えーっと、なんでか理由はわからないけど船に乗ってついて来てしまっていた『
当然、そのピアニャちゃんをどうするかという話になるんだけど……あの村に行く手段は他でもない船しか無く、その船の持ち主であるトトリちゃんには話を通さないといけないよね、ってなった。
けどトトリちゃんは、ツェツィさんとグイードさんにギゼラさんのことを伝えるために少し前に家に帰らせわけで……そこに突入するのはさすがに気が引ける。
僕以外も同じことを思っているようだったんだけど、一人だけ空気を読まない人がいた。
そう、動いたのはジーノくん。「んじゃあ、連れてくかー」とピアニャちゃんに近づいて行き、その腕をガシッっと捕まえた。いきなりのことにピアニャちゃんも驚いて「いやー!」とジーノくんを
これ、まだ子供っぽさが
……それはひとまず置いとくとして……。
何とかジーノくんの手を振り解いたピアニャちゃんは駆け出して、僕の後に隠れてしまった。それも、僕の服を思いっきり
僕を盾にしてジーノくんから逃げ続けるピアニャちゃん。……その逃走劇(?)は、その状況を見ていたメルヴィアが呆れ気味に笑いながら「もうマイスが連れてったら?」と言うまで続いた。
……で、その結果、なりゆきで僕がトトリちゃんたちの家にピアニャちゃんを連れて行くことになってしまった。
ピアニャちゃんは、僕が「トトリちゃんの家に行ってみようか?」と言うと「トトリのお家? 行く行くー!」と元気に返事をした。……これ、最初からちゃんと話しておけば、ジーノくんも逃げられなかったんじゃないかな?
気がすすまない中、船のことは皆に任せて僕はヘルモルト家へ向けて港を出た。
港から村へと入った時に、遠目に『バー・ゲラルド』へと入っていくグイードさんの姿を見た。なので、とりあえずトトリちゃんはギゼラさんのことを話し終えたのだろうということはわかった。
……まぁ、それでもどういう顔でヘルモルト家へと入ればいいかは思い浮かばず、気はすすまないままで……。
そんな気持ちのまま色々と考えながら歩き続け、結局ヘルモルト家の玄関前にたどり着くまでそれは続いた。……隣にいるピアニャちゃんは、村の様子を見て興味深そうにしたり、楽しそうに鼻歌を歌ったりしてたんだけどね……。
――――――――――――
***ヘルモルト家***
……で、ヘルモルト家について、お邪魔したんだけど……。
「私はツェツィっていうの。よろしくね、ピアニャちゃん」
「つえ……ちぇちー?」
「ふふっ、言い辛いわよねー」
向かい合って床にペタンと座っているツェツィさんとピアニャちゃん。上手く言えなくて首をかしげているピアニャちゃんを見るツェツィさんは優しく微笑んでいる。
そんな二人がいるそばで、僕はといえばトトリちゃんの前で
「だから、その……連れてきたっていうのは、あの村からじゃなくって船からってことで、僕が連れ去ったとかそういうわけじゃないんだって」
「マイスさんがウソを言うとは思えないし、本当のことだとは思いますけど……」
そう。ヘルモルト家に入った後、驚いているトトリちゃんにピアニャちゃんが言い放った言葉……「マイスに連れてきてもらったの!」という一言によって、トトリちゃんが色々と誤解をしてしまったのだ。そのため、今の今までその誤解を解くため説明をし続けていた。
その
「……でも、船に勝手に乗ってきちゃったとしても、その理由って何なんでしょう?」
「さあ? そればっかりは僕もわからないや」
「なんにしても、ピアニャちゃんは村まで送り帰してあげないといけませんね」
トトリちゃんの言葉に僕が頷く……それよりも早くに、ツェツィさんと喋っていたはずのピアニャちゃんの声が僕らの耳に入ってくる。
「いや! ピアニャ、帰りたくない!」
予想外の大きな声に僕もトトリちゃんもビックリしてしまう。
「帰りたくないって、なんで…………というか、おねえちゃんまで何で驚いてるの?」
トトリちゃんが言ったから気がついたけど、確かにツェツィさんは口をポカンと開けて驚いているようだった。そして、わずかながら肩を震わせてもいる。
「だって、ピアニャちゃんを帰すって……!」
「そこに驚いてたの!?」
「でも……そうよね。こんなかわいい子がいなくなったら、お家の人も心配してるわよね」
「いや。そうだけど、そうじゃないっていうか……もう! おねえちゃんは少し黙ってて!」
「そ、そんな!?」と、さっきまでとはまた違った驚きの表情を見せるツェツィさん。
……ツェツィさんって、こんな人だったっけ? いやまあ、僕も数えられくらいしかツェツィさんとは会ったことは無いから、僕が知らない一面があってもおかしくは無いけど……。
「それで……ピアニャちゃん? ピリカおばあちゃんにも何も言わないで出てきたんだよね? なら、ちゃんと帰って……」
「やだー!」
トトリちゃんがなんとかしてピアニャちゃんに言い聞かせようとするけど、村に帰すって話になるとピアニャちゃんが駄々をこねてイヤがるため、中々話が進まない。
「絶対心配してるだろうし、でも無理矢理連れてくのもちょっと……どうしたらいいんでしょう、マイスさん?」
「村の外に初めて出て、初めてのことばかりで興奮気味っていうのもあるかもしれないから、少し時間をおいて落ち着いてから話したらいいんじゃないかな?」
「うーん……そうですね。そうしてみるのがいいのかも。それじゃあ、その間ピアニャちゃんは……」
トトリちゃんがピアニャちゃんはこれからどうするかを言うその前に、いい笑顔をしたツェツィさんが口を開いた。
