当初予定していた文字数の倍近い文章量になってしまいました
……次回で綺麗にまとめられるかが不安だったりします
***古の修道院***
手に持つ武器『ヴァルキリーアーム』を身体のように扱い、攻撃のための動作から
これまでの戦闘経験やその他の積み重ねの結果で身体に染み付いた動きが、流れるように続き、自分の何倍もの数の敵を
仲間を倒されて頭に血が上ったのか、奇声をあげてこちらへと突進してくる数匹の『アポステル』。2.5頭身ほどの小さな悪魔のようなモンスターなのだが、手に
その突進してくる『アポステル』たちの速さ、そして距離を考慮したタイミングで私も奴らにむかって駆け出す。そして……
「そこっ!」
『ヴァルキリーアーム』を勢い良く突き出した
冷静な判断を
キシャァアァァーッ!
さっきまでの『アポステル』とは別の奇声が聞こえた。今まで私が倒したモンスターたちが倒れている場所の先、数匹の『アポステル』に囲まれるようにして陣取っているモンスターの鳴き声だろう
そのモンスター『スカーレット』は、『アポステル』とよく似た見た目のモンスターなのだけど、体色が真紅であり、その実力や凶暴性は比較にならないほど高く、ギルドからも「危険なモンスター」として認識されているほどだ。ここ『古の修道院』では一匹が『アポステル』の親玉として君臨しているようだけど……噂では、他人の手の入らないような危険な地域には、群れを成して生息している『スカーレット』もいるそうだ
「でも……私の敵じゃないわ!」
手始めに、一番手前にいる『アポステル』に狙いを定め、私は飛び出していく
突き。薙ぎ払い。回避からのカウンターで一発。数の不利なんて気にとめることも無く、私はモンスターを
……こうして、目の前の敵だけに意識を集中させ戦闘に没頭している時間が、今の私にとって一番楽な時間かもしれない
ここ最近は、トトリとのケンカ、マイスとの……なんて言えばいいのかわからないギクシャク感と、後々一人になった時に後悔や自問自答をしてしまうような出来事が多かった
何でこんなことになったんだろう? どこで間違えてしまったんだろう? ……特に、後者のマイスのことについては、解決は出来ずとも回避することは簡単だったんじゃないかとさえ思えるほど「どうしてこうなった」という気持ちが強い
あの時、誘いに乗らなければ……って、あれはあの受付の口車に乗せられたからで…………でも、トトリと鉢合わせしたくなかったのは事実だし……そもそも、あの時マイスのことを「大丈夫、なんとかなるだろう」って思ったのは私で、それで誘いに乗ったわけで…………そう思ったのは『あの子』が「マイスは怒ってない」ということを教えてくれたからで……それも、結局私のせいで…………
でも、その後のことでも、変に意地を張ってしまったり、冷たい態度をとってしまったり……でも、あれはこっちのことを何も考えてないマイスも…………いや、よくよく思い出してみれば昔からずっとあんな感じだったし……けど、こっちにも譲りたくないものはあるわけで、私はそれを曲げたくない…………となると、やっぱりあの誘いを受けた時点で……
次々に仲間を倒されていくことに耐えかねたのか『スカーレット』が一段と大きな奇声をあげた
その声を
「ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラング、
――――――――――――
「ふぅ、物足りない気もするけど……まっ、こんなところかしらね」
先程までの奇声が聞こえなくなり静かになった廃墟の修道院の屋内で、私は一つ息をついた
今回の主な目的は、最近『
ついでに地図を作成したりもするのだけど……物足りないというのは、ここが今の私の冒険者ランクからすると少し難易度が低い採取地とされているから。おかげでモンスターたちも歯ごたえが無い相手に感じられてしまっていたわけだ
まぁ、だからってさっきまでの相手が全部『スカーレット』になってたら、逆に厳しい戦いを
「まあいいわ。早く次の作業に……」
そう思い、次の作業へ移ろうとしたんだけど……そんな私の耳に
とは言っても、さっきまでの『アポステル』や『スカーレット』のような奇声ではなく、ちゃんと理解のできる……言葉として意味を
その声たちの主を私は知っている……というか、
「すごかったわねぇ。これまで何人も強い人は見てきたつもりだったけど、その中でも洗練されてる、って感じでちょっと見惚れちゃったわ」
「だな。騎士のにいちゃんやマイスとも全然違うタイプで面白かったぜ。まあ、その
