期間は1週間ほど。お盆明けくらいに投稿再会の予定です。
***絶望峠***
『絶望
その名前の通りの高所で、その中央付近には大きな谷がありそこにつり橋が架かっている
他の特徴と言えば…そうだなぁ。空気が乾燥していてパッサパサで少し砂っぽいこと、それに ところどころに大きな機械の残骸が転がってあったりすることくらいかな?
…それで、僕がどうしてここに来ているのかというと、例のクーデリアからの護衛依頼だ
だけど……
「ねぇねぇ!くーちゃん、マイス君、あっちで何か採取できそうだよ!」
「あっ、コラ!ロロナ!勝手にどっか行くんじゃないわよ」
何かを見つけると すぐにそこへとフラフラと行ってしまうロロナと、それを叱りながらもロロナの後をしっかりとついていくクーデリア。…うん、なんだか懐かしい光景だ
それで、どうしてロロナが一緒にいるのかっていうことなんだけど……それはアーランドの街から出発するその時にまでさかのぼる…
―――――――――
クーデリアから「『絶望峠』まで行くわよ」との連絡があって、色々準備してから『
そして、その門のそばにいるクーデリアを見つけてそちらへとむかった
「ごめん、待たせちゃった?」
「別に言うほど待ってないから。それに、こっちが正確な時間を明記してなかったんだし、気にすることはないわよ」
「ほら行くわよ」と言って、クーデリアが最初の目的地である採取地『旧街道』へと続く道があるほうへと行こうとし……ピタリッと動きを止めた
どうしたのだろう?と疑問に思ったのだけど、ここでクーデリアの顔が 目的地への道のほうではなく、その道のわきの木のほうを向いているのに気がついた。そこに何かあったのだろうかと思い、僕もそっちへと目を向けてみて
「あれっ…?」
木の陰からチラリと見えるのは、どこかで見たことのあるピンク色の帽子とマントの端…。それに加えて、これまたどこかで見たことのある杖…
「ぷくーっ!」
しかも、木の陰から顔を半分覗かせている誰かさんは、涙目で頬を膨らませている……って
「ロロナ?」
「あんた、なにしてんのよ…」
木の陰に隠れてた人の名前を僕が呟くのとほぼ同時に、クーデリアが呆れたように言った
「むぅー!」
「だから、なんでふくれてるのよ」
「二人で冒険に行くなんてズルい!わたしも一緒に行きたーい!」
そんな事を言いながら木の陰から出てきたロロナが、僕とクーデリアのほうへと駆け寄ってきた
そんなロロナに、僕は気になることがあったので聞いてみることにした
「ねえ、トトリちゃんに「アトリエに来てね」って言ってからアーランドに戻ってきたんだよね?今からでかけたらマズいんじゃない?」
「大丈夫だよー。『アランヤ村』から『アーランドの街』まで来るにはかなり時間かかるし、きっと大丈夫!」
「きっと」って……本当に大丈夫かなぁ?心配になってしょうがない。
そんな心配が顔に出てしまっていたんだろう。隣にいるクーデリアが僕の肩に手を置いてきた。
「まぁ、本人がこう言ってるんだし、大丈夫なんじゃないの?…後は、あんたに頼んでた食料とかが、ロロナが増えてもやっていけそうかどうなだけど…どう?」
「それは問題無いかな。『秘密バッグ』で繋がってる冒険用のコンテナの中に 十二分に入れてあるから」
「ならいいじゃない」
クーデリアがそう言うと、僕とクーデリアの会話をずっと聞いていたロロナの顔がパァッと笑顔になった
「いいの!?」
「ええ、断る理由なんて無いし」
「まあちょっと心配ではあるけどね…」
「わぁーい!やったー!実はね、色々用意しててー……」
元気一杯にはしゃぎだしたロロナを見て、僕とクーデリアは「変わってないねぇ」と顔を見合わせて笑った…
―――――――――
…ということが数日前にあったのだ。それから採取地を2つ経由して最終目的地だった『絶望峠』にこうしてたどりついたんだけど
「もうっ!勝手にウロチョロするのは相変わらずなのね」
「えへへ…ゴメンなさぁい」
ロロナの様子は本当に相変わらずだし、クーデリアもクーデリアで、ロロナの事を叱っているようでどこか楽しそうにしているし……
そこで気がついた。…いや、本当に気がつくのが遅かったくらいだろう
ロロナが一緒に冒険したがっていたけど、クーデリアもロロナと一緒に冒険したかったんだろう
思えば当然のことだった。ロロナが旅に出てからというもののクーデリアは「帰ってこない」「帰ってこない」とずっと何度も言っていたんだから。幼馴染の親友がずっといなかったなら一緒にいたいと思うだろうし、また昔のように冒険してみたいと思うはずだ
「…ロロナが帰ってきた時、僕もすごく嬉しかったしなぁ(ボソリッ」
街の『職人通り』でロロナに抱きつかれた時のことを思い出す
あの時は苦しさのせいもあって嬉しさを口に出すことはできなかったけど……うん、今考えてみると、やっぱりかなり嬉しかったんだ
「マイス君ー!」
「ちょっと、マイス!何してるのよー!早く来なさーい!」
ひとり、考えに浸っていると少し遠くまで行ってしまっていたロロナとクーデリアから声を投げかけられる。ロロナは大きく手を振っていて、クーデリアは腰に手を当ててコッチを見ている
「うん!すぐ行くよ」
―――――――――
「くーちゃん、どんな感じ?」
ロロナが、『冒険者』たちが書き
「どうも何も、大体は問題無いわね。…ただ、やっぱり思った通りね」
「思った通りって?」
つり橋の状態の確認をしながらクーデリアに問いかける。するとクーデリアはこちらを見ずに 手に持つ地図に何かを書き込みながら僕の疑問に答えた
「この難易度の採取地の地図に関しては、もう十分過ぎているってことよ」
「それじゃあ、もう『冒険者』の人たちには 地図は描いてもらわなくっていいってこと?」
ロロナの言葉にクーデリアは「そうじゃないわ」と首を振った
「地図を書かせるのは何もそこの情報が欲しいってだけじゃなくて、その冒険者の地図の描く能力を確認するためでもあるの。地図ロクに描けないヤツが、あたしたちが情報の欲しい 高難易度の高い
「ええっと…?」
「『錬金術』でいうと、難しい調合に挑戦する前に 難易度の低い調合で肩慣らししたほうが良いよね?地図を描くのも同じようなことが言えるってことだよ、ロロナ」
「あー!なるほど!そういうことなんだ」
僕の例え話で本当にわかったのかどうかはわからないけど、とりあえずロロナは納得してくれたようだった
「それで、クーデリアとしてはまだ何かあるんでしょ?」
「そうね…『冒険者ポイント』の配分の見直しの時に、優先度を下げて加算されるポイントを減らすことを考えるくらいかしら」
「なるほどね。そういう調整の判断材料にするんだね」
僕が納得したちょうどその時に、クーデリアは初めて僕の方を向いてきた
「で、そっちの確認は終わったの?」
「うん、問題無いよ。よっぽどの外的要因……わざと武器で切り付けたり、モンスターが攻撃したりしない限り、少なくとも後5年は安心だよ」
「なるほどね。わかったわ」
僕の返事を聞いたクーデリアは、再び手に持つ地図に目をやって何かを書きこんでいた。…おそらくは、さっき僕が言ったつり橋の寿命についてだろう。書き記しておき、情報を残しておくことで、時期が近づいてきた時に人を派遣できるようにしておくのだろう
…さて、これで今回の仕事は大体終わったかな?