マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 更新、遅れてしまい大変申し訳ありませんでした!
 アンケートの集計他、色々とありまして、執筆が遅れてしまっていました。リアルの都合などもあって変な時間になってしまいました。



 アンケートの回答、ありがとうございました!複数アカウントでの投票といった不正行為があり集計がおくれましたが、おそらくもう大丈夫だと思います。

 想像以上に多くの人が参加してくださり、とてもありがたかったです。
 ……そして、アンケート結果が作者の予想とことごとく異なっており驚かされました。


 結果を発表します!

Q1順位

1位 ロロナ
2位 クーデリア
3位 トトリ



Q2順位

1位 マイス君(続投)
2位 マイス(別次元)
3位 レスト


 というわけで、マイス君の結婚相手はロロナに決定しました!
 今後はストーリーを進めつつ、マイス君、ロロナ、ロロナと親しい・近しい人などを交えながら、結婚に至るまでのイベントを書いていこうと思います。

 Q2のほうは、時間を見ながら、話が思い浮かんだ時に書き進めていこうと思います。ただ、今後の事を考えると、なかなか時間が取れそうにないんですよね……。その理由はといえば……


 アンケート中にもご要望がありましたが、今回の結果を踏まえたうえでの番外編を書こうと思ってます!
 もしも他の候補キャラがマイス君と結婚するなら……どういう経緯でそうなるのか? 告白・結婚の様子は? 結婚後は? 完全な蛇足になってしまうかもしれませんが、自分が投票したキャラが1位になった人にも、そうでない人にもできる限りのことをしたいので、挑戦してみます!
 また、すでに考えていたけど組み合わせの問題でボツになってしまった「マイス君以外の人たちのイベント」も……!?

 ……もしかしたら、作者の引き出しの少なさが露呈してしまうかもしれませんが……その辺りも含め、「コイツ馬鹿か」などと思いながらでも良いので楽しんでいただければと思っております。

 なお、番外編はこの作品とは別に投稿する予定です。というのも、『ロロナのアトリエ・番外編』の段階くらいまでは仮に同一世界でもまだ容認できそうですが、結婚などイチャイチャをするとなると、本編と同じ場所においておくのはどうなのかなぁ?……という考えが作者の中にあるからです。
 番外編の開始は『トトリのアトリエ』終了後になると思いますので、まださきのことですが、ご報告させていただきました。



 票の内訳など、詳しい内容は活動報告にて掲示しようと思っております。よければ覗きに来て下さい。



5年目:マイス「ジーノくん強化計画!」

 

***青の農村・マイスの家前***

 

 

 空は快晴。今日も農作業日和だ。……って、雨が降ってても、雪が降ってても、雷が鳴ってても農作業はするんだけどね。でも、やっぱり気分というものもある。

 

 

 そんな事を考えながら作業をしているんだけど、今、僕以外にも僕の畑で作業をしている人がいる。

 

「ふっ! たぁ! おりゃー!」

 

 元気の良いかけ声とと共に『クワ』を振り下ろすのは、ある理由で『アランヤ村』から来ているジーノくんだ。

 来てすぐのころは、ただただ力任せに農具を扱い壊してしまうことが多かったジーノくん。でも、最近はまだ無駄な力が入ってはいるものの農具を壊さなくなり、作業のスピードも速くなってきている。

 

「っし、終わったー。 マイスー、耕し終わったぜ。今度は何植えるんだ?」

 

 まだ収穫段階に入っていない作物たちに『ジョウロ』で水をあげているとそんな声が聞こえた。振り返ってみると、『クワ』を地面に垂直に立て。その先端に右手を置いて空いた左手で額の汗をぬぐっているジーノくんがいた。

 

「今回は『イチゴ』と『キャベツ』、あと『サクラカブ』を植える予定だよ。玄関の隣に出してるから、それを()いてくれないかな?」

 

「玄関の隣……ああ、あのカゴの中か! わかったー!」

 

 元気良く返事をして、種を取りに行くジーノくん。

 その後ろ姿を見ていた僕は、こうなった経緯を……数週間前のことを思い出した……。

 

