・ステルクさんよりも先にマイス君がジーノ君を連れ去ったから。
・ステルクさんの提案した作戦に、マイス君が難色を示したから。
・なんだかんだいいつつも、マイス君の特訓で強くなれてたから。
必殺技だけで無く、基礎能力も底上げすることで本当に強くなれているジーノ君。原作よりも強くなるかも……しれないけど、性格はやっぱりそのままで、なおかつ本領発揮した錬金術士に勝てるかどうかは話が別だという……。
武器を強化するためのに、その強化のための素材を探しに冒険に出たジーノくん。
ジーノくん一人なら色々と心配だけど、ステルクさんもついて行っているので
まぁ、そもそもはホムちゃんがジーノくんたちを
……で、ジーノくんたちが冒険に行った後の僕はと言えば、恒例の釣り大会……今回は『大物!!釣り大会』なんだけど、その準備なんかはあったものの比較的ノンビリと過ごしていた。
ノンビリとしていたのには、ジーノくんたちが帰ってきた時にいてあげられなかったら悪いからっていうのもあるんだけど、ホムちゃんが「今回はいつもよりゆっくり滞在できます」と言ったからっていうもの理由だったりする。せっかく
というわけで、ホムちゃんと……家でノンビリしたり、なーやその子供たちと遊んだり、『
でも、まさか『トラベルゲート』の調合が目標に設定されるとは思わなかったよ……。
『ネクタル』という気付け薬ぐらいがギリギリ調合出来るラインだった僕には、『トラベルゲート』は凄く難しくて調合にとりかかる前に別のアイテムの調合で調合の腕を上げる必要もあって……本当に大変だった。けど、ホムちゃんがそばで指導してくれてたから、まだマシだったのかもしれない。それに、出来上がった『トラベルゲート』は凄く便利なものだから、こうやって教えて貰いながら調合出来たのはむしろ良かったんじゃないかな?
……そう思ってたんだけど、ホムちゃん
ロロナもトトリちゃんも、よくそんな危ないものをポンポン使えるね……。
僕は『リターン』の魔法があるし『トラベルゲート』は怖いから極力使わないようにすることに決めた。
――――――――――――
***マイスの家・作業場***
そして、そろそろホムちゃんも帰らないといけなくなってくる時期になってしまっていた。そんな中、ホムちゃんの要望で、今日も僕の家の『作業場』で調合をすることになったんだけど……
「今日は、『グナーデリング』に『精霊の首飾り』? でもこれ両方とも『トラベルゲート』よりも簡単な物だけど……今日は『錬金術』の練習じゃないの?」
「これも、『錬金術』の練習です。本当ならば先日の腕磨きの際に調合しておけばよかったのですが……ホムとしたことが、失念していました」
えーっと……? つまり、僕の錬金術の練習が目的じゃなくて、『グナーデリング』と『精霊の首飾り』を作ること自体が目的って事なのかな?
「でも、なんでその二つが必要なの?」
「お土産です」
「お土産って……ああ。いつものアストリッドさんへの? でも、それくらいのだとアストリッドさんは満足しないんじゃ……」
「その心配の必要はありません。ホム自身へのお土産ですから」
「ホム」のってことは、
ということは、やっぱり自分で身につけるアクセサリーが欲しいってなんだろう。ホムちゃんも女の子だし、オシャレとかに興味を持つお年頃なのかもしれない。
……あれ? でも、ホムちゃんって何歳だっけ?
最初に会ったのが『アーランド』に来てから初めての年越しの後頃で……ってことは、今は十二,三歳? いやでも、初めて会った時からそこそこ大きかったから、もう六……いや、四歳くらい加算したくらいの方が……? けど、アストリッドさんがホムちゃんを作ったのってあの頃で間違いないはずだから、やっぱり……。
え、ええっと……考え始めたらよくわからなくなってきたから、ホムちゃんの歳のことはとりあえず今はおいておこうっ! うん、そうしよう!
とにかく、ホムちゃんは指輪や首飾りといったアクセサリーが欲しいんだろう。でも、それならアクセサリーを取り扱っているお店に行ったら色々とあると思うんだけど……?
