マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 『フィリスのアトリエ』、未だにクリアできていません
 とりあえず、お姉ちゃんイベントを進行中…といったところです

 そんな『フィリスのアトリエ』のサウンドトラックを聞きながら執筆しました
 『フィリスのアトリエ』でのお気に入りはあえて選ぶのであれば「Shooting Star」です。ですが、戦闘曲を中心に他の楽曲もとても良いものです!


3年目:マイス「『大漁!釣り大会』」

 

 

***青の農村***

 

 『青の農村(ウチ)』では、ほぼ毎月、何かしらのイベントが行われている

 

 それは恒例になっているお祭りであったり、突発的な思い付きからのものであったりと、様々な経緯でイベントが決まるんだけど……

 

 

―――――――――

 

 

 今日のお祭りは四季の『野菜コンテスト』と同じくらい初期から行われている恒例のお祭り『大漁!釣り大会』が開催される

 

 

 村の中には井戸といったものもあって そこから生活用水を得たりするんだけど、それ以外にも村の端のほうに川もある。農業には水は重要なため、当然と言えば当然かもしれない

 

 今日の『大漁!釣り大会』は、その川を中心に様々な場所で釣りをして 制限時間内に釣った魚の数を競うお祭り

 単純明快なルールで盛り上がるので人気があり、その日の晩ゴハンは『青の農村』は勿論 アーランドの街の多くの家庭で魚料理になるのも、もはや恒例だったりする

 

 

 

 そういう楽しいお祭りなんだけど……今日は少しいつもと違うところがあった

 それは……

 

 

「…………」

 

「じー……」

 

 

「あのー…ステルクさん? 参加者が怖がってしまいますから、その目であたりを観察するのは止めてくれませんか? ロロナは別に良いけど……」

 

 そう。参加者や見学者を始めとした、お祭りに来ている人たちをジッっと見つめる人が二人。ステルクさんとロロナだ

 

 こんなことになっている原因は、少し前に判明した「リオネラさんとジオさんとホムちゃんは、街には帰ってきてないけど『青の農村』には来ている」…っていうあの一件だ

 あれ以降ステルクさん、ロロナ、クーデリアは、仕事が無くてヒマな時には よく『青の農村』に来るようになった。理由は勿論「来るかもしれない」と思い、その時を逃さないようにするためだと思う

 そして、今日……人の多いお祭りの日にも人に(まぎ)れて来るのではないか…と、張り切って見張っているわけだ

 

 

「そうは言われてもだな……。人混みに紛れて王が潜入してくるかもしれないというのに、目を凝らすなというのは無理な話だ」

 

「潜入って。そんなドロボウみたいな……」

 

 ジオさん……「元」とは言っても王様なのに……

 

 というか、ジオさんに限らずリオネラさんやホムちゃんもそうだけど、顔を隠したりすることなく普通に来るから、別にそんなに目を皿のようにしなくても 来ればすぐにわかると思うんだけど……

 

 あっ。でも、ジオさんはお祭りの日に来るときだけは、少し顔を隠してるか

 

 

 そんなことを考えていると、隣にいたステルクさんがいきなり走り出した

 

「わわっ!?ステルクさん、いきなりどうしたんだろ?…もしかして、ジオさんを見つけたとかかな?」

 

「……かもしれないね。うーん…ちょっと心配だし、一応追いかけてみようかな?」

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「今日という今日は……!」

 

「わかったわかった。とりあえず、ひとまず落ち着かないかね?」

 

 村の広場の近く。行き交う人たちの中で、ぽっかりと空いた 人のいない空間

 そこで二人の人が、ステルクさんとジオさ…鼻から上のあたりを隠すタイプの小さな仮面をつけた紳士マスク・ド・Gが相対していた

 

 

「落ち着くも何も無い!」

 

「ムゥ…。彼が密告したりするとは思えんのだが、尋問でも……いや、案外ポロッと出たか?」

 

 困ったようにため息をついたマスク・ド・Gは、首を振って言う

 

「しかしだな、ここでお前の相手をしようにも出来んだろう?」

 

「……?どういうことだ?」

 

「わからんか? こんなところで私たちが騒ぎを起こせば、せっかくのイベントが台無しになってしまうではないか。この村の村長の彼を始め、今日この日まで色々と準備をしてきた村の人たちに迷惑をかけてしまうだろう」

 

 マスク・ド・Gの言葉に、さすがのステルクさんも「ぐぬぬ…」と言葉を詰まらせてしまう。…けど、完全に引いたわけではなくて、やっぱりまだあきらめられない部分があるようだった

 

 

 そんなステルクさんを見かねたのか、マスク・ド・Gが薄い笑みを浮かべてステルクさんに言った

 

「まぁ、こうして見つけられてしまったのは事実だ。勝負といこうではないか」

 

「なに?」

 

 自身の言葉を撤回するような物言いに眉をひそめるステルクさん

 マスク・ド・Gは、その反応を特に気にする様子も無く……あるモノを取り出した

 

「ただし、コレでだがな」

 

「釣竿……だと……?」

 

「今日のイベントの内容くらいは知っているだろう?…私よりも多く魚を釣れたのであれば、何でも一つだけ言うことを聞いてやろう」

 

