

 「一応、受付の代わりは用意できそうなんだけど……ちょっと頼りないけど」と付け足すクーデリア

 

 こういう話を聞くたび 毎度思うんだけど、『冒険者ギルド』って人材に困り過ぎているような気がする

 ……よくよく考えてみると『アーランド王国』時代の『王宮受付』も人材不足らしかったことを思い出す。「いつもエスティさんが大変そうにしていたなぁ」と

 

 

「…話しを戻すけど、採取地の難易度の再確認と『冒険者ポイント』の見直しをするあたしを護衛するのがマイスの仕事よ」

 

「護衛が僕の理由は…?」

 

「移動時間の短縮。特に帰りは『魔法』を使えば一瞬でしょ?実力も申し分ないうえ、信頼もおけるし」

 

 そう言われて「なるほど」と納得する。『冒険者ギルド』を長く開けておくのが心配なのであれば、確かに 移動時間はできるだけ短縮したほうが良いだろう

 

 

 あと説明されていないことと言えば……

 

「「不定期」っていうのは どういうことなの?」

 

「それは「あたしが『冒険者ギルド』を開けられそうなときに」ってこと。ほら、1回の冒険で全ての採取地はまわれないでしょ?だから 採取地を何方向かに分け 冒険も何回かに分けるの。で、あたしが時間を取れる(たび)に あんたが護衛について行くってわけ」

 

 クーデリアの言いたいことはわかった

 確かに 今現在『冒険者ギルド』が把握している範囲内の採取地だけでも けっこうな数・範囲になる。となると移動距離は長くなるし、確認すべきことも増える

 そうなってくると、移動時間を短縮したとしても かなりの期間 冒険し続けることになるだろう。心配事である「『冒険者ギルド』の運営」が危うくなることは ほぼ間違いないだろう

 

 

 

「で、この依頼 受けてくれるわよね?」

 

「うーん…」

 

 僕がうなると、クーデリアは不機嫌そうに口を尖らせた

 

「何よ、報酬に不満でもあったかしら?結構 奮発してるはずなんだけど」

 

「そういうわけじゃないんだけど……」

 

 いや、でも ()()()()そういう話かもしれないので、否定はしきれない。……別に報酬が少ないってわけじゃないけど…

 

 

「じゃあ何なのよ」

 

「こういう正式な依頼書なんてなくても、クーデリアの頼みなら このくらいのことは報酬無しでも手伝うのになーって」

 

 

 

 ……何故か 僕の言葉の後、音ひとつ無くシーンと静まった

 

 

 

 どうしたのだろうか?と僕が首をかしげると、クーデリアは「ハァー…」とひときわ大きなため息をつきながら(ひたい)に手をあてて首を振った

 

「……あのね、お人好しなのは あんたの勝手だけど、仮にも『青の農村(このむら)』の村長なのよ?こういうところくらい ちゃんとしたやり方で…」

 

「村長とかそういう前に クーデリアとは友達じゃないか。そんな他人行儀にならなくてもいいじゃない」

 

 そう僕が言うと クーデリアはまた大きなため息をついた

 

「ありがたいのは ありがたいんだけど……「嬉しい」よりも「心配」って思いが強く出てくるんだけど……」

 

「え?」

 

「無償奉仕ばっかりしてて 収入無し、貧しい生活…ってコイツ 国一番の金持ちじゃない、心配する必要なかったわ……あっ、でも 村の運営のほうで…って、そっちもあの行商人がお金のことは仕切ってるぽかったし、問題無いはず……でも、なんでか心配なのよねぇ、マイスは。だいたい……(ブツブツ」

 

 よくわからないけど、クーデリアがうつむき気味になって 何かブツブツと呟きだしちゃった…。そんなに何か考え込むようなことでもあるんだろうか?

 

 

―――――――――

 

 

 結局、報酬は「村長を借りるから」という理由(たてまえ)で 『青の農村』のほうへと払われるように決めて 落ち着いた

 

 

 そしてクーデリアは

 

「それじゃあ、次 あたしが時間取れる時が決まったら日にちとかの詳細を連絡するから」

 

 と言い残して『アーランドの街』へと帰っていったのだった 

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