あっ、でも、ホムちゃんはおつかいで採取地へ行ったりするわけだし、見た目以上に性能を気にしているのかもしれない。確かにそれなら『錬金術』なんかで特性を
……けど、そういうことなら僕の『錬金術』の腕を磨くにしても難易度は低いから、別に『錬金術』にこだわらなくてもいいかもしれない。
「ホムちゃん。アクセサリーが欲しいなら、レシピもたくさん知ってるから僕が『装飾台』で作ってあげるよ?」
そう。僕は『錬金術』でなくてもアクセサリーを作る事が出来る。むしろ『装飾台』での作成のほうが得意で、品質的にも性能的にも自信を持って出せる物を作れる。それに、アクセサリーの種類の多さだって『装飾台』でのほうが多い。指輪なんて二十種類くらいあるから色やデザインも選べる。
それに、アクセサリーも武器のように後から強化することもできるから、性能の底上げだってできる。……これは、『装飾台』で作った物じゃなくて『錬金術』で作った物でもできなくは無いんだけどね。
だから、良い提案だと思ったんだけど……僕の言葉を聞いたホムちゃんは、何故か今にも泣き出しちゃうんじゃないかってくらい悲しそうな目になっていた。
「『装飾台』では、おにいちゃん一人で出来てしまうのでホムが手伝えなくなってしまいます……」
「そっか……そうだね! よしっ、『錬金術』で作ろう!」
そんな顔をされてしまったら、もし仮に断る理由があったとしても断れない。今のように理由が無い時はなおさらだ。
そうと決まれば、さっさそく調合にとりかかろう!
――――――――――――
……そんなこんなで『グナーデリング』と『精霊の首飾り』の調合にとりかかったわけだけど……『トラベルゲート』の調合に成功するくらいには『錬金術』を扱えるようになった僕にはさほど難しい調合ではなく、意外にもサクッと完成させることができた。
「…………♪」
僕の調合した『グナーデリング』と『精霊の首飾り』を受け取ったホムちゃんは、いつもよりも口角が上がっていて、こころなしか頬が紅潮しているように思える。
ホムちゃんも『錬金術』を使えるわけだし、そんなに珍しいものでもないと思うんだけど……そんなに嬉しかったのかな? 僕は知らなかったけど、実はアストリッドさんから服装なんかは決められてて制限されているとか?
いや、いくらアストリッドさんでもそんなことは……しそうだなぁ。だって、確かロロナの『錬金術士』としてのあの服装も、アストリッドさんが監修したものだって聞いたし……。そうなると、弟子どころか自分が生み出した存在のホムちゃんの服装には、アストリッドさんはより一層口出ししてそうな気がする。
……今度時間がある時に、ホムちゃん用にアクセサリーを色々作っておいてあげようかな?
「もしかして、もっといろいろ「アレもダメ、コレもダメ」なんて言われて制限されてるんじゃ……」と、アストリッドさんの
……でも、アストリッドさんはそんな悪い人じゃないから、そんなホムちゃんを縛りつけて働かせるようなことはしてない…………とは言い切れないのが余計不安になってしまう要因だろう。
ホムちゃんにその辺りはどうなっているのか、聞いてみようとしたちょうどその時……。
「たっだいまー! マイス、いるかー? オレの武器、強くしてくれー!!」
元気の良い声が『作業場』の外から聞こえてきた。その声色からも、内容からも、声の主が誰なのかすぐにわかった。なので、声の主……強化素材探しの冒険を終えて帰ってきたジーノくんと、一緒にいるであろうステルクさんを出迎えに、声のしたほう……家の玄関のほうへと僕は駆けていく……。
――――――――――――
帰ってきたジーノくんとステルクさん。
僕が出迎えに行ったんだけど……。会って早々、挨拶や冒険がどうだったかなどといった世間話もそこそこに、はやる気持ちを抑えきれない様子のジーノくんに引っ張られるような形で、僕は『作業場』へと戻っていくこととなった。
そして『作業場』に入ってすぐにジーノくんは僕に、集めた素材を見せてきた。
『グラビ石』、『樹氷石』、『鋼鉄鉱』、『ウィスプストーン』、『黒の魔石』、『竜のつの』、『竜のウロコ』がそれぞれ数個……見たところ、どれも品質は申し分の無いくらい立派なものだった。
それらを僕に渡し、自慢げにするジーノくん。
「どうだ? これでオレの武器、もっと凄くできるだろ?」
「うん、バッチリだよ! 一部、あんまり武器強化にはむいてなさそうなのもあるけど、そのあたりを選別して強化に使えば、かなり強くなると思うよ! ただ……」
