マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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3年目:トトリ「初使用!…えっ」

 

***ローリンヒル***

 

 

 道中にマイスさんとクーデリアさんとばったり会ったわたしたち。あれから数日は経っているけど、わたしたちはまだ冒険を続けていた

 

 そして、ついに村から南西の方向にある半島の一番端の採取地『ローリンヒル』までたどり着け、珍しくて品質の良い素材を集めることが出来たんだけど……

 

 

「ねぇ、ジーノくん。もう帰ろうよ」

 

「何言ってんだ。せっかくだし、アイツも倒しておこうぜ!」

 

 岩陰に隠れているわたしたち。そんな中でジーノくんが陰からひょっこり顔を出して見つめる先には、どこか別の方向を見ている巨大なぷに…「ぷにの化身」って呼ばれるモンスターがいる

高さだけでも大人の身長を超えていて、体積は人の何倍にもなるほどの大きなぷにで、おそらくはこの採取地のボス的な存在なんだと思う

 

 

「万全の状態なら勝てるかもしれないけど、わたし、もう爆弾とか攻撃用のアイテムが無くって……ジーノくんも疲れが溜まってるんじゃない?」

 

「大丈夫、大丈夫。第一、でっかくてもぷにはぷにだろ。何の心配もいらないって!」

 

 そう言って岩陰から飛び出し、ぷにの化身へと一直線に向かっていくジーノくん

 

「ああっ!待って!」

 

 わたしは制止をかけたんだけど、わたしの声が耳に入っていないのかのように ジーノくんはそのままぷにの化身に斬りかかっていった

 

 

「ハァ……こうなったら、私たちも行くしかないわね」

 

「で、でも、もうわたし爆弾が無いから、どうしたら…」

 

 ため息交じりに一歩踏み出したミミちゃんに わたしがそう言うと、ミミちゃんはもう一度大きなため息をついて首を振った

 

「そんなこと、私に言われても困るわよ。…まあ、攻撃は私とあいつに任せてサポートにまわったらいいんじゃないかしら。薬はまだ残っているんでしょう?」

 

「うん。そんなに多くはないけど、一戦分くらいは…」

 

「なら、頼んだわよ!」

 

 そう言ってミミちゃんも武器の鉾を構えてぷにの化身のほうへと走っていった

 

 その後ろ姿と一緒に見えたのは、ぷにぷにしていながら丈夫さを兼ね備えた ぷにの化身の身体に上手く刃が通らず、半ばで剣を「ぷにょん」と跳ね返されているジーノくんだった

 

「もう、ジーノくんったら…」

 

 つい、そう口に出てしまいながらも、わたしはジーノくんやミミちゃんが何時(いつ)怪我を負っても回復してあげられるようにと、ポーチの中にある薬を取り出して用意し始める

 

 

「……あれ?」

 

 ポーチを漁っている最中に、わたしの手にビンや薬壺とは違う感触のモノが触れた

 何かと思い、それを取り出してみると……

 

「あっ、これって……前に『青の農村』のマイスさんの家で、マイスさんと一緒に調合して出来た『アクティブシード』…フラムユリとか言ってたっけ?」

 

 握り拳くらいの大きさの種に目をやりながら、あの時の事を思い出す

 

 …あの時は何事も無くって、本当にただの植物みたいに静かだったけど……確かマイスさんは「外敵に反応する戦闘タイプだと思う」…みたいなことを言ってたよね?

 結局あれから使う機会が無くってポーチの底にしまったままだったけど……今使ったら役に立つのかな…?

 

 

 

「よくわからないけど、イチかバチか!ええーい!」

 

 わたしは『アクティブシード』を地面に落す…というよりは、叩きつけるように投げた

 

 すると、種が落ちた地点からツタのようなものが伸びて 光ったかと思うと、そこにはユリの花を大きくしたような『アクティブシード』になった。…ここまでは、マイスさんの家で見た時と同じだったんだけど……

 

 薄赤い花びらでつくられたツボミ。それがゆっくりとだけど開き出した

 開ききった状態は、本当に「大きな赤いユリの花」って感じだった……でも、異様な部分が一か所。それは花の中心部分。普通の植物なら「おしべ」や「めしべ」っていう部分があるはずなんだけど、そこにあったのは真っ赤な筒状の何か

 

