ウチに遊びに来たホムちゃん。そこまで急ぐ用は無かったみたいで、数日間『青の農村』でゆっくりと過ごすことになったんだけど……
***マイスの家・作業場***
カンッ! カンッ! カンッ!
僕が金槌を振り下ろすたびに、作業場内に金属同士がぶつかり合う音が響きわたる。
そして、ホムちゃんはというと、作業場の一角に置いてあるイスに座っていた。そして、その膝の上に乗っているのはなー。そのなーをホムちゃんは優しく撫でている
……うーん、ずいぶん前にも似たようなことがあったような…?
「どうかしましたか?」
「ん?いやっ、昔にもこんなふうに作業している僕のそばで、ホムちゃんとなーがいることがあったなーって思って」
「そうですね、昔、ホムが街に居た頃は時間がありましたから、こうしてゆっくりしていることもありました。なので、おにいちゃんが調合をしているところや鍛冶をしているところは何回も……」
そう言っていたホムちゃんが、ピタリッと口を…それだけでなく、なーを撫でていた手を止めてた
僕は、金槌を振りながらも「どうしたんだろう…?」とホムちゃんの様子をうかがってた
そして、少し経ってからホムちゃんは目を細めながら首を少しかしげて言ってくる
「……もしかして、今日も前みたいに食材で武器を作ってるんですか?」
「いや違うよ?……というか、なんでそんな残念なモノを見るような目で見てくるのかなぁ?」
「ホムはあの光景を忘れられません。あの、ダイコンやネギといった野菜、そしてタマゴやバターといったものを持って炉へと向かう、おにいちゃんの姿を…………あの時は、本当にお兄ちゃんがおかしくなったのではと心配になりました」
「なーう」
まるでホムちゃんの言葉を肯定するかのように鳴くなー
……そんなにおかしかったかな…?
「それでは、今日は一体何を?」
「今日は、コレだよっ…と」
そう言って、今ちょうど作り終えたものをホムちゃんに見せた
『アースワンド』。地の属性を持つ杖だ
「杖ですか…? これまでにも何度か見てきましたが……何か違うんですか?」
「属性が…というよりも、使ってる素材かな?」
僕はそばに置いていた鍛冶用の素材を入れていたカゴに手を突っ込んで、あるものを取り出す
「これは『火の結晶』っていうモノなんだけど、その名前の通りで火の属性のチカラの塊のようなものなんだ。…で、この杖にはそれの属性違いの『地の結晶』を使ってるんだ」
「属性の塊…?属性の『結晶』というアイテム…? 初めて聞きました。ホムの知識にもそのようなものはありません」
「あはははっ…、確かにアーランドでは見かけないものだからね。ごく最近まで、僕も手に入らなかったし……」
そう、この結晶系アイテムを入手できたのは、本当に最近のことだ
というのも、結晶系アイテムは『シアレンス』に居た頃によく使っていた素材で、その時の入手法は鉱石を採掘して掘り当てるか、ゲートを破壊してドロップするのを待つか、どちらかである。
…で、アーランド周辺ではいくら採掘しても結晶系アイテムが出てくることは無かった。その時点で、結晶系アイテムが『アーランド』には存在しないものだと判断した
しかし最近、原因不明ではあるけれど、アーランド周辺にゲートが発生するようになったことによって、その結晶系アイテムを手に入れられるようになった
モンスターを出現させるゲートだけど、そのゲートにはそれぞれ属性があり、その属性の攻撃は効果が無かったりする。さらに、ゲートは破壊された時に結晶系アイテムを落すことがある……それが、基本的にそのゲートと同じ属性の結晶なのだ
クーデリアの護衛として付いて行った『黄昏の玉座』。そして、その後の『霧の廃村』でのゲートの目撃情報以降も、
今、僕の手元にある結晶系アイテムは、その結果手に入れたものだ
その事を、ゲートのことも織り交ぜながらホムちゃんに説明をしていく
「……っていうことなんだけど……わかったかな?」
「おおよそは、把握できました。つまり、最近アーランド周辺におにいちゃんが前にいたところにあったものと同じものが出現しだし、これまで手に入らなかった素材が入手できるようになった……という事ですか」
「うん、そんなところ」
「わかりました」と頷くホムちゃん。だけど、そのまま首をかしげてしまった
「…それで、そのアイテムがあると何が変わるんですか?」
「うーん、そうだなぁ…」
ごく簡単に言うと、これまで出来なかった「自分の知っているレシピ通りに鍛冶ができる」ということになる
というのも、これまで属性付きの武器を作る際に、本来結晶系アイテムが必要なレシピだった場合、代わりに「炎属性付与」などといった「特性」がついたアイテムを素材にしていた。それでどうにか形にしていた
…ただ、なんとなく『シアレンス』のころよりも付与された属性の強さが弱いように感じられた。その理由を僕は、本来使うべき結晶系アイテムを使わなかったからだと推測した
だけど……その説明だと、ホムちゃんにはあんまり正確には伝えられないかもしれない。なぜなら、元のレシピ通りのものを知っているのは僕だけだし、その時の本来の強さを知っているのも僕だけ……その凄さを正確にホムちゃんへと伝えられる自信は無い
となると……もう少し噛み砕いて、簡潔に説明すべきかな?
「主に二通りの使い方ができるかな?」
「二通りですか?」
「うん。ひとつは、何かを作る際に純粋な属性のチカラを付与できるってこと。攻撃用の属性付与も、防御用の耐性付与も」
「なるほど。調合などの際に、結晶の持つ属性の力をそのまま利用するのですね」
「あともうひとつは、すでに作ってある武器や防具を強化する際に属性・耐性を付与できるってこと。これは使い方によっては武器の元々の属性を変えたり出来るから、自分の実力とか…その時の状況によっては結構便利なんだよね」
例えば、自分の鍛冶の熟練度の問題で「これ以上強い武器を作れない!…でも、この武器は風属性、これから行く場所にいる敵も風属性が多いから効果が薄い!」…なんて時。一個下のランクの武器だと攻撃力がこころもとない…という時に属性を変えてしまうわけだ
そうすれば、こちらの攻撃を属性耐性で軽減されることがなくなり、ダメージも安定するようになる……というわけだ
……って、あれ?
「どうしたの?ホムちゃん?」
よくわからないけど、ホムちゃんがものすっごく目を細めて……というかジトーっと見つめてきていた
「あの…ホムの耳が正常なのであれば、おにいちゃんは先程、すでに完成してある武器に新たに効果を付与させることができると言っているように聞こえたのですが……」
「えっ?できるけど…?」
むしろ、作る時以上に後からの強化のほうが重要だったりするだろう
特に杖は、強化の際に使った素材によって発動できる魔法・技が変わるから、その杖との相性を考えながら素材を吟味して強化していかなければならない
「……おにいちゃんには常識を求めてはいけないのだと、ホムは理解しました」
「えぇ!?なんで!?」
「すでに完成した武器に新たに何か付け足すなんて非常識だと、ホムはおにいちゃんに教えてあげます。……というか、叩き折れるのでは?」
そんな事は無いと思うんだけどなぁ……?
「…今からやってみせようか?」
―――――――――
その後、実際にホムちゃんに見せたところ、ホムちゃんは「もう、おにいちゃんが何をしても驚きません」と言われた
……ホムちゃんからの評価は上がったのか、下がったのか、微妙な感じ
あと、結晶系アイテムで最も多く手元にあった『火の結晶』をアストリッドさんへのお土産としてホムちゃんに一個あげた