マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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3年目:トトリ「『サンライズ食堂』での騒ぎ・下」

 

 

***サンライズ食堂***

 

 

 ひょんなことから何故か凄く不機嫌になっちゃったクーデリアさん

 先生も、ステルクさんやイクセルさんも どうしたものかと頭を悩ませている時……その空気を変えるきっかけが…!

 

「こんにちは!イクセルさん、(おろ)している野菜についてなんですけど、今 時間あります……あれ?」

 

 『サンライズ食堂』に入ってきたのは、あろうことかクーデリアさんが不機嫌になった一因(だと思う)マイスさんだった

 

 

「あら、マイス。ちょうどいいところに来たわねー」

 

「えっ、クーデリア?よくわからないんだけど……何かあったの?」

 

 良い笑顔過ぎて 一周回って怖いクーデリアさんに手を引かれるままに、わたし達がいるテーブルまで来るマイスさん。だけど、マイスさんはクーデリアさんの様子にも気づいていないのか 至っていつも通りな感じで、「どうしたの?」と軽く首をかしげている

 

 そんな様子を見たイクセルさんが、小声で「面倒そうだし、関わりたくねぇけど……放置したらしたで、延々と店の空気が悪いままだし…」と呟いた後、ため息をついてからマイスさんに言った

 

「いや、たまたまウチに居合わせったってだけだ。……で、昔話をしてたんだけどよ、それでちょっとあってな」

 

「ええっとね…その、りおちゃんのことで……」

 

 続いて先生がそう言うと、マイスさんは「ああ、リオネラさんのこと」と納得したように頷いた

 それを見たクーデリアさんが、マイスさんに問いかける

 

「ねぇ、トトリから聞いたんだけど……あんたの(ところ)に あいつが遊びに来てたりしてるってのは、本当の事かしら?」

 

「うん。2,3カ月に一回くらいで『青の農村』に来てるよ」

 

「隠す気ゼロなのか!?」

 

「ええっ!?」

 

 イクセルさんのツッコミに驚いたうえで、また首をかしげて「ど、どういうこと?」と悩みだすマイスさん

 そんなマイスさんをみていると、本当にこの人がわたしよりも年上なのかが疑わしく思えて……あっ、そんなこと言ったら、先生もか…

 

 

 

「あ、あのねあのねマイス君。その……りおちゃん、もう何年も街には帰ってきてないの」

 

 先生にそう言われて、一層首をかしげるマイスさん。そして、周りを見て……

 

「えっと、街に来てないんですか?」

 

 

「全然、見かけてないぜ」

 

「少なくとも、私も会っていない」

 

「ええ、ギルドにも顔を出してないし、街で人形劇をしている人がいたって話も聞いてないわ」

 

 イクセルさん、ステルクさん、良い笑顔のクーデリアさんにそう言われたマイスさんは、ゆっくりとわたしの方をむいてきた

 

「……そういうことみたいです、マイスさん」

 

「え、ええぇー!?」

 

 

―――――――――

 

 

「なるほどな……まあ、キミらしいと言えなくもないか」

 

 腕を組んで頷くステルクさんに、マイスさんは困ったように「あははは…」と笑っていた

 

「はい…。街から近いですし、街方向の街道のほうから来ているのも見たことがあったから、てっきり街に行った後 『青の農村』に寄ってくれているのかと思って……」

 

 マイスさんの説明を聞いて、わたしは「まあ、確かに思えなくもない…かな?」と納得する

 他の皆さんも似たような反応で半分呆れ気味に笑っていた

 

「はぁー、そういうことだったのか。…ま、昔っからロロナとは別の意味で抜けてるところが有るからな、マイスは」

 

「ええっ!?イクセくん、わたしそんなに抜けてなんかいないよ!」

 

 ロロナ先生の反論に「どっこいどっこいだろ」と返すイクセルさん

 そして、クーデリアさんはと言うと……

 

「…………ふんっ」

 

「あっ、ちょ……あいたたた!」

 

