説明をすべきところ、説明を省くべきところ。
回収したいフラグ、立てておきたいフラグ。
……色々ありすぎて、今回無駄にグダグダと長くなってしまいました。実際のところ、もっと削れたかもしれません。が、後に回すと全体の話の進みが遅くなってしまうので、困ってしまうという……。
結果、山無く谷無く詰め込まれてしまいました。
……書くべき事を書いて、早くマイロロ書きたいです。そして、番外編も書き溜めておきたいです。
時間が……遊んで暮らせないものですかねぇ……。
***マイスの家・作業場***
「ええっと……これってつまり……?」
そう頭を悩ませてしまうのは、今僕がいる『作業場』の状況。
別に、何かを作っていたらおかしなものができたとか、強化をしていたら失敗してしまったとか、そういうことじゃない。だからといって、誰かに荒らされてしまっているわけでも…………けど、一番近いのはこれかもしれない。
目をやるのは、『鍛冶』をするための設備『
……それだけなら、「盗まれた!?」と驚き、慌てて探し回っていたと思う。けど、それだけじゃなかった。
『ウィンドゲイザー』を立てかけていた場所に、代わりに、ジーノくんに貸しておいた剣が立てかけられているのだ。
つまり……
「僕の知らないうちに、冒険に出てたジーノくんたちが帰って来て、交換していったってことかな?」
強化するために僕が『ウィンドゲイザー』を預かった後、ジーノくんとステルクさんはまた特訓のために冒険に出て……で、僕はその翌日から『ウィンドゲイザー』の強化に取りかかり、そして強化が終わったのはそのまた翌日の昼前……つまりは昨日の昼前だった。
強化を終えた後の僕はと言えば、その日の内は
……となると可能性があるのは、僕が街に行っていた今日の午前中にジーノくんたちが帰って来ていたというものだろう。
そして、僕が不在の中、強化し終えている『ウィンドゲイザー』に気がつき持ち帰った……そんな気がする。
「んー。ちょっと
『
トンデモ強化がされてしまった『ウィンドゲイザー』だけど、そんなふうになったのはどう考えても、ジーノくんが集めてきた強化用の素材のせいだと思うんだけど……なってしまったものは仕方がないだろう。
「でも、やっぱりちょっと心配だなぁ……」
武器の扱いに関しては、特殊になったところで上手く順応して問題無く使えるようになってくれるとは思ってる。けど、ジーノくんはちょっとその……良くも悪くも調子がいいから、トンデモ強化された『ウィンドゲイザー』を持っただけで勘違いして「オレ最強!」とかなってるんじゃ……と、少し不安になってしまう。
……まぁ、そんなこと言ったら、武器を強化するという発想自体間違いだったって話になっちゃうんだけど……。でも、強くなれるのは本当だしなぁ。
あっ! あと、心配なことが他にもう一つあった!
それはジーノくんのことじゃなくて、
ジーノくんたちが再び冒険へ出たちょうどその後、ピアニャちゃんを連れて僕の家に来たトトリちゃん。前の時とは違って二人だけだったのは、用を済ませたらすぐに『アランヤ村』へ帰る予定だったからなんだと思う。
……で、トトリちゃんが僕の家に来た理由なんだけど……結局、わからずじまいだった。というのも、トトリちゃんとピアニャちゃんが来た時、僕は金のモコモコの姿へと変身していて都合上「モコモコ」としかしゃべれなかったから、詳しく聞くことができなかったからだ。
一緒にいたホムちゃんが何かしらのフォローをしてくれたり、僕が外に出て変身する時間を作ってくれたらよかったんだけど……。ホムちゃんはホムちゃんで、
唯一わかったことといえば、僕を引っ張り合う二人を見たトトリちゃんが困ったように笑いながらもらした独り言……
「ジーノくんもいないし……。あの事をマイスさんに相談したかったけど……今はいないみたいだし、わたしのほうでも準備が必要だし、他の予定もあるから、また今度でいい……かな?」
……から読み取れる内容くらいだろう。
とは言っても、「ジーノくんのこと」、「
こっちから聞きに行くという手もあるにはあるにはあるけど、
