マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 先週は、予定していた更新が出来ず 大変申し訳ありませんでした!


 今回は『青の農村』での話なので「原作改変」、「捏造設定」がたくさんあります。ご了承ください


2年目:マイス「いろいろ挑戦!」

 

 

 この前、家にトトリちゃんが来て……

 

「『アランヤ村』に帰って、あっちのほうの採取地を一通り冒険しようかなって思ってるんですけど……マイスさん、付いて来てくれませんか?」

 

 そう聞かれた

 トトリちゃんの冒険者の活動を手助けするっていう約束もあるし 付いて行きたいのはやまやまだったんだけど、ちょうど重要な予定があったから申し訳ないけど断らせてもらった

 

 

 その「重要な予定」っていうのは、『青の農村』での「お祭り」なんだけど……前にトトリちゃんの冒険に付き合った時には、お祭りのことは村の人たちに任せていた。けれど、今回のお祭りはそうはいかなかったから こうして残ったんだ

 

 今回のお祭り、実はちょっとこれまでと違った(こころ)みをすることになっているからだ

 ……というよりも、今回のお祭り自体初めてだから、手探り状態で慌ただしかったりする

 

 

 

――――――――――――

 

***青の農村***

 

 

 

 準備期間中、様々な問題がありながらも 無事お祭りは開催することが出来た

 

 

 初のお祭りではあるけど、「『青の農村』のお祭り」ということで、人は多く訪れてくれているようで、村はいつものお祭りと遜色ないくらいの賑わいを見せていた

 それでも、これまでのお祭りとは違う部分が色々とあるんだけどね

 

 

 

 大きな違いといえば、このお祭りが何かで競う祭でもなければ、何かを祝う祭りでもないということだろう

 

 じゃあ、一体どういうお祭りなのかというと……

 

 

 

「はーい!農業体験の受付はこちらでーす!」

 

「薬学体験の受付はこっちですよー!興味のある方はぜひー」

 

「ちゃんと2列に並んでくださーい。鍛冶体験の受付はここでーすーよ」

 

「料理体験~。ウチの村で育った野菜を使った料理体験はど~ですか~?」

 

 普段は『青の農村(うちのむら)』の『集会場』で、作物の種類ごとの生産量等の情報をまとめたりしている受付嬢の皆が、今日は集会場前の広場でいつもとは違った受付の仕事をしている

 

 

 

 新しい試みのお祭り。それは『(たい)(けん)(さい)』というその名の通り、何かの物事を体験してもらうお祭りだ

 

 そもそもの始まりは、毎月行われている 今後のお祭りを何にするか決める会議…『お祭り会議』で「今年の最後のお祭りは何か新しいことをしない?」という話があがった時。その時に僕がポロッと言った一言が原因だった

 

「村ができる前に僕が皆に農業教えた感じで……何かを教えるお祭りって新しくないかな?」

 

 会議に参加していたメンバーは、その頃からいた人と その頃を知っているコオルだったため、みんなイメージがすぐに湧いたから「面白そう!」とトントン拍子に話が進んでいった

 

 ただ、計画を建てていくにつれ問題も出てきた

 一番の問題は、予想される参加者に対する教える人の人数と、その体験を複数人ができる場所の確保

 特に教える人の確保には手間取った。村の人の中には、僕から農業以外を教わっている人もいたけど、それでも教える経験は無い人ばかりだったから 助っ人を呼ぶことになったりもした。そしてもう一つ、教える内容をしぼって ある程度 簡略化することで、体験する人にも教える人にも優しくすることで なんとか対策した

 

 

 そして、今、広場でやっているのは 午後からの()2()()の受付。それをやっている間、教える人たちは休憩時間だ

 

 

――――――――――――

 

***集会場***

 

 

「お疲れ様です!」

 

 僕がそう言って あるひとつのテーブルについている一団へと駆け寄る。そこにいるのは街からの手伝いで来てくれた二人だ

 

「おう!ボウズ…じゃ、失礼だな……村長サンかな?」

 

「ようっ、マイス。大盛況だなーこりゃ」

 

 豪快に笑いながら応える『男の武具屋』の主人・ハゲルさん。通称おやじさん

 片手をあげて応える『サンライズ食堂』のコック・イクセルさん

 

 

 二人ともそれぞれ「鍛冶体験」と「料理体験」の指導を手伝って貰っている

 

 ついでに言うと、僕は「農業体験」……ではなく、「薬学体験」のほうを()()で担当している

 

