わたしが『アランヤ村』に帰って来てから、もう一週間くらいになっていた
あの時は色々と凄かったなぁ……特におねえちゃんが…。わたしのお仕事を手伝うためについて来た ちむちゃんに大興奮。「私もその子欲しい!」と言ったかと思えば、「ロロナ先生に頼んで、私の分も作ってもらって!」とまで言っちゃう始末
ちむちゃんが可愛いのはわかるけど、はしゃぎすぎだよ、おねえちゃん……
その後、わたしと一緒に村に来てたミミちゃんや、ゲラルドさんの酒場にいたメルお姉ちゃんを引き連れてのお家での夕食は凄く賑やかになった。おねえちゃんが凄く張り切って料理を作ってたのが印象に残ってる
そのせいで、お父さんの影が薄かった……って、あれ?いつものことだ
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***トトリのアトリエ***
そんなことがありながら、わたしはノンビリしつつも調合をしたりしながら過ごしていた
今日も、自分のアトリエで調合してたんだけど、その途中にミミちゃんがアトリエに来た
わたしは調合途中だったからどうしようかと思ったんだけど、ミミちゃんは「気にしないで。…この本ちょっと借りるわよ」と言って、机の上にあった本を手に取ってソファーのほうへと行って座った。たぶん、ミミちゃんなりに気を遣ってくれたんだと思う
「よし!だいたい出来たかな?後はここをこーして…っと」
調合の最後の仕上げをしている時、ふとある事がわたしの頭に浮かんだ
「ミミちゃん、最近よくアトリエに来るようになったよね」
「何よ。私が来たら迷惑?」
わたしに声をかけられ、本から目を離してコッチを見てきたミミちゃん。ジットリとした視線をむけられて ちょっとビックリしちゃったけど、わたしはそのまま言葉を続けた
「ううん、そんなこと。全然そんなことないんだけど、ただ……」
「ただ?」
「ミミちゃん、わたし以外に友達とかいないのかなーって」
「ぶっ!!あああんた、何をいきなり……」
目を見開いて 顔を真っ赤にしたミミちゃん。その声は
「わっ、ごめん……図星だった?」
「違う!友達は…確かにいないけど……いないんじゃなくて、いらないの!あんただって、別に友達じゃないし!」
「え……わたし、友達じゃないの…?」
こうしてアトリエに遊びに来てるし、一緒に冒険したり 一緒にご飯食べたりしてるのに、わたしとミミちゃんって友達じゃないの…?
「うっ…そ、そうよ!あんたが錬金術士だから、仕方なく付き合ってあげてるだけで……でなきゃ貴族である私が、下賤な田舎者のあんたなんかと!」
「でも……わたし、別に錬金術士としてミミちゃんの役に立ってないよ?」
「う、それは……立ってる!立ってるわよ!そういうことにしときなさい!」
でもミミちゃん、わたしとは違って凄く強くて…。わたしが爆弾投げるよりも早く 武器でビシッ!バシッ!ってモンスターを倒しちゃうから、戦闘じゃああんまり役に立ててないし……
あと、わたしが錬金術で出来ることといったら薬の調合くらいだけど、そっちもあんまり役に立ってないような気が……
「本当?わたし、役に立ってる?」
「…って、今はそういう話をしてたんじゃなくて……。もう!あんたが変なことを言うから!もう帰る!」
「あっ、待って!ミミちゃん!」
本をソファーに置いて、ツカツカと外への扉のほうへと歩いて行っちゃうミミちゃんん
と、扉のノブに手をかけようとしたミミちゃんの手が空振りした
その理由は、外から来た人が ミミちゃんよりも先に扉を開けてしまったからだった
「トトリ、いるかー?…って、ああ、お前か」
そこにいたのはジーノくんだった。偶然にも開いた扉の先で ミミちゃんの行く先を阻むように立ってしまってる。だからミミちゃんはジーノくんをジロリと睨んでた……けど、そのジーノくんはといえば、ミミちゃんに気づいたみたいだけど特に気にした様子は無かった
ジーノくんが何で来たかは知らないけど、これはわたしにとっては良いタイミングだった
わたしは扉のほうへと駆け寄る
「ジーノくん、いいところに!今、ちょうど調合が終わったところなんだけど、おやつに『パイ』食べていかない?」
「おっ、マジで!?食う食う!」
「ほーらっ、ミミちゃんも!」
わたしはミミちゃんの手を掴んで、アトリエの中へ引っ張り戻す
「ちょっ、こら!」
ミミちゃんはわたしに非難するような目を向けてきたけど、それは気にせずにいることにした
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「うん!ウメー!」
「ま、まあ及第点じゃないかしら?」
わたしが出した『パイ』を食べて そう言ってくれるふたり。ジーノくんはいつも通りだけど、ミミちゃんはさっきの不機嫌さが感じられないくらいに機嫌を直してくれてた
「そういえばジーノくん、今日は何か用があって来たの?」
「モグモグ…んぐっ……っんとな、今度いつ冒険に行くのかってのと、俺も一緒に行くって話。最近ヒマでさー」
「あれ?ジーノくん、ステルクさんに修行をつけて貰ってるんじゃなかったっけ?」
口の中にあった『パイ』を飲み込んだジーノくんが、ちょっとつまらなさそうに言いだした
「いやさ、トトリが帰ってくる何日か前の修行中に なんかハトが飛んできて、師匠が「すまん、急用ができた!」とか言って、荷物をまとめて どっか行っちゃったんだよ」
「ハト?」
「おう。そいつが来たら師匠慌てだしてさ、何だったんだろ、あれ?」
首をかしげるジーノくん
「それって、
そう言ったのはミミちゃんだった
「伝書鳩?本なんかで読んだことはあるけど…」
「街道が整備されて人の行き来が比較的楽になった今では廃れ気味なんだけど、昔は使ってる人も多かった方法よ。今でも緊急の用とか よく移動してる旅人・行商人なんかは結構重宝してるの」
「へぇー」
ミミちゃんがしてくれた簡単な説明に、ジーノくんがわかっているのかどうかわからない反応をした。……ジーノくんのことだから、わかってないんだろうなぁー…
「あれ?でもなんで街道が整備されたら伝書鳩が使われなくなるの?」
「村や街の間を安全に移動できるようになったら、行商人とかが定期的な移動をするようになるからよ。そうなったら手紙なんかは荷物として運ばせられるの。当然、伝書鳩のほうのメリットもあるんだけど、ハトの訓練が大変ってことも考えると……ってこと」
「すごい!ミミちゃんって物知りなんだね!」
「と、当然よ!このくらいのことを知ってるのは貴族のたしなみなの!」
「貴族のたしなみ」かぁ……。そういえば、初めてミミちゃんと冒険に言った時、ミミちゃんの鉾捌きにわたしが驚いた時もそんなこと言ってたっけ?
もしかして本で見たことがあるような
なお、ただの伝書鳩ではないもよう
ハト…というよりはステルクさんが変わってる…?