……いちおう、このあいだホムちゃんに教えてもらいながら作った『トラベルゲート』と使えば、一瞬で行き来ができるけど……でも、僕が聞いたのはトトリちゃんの独り言で、なのに「何か僕に用があったの?」なんて言いに行くのは不自然過ぎると思う。他に何か『アランヤ村』に行く用事でもあれば気にせず行けるんだけどなぁ。
「うーん。何かするにしても、とりあえずはいつも通りに過ごして……それで、お祭りが終わって一段落してからかな?」
場合によっては、お祭りの後の次のお祭りについての話し合いで、村のみんなに「用ができたから次はあんまり手伝えない」などと言っておく必要があるかもしれない。
まぁそれに、そのうちジーノくんたちがまた
というわけで、僕は『作業場』から無くなったジーノくんの武器や、その他諸々のことはひとまず置いておき、今日これからどうするかを考えることにした。
「『大物!!釣り大会』の準備や打ち合わせも終わってて、あとは前日の会場作りくらいだし……今日は
――――――――――――
それから四日後……。
『大物!!釣り大会』をちゃんと片付けまで無事に終え二日経った『青の農村』は、お祭りの熱気を残しつつも普段通りの雰囲気へと段々と戻っていっていた。
僕はと言えば、いちおうお祭りが終わった後に「もしかしたら、また遠出するかもしれない」とコオルたちに伝えて、一度『アランヤ村』に……
その理由は、『大物!!釣り大会』に来てくれたリオネラさんとフィリーさん。その内のフィリーさんの予定が大きな要因だった。
それはフィリーさんが近々丸一日取れる休暇。それに合わせて、比較的自由に時間を作れる僕とリオネラさんで前日から
その取れた休暇というのが今日のこと。『大物!!釣り大会』の翌日……つまり昨日はリオネラさんと僕とで準備をしていたというわけだ。
本当は昨日、準備が終わり次第『トラベルゲート』で『アランヤ村』に行ってみようと思ってたんだけど、あれやこれやと色々用意していたら気付けば夜に……となってしまい、結局『アランヤ村』には行けずじまい……。
だけど、そうやって前日にちゃんと準備をしていたからか、当日……今日の
――――――――――――
***マイスの家***
「……ってことで、今回みたいな感じで問題無いと思うんだけど……どうかな?」
僕がそう確認を取ると、僕が座っているイスからテーブルを挟んで反対側のソファーに座っている二人……フィリーさんとリオネラさんたちが小さく頷いてくれた。
「うん。内容とか流れは今度が初めてなんだし、今日くらいでいいと思うよぅマイス君」
「わ、私もそう思う。それに人数が多かった時のことを考えたら、このくらい基礎的で簡単な部分だけじゃないと教える人も大変になっちゃうから……」
フィリーさんに続きリオネラさんが。そして、そのまた次に続いたのはアラーニャと
ホロホロだった。
「そうねぇ……仮に『青の農村』の人たちだけだったとしても、結構ギリギリな人数な気もするものね」
「だな。マイスはともかく、リオネラとフィリーにはいっぱいいっぱいじゃねーか?」
「人数の方も考えないとかぁ……。ある程度手分けすることも考えられなくはないけど……あっ、でも、それ以前にコッチの問題もあるね」
人数の事を考えていると、ふとある事を思い出し、僕は「どうしたらいいかなぁ?」と頭を悩ませる。
悩みながら僕が手に取ったのは、テーブルに積まれていた『本』……そのうちの一冊だ。それが僕が悩んでいる原因のものだ。
実際のところは、手に取った一冊だけでなくてテーブルの上にある『本』全てが関係してるんだけど……。
フィリーさんもリオネラさんも、僕の様子から、僕が言いたいことがわかったみたいだ。
「あっ、そっか。今みたいにみんなで一冊を見るわけにはいかないだろうし、回し読みってわけにも……」
「やっぱりしっかり読めないと、ちゃんと理解できなくて上手くいかないと思うよ?」
「そうだよね。でも、そうなると沢山書かないといけなくなるから、時間が凄くかかるなぁ……」
「「えっ」」
僕の言葉に、フィリーさんとリオネラさんが揃って驚いたように声をあげた。
いや、驚いたと言うにしては随分間の抜けた感じではあるんだけど……一体どうしたんだろう?