ゴースト系モンスターを倒すと落すことのある「結晶化した魂」などといった噂がされる『ウィスプストーン』や、その名の通り黒いオーラが見えてきそうな力を放つ『黒の魔石』といった素材は、これまでの経験上あまり剣などの強化にはむいていない気がする。
そして、それらのむいていない素材以上に問題なものがあるんだけど……
「ジーノくん……
そう言って僕が指し示すのは、「片手に収まるサイズの黒くて丸い塊」と「縦長な薄茶色の結晶」。どちらも『アーランド』はもちろん、前にいた『シアレンス』でも見たことの無い物だった。
しかも、普通、素材であればなんとなくどんな効果があるのかわかるのに、この二つはよくわからないという不思議さもオマケでついて来ている有様だ。
……で、持ってきた張本人であるジーノくんはと言えば……
「さあ? オレもよくわかんねぇ。えっと、確か……黒いのは見かけないちっこいモンスターに襲われた時に、殴り返してやったらソレを落して逃げてって……茶色いのは森ん中でモンスターの群れに囲まれた時に、師匠と一緒にぶっ倒してたら気づいたら落ちてたんだ。……んで、見た時にビビッときたから持って帰ったんだ!」
「へ、へぇ……うん。話を聞いたところで、全くわからないや。強化に使っても大丈夫なのかな、これ?」
まあ、確かにジーノくんの言う通り、何かしらチカラがありそうな感じはするんだけど……でも、そのチカラがどういうものなのか見当が全くつかない。
そんな確証の無い物を大事な武器の強化に使うのは、さすがに気が引ける。仮に失敗したり、変な効果でも付いた時には、ジーノくんの剣が使い物にならなくなってしまうわけだし……それだけは避けないといけない。
となると……この、よくわからない二つの素材は、今回の強化には使わない方が良いだろう。
「そう! 見た瞬間に「これだ!」って思ったんだ! だから、その二つは絶対強化に使ってくれよな、マイス!!」
いつもの三割増しくらい軽快な笑みでそう僕に言うジーノくん……。
「……うんっ、頑張ってみるよ」
そんな真っ直ぐに言われたら期待に応えないわけにはいかないだろう。
「ホムが言うのもおかしいかもしれませんが……おにいちゃんは、少しは断る事も覚えた方が良いと思います」
そう言って僕をジトーッと見てくるホムちゃん。
あと、ステルクさんは何故かため息をついていた。……こっちも僕のせいなのかな……?
ホムちゃんとステルクさんから何とも言えない視線をあびつつも、僕はこれからのことを考えて準備とかを始めることにした。
「えっと……じゃあまず、この強化用の素材は僕のほうで選別して……それと、ジーノくんが今使ってる武器も僕のほうで預かるよ。強化する武器が僕の手元に無いとどうしようもないからね」
「あっ、そっか。……武器の強化ってどんぐらいかかるんだ?」
腰につけていた剣を鞘に納めたまま僕へと渡しながら、ジーノくんはそんなことを聞いてきた。
「強化の作業自体は一日もかからないけど……僕は強化以外にもしないといけないこともあるから、もうちょっと時間はかかると思う。他にも素材の選別もあるし、今回は初めて見る素材もあるから慎重にやりたいんだよね……そうなると、二,三日はかかるかな?」
「その間は、その剣も使えないというわけか……。だが、修行の手を止めるわけにもいかんだろう。何か代わりになる剣をコイツに貸してやってくれないか?」
今日かにかかる時間についての話を聞いて、僕にそう言ってきたのはステルクさん。
僕はステルクさんの言葉に「わかりました!」と頷き、強化用の素材とジーノくんの剣を『炉』から少し離れたところにある台にひとまず置いた。そして、武器をしまっているコンテナからジーノくんの剣に近い剣を探しだして、その剣をジーノくんに渡す。
「んー……じゃあ、オレは強化が終わるまで、またマイスん
カンッカンッカンッ
不意にそんな何かを叩くような音が聞こえてきた。
音のした方へと顔を向けてみると、そこにあったのは窓……そして、窓の向こうではバッサバサはばたいている鳥が見る。……ということは、おそらくついさっきの音は、あの鳥が窓ガラスでもつついた音だったんだろう。
……あれ? あの鳥ってハトだよね? ってことは……
「クルッポークルポッポー」
その、窓の外のハトが何かを言った……と思う。金モコ状態なら何を言っているのかわかったと思うけど、残念なことに人の姿じゃあおおよそのニュアンスというか、感情くらいしかわからない。
えっと……なんだか少しだけ焦っているような……?