 

「…?なんだか見たことがあるような気が……」

 

 それが何だったか わたしが思い出すよりも先に、その『アクティブシード』が ジーノくんとミミちゃんが戦っているぷにの化身のほうへと 開いた花の部分を向けて……

 

 

ジ ジ ジジ ジッ

 

 

 まるで導火線が燃えるような小さな音が、わたしの耳に入ってきた

 

「もも、も!もしかして!?」

 

 わたしはある可能性に気がついちゃって、一気に血の気が引いた

 そして、ぷにの化身の近くにいるジーノくんとミミちゃんに向かって大声で叫んだ

 

「ふたりとも離れてー!!」

 

 わたしの声に「えっ、なんで?」といった感じに振り返るジーノくんと、バックステップでとっさに距離を取るミミちゃん

 

 それとほぼ同時に、花から「ボシュン!」と音を立てて何かが発射された

 それは花の中心部分にあった真っ赤な筒状の何か…『フラム』

 

 

ぼっかーーーん!

 

 

「ぷーーーにーーー!?」

 

 爆発音に続いて、ぷにの化身の驚いたような…悲鳴のような鳴き声が聞こえた

 

 でも、爆炎と煙が晴れかけた先にいたのは、まだまだ元気そうなぷにの化身だった。もしかしたらあの『フラム』は、爆風こそ大きいけど威力自体はそこまででもないのかもしれない

 

 

「……って!まだ倒せてないんだった!?早く何と…ない……と……?」

 

 ジ ジ ジッ ジジ 

     ジッ ジジ ジッジ 

ジ ジ ジジ ジッ

 

 また聞こえてくる音。それも今度は三つ

 恐る恐る『アクティブシード』を見てみると、花の中心部分から三本の赤い筒が……

 

ボシュン!  ボシュン!  ボシュン!

 

 ほんの少しずれたタイミングで射出される『フラム』。それはまるで吸い込まれるようにぷにの化身へと飛んでいき……爆発した

 

 

ぼぼぼっかーーーん!

 

 

「ぷーににーーー!?」

 

 また悲鳴のような鳴き声をあげたぷにの化身。今度はあの大きな体が爆風で宙に浮いた

 ……しかも、またあの音が……

 

 

ぼぼぼっかーーーん!

 

 

「ぷにーーーー!?」

 

 浮き上がったぷにの化身へと飛んでいき、爆発する『フラム』。やっぱりダメージはそこまででも無いみたいで、ぷにの化身はまだ健在だけどその体は再び浮きあがり……そこにまた新しい『フラム』が…

 

 

ぼぼぼっかーーーん!

 

 

「ぷーーー!?」

 

 

「うわぁ……」

 

 つい、そんな声が漏れてしまう。……けど、仕方ないよね?

 だって、この採取地のボスのはずのぷにの化身を。少ないダメージとはいえ一方的に攻撃し続けているんだもん……あっ、また浮き上がった

 

 

 

「…これ、このまま放っておいても倒してくれるんじゃないかな……?」

 

 そう思って、それまでの時間を採取か何かで潰そうと考えて(あた)りを見回して……わたしはあることに気がついた

 

 そのへんの木に頭をぶつけたのか「いてー!?」と頭を押さえて転げまわるジーノくん

 …タンコブは出来てるかもしれないけど、あれだけ元気ならジーノくんなら大丈夫…だと思う

 

 そして、バックステップじゃあ完全には避けきれなかったのか、全体的に少し(すす)けている上に、爆発ではじけ飛んだぷにの化身の肉片(?)が 顔や体のあちこちにベッチョリ付いちゃっているミミちゃん

 ミミちゃんは凄く笑ってた……目以外は

 

 

 わたしは怒ってるミミちゃんにどうやって謝ろうか、必死になって考えることしかできなくて…………爆発音とぷにの化身の悲鳴なんて、どこか遠くのもののようにしか聞こえなかった





 イメージとしては、『RF3』の『ソル・テラーノ砂漠』や『RF4』の『レオン・カルナク』にいるゴブリン系が投げてくるナイフが『フラム』という爆発物に変わった感じになっています

 『アトリエ』だと……『メルルのアトリエ』で言うところのタイムカードに数回入る系のアイテム(『メテオール』みないな…?)になるんじゃないかと……そんな妄想です

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