マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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4年目:マイス「春の陽気に誘われて…」

 

***マイスの家前・畑***

 

 

 早朝。まだ冬の寒さは残るものの、段々と春らしい陽気になってきた今日この頃

 長年の習慣になっていて、むしろしないと落ち着かないレベルになっている畑仕事で扱う井戸水。その身を裂くほどの冷たさも幾分和らいだ感じがする

 

 

 畑の作物の様子を確かめながら作業を続けている僕に、声がかけられた

 

「あいかわらず、朝は早いのですね」

 

「なー」

 

 お客さんの足元にいるのは、『青の農村(ウチの村)』の看板ネコ(マスコット)的なポジションに落ち着いている(もと)・「こなー」、現・「なー」だ。……ついでに言うと、1,2年ほど前に3匹の子供を産んだお母さんでもあったりする

 こんな朝早くは村の集会場、もしくはウチのモンスター小屋で寝ていることが多いのだけど……今日は早起きさんのようだ。その理由はもちろん、なーがすり寄っているお客さんにあるわけで……

 

 

「やぁ!おはよう、ホムちゃん」

 

「はい。おはようございます。おにいちゃん」

 

「なうー」

 

 ホムちゃんの返事に続いて、なーからも元気な鳴き声が返ってくる

 そんな足元からのなーの声につられるようにして、自身の足元に目を向けるホムちゃん。その顔はわずかながらではあるけど確かに微笑んでいた

 

 その様子を僕も微笑みながら見ていたけど、あと少し残っている畑仕事のため意識を手元に戻す

 

 ……けど、自然と頭の中では「この後ホムちゃんに出す朝ゴハンは、何がいいかな~?」という考えがめぐっていた

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 畑仕事を素早く終わらせた僕は、身なりを整えた後すぐに朝ゴハン作りにとりかかった……んだけど、これまでホムちゃんが来た時とは違うところがあった

 というのも……

 

 

「…ホムちゃん?あっちのソファーでなーと遊んでていいんだよ?」

 

「いえ、今日はここにいます」

 

 そう言うホムちゃんが立っているのは、キッチンにいる僕の左斜め後ろ…ギリギリ僕の視界に入らない位置。視界に入らないとはいっても、気配なんかはするからむしろ視界に入っている状態なんかよりもよっぽど気になる

 

 なーはなーで、ホムちゃんが構ってくれないことにすねたりすることも無く、それどころか途中までついて来て、行先がキッチンだと確認したところで「おっ、ゴハン作るの?あたしのもよろしくー!」と言わんばかりに「なーぅ」とひと鳴きしてからソファーへと一匹(ひとり)で行ってしまっている

 

 

 

「それにしても……どうしたの? こんなこと、珍しい気がするんだけど」

 

「実は最近、グランドマスターが少し食事にハマっていて……」

 

 食事に対して「ハマる」という表現はどうなんだろう…?

 

 そう一瞬思ったけど、ホムちゃんの言う「グランドマスター」……アストリッドさんのことをよくよく思い出すと、そこまで食に対してこだわりがあったりするような印象が無いことを思い出した。あってもロロナが作った『パイ』を喜んで食べたりしてたくらいかな?

 僕がロロナのアトリエに持っていったおすそわけも、食べるには食べるけど「うむ、悪くはないな」以上の感想を貰えた試しがない。ロロナやホムちゃんは「美味しい」って喜んでくれてたから、そこまで不味かったわけじゃないとは思うんだけど……

 

 そんな点も踏まえて考えると……確かに、僕の知っている限りではアストリッドさんは別段食事に対して特別興味を持ったりすることはあまり想像できなかった

 というか、『錬金術』の研究をしているときなんかは、コンテナから適当に引っ張り出したものをつまんで終わらせたり、それどころか食事自体忘れそうなイメージがある

 

「……そう考えると、ちょっと意外…というか新鮮?」

 

「何がですか?」

 

「えっ?いや、ちょっと独り言」

 

 そう言うと、ホムちゃんは「そうですか」と、そこまで気にした様子では無かった

 

 

 

「それでグランドマスターのことなんですが……グランドマスターも()()()気分が乗った時には自分で料理することもありますが、基本はホムたちが用意します」

 

「うんうん」

 

「それで、グランドマスターが飽きてしまわないように、新たにメニューを増やしたいのですが……基本的にホムの持つ料理の知識は、つくられた際にグランドマスターから授かった『錬金術』の知識の延長線上に存在するものであり、それではグランドマスターを今以上に満足させるのは難しいと判断しました」

 

「なるほど……だから僕が料理を作るところを見てみたかったんだね」

 

 ホムちゃんの意図は大体理解できた

 最初の頃は自覚は無かったんだけど、僕の知っている料理は『アーランド』にある料理と似たものもあったりするけど、似たようなものが全然無い種類の料理も結構ある。それが今のホムちゃんの知識……その大元のアストリッドさんの料理に関する知識を超えるヒントになる。そうホムちゃんは考えたんだろう

 

 

 

「……おにいちゃん? 何故ホムを撫でるのですか?」

 

「ええっとー……なんとなくかな?」

 

 そう言葉を返すと「よくわからない」といった感じに、ホムちゃんはいつものすました顔で少しだけ首をかしげた

 その様子に少しだけ頬が緩んだけど、せっかくだからちゃんと褒めてみることにする

 

「そうだなぁ…あえていうなら「命令じゃなくても、アストリッドさんを喜ばせようって考えるホムちゃんは優しいなぁ」とか、「そのために頑張るホムちゃんは偉いなぁ」…って感じかな?」

 

「つまり、ホムを褒めている、と? ですが、ホムがグランドマスターのために働くのは当然のことですが?」

 

「それでもだよ。……どっちにしたって、僕がホムちゃんを褒めたいって思ったことは事実なんだから」

 

「……? よくわかりません……ですが、何故だか悪い気はしませんね…」

 

 ホムちゃんは、かしげていた首を元に戻したかと思うと、少しだけ撫でていた僕の手に頭を押し付ける様に背伸びをした…

 

 

 

「……背伸びをしたら、おにいちゃんと同じ目線になりました。不思議な気分です」

 

「それは言わないで欲しかったなぁ…」

 

 会った頃からそういう身長差だったけど、最近ちょっとずつホムちゃんの身長が伸びている気がして、抜かれるんじゃないかと一人ハラハラしていたりするから、精神的にあまり良くない

 

 

 

 

 

「な~?」

 

 「まだ~?」と言いたいのか、いつの間にかソファーのある部屋からキッチンまで来ていたなーが鳴いた

 

「ごめんごめん、今すぐ作るよ!……そうだ!ホムちゃん、見学じゃなくって一緒に作らない?それのほうが色々わかるんじゃないかな?」

 

「それはいい考えだと思います」

 

 そう言ったホムちゃんは、「では、手を洗ってきます」と、袖の長い袖を少しまくりながら水瓶のほうへと向かって行った

 

 

「前に、なーのゴハンの作り方を教えたこともあるし……きっと大丈夫だよね?」

 

 少しだけ不安に思いながらも、僕は朝ごはんの材料を取り出していく……

 

 

 

 

 

 …………それにしても、何か忘れてる気がするんだけど……?

 ……まあいっか

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