その僕の疑問を解決してくれたのは、ちょっと呆れたような口調で「やれやれ」と話しだしたアラーニャとホロホロ。
「もしかして、全部手書きで本を作る気なの? 最初の一冊目とかだけならまだしも、何冊も作るのにそれは無茶だと思うわよ?」
「つーか、普通なら印刷するって考えが浮かぶもんだろ」
「印刷……ああっ! なるほど!」
なるほど、それは盲点だった!
確かに、世の中に出回っている本は印刷されたものが多い。手書きのものが全く無いわけじゃないけど、
おそらく、そうやって印刷技術が広く使われているのは、アーランドが持つ機械と技術力の賜物なんだろう。
「でも、印刷のことって詳しくは知らないんだよね。どうやってやるのか……そもそも何処に行けば出来るんだろう?」
そう。印刷というものは知ってるけど、それがどういったものかはほとんど知らない。なので、どうしたらいいのかがよくわからないのだ。
「ええっと……た、たぶん、街の工場のどこかで印刷もやってると思うんだけど……。工場のことって国の人が把握してるはずだから、大臣さんあたりに聞けばわかるんじゃないかな?」
リオネラさんの言う通り、遺跡から発掘された貴重な機械を使用している工場というものは基本的に国が何かしら管理をしていたりすることが多い。だから、何かしら知っているとは思う。
なんにせよ、現大臣であるトリスタンさんには印刷以外でも、
「あとは……あの人に聞いてみるとか? ほら、あの……えっと、いのーの……」
「異能の天才、プロフェッサー・マクブライン?」
僕がそう聞くとフィリーさんは「そうそう!」と頷く。
「あの人って機械のこと詳しいんだよね? だったら、印刷のための機械の事とかも知ってて、もしかしたら造れたりするんじゃないかなーって」
「なるほど。確かに工場で印刷してもらえたとしても、その間は他の人たちの邪魔になっちゃうわけだし……それならそんな立派なものじゃなくても、個人で使えるものがあったほうが何かと都合がいいかもね」
となると、マークさんに事情を話して協力……というか依頼をすべきだろう。
ただ……その場合、心配なのはマークさんにこの『本』たちの内容を知られることかもしれない。
なぜなら、この『本』の内容は「『
もしバレたら、協力してもらえないどころか、邪魔をされてしまうかもしれない。
……あっ、でも『魔法』については大々的に発表するつもりというか、いましているのがその準備なわけで、結局そう遠くないうちに知られてしまうわけで……それじゃあ、どっちにしろ何か言われたりするんだろう。
「そう考えると、マークさんからの協力は……ああ、でも『魔法』のことはちゃんと説明して、納得してもらわないと後々大変になるかなぁ?」
最初からわかっていたつもりだったけど、やっぱりいろんな意味で前途多難な気がする。……だからといって、この計画を途中でやめてしまうつもりは全く無いんだけどね。
そうやって、フィリーさんとリオネラさんたちと一緒に「あーだ」「こーだ」と話し合っていると、不意に玄関のほうからノックの音が聞こえてきた。
「はーい!」
そう僕はノックに返事をし、イスから立ち上がって玄関のほうへと行く。
すると、僕が玄関へとたどり着くよりも先に、扉が開いた。
「失礼する、マイスはいるか」
「「きゃっ……!」」
「…………」
入ってきたのは、こころなしか焦った様子のステルクさんだった。……僕から見て後ろの方から短い悲鳴が二人分聞こえてきたんだけど、それを聞いて、何とも言えない顔をして沈黙している。
「はい、いますよー……って、あれ? ステルクさん、ジーノくんはどうしたんですか?」
「……なに? どういうことだ? ここにいるんじゃないのか?」
僕の言葉でステルクさんが僅かに首を傾げ、そのステルクさんの言葉を聞いて今度は僕が首を傾げる。
……よくわからないけど、こういう時は一回ちゃんと話して状況を整理するべきだろう。
「えっと、ジーノくんは一週間くらい前にステルクさんが冒険に連れて行きましたよね?」
「ああ。あの場で
なるほど。だからあの時、半ば無理矢理にでも冒険に連れて行こうとしてたのか。そうなると、もしかしてあの時に窓をつついてたハトは『青の農村』にトトリちゃんが来たことをステルクさんに伝えてたのかな?