「一流の冒険者って、みんなこれくらい凄い人ばかりなのかな……?」
……現在進行形で私の頭を悩ませている存在である三人(?)。ぬいぐるみっぽいネコの人形二匹とその持ち主の旅芸人。順にホロホロ、アラーニャ、そしてリオネラというそうだ
三人のことを全く知らないわけじゃない。最近はもちろん、ひと昔前にはよく『アーランドの街』の広場で人形劇を公演していたから、街で暮らしている人間なら大抵は彼女らのことは知っている
小さい頃、私も何度か観に行ったことがあったし……お母様に会いに屋敷に来たマイスさんも、お母様に「不思議な人形劇」のお話をしたことがあってそれをそばで聞いていたから、私も知らないわけじゃない。けど……
「おうおう! オマエ、ここらじゃ敵無し、って感じだな。けど、変に調子に乗って足元すくわれんなよ?」
「こらっ、一言多いわよ! ……それにしても、アナタに同行してもらえて助かったわ。こんなに強い人が護衛にいてくれると心強いわ」
近くまで寄ってきた三人のうち、人形のふたりが身振り手振りを少し加えつつ、そう言ってきた……
ふたりが言うように、私と彼女ら三人との関係は一応「護衛と護衛対象」ということになっている
というのも、冒険に出る時に着いて来ようとしたマイスに「今回の冒険に付き合うと帰りが村のお祭りの直前くらいになる。開催に関わるような迷惑はかけたくないし、今回も難しい仕事ではないから一人で問題無い」という
そこにリオネラが「あの、私が同行させてもらってもいいですか?」と口を挟んできた。私は意味がわからず……さらに、マイスの家に居候しているという彼女との距離感が未だに掴めていないこともあって反応に困っていた……が、その合間に心配し「やっぱり僕も」と言うマイスを彼女がいつの間にか説き伏せてしまい、なんだかんだでついてこられたのだ
一応出発の時に、聞けていなかった目的を聞いたところ探し物があるらしく、私の行先にそれが入手できそうだったから連れて行ってほしかったらしい。そして、「もし必要なら、正式な護衛の依頼として依頼の手続きをするけど……」と言ってきた
……まあ、邪魔にならなければいいか、ということで連れてきたんだけど、良くも悪くも人形ふたりが騒がしかった。ずっと静かなのよりはマシかもしれないけど、
……できれば、
けど、聞けないのであれば、それならそれでやらないといけない事を早く済ませてしまって、帰ってしまえばいいだけだ。……マイスがいないから依頼の報告と受注の時は細心の注意を払わないといけないけど……前回は一人でもどうにかなったんだし、今回も大丈夫でしょ……たぶん
そんなことを考えてたのだけど、その中からふと思い出したことがあり、そこにいるリオネラさんに聞いてみることにした
「あの、少しいいですか?」
「は、はい……!」
……ここに来るまでにも何度か似たようなことがあったけど、なんで、私が声かけるだけでビクリと跳ねあがるような反応をするのかしら?
なんというか、既視感が……ああ、あの受付嬢の反応に似てるのね、少し涙目っぽいし……ってことは、もしかして私とあまり話そうとしないのってあの受付嬢みたいに「空気がピリピリしてるから」とか「怖いから」とかいう理由じゃないでしょうね……?
そう思いながらも、わざわざ話をそらす気にもならなかったから、気にしないふりをして最初に聞こうとしていたことをそのまま言う
「探し物がある、って言ってましたけど……見つかりましたか?」
「そ、それはー……」
私から視線をずらしたかと思うと、そのまま目が泳ぎ始めている。となると、次はきっと……
「ちょうど今から探すところだぜ。モンスターがいちゃあ、おちおち調べ周れないからな」
「理由はわからないけど、ここは目撃情報は多いからきっと見つかるはずよ」
「そうですか。なら、私の地図作成の作業中にその近くで探してみてください。そこまで離れなければ、もしもの時も護れますから」
私の問いに答えたのはリオネラさんのそばにいる人形のふたりだった。どうやらリオネラさんが困っていたりすると、代わりに答えたり、リオネラさんに発破をかけたりするようだ
にしても、このふたりって……もしかして実はモンスターの一種だったりするのかしら? 喋る人形なんて聞いたこと無いし、それにモンスターなら『青の農村』と関わりがある時点でなんとなく納得できるし
だからなんだって話だけど……そう思ったほうが、人形が喋るよりも抵抗感が無いというか、不気味に思わないのよね。何故かしら?
