マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 先週、個人的な都合により更新できず、大変申し訳ありませんでした。
 やっと一段落付いて時間が取れるようになってきたので、書く時間が確保できるようになってきました。


 それと同時に、買ったままプレイできていなかった『無双スターズ』に少しだけ触れました。ゲームの感想は……置いておいて、その中のBGMについて少々。

 というのも、『しろがねの山・序盤』『しろがねの山・メイン』『しろがねの山・終盤』というBGMがあるのですが、それが今作の原作でもある『トトリのアトリエ』のBGMのアレンジなのです。「辞典」の「サウンド」での記述によるとそれぞれ、『Green Zone -Stars Mix-』『Yellow Zone -Stars Mix-』『Red Zone -Stars Mix-』とのことです。……一箇所ツッコミたいところはありますが……原曲の雰囲気を残しつつも無双っぽくていい感じでした。ただ、どこぞの自称騎士が無双入りした時のアレンジほどの驚き・新鮮さは無かったかもというのが個人的な感想です。……あれがすご過ぎたのかもかも知れませんが……。

 でも、正直なところ、『アーランド』勢は出演していないのだから、素直に『ソフィーのアトリエ』BGMのアレンジを増やした方が良かったんじゃないかな?
 ……DLCでキャラ追加とかあるんでしょうかね? あればいいのに(願望)
 


4年目:イクセル「賑やかな団体さん」

***サンライズ食堂***

 

 

 俺はイクセル・ヤーン。毎度おなじみ、アーランドの街にある『サンライズ食堂』を任されているコックだ。

 

 日も沈み、街中の街灯が路地の石畳を照らす『アーランドの街』。そんな夕闇の街の一角にある『サンライズ食堂(ウチ)』は、煌々と灯りをともして賑わっている。

 

 

 

 さて、今日もマイスが『サンライズ食堂(ウチ)』に来ている。ここ最近忙しかったのか中々見かけなかったんだが、どうやら一段落したみたいだ。

 ただ、それとは別に気になるところがあるんだが……。

 

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

 

 そう声が上がったのは、マイスがいるテーブルからだ。そのメンバーは……マイス、ロロナ、クーデリア。そして、フィリー、リオネラ。普段よりも大人数なため、テーブルの上の料理は大皿のものが目立つ。

 

 俺も知っている面々ではあるが……問題はその男女比だ。マイスのヤツ、知り合いとはいえよく女子四人の中に一人で堂々といれるものだと思う。

 それに、マイスは女顔っつーか童顔だから、(はた)から見る分にはそこまで違和感は無い……本人たちもそんなこと頭に無い様子で楽しそうにしている。それだけ仲が良いっていうわけだろうし、別に悪いわけじゃないんだが。

 

 まあ、マイスが女性と来ることなんてよくあることだし……そういえば、昔、『王国祭』の『武闘大会』があった時かなんかに、今と同じメンバーで「祝・ロロナ優勝」とか言ってマイスがメシを(おご)ってたなんてこともあったな。そう考えると、そこまで気にするようなことでも無いのか?

 

 

そんな事を俺が考えているうちに、御一行はグラスに口をつけ(のど)(うるお)して息をついていた。

 

 

「っぷはー! おいしー!」

 

「ロロナ。あんたらしいと言えばらしいけど、ちょっと行儀が悪いわよ」

 

「えー、そう? だっておいしいんだよ?」

 

「理由になってないわよ、それ」

 

 本当にうまそうに、そして豪快に勢い良く飲んでいるロロナに、お小言を言うクーデリア。

 

 

「こうやって、このお店でご飯食べるのもひさしぶり。なんだか少し懐かしい……」

 

「えー、そう? あっ……でも、それってリオネラちゃんが最近まで街に()なかったからじゃないかな? マイス君のところにいるってことも中々知れなかったし……」

 

「そ、そのことは……ゴメンね」

 