 

 

――――――――――――

 

***数週間前・アランヤ村・埠頭***

 

 

 とあるちょっとした用事で『アランヤ村』を訪れた僕は、「せっかくだし」ということでグイードさんに挨拶をしようと思い、グイードさんが釣りをしていることが多い港の方へと行った。

 

 で、グイードさんを探すよりも先に、港の一角で膝を抱えて座っているジーノくんを見つけた。……そして、よくよく見てみると、ジーノくんがいる場所から少し離れたところに、何やら困り顔のグイードさんがいることに気がついた。

 「どうしたんだろう?」と思い近づいていっている途中で気がついたんだけど、ジーノくんの肩が時折震え嗚咽が聞こえてきていたのだ。これにはさすがに驚き、色々と気になることもあったけど、真っ先にジーノくんに声をかけることにした。

 

「ジーノくん、どうしたの?」

 

「ぐしゅ……ん、マイス……?」

 

 こっちを向いたジーノくんの顔は、目元を中心に赤くなっていて、涙と鼻水で濡れていた。

 

「ホントにどうしたの!? そんなに泣いて……ほらっ、このハンカチ使って」

 

「うるさい! ほっといてくれよ……それに、泣いてなんかない」

 

 そう突っぱねられたけど、「はいそうですか」と引き下がり、放っておくわけにもいかなかった。なので、隣に座って根気強く話し続けた。……すると、ポツリ、ポツリとだけど、何があったのか話してくれた。

 

 

 要するに「トトリちゃんと勝負をして負けてしまった」ということらしかった。こう言うと簡単そうに思えてしまうかもしれないけど、本人にとっては色々と複雑で難しい問題であることは疑いようが無かった。

 

 でも、錬金術士相手に勝つということ自体、難しいとこだと思う。正直なところ、何かしらのルールを作ってないと延々と回復されたり、離れたところから爆弾とかで一方的に攻撃されるし……

 そう言ったら、ジーノくんが一層泣き出してしまった。……なんでも、トトリちゃんは杖だけで戦ってたらしい。……そ、そっかぁ……。

 

 

「でも、単純な強さで負けたんなら、今よりも強くなればいいんじゃないかな?」

 

「んなこと言っても、オレ、これまでもずっと特訓してきてるんだぜ? なのに、それ以上強くなるってどうすりゃいいんだよ……」

 

「それは、ええっと……これまでやったことの無い特訓の方法を新しく加えるとか?」

 

「やったことの無い特訓? けど、これまでにも色々……」

 

 そう言ってたジーノくんの口が止まったことを不思議に思い、チラリと隣を見てみると……目をキラキラさせたジーノくんが僕の事をジーッと見てきていた。

 

 

「マイス! オレに畑仕事を手伝わせてくれ!!」

 

 

 

――――――――――――

 

***現在・青の農村・マイスの家前***

 

 

 ……そんなことがあってジーノくんは、こうして僕の家(ウチ)で農作業をしながら普段の特訓をしつつ過ごしていた。

 

 何故、ジーノくんが畑仕事をしたがったかというと、以前にジーノくんに「なんで強いのか」聞かれた時に農業を勧めたのが原因……だと思う。まあ、ウソじゃなくて本当のことなんだけど……。

 

 

 そうして僕はといえば……

 

「マイスー! 種、蒔き終わった! そっちも終わったかー?」

 

「うん、こっちも終わったよ。……これで、今日の作業は全部終わりだね」

 

「よっしゃー! じゃあ、あっちでやろうぜ!!」

 

「はいはい、片付けてからね?」

 

 農作業を終わった後、ジーノくんの朝の特訓を手伝うようになった。朝ゴハンはその後、ということになった。

 

 ジーノくんのする特訓というのは、素振り半分、実戦半分といったところだった。僕が手伝うのは実戦のほう……つまりは試合だ。これまでにステルクさんと何度も試合をしてきたことがあるから、僕としてはそこまで難しくなく、むしろいい刺激になっていたりする。

 

 

