『トトリのアトリエ編』に入る時から危惧していたことなのですが、案の定 キャラが多くて扱い切れてません
特にジーノ君を筆頭としたアランヤ村勢は出番が少ない現状…。中には未だに名前しか出てきていない某御者も
難しいなぁ…
***バー・ゲラルド***
ちょっとした暇潰しに、依頼にあった 村にほど近い採取地に出現するモンスターの討伐をしてきて、報告の為にあたしはゲラルドさんのお店に来た。相変わらずお客さんは少なく、ガランとしている
「いらっしゃ……なんだメルヴィアか」
マスターのゲラルドさんに、いつものように残念そうに言われて、あたしは肩をすくめるながらゲラルドさんのいるカウンターのほうへと歩み寄っていく
「まるで客じゃないみたいに言わなくてもいいじゃなーい。それに、ほら。今日は依頼の報告もしに来たんだしさ」
「…なんというか、珍しいな。お前が真面目に依頼をこなしているのは」
「あら?言ってくれるわね。…まあ、否定はできないかもだけど」
実際のところ、ゲラルドさんの言うようにあたしが真面目に依頼をこなすことなんてあんまりない。『冒険者』って仕事自体 あたしの気まぐれで冒険したりしなかったりって感じなのだから仕方ない
あたしがそんなことを考えているうちに、ゲラルドさんは達成した依頼の処理を行ってくれたみたいで、報酬を用意してカウンターの上に出していた
「お疲れ様。これが今回の報酬だ。……それと、すまないが少し頼まれごとをしてくれないか?」
後半は周りに聞かれないようにとボソボソと言ってきたゲラルドさん。……まあ、この後に何の事を言うのかは、あたしにはわかっていた。なので、ゲラルドさんが言う前にあたしのほうから小声で返事を返す
「言われなくても……って言いたいところだけど、どうしたものかしらねー?
あたしがそう言いながらチラリとあたしから見て向かって左方向に目をやる。ゲラルドさんも同じ方向へと目を向けていた
「はぁー…」
カウンター端のレジが置いてある一角。そこにいるのはカウンターに肘をつけ、頬杖をつきながら力無くため息を吐いているツェツィ。原因は聞かなくてもわかる。トトリの事だろう
「前に村に帰ってきたのは何時だったか?」
ゲラルドさんに言われて思い返す
「えーっと、確か春先くらいじゃなかったかしら。それから2カ月半はこっちにいたから、だいたい5カ月くらいは会えてないわね」
「もうそんなに経っていたのか。…そりゃあ ああもなるか」
「とは言っても、いい加減 妹離れできないと苦労すると思うけどなぁ…」
トトリには『アーランドの街』に拠点になる場所があるっていうのもあるけど、冒険者が長期間あちこちウロウロして数ヶ月家を空けることなんて、結構ざらだったりはする
「トトリの姉離れのほうが早いんじゃないか?」
「あー、それは微妙ね。トトリはやらなきゃならないことや新しい発見とかが毎日色々あるから寂しさとか感じてる暇がないだけで、案外ちょっとしたきっかけでツェツィのことが恋しくなっちゃったりすると思うわよ」
「ほぉ…独り立ちにはまだ遠いか」
「『冒険者』になったとは言っても、トトリもまだまだ14歳のお子様だもの」
「当然よ」とゲラルドさんに言ってから、それじゃあねと軽く手を振りツェツィのいるカウンターほうへと移動する
「ツェ~ツィ~?なーに ため息なんてついてるのよ」
「……あれっ、メルヴィ?いつの間に帰ってきてたの?」
ツェツィは声をかけるまであたしに気がつかなかったようで、少し驚きながらコッチを見てきた
「ひどいわねー。フツーにお店に入ってきて、ゲラルドさんに依頼の報告してたんだけど……もしかして、あたし存在感薄かったかしら?」
「まさか。むしろ濃すぎるくらいだと思うけど」
そんなことを言いながら微笑むツェツィ。どうやら、これくらいの軽口をたたける程度の元気は残っているみたい
…と、思ったんだけど、ツェツィの表情がまた暗くなった
「どうしたのよ。そんな顔しちゃって」
「…ねえ、メルヴィ。街ってそんなにいいものなの?」
ツェツィの質問の意図を考えながら、あたしは軽く首を振ってから答える
「別に?それに第一 何かの良し悪しでトトリが向こうで活動してるわけじゃないわよ」
「じゃあ…?」
「『冒険者免許』が永久資格じゃないトトリは、冒険者ランクを期間内に一定以上に上げとかなきゃいけないからね。それを考えると、免許の更新ができる街の方がなにかと便利がいいのよ」
あたしが免許を貰った頃は始めから永久資格だったんだけど、ギルドのほうで色々あったみたいで、今では最初は期限付きの免許しか貰えないようになったらしく大変そうだ
「…その「期間内」っていつなの?」
「ええっと…確か免許取得から3年くらい?」
「3年!?それじゃあその間はトトリちゃんは帰ってこれないの!?」
狼狽しちゃっているツェツィに あたしは苦笑いをこぼしてしまうけど、「まぁまぁ」と落ち着かせて言葉を続ける
「これまでにも何回も帰ってきてるでしょ。それに、確か目標に設定されてるランクは7くらいだから、そこまで行けば期間なんて関係無しに自由よ」
「そんなに簡単なものなの…?」
「んーまあ、トトリなら問題無いんじゃないかしら」
「…なんだか適当ね」
ツェツィは、うつむき気味になり目を瞑って眉間にシワを寄せ 何かを考え込みだした
そして、突然顔を上げたかと思えば、離れた場所で様子を見ていたゲラルドさんんのほうを向いた
「そうだわ!
いきなり話を振られたゲラルドさんは驚き、磨いていたグラスを落しそうになっていた。…何とか体勢を立て直したゲラルドさんは大きく息をついてから、ツェツィに言った
「オイオイ、無茶なことを言わないでくれ。アレは色々細かい規定がある重要なものなんだぞ。ウチみたいな 村の小さな一酒場が扱えるものじゃないんだ」
「そんなこと言って、ギルドの依頼は回してもらえてるじゃないですか」
「重要性と難しさが違うんだ。それに、その依頼のほうも受ける人間が少なくて困っているっていうのに……」
「トトリちゃんのためなんですから、いいじゃないですか!」
頬を膨らませて怒り気味のツェツィに睨まれたゲラルドさんは困ったように肩をすくめながら「トトリのためというか、お前がそうしたいだけじゃないのか?」と呟いていた
そんなふたりの様子を眺めながら、あたしは どうしたものかと考えていたんだけど、僅かに聞こえた扉の開閉音に気がついて店の入り口に目を向けてみる
そこにいたのは、
当のツェツィはゲラルドさんに色々というのが忙しいらしく、来客に気がついている様子は無かった
そんなツェツィがどんな反応をするか楽しみに思いながらも、あたしは言葉をかける
「おかえり、トトリ。調子はどう?」