……と、そんなハトの言葉に反応したのはステルクさん。
「そうか、ならば……おい、また外へ冒険に出るぞ。必殺技も最終ステップまできている……であれば、必殺技は敵との実戦の中で完成させた方がいいだろう」
何かブツブツ言った後、ステルクさんがいきなりそう言ってジーノくんと冒険に出ようとした。それに反発し不満を口にするのは、当然ジーノくんだ。
「え~っ! ほんの何日かなんだし、『
「グダグダ言うな。引きずって運ばれたくないなら、さっさとしろ」
「ちぇー、今日の師匠はいつもに増して意地悪だぜ……」
口をとがらせるジーノくんの言葉に、一瞬ピクッとしたステルクさん。
そのステルクさん、ものすごく小声で「アイツと比べれば、この程度意地が悪くもないだろうに……」って言ってたけど……アイツって、誰のことだろう?
―――――――――――――――
帰ってきたと思ったら、またどこかへ行ってしまったジーノくんとステルクさん。
たぶん、あの
いつものように近くにジオさんがいて勝負をしかけにでも行くのかと思ったけど、その場にジーノくんを連れて行くとは考え辛い気がする。ステルクさん、ジオさんに挑む度に気絶するほどボコボコに負けることが多いし、そんな姿をジーノくんに見せようとはステルクさんは思わないと思う。
じゃあ、他に考えられる可能性は……
「……ホムちゃん、今回も二人を追い出すために何かした?」
「いえ、ホムは何も。……まぁ、そろそろ帰らないといけないのに、おにいちゃんとの時間を邪魔されて嫌な気分だったのは事実ですが」
「うーん……なんて言うか素直だね、ホムちゃんは」
「おにいちゃんほどではありません」
そう、いつものすまし顔で言うホムちゃん。……なんとなく、その頭を
「で、結局なんだったんだろうね?」
「それはホムにもわかりません。……そんなことより交代です。今度はホムがおにいちゃんを撫でます」
そう言ったホムちゃんは、『作業場』内にある『薬学台』……その机とセットになっているイスを引っ張り出し、そのイスに座ってスカートの上から自分の
……って、また今日もか。僕が先に撫でたせいかもしれないけど……。
「あー……でも、ジーノくんの剣を強化しないといけないし……」
「それはホムが帰ってからしてくだい」
そう言って手招きをしてくるホムちゃん。
ホムちゃん、気持ちに素直になったって感じがしてたけど、同時にわがままになった気もするなぁ……。いや、でもこれまでが
……というわけで、これ以上
すると、今日はホムちゃんは左腕で僕を抱かかえ、右手で頭を中心に撫でまわし始めた。
それにしても、ホムちゃんといい、フィリーさんといい、リオネラさんといい……なんで
「他に何か理由があるのかな?」と疑問に思い、撫でられている間ヒマだし、せっかくだからホムちゃんに聞いてみようと思って口を開いた……その時…………
「こんにちはー。マイスさんはこっちにいますかー……って、あれ?」
家に繋がっている扉のほうから『作業場』に入ってきたのは、トトリちゃん……って、前にも似たようなことがあったような……?
そう思ったんだけど「えっと、確か先生が言ってた……ホムちゃんだよね?」と思い出そうとしているトトリちゃんの背後から顔を出した子……ピアニャちゃんの視線が、ホムちゃんの膝の上の僕に止まっていた。
ああ……ピアニャちゃんの目、すっごいキラキラしてる。
それがわかった瞬間、僕はこの後どうなるかがすぐに想像できた。
この後、ホムちゃんとピアニャちゃんで、
くるっぽー