 そんな実戦特訓が始まるまで、僕もジーノくんの隣で軽く素振りをしていたんだけど……ふと、ジーノくんの手が止まっていることに気がついた。

 

「……? どうかした?」

 

「ん~? いや、ここに来て畑仕事とか特訓とかし始めてさ自分でもこれまでよりも強くなってきた気がしてるんだ」

 

 それはそうだろう。農作業は足腰が鍛えられる他に、体力やらスタミナやら根本的な能力のアップも期待できる。そういった基礎能力が上がれば剣の扱いにも影響が出てくるから、強くなった実感もあるはずだ。

 でも、その割には、ジーノくんはうかない様子なような……?

 

「なんていうか、こう……いい感じなんだけど、なんか足りない気がするんだ」

 

「足りない? そんなふうには思えないんだけど……?」

 

「足りないったら、足りないんだって!! って……あ、あー! アレだ!」

 

 僕が何か言うよりも先に、ジーノくんが自分の中で勝手に解決したようだ。……で、結局何が足りなかったんだろう?

 

 

「必殺技だよ! 必殺技!! いくら強くなってもキメ技がねぇとダメだよな!」

 

 

「ええぇ……? そういうものなのかな?」

 

 でも、まあ、言いたいことはわからなくも無い。やっぱりカッコイイ技の一つや二つは欲しい気がするし、ロマンというのもわかる。特にジーノくんのような性格の子なら、そういう傾向は強いんじゃないかな?

 

「なぁなぁマイス、なんかいい必殺技ないか?」

 

「必殺技……というわけじゃないけど、『ルーンアビリティ』って技ならいくつか」

 

「本当か!?」

 

「うーん……ジーノくんが使ってるような剣だと……」

 

 僕は手に持っていた双剣『アクトリマッセ』をしまい、代わりに『秘密バッグ』でコンテナから片手剣『まごの手』を取り出した。そして、誰もいない方を向いて『まごの手』を構えてみせる。

 

 

「まずは『ラッシュアタック』」

 

 流れるような動きで『まごの手』を何度も振るってみせる。

 

「……振るのはちょっとはやいけど……なんていうか、普通じゃね?」

 

 

「次は『ダッシュスラッシュ』」

 

 その名の通り走り込んで距離を詰め一撃をかまし、そこから連続攻撃に繋げる技だ。

 

「なんていうか、跳びかかってるだけだな」

 

 

「敵を何らかの異常状態にする『マインドスラスト』とか?」

 

 振るわれた『まごの手』に毒々しいというか不気味な光が灯り、それが斬撃の軌跡をなぞるように光る。

 

「……普通に斬って倒した方がよくね?」

 

 

「そ、それじゃあ、『ラウンドブレイク』」

 

 体を軸にして回転し、敵を斬りつけ、「ボス」などと呼ばれるよほど強い敵でもない限り相手を吹き飛ばせる大技だ。

 

「おおっ! やっと必殺技っぽいのが……でも、威力の割にスキが大きすぎないか?」

 

 

「ええいっ! 『パワーウェーブ』!」

 

 抜き放った『まごの手』から衝撃波が発生し、十メートル近くまで飛んでいった。

 

「こっちも中々かっけぇ……けど、もう何発か一気にとばしたいなぁ……」

 

 

 

 ……とりあえず、片手剣用の『ルーンアビリティ』をジーノくんに見せてみたんだけど、どうやらお気に召さなかったようだ。

 

「なんつーか、全体的に地味じゃなかったか?」

 

「ううん……まあ、『片手剣』の『ルーンアビリティ』って連続攻撃の起点か、連続攻撃の最後のスキを消すために使うことが多いからなぁ」

 

 特に、『ダッシュスラッシュ』と『ラウンドブレイク』はその特色が特に出ている。他にも『パワーウェーブ』は片手剣じゃ普通は届かない距離の相手への攻撃といった補助的な意味合いが大きく、ジーノくんが想像しているような必殺技とは少し違うのだろう。

 

「『両手剣』とか『ハンマー』、『斧』、あとは『槍』なんかだったらもうちょっと派手なのがあったりするけど……そのためだけに武器を変えるわけにもいかないからねぇ……」