 さっきまで自分が座っていたイスにマイスさんを座らせて、後ろからマイスさんの髪をワシャワシャと撫でまわしたり、ほっぺをグニーっと引っ張ったりしてた。マイスさんは、どうしてされているのかは わかっていないみたいだけど、リオネラさんの一件で負い目を感じているのか されるがままだった

 

 

 

 …と、そんな中でわたしは、いつの間にかステルクさんがアゴに手を当て、何かを考え込むような体勢をとっていることに気付いた

 

「ステルクさん? どうかしましたか?」

 

「…ん? いや、少し疑念が湧いてな……」

 

 そう言ったステルクさんは、やっとクーデリアさんに解放されたマイスさんに目を向け、口を開いた

 

 

「そのだな……まさかとは思うが、キミの村に王が訪れたりはしてないだろうな」

 

「周期はバラバラですけど偶に来ますよ? 最近だと、今年の初めくらいに7日間くらい…………あっ、えっと、もしかして……?」

 

 いつも通りに喋っていたマイスさんだったけど、途中である可能性に気付いたんだと思う。一度ハッっとしたかと思うと段々と目が泳ぎ出した

 その様子を見て、ステルクさんはイスから静かに立ち上がり テーブルそばの壁に立てかけておいた自分の剣を手に取って……

 

「「って、ダメですよ!?ステルクさん!」」

 

 わたしが言うのとほぼ同時にロロナ先生も同じことを言い、抱き締めるような形でステルクさんを止めた。イスに座っていたわたしも立ち上がり、少し遅れて 剣を持つステルクさんの手を捕まえた

 

「ええい、止めるな!アイツに一発入れなければこの気、一向に収まらん!!」

 

 そう言ってもがくステルクさんだけど……まだ冷静な部分もあるんだと思う。そうじゃないと、わたしと先生なんて力ずくでふりほどけるだろうし……

 

 

カチャリ

 

 

そんな聞きなれない音が聞こえ、気になってステルクさんを抑えながらも その音がした方を見てみると……

 

「あの子だけならまだしも、ジオ様まで…!!」

 

 そこには、イクセルさんに両腕を捕まえられているクーデリアさんがいた

 あれ?クーデリアさんが持ってるのって……『銃』!?

 

「は・な・し・な・さ・い・よ!この!」

 

「離せるかっ!ステルクさんもそうだけど、店の中で銃撃ったり、剣振り回したりしたら、店の物も壊れちまうだろ!」

 

 

「イクセルさん!?マイスさんの心配じゃないんですか!?」

 

「言いたいことはわかるが、半分自業自得みたいなもんだろ!」

 

「…残りの半分は?」

 

「天然だな」

 

 わたしはそう言われて「ああ」ともらしてしまう。…だって、それで納得してしまうんだもん……

 

 

「くそ、離せ!」

 

「離しません!」

 

 未だにもがくステルクさん。そんなステルクさんを止める先生

 このままではらちがあかないと考えたのか、ステルクさんはロロナ先生に向かって口を開いた

 

「王が訪れていた。…ならば、王だけでなくアストリッドも(かくま)っていたかもしれんのだぞ!」

 

「マイス君はそんな事する子じゃありません!さすがに教えてくれますよ。…ねっ、マイス君?」

 

 そう言ってロロナ先生はマイスさんのほうを向いた

 これにはマイスさんもしっかりと頷いて、返事をした

 

「来てないよ。アストリッドさんのことは調合素材を要求してきた時に、僕でも居場所を突き止めようとはしたけど、結局わからないままなんだ」

 

 「だよねー」という感じで、流そうとした先生。…だけど、ふと動きを止めたステルクさんが怖い顔をして言った

 

「…待て、調合材料の要求とは何だ?」

 

「えっ?えっとですね、定期的に ホムちゃんがおつかいで『青の農村(ウチ)』に錬金術の材料を取りにくるんです」

 

 

 

「マーーイーースーーくーーーーん!!」

 

「先生まで!? わーん!もう止められないよぉー!!」

 

 






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