「その翌日、ハトにあの少女がいないことを確認させ、それから『
「でも、僕とステルクさんは今日まで会ってないですよね?」
「いや、それは……帰る途中に別のハトから「そう遠くない場所に王がいた」という報告を受けてだな、そこで
「えっ」
えっと、つまり途中までは一緒だったけど、それ以降は知らないってこと? いくらなんでもそれは……。
って、よくよく見てみれば、服の所々がボロボロになってる。汚れこそすでに払い落とされていたのか見えないものの、その様子からするとジオさんには結構コテンパンにやられてしまったのかも。
「別れたのは『
「はい、あの日以降は会ってませんよ。……あっ、でも、五日くらい前に『作業場』に置いてあった強化した剣が、ジーノくんに貸してた剣と入れ替わってたんで、ここには来てたんだと思います」
「なに? ここに来ていたのであれば、会ったんじゃないのか?」
「それが、ちょうど僕が出かけてて留守だった時に来てたみたいで、会えてなくって……」
僕がそう言うと、ステルクさんの眉間にはシワが寄り、目が細められた。……僕の気のせいじゃなかければ、眉毛もピクピクしている……
「……何故、キミが留守だったというのに
「え? 何故って……むしろ何で入れないんですか?」
……気のせいか、ステルクさんのほうから「プツン」と何かが切れたような音が聞こえたような気がする。
でも、別に切れるような紐とかは見当たらないけど……
「だから……! ……ハァ。キミそういう奴だったな。むしろ、家に鍵がかかっているほうが珍しいか」
ステルクさんにそこまで言われて、何の話かやっとわかった。
つまりステルクさんは、僕に「出かけているのに、何故鍵をかけていなかったか」と問い正したかったんだろう。ステルクさんなりに心配してくれているんだと思う……でも、「鍵がかかっているほうが珍しい」っていうのは、いくらなんでも言い過ぎなんじゃ……。
「僕だって、出かける時とか夜には鍵をかけるようにはなりましたよ?」
「なら何故
「街に行っても一,二時間しかかかりませんから、鍵をかける必要は無いかなぁ、と」
「意識が低いというか、危機感が無いというか……泥棒が入ったり、何かあった時に困るのはキミなんだぞ?」
そう言って大きくため息を吐くステルクさん。
でもなぁ……
「でも、鍵をしてても入られる時は入られますし、あんまり意味が無い時もありますし」
「なに? 泥棒に入られたことがあるのか!?」
「ドロボウというか、アストリッドさんなんですけど……」
そう。あれはアーランドがまだ王国だった時代……アストリッドさんが知らぬ間に僕の家に侵入し、薬などを持って行ってしまうことがある時期があった。それは、ロロナが王宮の課題を全てこなした後にアストリッドさんが『アーランドの街』から旅立つまで続いたんだけど……その間は本当に鍵は意味が無かった。
とは言っても、そのアストリッドさんの行為に多少は困りはしても、そこまでではなかったから諦めていたというか、持って行ってもいいことにしてたんだけどね。
ステルクさんはといえば、さっきまで驚いた様子だったのに、アストリッドさんの名前を出したあたりでピタリッと固まり……数秒後、一段と大きなため息を吐いて首を振ってきた。
「……そういえば、そんな話を昔していたな……。だが、アイツを基準に考えるのは流石にどうかと思うぞ」
「それはまぁ、僕もなんとなくそんな気もしていたんですけど……」
そう言ったところで、僕とステルクさんの間に、何とも言えない空気が
なんというかここで話は区切れたんだけど、「それで……何だっけ?」といった感じに次の言葉が出てこなかった。それは、目の前のステルクさんも同じ感じみたいだった。
そんな僕とステルクさんに助け舟を出したのは、ソファーでビクビクしてるフィリーさんとリオネラさん……ではなく、リオネラさんのそばで浮いているホロホロとアラーニャだった。
「んで、結局ジーノって奴はどうなったんだよ?」