 

 他にも僕が普段使ってる『双剣』にも『ルーンアビリティ』があるけど、それらもどちらかといえば『片手剣』の『ルーンアビリティ』と似た傾向だから、必殺技とは言えないかもしれない。……便利ではあるんだけどね。

 

 

「違う武器の『ルーンアビリティ』も使えないわけじゃないし……『ミリオンストライク』あたりを使ってみてもらおうかな?」

 

 『槍』の『ルーンアビリティ』である『ミリオンストライク』は、槍の一突きと共に複数回の突き攻撃が発生する……一回突いただけでダダダダダダダンッと、攻撃判定が出るのだ。

 その手数とリーチの長さから中々使い勝手のいい『ルーンアビリティ』なんだけど……あとはジーノくんが気に入るかどうかかな? もしくは、一から何か技を考えてあげてもいいんだけど……

 

 

 

「必殺技に関しては、私が教えてやろう」

 

 

「「えっ」」

 

 ふいにかけられた声に、僕とジーノくんが一緒になって声をあげた。

 そして、その僕らにかけられた声のした方向を見てみると、そこにいたのは……

 

「ステルクさん!」

 

「師匠! なんでここにいるんだ?」

 

「『アランヤ村』におらず、聞いてみれば『青の農村(ここ)』にいるという情報を掴んでな……どうしているのかと思い、少し覗きに来たんだ」

 

 そう言ったステルクさんは「さて」と呟き、胸の前で腕を組み、その目でジーノくんをジロリと睨んだ……ように見えるけど、きっとただ単に見ただけなんだろう。ジーノくんも特に反応していない。

 

「そういうわけだ。これから、お前に必殺技を教えてやろう。ただし、生半可な覚悟では習得できないぞ? やれるか?」

 

「やるやる! ぜってーやってやる!!」

 

 

 必殺技を教えてもらえることがそれほど嬉しかったのか、ピョンピョン跳び跳ねて喜ぶジーノくん。

 

 そんなジーノくんを見て、小さなため息を吐きつつもなんだか嬉しそうな様子のステルクさんが、僕のほうを見て、「ところで」と口を開いた。

 

「キミには手伝ってほしいことがあるんだが……」

 

「何ですか?」

 

「それはだな……」

 

 そう言ってステルクさんは僕に耳打ちしてきた……んだけど、その内容は僕としては素直に頷けるものじゃなかった。

 

「それはさすがに手伝えないというか……他に方法は無いんですか?」

 

「そうは言ってもだな。アイツを本当にトトリ(あの少女)に勝たせるというのも難しいだろう? となれば、モンスターに詳しいキミがなんとかして……」

 

「もっと平和的なきっかけからの仲直りはできないんですか? いくらなんでも、ロロナが連れ出した何も持ってないトトリちゃんに、僕がモンスターをけしかけて、そのモンスターからジーノくんがトトリちゃんを助けるって……トトリちゃんを危険な目に合わせて怖がらせることもですけど、モンスターの方のことも考えると、僕は協力できませんし、むしろ止めたいですよ」

 

「キミの言いたいこともわかる。しかしだな、今回はアイツの強さに対するプライドが関わっているから、平和的にというのはなかなか……」

 

 

 ステルクさんの言いたいこともわかる。

 モンスターも、話を聞いてくれない、人を襲ってまわるモンスターを僕が探して何とかして連れて行ったり、僕がジーノくんに武器をつくってあげたりすれば、まだ気持ちの落としどころはあるからいいけど……けど、やっぱり戦えない状態のトトリちゃんをモンスターの前で一人にするというのはどうしても容認できない。ジーノくんが助けることが決まってるとはいえ、下手をすれば大きなトラウマになってしまうかもしれない。

 

 ……なら、どうしたらいいか? 時間が解決してくれる、とかそう言う感じでもないし……

 

 

「ん? 師匠たち、何話してるんだ?」

 

「「いや、何も」」

 

 

 ……本当にどうしたものだろう?

 


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