マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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3年目:トトリ「『ネコと機械と青の農村』」

 

 

 

 馬車に数日間 揺られてまた訪れた『アーランドの街』

 『アランヤ村』と行き来するのは大変だけど、村と街では出来ることが違う。それに、周辺の採取地で採れるものも違うから、両方で活動したほうがいいんだけど……

 

 うーん…。やっぱり移動時間が少し勿体なく感じる。それに、わたし あんまり馬車が得意じゃないんだよなぁ

 座椅子は堅いから体のあちこちが痛くなるし、ガタガタ揺られ続けると気持ち悪くなる……

 

 でも、だからといって徒歩で移動するのは余計に時間がかかってしまう

 途中で通る採取地で『錬金術』の素材を採取できるとは言っても、わざわざそっちを選ぶほどのことじゃない

 

 

「もっと速い移動方法でもあったらいいんだけど……」

 

 そこで思い出したのがマイスさん

 このあいだ、『アランヤ村』から見て南西方向にある半島方面の 採取地の近くで出会った時、何かを言ったかと思うと マイスさんは一緒にいたクーデリアさんと何処かへ一瞬で消えてしまった

 

 あれは『錬金術』のアイテムを使ったんじゃないかなーって

 

 だからわたしは、実際にマイスさんに聞いてみることにした

 

 

 

――――――――――――

 

 

***青の農村***

 

 

 マイスさんに会いに行くため、今日は朝早くから街を出て『青の農村』へとむかった

 

 『青の農村』へたどり着くと、まだ早い時間だというのに村の中では何人もの人が行き()っているのが遠目にも見えた。いつだったか「農家の朝は早い」って話しを聞いたことがあったけど、その話は本当みたい

 

 

 ……と、村の入り口に来た私のそばに、いくつかの影が集まってきた。ウォルフやたるリスといったモンスターたちだ

 一瞬、身構えかけちゃったけど、よくよく見るとちゃんと青い布が付けられていたから、『青の農村(このむら)』の住人(?)だった

 

「おはよう。お邪魔するね」

 

 わたしがそう言うと、モンスターたちは軽く鳴き声をあげてきた。でもそれは威嚇とかとは全く違った柔らかい感じの鳴き声で……それに、こころなしかモンスターたちが笑っているようにも見えた

 

 

「にゃうー」

「みゅうー」

「うなー」

 

 

 そんな鳴き声の中に、少し毛色が違うものがあった。

 その発生源を探してみると……

 

「あっ!」

 

 一体のウォルフの背中の上に、小さな子ネコが3匹乗っかっているのが見えた。あのウォルフは さっきここまで歩いて来たモンスターの一体なはずだから、あの子ネコたちは歩く時の揺れの中でも背中にしがみついていたんだろうか?

 

 

「なー…」

 

 

 あっ、また別のネコの鳴き声が聞こえた!

 

 その声をあげたネコはすぐにわかった。モンスターたちの間をぬうようにして出てきた大人のネコ。そのネコはわたしの足元に来てスリスリと身体をすり寄せてきた

 

「ごめんねー?わたし、今から行かなくちゃいけないところがあるの」

 

 そう言うと、そのネコはもう一度鳴いた後わたしから離れていき、村の広場のほうへの道を歩き出していった

 そして、その後をついて行くように子ネコを乗せたウォルフが……そのまた後ろにモンスターたちがついて行っていた

 

 

「……もしかして、あのネコさんがモンスターたちのボスだったり……って、そんな まさかね」

 

 

 そんな考えを頭の中から取り除き、改めてマイスさんの家へとむかった

 

 

―――――――――

 

 

 そうして、マイスさんの家のそばまで たどり着いたんだけど……

 

 

「あれ?あの人ってもしかして……」

 

 マイスさんの家の前にある マイスさんの畑のそばに、二人の人影が見えた

 一人は当然だけど、わたしが会いに来たマイスさん。そしてもう一人は……

 

「おはようございます!マイスさん、()()()()()

 

「おはよう、トトリちゃん!また街に来てたんだね!」

 

「やあ、おはよう お嬢さん。お元気そうで何よりだよ」

 

 いつも通りの笑顔で笑いかけてくるマイスさん

 そして、いつも通り猫背気味……だけど、いつもよりもなんだか元気が無いような気がするマークさん

 

 

「……? なんだかマークさん、元気が無いような気がするんですけど……どうかしたんですか?」

 

「いやね、ちょっとばかり制作意欲が湧いて造った試作機のロボットがあったんだけどね。それを今しがた、彼にコテンパンにダメ出しされたところなんだよ」

 

 そう言いながら肩をすくめるマークさん

 

「ろぼっと…? いったい何の…?」

 

「気になるかい!?いやぁー、気になるだろう!!」

 

 わたしに顔をズズイっと近寄せたマークさんは、わたしの返答なんて聞かないで喋り出してしまう

 

 

「僕が手掛けた新型の機械!『農業用ロボ』第一弾!その試作機がコレだ!!」

 

 そう言ってマークさんが 私から見て右方向へ移動すると、さっきまでマークさんの身体でわたしからは見えない位置にあったソレが姿を現した

 

 

 『タル』

 ……正確には、タルの上と下に何か機械部品のようなものが取り付けられてる

 

「……こんなのが、ろぼっと…?」

 

「むむっ、そんな残念そうな目で見られては困るなぁ。…まあ、試作機だから勘弁してくれないかな?」

 

 マークさんはため息を吐きながら首を振ったけど、次の瞬間には表情がキリッとした感じに切り替わり、語りだした

 

「上部に取り付けられたノズルからタル内部に蓄えた水を霧状に噴射し、ノズルが回転することにより360度・周囲5メートルの範囲内に水やりを自動でしてくれる!さらに!! キャタピラによって移動するから広範囲に対応できる!」

 

 ええっと……

 つまり、畑の水やりを全部やってくれるってこと!?なんだか、凄そうなんだけど……

 

「でも、なんでそれが駄目だったんですか?」

 

「あー……うーんとね?サイズ的にウネの間の間隔よりも大きくて、乗り上げたり作物を踏みそうになったり……それに、傾いたら均等に水やりが出来なくて…。後は、作物によって高さとかが違うから、ここみたいに色んな種類の作物を育てている畑には適していなくてね」

 

 

 ピシッと伸びていた背筋ごと肩を落とすマークさん。……そして、またキリッとした表情で顔を上げてきた

 

「でも、問題点はわかったんだ。次はもっといいものになるよ!……でも、またこれをラボに持って帰らないとか。キャタピラを動かす燃料もバカにならないし、運んでいくしかないかな……」

 

 また肩を落とすマークさんに、マイスさんが笑いかける

 

「よかったら、僕が街まで運びましょうか?こう見えて、力仕事には自信ありますから」

 

「良いのかい?」

 

「はい!……あっ、でも最後の一角に水をやってからで!」

 

 そう言って畑の中へと入っていくマイスさん

 

 

 その数秒後……

 

 

「てえぇーい!」

 

ピシャッ!!

 

 マイスさんの持つジョウロから広範囲にまかれる水。それは、広い畑の半分近くを(うるお)していた……

 

 

「ま、マークさん…」

 

「なんだい」

 

「アレを、越えられますか……?」

 

「…………科学に不可能は無いよ」

 

 ……少し、言葉に間が開いていた……

 

 

―――――――――

 

 

 そして、わたしはと言うと、当初の目的をすっかり忘れていた

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