「ううん、いいよ。その……理由が理由だけに、私も気持ちは痛いほどわかるから……」

 

 本人が言っている通り、『サンライズ食堂(ウチ)』に来るのは久々(ひさびさ)なリオネラ。そして、リオネラの言葉に何故か苦笑いをしながら頷いているフィリー。

 この二人は、仲が良くてよっぽど気が合うのかなんなのか、俺が知っている普段の二人よりも数割増しで楽しそうに話している。……客観的に見て性格が似ている部分があるように思えるし、そういうところで意気投合しているのかもしれない。

 

 

 ……で、マイスはというと……

 

「はい、どーぞ!」

 

「あっ……マイスくん、ありがとう」

 

「フィリーさんもっ!」

 

「ありがとー。いつものことだけど、マイス君が盛り付けると、キレイだよね」

 

 そう。マイスは、テーブルの上に大皿で出ている『サラダ』を一人一人に小皿で取り分けていた。

 

 マイスが世話焼きな部分が有る事は俺も知っているからそこまで違和感なんかは無いんだが……「いつものこと」って言ってるし、マイスはいつもやっているのだろうか? いや、けど、『サンライズ食堂(ウチ)』で取り分けているのを見たことはほとんど無いんだが……別の機会、例えばマイスの家にお呼ばれでもされた時に、そういうことがあったのかもしれない。

 

「確かに、マイスってこういうことに無駄に器用よね。売るための商品とかならともかく食べるために取り分けるんだから、そんな綺麗じゃなくてもいいじゃない」

 

「無駄っていうほどじゃないと思うけど……あっ、マイス君! 私の分は多めでー!」

 

「うん、わかった! 全部取り分けてしまったわけじゃないから、おかわりもできるよ」

 

 そう言いながら取り分け終えたマイス。……よくは知らないが、最近はこういう雰囲気なことが多いんだろうか?

 

 

 やっぱり、顔見知りということもあってちょっと気になってしまうんだが……残念、とはいっても店的には嬉しい事に、新たな客が入ってきて注文もきたので、俺は仕事に集中することとなった……。

 

 

――――――――――――

 

 

 一通り注文をさばき終えて一段落したところで、再び例のテーブルのほうの様子をうかがい、その会話へと耳をかたむけてみることにした。

 

 

「へぇー……話には聞いてたし受付に来たトトリちゃんとかミミちゃんにも会ったりしてたけど、やっぱりアトリエとマイス君の家も大変だったんだね」

 

「そうだね~。トトリちゃん、(うわ)の空って感じでよく調合失敗して爆発させて……なのに私、先生なのに何もしてあげられなくて……」

 

「こっちもこっちで色々あったよ。爆発も何回かあったし……。でも、リオネラさんが手伝ったり気をきかせてくれたりしたから、そこまででもなかったかな?」

 

「そ、そんなこと……! むしろ、余計なこといっぱいしちゃって、迷惑かけて……!」

 

 

 どうやら話題の中心はトトリとミミの二人らしい。トトリはもちろんのことだが、ミミって子のほうもトトリに連れられて『サンライズ食堂(ウチ)』に来たこともあるから知らないわけじゃなかった。

 

 そして、話の内容はちょっと前からあっていた二人のケンカのことのようだった。これについても、俺は大方知っている。……というのも、アトリエから爆発音が()()()()()頻繁(ひんぱん)に聞こえて、心配になってどうしたのか様子を見に行った時に、ロロナから「誰にも言わないであげてね」とコッソリ事情を教えて貰っていたからだ。

 ……で、今のテーブルの様子からすると、色々と苦労もあったようだがどうやらケンカはどうにかなったらしい。直接関わったわけじゃない俺だったが、やはり心の何処かで一安心していた。

 

 

 ……と、俺はそんなことを考えていたんだが、テーブルのほうでは同じ会話を聞いていて何やら疑問をおぼえた人物がいたようだ。その人物……フィリーがグラスを両手で包み込むように持ったまま、首をかしげて疑問を口にした。