――――――――――――
地図作成のため、目印になるものや建物の形・構造を記録していった。そして、あらかた終わったところで、最後に、階段の先にある『タル』などが置かれている小さな物置のような空間があったのだが……そこに、見慣れないものがあった
「……何かしら、あれは?」
黒い塊。微妙にだけど紫色の光を放ちながら渦巻いているのがわかる謎の物体
……けど、何か見覚えと言うか、何か記憶にひっかかる気が……
「おっ。あったぜ、リオネラ。けど、黒だな。ちょっと残念だ」
「そんな事無いよ、これはこれで大丈夫だと思う」
「良かったわね。もし無かったらどうしようかと思ったけど……後は運次第かしら」
よくわからないけど、どうやらコレが言っていた「探し物」らしい
……で、結局コレは何なのかきこうとしたのだけど、それよりも早くリオネラさん達が動いた
「んじゃ、いっちょやるか!」
「そうね。いけるかしら?」
「うんっ!」
そう言って、三人がそろってその黒い塊にむかって手をかざすような仕草をしたかと思うと……
一瞬の閃光と共に「パアァン!」とまるで何かが破裂するような大きな音。そして、それに続いて「ビシュン!」とあまり聞き覚えの無い音が聞こえた
突然の光に、とっさに目を瞑ったために何が起こったのかわからなかったけど、目を開けてみると、さっきまでそこにあったあの黒い塊が無くなっていて、リオネラさんはそのそばでしゃがみこんでいた
「あら、今日はついてるんじゃないかしら? ちゃんと手に入ったわね」
「だよな。この前の……つっても結構前だけど、そん時は何個も壊しても落ちてなかったもんな」
そんな声をかけられながら立ち上がったリオネラさんの手には、片手で握れる程度の大きさの塊……さっきまであった黒い塊によく似た宝石のようなもの……があった
「それは?」
「え、ええっとね、『闇の結晶』って言って、『ゲート』を破壊した時に時々手に入る「属性の結晶」の一種なの」
リオネラさんにそう言われて、私はあることを思い出した。『ゲート』……確か前に『冒険者ギルド』の掲示板なんかに情報が貼り出されていたり、噂になっていた「モンスターが出てくる光の渦」のことだ
これまで実際に見たことは無かったんだけど……まさかさっきのがそうだったとは。思えば、さっきの黒い塊も、光というのはわかり辛かったものの、その情報通りだった
「それって、何かに使えるんですか?」
「使えなくはないけど……専門的な知識や技術が必要だから、基本的には綺麗なだけ、かな?」
「いちおう言っとくけど、技術がねぇから
リオネラさんに続いて黒猫のほうがそう言ったんだけど……つまりそれって意味が無いんじゃ……?
その考えが口に出る前に、それを見越したように、今度は縞模様のようなものがある猫のほうが喋った
「リオネラが欲しいって思ったのは本当よ? 必要があるって考えたからこうして探してたの」
「けど、使い道が無いなら一体何に……」
そう私が言っている途中に、リオネラさんが私の手を取って……その『闇の結晶』というものを握りこませ…………って、え?
「ちょ!? 何? 何なのよ!?」
「ひぃ!?」
「どっかの誰かみたいに短い悲鳴をあげるなっ!」
意味がわからず少し混乱気味に手を振り
「おおう、危ないところだったぜ。ずいぶんと言葉使いが荒くなったけど……やっぱそっちが
「うっさい! 何よ、いきなり!」
「まぁ、いきなりといえばいきなりだったけど……でも、ワタシたちからすれば、結構考えた末の判断なんだけどねぇ」
そう言ったのはもう片方…………そして、それに続くように今度はリオネラさんが口を開いた
「その、ね。今度はお金じゃなくて、この『闇の結晶』をマイスくんにあげてほしいかなって」
「……はぁ?」
何が言いたいのかしら? というか、何を考えてそんな事を……
お金っていうのは、これまで冒険から帰った後に渡したお金のことだと思う。でもアレは冒険の手伝いやマイスが準備してくれた食事に対しての支払いであって、貸し借りを考えないための正当なもの……けど、実際は渡した額のほうが相場の金額よりも低いだろう。だから本当はもっと支払いたいくらいだ
そんな私の考えをよそに彼女らは話し続ける
「この結晶を扱える人っていうのはマイスくんのことで、色々実験とか、装備を作ったりするのに結晶を使うから結構必要になって……だから、それをあげたらきっとマイスくん、喜ぶよ?」
「……なら、あなたがあげればいいじゃない」
何で私がする必要があるの?
