お菓子をくれなきゃ、『カブ頭』にするぞ!
そして、ついに『フィリスのアトリエ』発売日です!
……やる時間あるかが心配です
『黄昏の玉座』まで行った クーデリアとの冒険
帰ってきた『アーランドの街』も、『青の農村』の様子も相変わらずで一安心している部分もあるけど……やっぱり、今回の冒険で見かけた『ゲート』のことが気になってしまう
僕らが『黄昏の玉座』での調査を終えて街に帰ってきてから、もう十数日ほど経っていた
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***冒険者ギルド***
「全然ね。今のところは、だけど」
そう言ったのは、カウンターを挟んだ向こう側にいるクーデリア
何の話かといえば、当然『ゲート』のことだ
「うーん……僕らもあの時が初めてだったわけだし、やっぱりそうそうあるモノじゃないのかな?」
「そうかもね。それに、これまでに発見された例もないから……せめて、どういった場所に、どういった条件で発生するか…なんてことがわかっていればいいんでしょうけど」
「いやぁ、そういったことは昔からわからなかったからなぁ……」
『シアレンス』に居た頃から、ゲートについてはほとんど知らなかった
町の外…一般的には「ダンジョン」なんて呼ばれていた場所に発生する…といったくらいで、そのダンジョンの中でもない場所があったり、複数個存在する場所もあったりと、本当に状況はバラバラだったような覚えがある
そのうえ、ゲートにも属性があったり……本当に不思議なことばかりだった
「他の冒険者…例えば、昨日帰ってきたトトリたちとかにも聞いてたりはするけど、見たことは無いみたいよ。……まあ、掲示板とかにも「見つけたら逃げ、ギルドに報告すべし」って張り紙してあるし、アレ一個だけってわけじゃなければ、そのうち報告は来るとは思うわ」
「うん……わざわざありがとう、クーデリア」
「別にいいわよ。あんたの話が本当なら、モンスターがドンドン出てくるんでしょう?そんなのギルドとしては放っておけないもの」
「当然よ」と言ったクーデリアだったけど、その顔はすぐに困り顔になった
「問題は、見つけた後 破壊することは出来ても、それは根本的な解決にならないことね。…特に、あのゲートってのが複数個存在して何度も発生するようなものならなおさらのことよ」
クーデリアは僕の顔をジーッと見た後、短くため息をついて首を振ってきた
「
そう言いながら またため息をつきそうになっていたクーデリアが、突然ピシッっと動きを止めて……何やら苦虫を噛み潰したような顔になった
「…あいつがいるわね……。まあ、今はどこをほっつき歩いてるかは知らないけど」
「あいつ…?」
キカイ…じゃなくて、機械方面とかならマークさんかと思ったけど、ゲートはそういう部類じゃないし……それに、なんでかは知らないけどクーデリアが嫌そうな顔をしてる…
「あっ…!」
クーデリアが嫌そうな顔をしている、って部分から思いついたのは少し失礼かもしれないけど、クーデリアが言わんとする相手がわかった
ロロナの師匠である、アストリッドさんだろう
確かに、何かできそうな気もするけど……
でも、今どこにいるかわからないからなぁ…。前にホムちゃんに何処にいるか聞いたことはあるけど、その時も教えてもらえなかったから探しようが無い
「アストリッドさんがいないなら、同じ『錬金術士』であるロロナ…とか?」
「ロロナが、ねぇ…」
僕の言葉にクーデリアは腕を組んで瞼を閉じ……ほんの一瞬の間を置いて見開いた
「無理ね」
「だよね…」
うーん……対処法のことも含め、『ゲート』のことはとりあえず保留かな?
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***職人通り***
情報収集をはじめとした『冒険者ギルド』でしておかなければならなかった用事を一通り終えた僕は、村へと帰るべく街の外に出るための門へと歩いていた
「あっ、そういえば クーデリアが言ってたけど、もうトトリちゃんとロロナ 帰って来てるんだっけ?」
『ネーベル湖畔』までは一緒に冒険して、その後 別れたんだけど、僕らは北方面の『黄昏の玉座』を目指して行って、トトリちゃんたちは東のほうの採取地を周って行くって話していたのを思いだす
距離的にかかる時間を考えると、こっちのほうが早く街に帰りつくのはわかっていたけど、思ったよりもその差は無かったみたいだ
「せっかくだし、ちょっと様子を見てこようかな」
何にしろ、このまま進んでいたらアトリエの前を通るわけだから、そんな寄り道ってわけでも無いし問題無いだろう
そんなことを考えながら歩き、そうかからずにアトリエの前に差し掛かったんだけど……
「ん…?」
玄関の扉の前に立って、耳を澄ませる。……なんだかアトリエの中が騒がしい気がした
「…なんだか、前にも似たようなことがあったような……」
確かあの時は、ロロナの発案でロロナとトトリちゃんがふたりで一緒に調合したら全部『パイ』になっちゃう…とかそんな理由で、ロロナがトトリちゃんに怒られてたんだっけ?
