※2019年工事内容※
誤字脱字修正、特殊タグ追加、句読点、行間……
ところどころ灯りは灯っているものの基本的に薄暗い洞窟、ここは『アーランド国有鉱山』。
『アーランド国有鉱山』は、街から徒歩3日でたどり着くその名の通りの鉱山で、今でこそ随分と寂れてしまっているけど、昔は街で使われる金属の全てがここで採れる鉱石で作られていたそうだ。
「徒歩3日」というと、その間、家の畑はどうなっているかと思うかもしれないが問題は無い。
ずっと作物を作り続けていると土も疲れるものなので、家を出る前に全て収穫し、今は何も育てずに休ませているのだ。
まあ本当はまだそんなに長く休ませる必要は無かったんだけど、世話が出来ずに枯らしてしまうわけにもいかなかったので仕方ない。せめて水を撒いてくれる
それと、
街を出て生活する計画をたてた際に気にした『変身ベルト』だけど、記憶通りに効果を発揮することができ、
身長1メートルにも全然とどかない小さな体のモコモコの姿なんだけど、その身長ゆえに人の姿の時より歩幅は短い割に実は移動速度は速かったりする。
それはモコモコの姿になると、よくわからないが人の姿の時より筋力とスタミナがあるようで、瞬発力もあるのだが全速力とまではいかないけどかなりのスピードで長時間走ることもできるのだ。
そのうえ、小さな体も「人では通れない道でも通れる」、「小回りが利くからモンスターも難なくかわせる」という利点があり、それらを活かすことで移動時間を短縮できる。
……もちろん、スタミナがあるとは言っても十分疲れはするんだけどね?
「おっ、これなんかも良さそうかな?」
只今モコモコの姿で鉱石の採取中。人では取れない場所まで探せるので便利だ。
シアレンスに居た頃には見たことの無い鉱石ばかりで、どれがどういったものなのか把握はできていないけど、結構良い集まり具合だと思う。
鉱石以外にも見たことの無い使えそうなものもあり、手持ちがイッパイになるまで採取する。
そろそろ帰ろうとモンスターを避けながら外を目指していると、話し声が聞こえてきた。
「いないみたい……」
「んじゃあ、もっと奥に行ったんじゃね?」
洞窟内で声が反響して 正確に声のする方向まではわからないが、この声はロロナさ……ロロナとイクセルさんだ。
「奥に行った」あたりから察するに、おそらくは鉱山の入り口付近にいるのだろう。
「えぇ!? 奥に!? マイス君、モンスターにやられちゃうよ!」
「つい先日、彼は強くてそこらのモンスターは一発で倒してしまう と自慢げに話していたのは、君じゃなかったか……?」
あ、ステルクさんもいるみたい。
というか、僕を探しに来ているのかな? どうしたんだろう?
それと、ロロナは僕のことを「強い」と認識しているのか「弱い」と認識しているのか、どっちなんだ。
「先輩も先輩だ。「『アーランド国有鉱山』に行くならついでにマイス君の様子も見てきて、大丈夫だろうけど……たぶん」などと言って。心配になるくらいなら最初から一人で行かせなければいいだろうに」
「ロロナ、いい加減落ち着いたらどうだ? アイツもそんな無茶して突き進むような奴じゃないから大丈夫だって」
「でもでも、マイス君って抜けてるところがあるから、もしかしたらモンスターから逃げようとして逆にモンスターの巣に突っ込んで行っちゃったり、採取しようとして足滑らせて谷底に落ちちゃったり……!?」
「どんだけマイナス思考なんだよ。ていうか、お前に「抜けてる」なんて言われるのは相当だぞ」
なるほど、「探索に行くときはココに言いに来て!」とエスティさんに言われていたから行ったんだけど、その後ロロナたちが来て、エスティさんにお願いされたのだろう。
さて事情もわかったので、ここで人の姿になり出ていけばいいような気もする……んだけど、
それはモコモコの体が小さいことが原因で、普段使っているカゴといったものはモコモコの体には大きくて持ち運び辛く、カゴの代わりに小型のポーチで鉱石等を採取しているのだ。
そして、普段使っている双剣『ショートダガー』も使えないので持ってこれていない。
なので、もし今の状況で人の姿になってロロナたちの前に出た場合――
「マイス君、なんで武器持ってないの!?」
「お前 何考えてるんだ!?」
「武器を持たずに探索に出るとは、君は正気か!!」
――そんなことになったら確実に街の外に出してもらえなくなるよね……。
そんなわけで、みんなに見つからないようにしないといけないのだけど、ここを出ようにも鉱山の出入り口付近にロロナたちがいて出れないので選択肢は限られてくる。
コツッ コツッコツッ コツッ コツッ コツッ
何人かの足音が大きくなってきて、近づいてきているのがわかる。
見つからないようにするため、岩陰に隠れ 体を丸め様子をみることにする。というか、それ以外思いつかなかった。
「それにしても、本当にいないな」
「この先にも人気は無さそうだな……。もしかしたら既に帰ったのかもしれないな。」
コツッ カツン コツッコツッ コツッ コツッ
「えっ?それってどういう…?」
「彼は我々よりも一日近く前に出たらしいからな。入り口付近でのみ採取をし帰ったとすれば、どこかですれ違ってしまった可能性が十分にある。」
「なるほど、確かに俺たちはロロナの道草に付き合ったりもしてたからな」
コツッコツッ コツッ コツッ コツッコツッ
「このあたりも見たところ 人が通った形跡もないようだ。ほぼ間違いないとは思う」
「でも、この先にある採取場所にも用がありますから!そこにもいないか探しましょう!」
「まあ用があるなら当然行くけどよ。俺としてはここらへんは食材が「何かのタマゴ」しかないから あんまりやる気でないんだよなぁ」
コツッ コツッ コツッコツッ コツッ コツッ
通り過ぎだんだんと離れていく話し声と足音。
岩陰で息を潜め外に出るタイミングをはかり、そろーりと一歩、岩陰から外のほうへと足を出した。
「何者だ!!」
「モコッ!?」
もう20m以上離れていたステルクさんが いきなり振り返って抜刀し叫んだ。
それに驚き、ついモコモコの姿の
「
「待てぃっ!!」
待つわけがないよっ!?
モンスターはサーチ&デストロイであることがここでの常識であることは知っている。
『タミタヤ』の魔法のかかっている武器で襲われるならまだしも、いくらなんでも無理だっ!
全力疾走で逃げる、それしかない。
―――――――――
「モコモココーーーー!!」
何やら少し気の抜ける鳴き声をあげて一目散に逃げていく小型モンスター。
その声と小さな足音はたちまち遠退き、聞こえなくなった。
「……なんだったんだ?今のちっちさいの」
「さぁ…? 私もわかんない……」
「見たことの無い種類のモンスターだった……もしかすると新種かもしれないな。王宮にも報告しなければならん」
よくわからなかったが、何をされたわけでもないので「なんかわかんないけど、別にいいか」ということになった。
「そういえば、新種を見つけたらその名前をつけたりできるんですか?」
「何を考えているかと思えば、そんなことを……」