そもそも、珍しいものだったら喜ぶのかもしれないけど……マイスなら何でも喜びそうな気がする
「アナタの言いたいこともわかるわ。けど、リオネラはね」
「知らないわよ。私には何の関係も……」
続いて、もう茶色の猫のほうの言葉も切り捨てようとしたんだけど……
「あーもう、ぐちぐちうっせーな。アイツに
「…………はぁ!?」
一瞬、耳を疑ってしまったけど、聞き間違いでは無いみたいで確かに「惚れてる」って……って、何を言ってるのよ!? この黒猫は!?
「冒険から帰ってきた日のメシの時とかに、キッチンのほうに行くマイスを目で追っかけた後ちっちゃくため息ついたり、畑仕事してるのをジーッと眺めたりしてんのは知ってんだぜ?」
「なっ……!?」
「だってのに、いざ本人と話すとなると冷たくしてよぉ。嫌われてるって落ち込んでるマイスの相談に一々乗らなきゃなんないコッチの身にもなってみろってんだ。それに、恋する乙女もこっちはもう面倒なのがひとりいて手一杯なんだよ!」
「ホロホロ!? め、面倒なのって、だ、だだだ、だれの……!?」
「あー、リオネラ? 言えてないから、アナタは一旦落ち着きなさい」
他の二人も何か言っているけど、それよりも問題はあの黒猫よ
呆れるくらい有ること無いこと言ってくれて……本当にどうしてくれようかしら
「なにバカなこと言ってるのよ。誰があんな常識知らずなトンデモ人間のこと
好きに、なるわけ、無いじゃない……!
自分の視界が少しにじみだしているのがわかった。それがどういうことなのかは、ごく
私はすぐにその場から駆け出して廃墟から飛び出していた
―――――――――
気づけば、『古の修道院』から少し離れた細い街道のそばに生えていた木に持たれかかって、息を整えながら座っていた
かなり全力で走っていたから随分と体は熱くなっていたけど、何故か頭の方は段々と冷静になっていっていた
仮にも護衛対象である相手を置いて行くなんて、あるまじきこういだ……でも、せめて溢れ出してきたこれを……涙を
そうやって自分を落ち着けようとすればするほど、私の頭の中にはいろんな考えが飛び交っていった
……何故だろう?
トトリとケンカしてしまった時は、トトリに言われたことに腹を立ててしまって、その怒りが言葉と行動に出てしまった部分が大きい……と自分ではそう思っていた
でも、今回はどうだろう?
誰に対して怒った? あのホロホロっていう黒猫の人形? それとも、わけのわからないことを言って私に無理矢理物を渡そうとした三人ともに?
そもそも、
自分で考えてみたけど、それはよくわからなかった。言われたことの中に、何か悲しくなるようなことがあっただろうか? 何か私自身が考えていたことの中なんかに、知らないうちに悲しくなるようなことがあっただろうか?
そんなことを考え続けているうちに、いつの間にか涙が止まり始めていることに気がついた
……わけがわからない。何でなんだろう…………もう一度考え直してみたらわかるだろうか?
そう思いながら、地面に座ったままうつむいていた顔を上げたのだけど、陽が落ち出していることに気付き、優先順位を変えることにした
陽が落ち切る前に、リオネラさんと合流しなければ。そう思いながらも、どういう顔で、なんて言って会えばいいのかがわからなかった…………
リオネラには色々と難しかった模様
要因としては、境遇的に仕方ないですが人間関係の経験が不足&偏っていたということ……とはいえ、リオネラのやり方が完全に間違いだったとは限りません。なんにせよ、リオネラの行動によって事態は大きく動き出した……かもしれません
後はどう転がるのか……
ミミの、マイスとの関係は……そして、トトリとも仲直りできるのか……!?