 

「あれっ? アトリエのほうの爆発は『錬金術』で失敗したんだってわかるけど……マイス君のほうはなんで爆発したの?」

 

 その言葉を聞いて、俺も「そういえば」と思った。そう、普通の家ではそうそう爆発なんて起きることは無い。……どうやら俺は、ロロナのアトリエが近所にあるからか、その辺りの感覚が変にズレてしまっているみたいだ。

 疑問を投げかけられたマイスはと言うと、一瞬だけ「えっ?」と何を言っているのか心底わからない、といった様子で首をかしげたが、すぐにどういうことを聞かれたかわかったようで、「ああっ、それは……」と言葉を続けた。

 

「こっちも『錬金術』の爆発だよ。ミミちゃんが依頼品の薬を作るために調合して、それで依頼分全部できるまでに結構な回数失敗しちゃって……。爆発も、最初は村の人もモンスターもすっごい驚いて慌てたりしてちょっとした騒ぎになったり」

 

「「ミミちゃんが『錬金術』を!?」」

 

 そう言って驚いていたのは、フィリーとロロナだった。『青の農村』を拠点にしているリオネラは当然のように知っているようで驚いておらず、クーデリアのほうは「でしょうね」と呟いているのでどうやら想定の範囲内だったようだ。

 

 

「うん。冒険者ポイント貯める目的で依頼を達成していくのに、薬の調合が手っ取り早いからってことで、僕が使える『薬学』か『錬金術』、そのどっちかを教えようってことで……それで、ミミちゃんが「『錬金術』がいい」って」

 

「た、たしかに、ミミちゃんが報告しにきた依頼の中に、お薬を納品する依頼があったけど……アレってミミちゃんが調合したのだったんだ……。私、てっきりマイス君が作ったものかと」

 

「ミミちゃんはそういう事は嫌いだからね。それに、ミミちゃんのためにならないから、僕もそんな事しないよー」

 

 『冒険者ギルド』で依頼の受付をしているフィリーには心当たりがあったようで、そのことをマイスに言っていたが、それに対してマイスは少し困ったように笑ってみせながら答えていた。

 

 

 ……と、そこに割り込むヤツが一人。他でもない、ロロナだ。

 

「え、ちょっ、ちょっと待ってー!? えっと、つまり……マイス君がミミちゃんの『錬金術』の先生ってこと!?」

 

「つまりも何も、そのまんまじゃない」

 

 クーデリアからのツッコミを意図的に(わざと)かはわからないがスルーしたロロナは、テーブルから乗り出すようにしてマイスのほうへと顔を寄せていく。

 そして、わざとかはわかならいのだが、リオネラがロロナを焚きつけるようなことを言った。

 

「本当に先生と生徒みたいだったよ。一から丁寧に教えて、何回失敗してもマイス君が「何が悪かったか、一緒に考えようっ!」って言って……み、ミミちゃんも、休憩してる時なんかに文句言ったりもしてたけど、マイス君のお話はちゃんと聞いて一生懸命に調合してて……」

 

 光景を思い出してなのか、それとも別の理由があるのか、微笑みながらそう言うリオネラ。

 その言葉にそれぞれ反応をしているが、マイスが「えぇ、そうかな?」と自己評価が上手くできてないこと以外は、ほぼ全員「へぇ」と意外そうな……でもどこか納得したような様子でリオネラの話を聞いている。

 

 

「う、ううー!」

 

 ……が、ここで黙っていないのはロロナだった。その理由はといえば……

 

「わたしもいろんな子に教えてきたのに……『錬金術』ができたのはトトリちゃん一人だけなのに、マイス君は……なんで~っ!? やっぱり、わたしの教え方がヘタなんだー!!」

 

 酒が入って酔払っているせいか、怒ってるのか悲しんでるのかわからないテンションでそう言うロロナ。

 ……どうやら、今日真っ先に酔い潰れるのはロロナのようだ。こういう気分的に悪い状態だと悪酔いしやすいことが多いからな。

 