 『青の農村(うち)』は農村と言うだけあって 以前に僕が農業を教えた人が沢山いるから、農業の教え手には困らないのだ。

 料理や鍛冶も、ほんの数人だけなら 僕が教えた人がいるにはいるけど、人数的に厳しいから……ということで、おやじさんとイクセルさんに手を貸してもらっている

 …で、薬学だけ、教える人が 村にも街の知り合いにもいなくて、「やるか、やらないか」で迷った末に、「それじゃあ、僕一人でやってみるよ」となったわけだ

 

 

「薬学ってのは俺もあんまり知らないけど、俺たちのところほどじゃないが 人が沢山で大変そうだったな」

 

「あはは、さすがに一人だとてんやわんやしちゃったよ」

 

 

「…でもよ、「鍛冶体験(ウチ)」は()の関係で人数制限が有ったかってのもあるが、「料理体験」はものすごかったじぁねぇか。やっぱり、食い物のほうが剣とかよりも人気っつーことかぁ?」

 

 おやじさんが何か少し残念そうに肩をすくめながら首をかしげた

 

「おやじさん、たぶんそうじゃなくて「一番身近で、ハードルが低くて参加しやすい」のが料理ってことだと思いますよ?ほら、鍛冶って金槌(かなづち)振るったりするイメージがあって「力がいりそうだなー」って思ってしまうとか」

 

「マイスの言う通りだな。薬学や鍛冶ってのは 薬とか剣を使う『冒険者』ならまだしも、一般の街の人には時々しか世話にならないから、あんまり手軽に手をだせそうにないんじゃないか?残りの農業は……縁は無いけど、『青の農村』が有名過ぎて一周回って興味が湧くんだろうけどよ」

 

 僕とイクセルさんの話を聞いたおやじさんは「なるほどな」と頷いて、おおよそ納得したみたいだ

 

 

 そして、おやじさんはその太い腕を組んでニカリと笑った

 

「…にしても、これまで他人(ひと)に教えるって機会が無かったから わかんなかったけどよ、案外面白いもんだよな。うまく伝わんねぇこともあるけどよ、それでも教えたヤツが 上手く作れて喜んでんのをみるのも、何とも言えないもんがあるぜ」

 

「それは俺も思った!俺の場合、トトリに教えてたりするんだけど……あれはただ単にレシピ渡してるだけみたいなもんだからな。今日みたいに実際にやってるところで教えるのは新鮮だったぜ」

 

「それはよかったです!体験の参加者が楽しむだけ楽しんで、教える人たちは疲れただけで楽しくなかった…じゃあ、お祭りとしては失敗ですから!」

 

 「企画者も、イベント参加者も、見ている人も楽しめないとお祭りじゃない」、それが『青の農村』のお祭りの決まりだ。

 

 

 

 

 

バァアン!!

 

 大きな音に驚き そちらを見てみたところ、どうやら『集会場』の扉が勢いよく開かれた音のようだ

 

「いたー!マイス君、見つけたよー!」

 

 その声の主であり、扉を勢いよく開けた犯人はロロナだった。ロロナはそのまま 僕らのいるテーブルへと駆け寄ってきた

 

 

「よう、嬢ちゃんか!相変わらず元気そうじゃねぇか」

 

「元気がいいのはいいけどよ、もう少し静かにできないのか…?」

 

 ふたりに声をかけられて そちらもむくロロナ。でも、その顔は頬がプクーッ!と膨らんでいた

 

「おやじさんも!イクセくんも!マイス君も!三人ともズルい!!」

 

 ロロナにそう言われて、僕はおやじさんとイクセルさんと顔を見合わせた。ふたりも「何が何だか…」といった様子だったから、僕が代表してロロナに聞くことにした

 

 

「ロロナ?いったい何に怒ってるの…?」

 

 

「私も…私もこんな沢山の人に『錬金術』教えたいのにぃ!」

 

 …ある意味、ロロナらしい(?)理由だった

 

 

―――――――――――

 

 

 この後、「午後だけでもいいからする!」と駄々をこねるロロナをなだめ、今から錬金釜や材料を集めるのは無理だということを伝えて、諦めてもらった

 

 去り際に……

 

「次、同じようなお祭りするときは、ちゃんと声かけてね!『錬金術』の体験教室もするから!!」

 

 ……と言われて、頷いてしまったんだけど……大丈夫かな?


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