この様子だと、今日も何かが起こったようだ
「大変なことじゃないと良いんだけど…」
無意識にそう呟いてしまっていた僕は、一旦 気持ちを引き締めた後、ノックをしてからアトリエの扉に手をかけた
「こんにちはー」
「どうしよう どうしよう どうしよーう!?…あっ!マイス君!!助けてー!トトリちゃんが、トトリちゃんが不良になっちゃったー!?」
「マイスさん!先生を落ち着かせるの、手伝ってくださーい!!」
「……どうなってるの?これ?」
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***ロロナのアトリエ***
とりあえずその場を落ち着かせて、二人から話を聞く……本当に、前にあったような感じがする
「えっと、話をまとめると……『お酒』の作り方を知りたいってトトリちゃんが言って、それを「作って飲みたい」ってことだと思ってしまって、トトリちゃんが不良になっちゃった、と…?」
「う、うん」
僕が言ったことに素直に頷くロロナ
その様子を確認してから、僕は今度はトトリちゃんのほうに目を向ける
「…でもそれは、自分で飲むためじゃなくて、『アランヤ村』の酒場のマスターのゲラルドさんに前々から頼まれていた「名物になるお酒をつくってほしい」っていうお願いをきくためだった…ってことかな?」
「はい、そうです」
トトリちゃんも、僕の言ったことを頷いて肯定してくれた
さて、この二つの話を合わせて考えると……
「…つまりは、ロロナのはやとちりだったってことだね」
「うぐぅ!?」
ちょっとオーバーアクション気味に胸元に手を当ててのけぞるロロナ
はやとちりしちゃったところも含め、ロロナらしいと言えばロロナらしいけど……
「慌てても何も解決しないわけだし、もうちょっとは ちゃんとトトリちゃんと話そうとしてれば、そんな勘違いをしないで済んだんじゃないかな?」
「う~…。ゴメンね、トトリちゃん」
「いいですよ、先生。…でも、次 何かあった時はもう少しお話を聞いてくださいね?」
「はい…」
「いいですよ」って言われたとたん表情が明るくなり、その次の注意で また表情が暗くなり肩を落とすロロナ
トトリちゃんが歳のわりに落ち着いてるって事もあるんだろうけど、これじゃあどっちが大人なのかわからないような……
「とりあえずは一段落ってことで、とりあえず、トトリちゃんの用事の話に戻ろっか?」
そう言うと、ロロナとトトリちゃんは頷いた
「ええっと、お酒の作り方だったっけ?」
「はい。先生もいちおう成人してお酒飲めますし、知ってるんじゃないかなって」
「いちおうって…。ううっ」と、ひとり呟いているロロナをよそに、トトリちゃんは口元に手を当てて「あっ…!」と何かを閃いたのか小さく声をもらした
「そういえばこの前……イクセルさんのお店でゴハン食べた時に、『青の農村』でお酒を作ってるって話をマイスさんから聞いたような……」
そういえば、そんなこともあったなー…なんて思いながらも、僕は頷いてみせた
「うん。そんなに多い量はないけど、果物と麦のお酒を少しずつ作ってるよ」
「…!そうでしたよね! なんだ、最初から先生じゃなくてマイスさんに聞けばよかったんだ!」
「けふぅっ!?」
ロロナがアトリエの床に倒れた。
倒れたロロナの口からは、小さく震え声で「先生なのに……私が先生なのにぃ…」と聞こえてきた
「それじゃあ……僕がお酒の作り方を教えるから、トトリちゃんはそれを『錬金術』のレシピに変換していくことから始めようか!…ロロナ、教えてあげられる?」
僕がそう言うと……
「ふふんっ!先生に任せなさーい!! トトリちゃん!わからないことがあったら、遠慮なく聞いてね!」
ピョンッ!と元気良く立ち上がり、復活した