「もう、泣くんじゃないわよ。ほらっ、拭いてあげるから顔をあげなさい」

 

「うー……」

 

「そ、そうだよ? もしかしたら、マイスくんが異様に教えるのが上手いってだけかもしれないし……」

 

 クーデリアが、涙が溢れてきていたロロナを慰め、そこにリオネラがフォローを入れた。そして、そのままの流れでフィリーがマイスに問いかける。

 

「っ! そうだ! マイス君が人に教える時って、何か気をつけてることとか、コツとかあったりするの? それがわかれば、ロロナちゃんが人に教える時に役立つかも!」

 

「えっ? うーん……そうだなぁ」

 

 思いつかないのだろうか?

 マイスは困ったように顔を歪めて、首をかしげだした……が、なんとか何か思いついたのだろう。マイスは顔を上げて口を開いた。

 

「気をつけるとか、コツとかとは違うかもしれないけど……」

 

「「「「しれないけど……?」」」」

 

 マイス以外の全員が、マイスの言葉を待ち…………

 

 

 

 

 

 

「成功でも失敗でも、とりあえず回数をこなすこと……かな?」

 

「……それだけ?」

 

 あっけにとられた様子で聞き返すロロナに、マイスはイイ笑顔で「うん!」と頷いている。

 

「農業でも料理でも鍛冶でも裁縫でも、難しくても簡単でも、とりあえず何回もやっていってればいつかは出来る様になるからね。教える時も同じかな? とりあえず根気。技術とか何とか言ってるよりも根気が大切だと思う」

 

「…………ランクアップって聞いて「ミミ(この子)も頑張ったんだろうな」なんて思ったけど……なんというか、よく頑張れたわね、あの子」

 

 クーデリアが行ったことはおそらく、聞き耳を立てていた俺も含め、マイス以外の話を聞いていたヤツ全員の総意だっただろう。……ついさっき、「先生と生徒みたい」と言っていたリオネラでさえ、困ったように笑ってばかりだ。

 

「根気……わたし、頑張ってたつもりだったけど、まだまだ頑張りが足りなかったのかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「あっ、でも、今回はちょっと違うかも? ミミちゃんが失敗しないようになったのって『錬金術』のコツを教えた後だったし……」

 

「『錬金術』のコツ? そんなのあったの?」

 

 クーデリアがそう言いながらマイスを……そしてその後、確認を取るようにロロナの方を見た。当のロロナはと言えば、思い当たる『コツ』が無かったのか、逆に思い当たるものが多すぎたのか首をひねって考え込み出している。

 

「えっと『作るものを使う相手の事を(おも)いながら調合する』ってやつ。特に薬を作る時はやりやすいんだけど、今回は見ず知らずの依頼主が相手だから逆に難しくって……でも、調合素材を一個分余分に入れて「その一個分を、冒険の時に誰かに使うって考えてみて」って言ったら、ミミちゃん、ドンドン調合失敗せずに出来るようになったんだ」

 

 

 それを聞いた俺は「それだけで、そんなに変わるものなのか?」と思い、テーブルにいるフィリーとリオネラも疑問に思っているようだったんだが……

 

 似たような経験があるのか、ロロナは頷き……でも、どこか引っかかっているような様子で、首をかたむけたままでいた。

 そして……クーデリアのヤツは「あー……」と何か納得したように笑みを浮かべていた。

 




 ……好き勝手に書きたい話を書いていたため、いつの間にか本筋からズレることが多いこと多いこと……。
 そんな事だから、『ロロナのアトリエ編』『ロロナのアトリエ・番外編』の二つを足した話数よりも多くなって、長くなってしまって……『メルルのアトリエ編』に入るのはいつだろうか。

 と、自分自身で指摘しながら時間を作って書き進め、一生懸命頑張っていこうと思います。

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