マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……


マイス「お祭りが一年に一回しかないなんて」

***王宮受付***

 

 

 

 

 

「『おうこくさい』ですか?」

 

「一年の終わりにあるお祭りでね、数日間にわたってお店が出たりイベントがあったりするの」

 

 王宮受付でエスティさんに依頼を見せてもらっていると「そういえば」と『王国祭』というものが毎年あることを教えてくれた。

 

「それでね、今の時期からその準備とかで街も結構活気づくの。でもって、私たち王宮勤めの人はみんなこれから働き詰めで、毎年大変なのよー」

 

「街の一大イベントとなると、やっぱり何か月も前から準備が必要なんですね…。僕に手伝えることはないですか?」

 

 そう問いかけると、「待ってました!」と言わんばかりに嬉しそうに微笑むエスティさん。

 

 

「マイス君ならそう言ってくれると思ったわ! それでね、お花が沢山ほしいの」

 

「花をですか?」

 

「街の飾り付けとか花冠なんかに使ったりするんだけどね、そのための花が毎年不足気味なのよ。で、今年はマイス君にも用意してもらおうと思って」

 

 

 エスティさんは普段依頼書を出すところとは別の棚から一枚の紙を出し僕の前のカウンターに置いて こちらへ向けて見せてきた。

 そこに書かれているのは、いつも通り期限等で特に変わりは無い。

 

「ティファナから聞いたわよ、マイス君はお花とかを育てるのが上手だって」

 

「なるほど、それで僕に……。ところで、ティファナさんとはお友達なんですか?」

 

「んー、まあ飲み仲間ってところかしら? それじゃあよろしくね、王国祭の開催よりも結構期限が早いから気をつけてね」

 

「はい! 任せてください!」

 

 

 正式に依頼を受ける手続きを終えて王宮受付を後にした。

 依頼達成のために必要な花の数は多いので種を買い足しておいたほうが良さそうなので、ティファナさんの雑貨屋さんへと向かう。

 

 

 それにしてもお祭りか……

 

 シアレンスでは毎月何かしらのお祭りやイベントがいくつか開催されていたので、年に一度と言われると正直寂しく感じる。

 まあ、おそらくだけど 規模が比べ物にならないくらい大きいのだとは思うけど。

 

 久々のお祭りに僕はいつの間にか足取りが軽やかになっていた。

 二ヶ月近く先のことなのに、今から楽しみでしょうがない。 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

***ロウとティファの雑貨店***

 

 

 

 花の種を買うために訪れた雑貨屋さん。

 今日も店内はいつも通りの賑やかさ……じゃない? 何事だろう――

 

 

「やっぱり! お父さんまでなにやってるの!?」

 

「げぇ! ロロナ! ちち、違う。これは違うんだ!!」

 

 

 あれはロロナと……誰だろう、初めて見る人だ。

 けど、ロロナが「お父さん」って言ってたからロロナの父親なんだろう。言われてみれば髪の毛の色なんかは似ているかも。

 

 それにしても、こんなに言い合って……いや、正確にはロロナの方が勢いよく一方的に言っているだけみたいだけど、いったいどうしたんだろう?

 

「信じられない…お母さんに言いつけるからね!」

 

 そう言ってロロナは店の外へと出ようとする。つまり、入ってきたばかりの僕の方へと来たのだ。

 ロロナは一瞬驚いたかと思えば()()()()()()()()()()()。当然、手を掴まれている僕も店の外に出てしまうわけで……って、なんで!?

 

「ま、待ってくれ! 誤解なんだ! ロロナー! ……あと、その子は誰だー!」

 

「ああ、救世主が!」

「我らを見捨てるのか! 待ってくれー!」

 

 店内からのロロナの父親の悲痛な叫び声と常連さんらしき人の声を聞きながら、ロロナに手を引かれるままに小走りでついて行ってしまう。

 

「ええっと、お店に買い物しに行かなくちゃいけないんだけど……」

 

「ダメだよ! あんなところに行ったら!」

 

「あんなところって……ティファナさん優しくていい人ですよ?」

 

「そっそれはそうなんだけどー……とにかく、今は行っちゃダメ!! マイス君に()()()()()()がうつっちゃうよ!」

 

 よくわからないけど拒否された。何がロロナをここまでにするんだろう?

 

 

 

 どうすることもできずそのままロロナについていくと、街中の一軒の建物にたどりついた。

 ロロナはそこにノックをすることもせずに勢いよく扉を開け、僕を引き連れたまま中へと入っていく。

 

「お母さん!!」

 

「あらロロナ、突然帰ってくるなんて珍しいわね」

 

 進んだ先、建物の中の一室にいたのはロロナに「お母さん」と呼ばれる女性、なるほど、ここはロロナの実家なのだろう。

 確か、元々アストリッドさんのもとで働くようになってから実家を出てアトリエに住み込みで働くようになった、って聞いた憶えがある。

 

「あら、ここにお友達を連れてくるなんて久しぶりじゃない? もしかしてボーイフレンド?」

 

 僕を見つけたロロナの母親は楽しそうに笑い、ロロナに問いかける。

 

「ち、違うよっ! マイス君はそういうのじゃなくて……というか今日はそういうことを言いに来たんじゃ…」

 

「こんにちはー、うちのロロナが迷惑かけたりしてないかしら?」

 

「いえ、そんなことは……むしろ僕が街の外で助けてもらってます」

 

「そうなの? あのロロナがねぇ……ふふっ世の中わからないものね」

 

 僕も普通に受け答えしちゃったけど、この人ロロナの話を聞いてなくて普通にのほほんと話しだしたよ…。

 

 

「そうじゃなくて! マイス君は証人で呼んだんだよ!」

 

「証人……? いったい何のかしら?」

 

 一生懸命に言うロロナと、それに対してのんびりと返すロロナの母親。

 

 

 

「お父さんが……お父さんがティファナさんのお店に入り浸ってたの!!」

 

 

 

「なんですって……!?」

 

 先程までの空気はどこへいったのやら。

 

「それは……本当なのかしら?」

 

 ロロナの母親は確認するように僕にも聞いてきた。

 有無を言わせない謎の圧力、そんな状況では嘘など言えず真実を言うしかない。もとから嘘を言う理由なんて無いのだけども。

 

「僕は途中からしかいなかったから、よくわかりません……。もしかしたら、ただ単に買い物に来ていただけかも……」

 

「……そうね、一度本人にじっくり聞かないと」

 

 その時、扉が勢いよく開き、話の中心人物が飛び込んできた。

 

「ロロナぁ!! あれは誤解で! それと、さっきの子……は……」

 

ねぇ?

 

 ロロナの母親とロロナから物凄い視線を向けられ固まるロロナの父親。

 

 僕はこれ以上この空気の中にはいられないと思い、ロロナとその母親に頭を下げて礼をしてからその場をあとにした。

 

 

 

――――――

 

 

 

 その後、改めて雑貨屋さんに種を買いに行くと

 

「新たな救世主が来た!」

「これでいける!!」

「この時をどれほど待ったか…」

 

 などといった言葉が聞こえた気がしたけど、たぶん気のせいだと思う。

 

 ティファナさんを呼んで花の種を買い、エスティさんとの関係などのお話をして家に帰った。


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