 その言葉をどう思ったのかはわからないけど、ステルクさんの目が大きく見開かれた

 

 

 ……と、僕に遅れてロロナが現場に到着した

 

「あれ?あそこにいる、ステルクさんと話してる人って…マスク・ド・Gさん?」

 

「そうみたい。…というか、ロロナってマスク・ド・Gさんのこと知ってるの?」

 

「うん!…とは言っても、昔あった『武闘大会』の時に戦ったってくらいで、ほとんど知らないんだけどね」

 

 その言葉を聞いて、ロロナの中では「ジオさん=マスク・ド・G」にはまだなっていないという事を確信し、とりあえず黙っておくことにした

 

 

 そんなことを話しているうちに、ステルクさんとマスク・ド・Gの間で話は進んだようで、整えられたアゴ髭に触れながらマスク・ド・Gは「フム…」と小さく唸った

 

「とはいえ、参加する気で来た私と、そうではないお前との間には差があるだろう…。ハンデとして私の釣った数-4匹釣れば、そちらの勝ちとしてもかまわんぞ?」

 

「ハンデなど要らん!正面から挑み、勝ってやる!」

 

「心意気や良し!では、開始時刻までに準備をしなさい。この大会では釣りの道具のレンタルも行っているそうだ。村の者に聞いてみるといい」

 

 そう言ってから、「さて、私も場所に目星を付けておくか」と言って何処かへ行くマスク・ド・G

 対して、ステルクさんは辺りを見渡し……僕を見つけると、こちらへと早足で近づいてきた

 

 

「話は聞いていたな?」

 

「…わかりました。釣りの道具一式ですね」

 

 「頼む」と短く言ったステルクさん。……そして、僕と一緒にいたロロナなんだけど…

 

「釣りかぁ…。自信は無いけど、せっかくだし私もやってみようかな?」

 

 

―――――――――

 

 

 そんなわけで、貸出用の釣り道具を取りに 広場の先にある『集会場』へと三人で行ったんだけど、そこには係をしてくれている村の人以外に、見知った人がいた

 

 

「あれ?トトリちゃん?」

 

「あっ、マイスさん。それに先生とステルクさんも。こんにちは」

 

 ちょうど貸出用の釣り道具一式を受け取っているトトリちゃんがいた

 確かに、アーランドの街にいれば『青の農村(ウチ)』のお祭りの情報も入ってくるだろうから、そこまで驚くようなことでは無いんだけど……それでも予想外だった

 

 

「君も参加するのか?」

 

「はい。ちょうどお仕事も入ってなかったので…。それに、先生が「ほむちゃんが来ないか見に行く!」って何度も言っていたのが耳に残ってて、それが気になっちゃって」

 

 ステルクさんの質問に答えるトトリちゃん。そんなトトリちゃんを見ながら、ロロナが「そういえば…」と口を開いた

 

「トトリちゃんの家って海のすぐそばの漁村だし、もしかして こういうの得意だったりするのー?」

 

「じ、実は初心者で……。でも、お魚には慣れてますし、お父さんが釣りをしているところは見てたから、大丈夫……だと思います、たぶん…」

 

「へぇ、トトリちゃんのお父さんが…。 って、わたし、トトリちゃんのお父さんに釣り上げられたんだっけ…」

 

「何を言っているんだ、君は…」

 

 ロロナの言葉に、少し唖然としながら、ステルクさんはため息をついていた……

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 そうして始まった『大漁!釣り大会』だったが、その結果は……

 

 

 

「負けた……」

 

 そう落ち込むのはステルクさん。釣った魚の数は一匹だけという結果に終わった

 

 

「でも一番大きかったじゃないですか!ステルクさん、元気出してくださいよー」

 

 そう励ますロロナは七匹。初めてにしては十分な結果だと思う

 そしてロロナの言う通り、ステルクさんが唯一釣った一匹は110cm超えの大物。今回の大会が『大漁!釣り大会』ではなく『大物!!釣り大会』だったならほぼ間違いなく入賞していただろう

 

 

「勝負には勝った、か……」

 

 ステルクさんとの勝負に勝ったはずのマスク・ド・G…もとい、ジオさん

 19匹という十分な数を釣り上げたジオさんだったけど、結果は()()だった

 

 

 

「それでは、最後に村長からの優勝トロフィーの贈呈だ」

 

 そう司会進行のコオルが言ったから、僕はトロフィーを渡すために 一位の人の前まで移動した

 

「えっと…ええっと……いいのかな?」

 

「あはははっ、そんなに遠慮とかしなくていいよ。結果は結果なんだから しっかり胸を張って受け取って!」

 

「は、はい…!」

 

 そう言葉を交わしてから、僕はトトリちゃんにトロフィーを手渡した

 トロフィーの重さで少しふらつきつつも、トトリちゃんはしっかりと受け取ってくれ、広場には大きな拍手が鳴り響いた

 

 優勝したのは、予想外のトトリちゃん

 一匹一匹は大きくはないものの、24匹もの数の魚を釣って 堂々の優勝だ

 

 

 

「あのー…? マイスさんは出場してなかったんですか?」

 

「……『野菜コンテスト』と一緒で、出場禁止処分受けてるんだ」

 

「えっ……」


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