「わかってるわ。私が面倒をみればいいのね。任せといて!」
「別にそうは言ってないんだけど……。それに、おねえちゃんもお仕事あるでしょ?」
「大丈夫よ。ゲラルドさんのお店、お客さんが少ないから私がいなくても問題無いもの」
「それはそうだけど。その少ないお客さんもおねえちゃんがいなかったら来そうにないし……ゲラルドさんのお店が別の意味で心配になってきた」
そんなふうに、トトリちゃんとツェツィさんが話している。
……まあ、確かに、ツェツィさんもお仕事をしてるからずっと家にいるわけにはいかないし、仕事場の『バー・ゲラルド』は酒場だからピアニャちゃんのようなちっちゃい子をずっとおいておくのもどうかとは思う。けど、だからといってピアニャちゃんを家に一人にしておくのが心配だというのもわかる。
「もしあれだったら、僕の家で預かるけど? 絶対はずせない仕事は早朝の畑仕事だけでそれ以外は案外自由だから問題無いよ。もしもの時も、村にも街にもお世話してくれそうな安心できる人がいるから」
僕の言葉には
「マイスのお家って、あおののうそんだよね! ピアニャ、行きたい! 美味しいの、いっぱい作ってるんだよね? 見たい! 食べたてみたい! あとモフモフ!」
『
「そんな……! 胃袋を
「卑怯って……。何言ってるんですかツェツィさんは……そういう話じゃないですよね?」
「ピアニャちゃん、お腹減ってない? 今から何か美味しいもの作ってあげるわよ?」
「わーい! 食べるー!」
ツェツィさん、全然聞いてない……。というか、ピアニャちゃんも切り換え速いなぁ……。
「あのー……」
台所でゴハンのしたくを始めるツェツィさんと、特に案内もされてないのに台所そばのテーブルのイスに座って「まーだかな」と楽しそうに待っているピアニャちゃんを見て、「どうしたものか……」とひとり呟いていた僕に、トトリちゃんが声をかけてきた。
「その、マイスさんのところに預けるっていうのは、ちょっと遠慮したい、っていうか……」
「そうなの? トトリちゃんなら『トラベルゲート』ですぐに来れるし、いいかなーって思ったんだけど」
僕がそう言うと、トトリちゃんは何故か僕から目をそらしながら「それはーその……」と続けた。
「なんていうか、ピアニャちゃんが戻ってこなくなりそうで……」
「住み着いちゃうってこと? いやでも、向こうで役立つような冬の気候の土地での作物栽培のことを教えるつもりで、むしろ帰る準備になると思うんだけど……?」
「その、物理的な意味じゃなくって……マイスさんの家で、マイスサンと一緒に生活してたら、ピアニャちゃんがマイスさんみたいに感覚とかがズレちゃったり一般常識から飛び出してしまって、
「……あれ? これって遠回しに、僕が残念な人だって言われてる?」
――――――――――――
***アランヤ村・埠頭***
「……というわけで、ピアニャちゃんはヘルモルト家に滞在することになったよー……」
「それはわかったけど……なに本気で
「いや、だって……」
港で船の整理をちょうど終えていたみんなに、ヘルモルト家であった事の経緯を簡単に説明し、ピアニャちゃんがどうなったかを伝えた。そこで、ミミちゃんが落ち込んでいる僕にツッコミを入れてきたのだ。
答えになってない僕の言葉に眉をひそめたミミちゃん。苦笑いをしているメルヴィアがミミちゃんの肩をポンポンと叩き「まあまあ」といさめている。
「
「「ああ……」」
「ん? 何が?」
メルヴィアの的を射た推測に、ミミちゃんに加えマークさんも納得したように声をもらしていた。神妙な顔をしているメルヴィアもだけど……もしかして、三人は似たような経験があったりするのかな?
けど、ジーノくんは何が何だかわかっていない様子で、首をかしげて不思議そうにしている。
「まっ、トトリのアレはいつものことだし、マイスもそんな気にしない方がいいわよ?」
「うん、頑張ってみる……」
「頑張るって……本当に大丈夫かい、キミは?」
マークさんにも心配されているみたい……
でも、シャキッとしないといけないっていうのも事実。僕は自分の頬をパァンと叩き、気持ちを入れ替える。
「そ、それはともかく! 長期間あけてたから心配ってこともあって、今から僕は『青の農村』に帰るつもりなんだけど……二人はどうするの?」
そう言った僕が目を向けたのはミミちゃんとマークさん……『アランヤ村』に住んでいるメルヴィアやジーノくんとは違う、『アーランドの街』に住んでるメンバーだ。
その内、先に答えたのはマークさんのほうだった。
「僕はもう少しここに滞在しようと思ってるよ。前にも言ったけど、あの船を造った人と
「私は……でも、トトリはギゼラさんのこともあるし、
『アランヤ村』に残るマークさんとは違い、ミミちゃんの方は街に帰るつもりのようだ。
せっかくだし、送って行ってあげようかな? 移動時間の短縮になるから、ミミちゃんも助かるはずだ。
その考えがミミちゃんにもわかったようで、目を合わせると「じゃあ、後で村の入り口で」と言われた。
てっきり「あんたの手は借りないわ!」とか言われると思ったんだけど……その辺の基準はミミちゃんの中でどうなってるんだろう?
まあ、嬉しいからいっか!
ミミちゃんからマイス君への心情とかそのあたりに関しては、今後もう一度描写する機会がある予定です。
……それと、詳しい予定は未定ですが、近いうちにアンケートのようなものをするかも知れません。内容は……まあ、アレのことです。