「それに、騎士さんはその子に何か用があったの?」
ふたりの声に、ステルクさんは視線をずらし、僕は振り返ってソファーのほうを見た後、僕らは再び顔を見合わせた。……ステルクさんの視線に、フィリーさんとリオネラさんが跳びあがるのは……もういつものことだ。
「ジーノくんは一人で冒険に出てるか……もしくは、『アランヤ村』にかえっちゃったとか?」
「考えられるのはそのあたりだろう。どちらにせよ、無茶をしていなければいいが……。……にしても、私としたことがキミのペースに乗せられて、随分と喋ってしまったようだ。少し余裕があるとはいえいち早く対処すべきだというのに……」
まるで僕が悪いかのように言われたような気がして、そこを否定しようと思った……んだけど、ふとそれよりも気がかりなことに気がつき、そっちのことを聞くことにした。
「対処って、何かあったんですか?」
「ああ。実は王と戦った後、私を起こしたハトがいたんだが……」
「起こした」ってことは、つまり、ステルクさんは寝ていたんだろうか……? いや、それよりもまたハト……前に、話に出てきたハトと同じハトか、それとも別の……もし、別だとすれば、ステルクさんはいったい何羽のハトを飼っているんだろう?
「そのハトはギルドからの緊急の連絡を持ってきていて、内容は……『スカーレット』の群れが『アランヤ村』近郊を移動している……という報告だ」
「ええっ!?」
『スカーレット』といえば、その名の通り真っ赤な悪魔系のモンスターだ。その体は比較的小さくて、人の子供くらいの大きさしかないだけど、その力は本物でなおかつ性格も狡賢く残虐で、一体だけでも中級冒険者がてこずる相手だ。
そんな『スカーレット』が群れでうろついているとなると、かなり危険な状態だ。
「幸い、『アランヤ村』のすぐそばというわけでもなく多少距離はあるため、『スカーレット』たちが直接『アランヤ村』を襲う可能性も限りなく低いそうだ。ただ、村のそばの採取地にいついてしまう可能性や群れであるという危険性を考慮して、ギルドは討伐隊を編成することを決めた。それで、キミや
「経緯はわかりました。それで、今『アランヤ村』は……? トトリちゃんも向こうにいるはずなんですけど……」
「王と遭遇できたのが、街から見て『アランヤ村』とは反対方向だったから、私もこの目でその様子は見れていない……が、ギルドの依頼を取り扱っている酒場があっただろう? あそこに情報が行き、そこから村全体に外へ出ないようにと伝達が回っているはずだ。あとあの少女には、もしも村の外にいた場合を考えて、すでに私の方からハトを飛ばしている。ハトには直接
「内容は、簡潔に何が起きているかと村に帰るように、と書いてある」と、手紙の内容を付け加えて説明してくれるステルクさん。とりあえず、ひとまずは大丈夫なようだ。ただ、不安要素が全く無いわけでもない。
そして、話の流れからして僕もステルクさんと一緒に討伐隊に入るべきなんだろうけど……
「あの、僕、先に『アランヤ村』へ行っていてもいいですか?」
「なに? だが、街で人員を集めた後、彼女に……ん、ろ、ロロナ君の手を借りて討伐隊は『アランヤ村』に行く予定なのだが……今一人で村へ向かったところで、逆に遅れるぞ?」
「大丈夫です! 僕も『トラベルゲート』を持ってますから、一人でもすぐに行けます! ……トトリちゃんやメルヴィアがいるとはいっても、やっぱり村の人たちは不安になると思うんです。だから、少しでも早く村に行って、何か助けてあげたいんです!!」
そう言って僕はステルクさんの目をジッと見つめる。
対するステルクさんは、普段よりも微妙に険しい顔で睨みつけてきて……少し間をおいて、小さく息を吐いた。
「……そうだな。あまり考えたくはないが、もしもの場合に村を守る人間が一人でも多くいた方がいいだろう。それに、キミの言う通り、村の住人のことを考えるのであれば、なおさらな」
「はい! それじゃあ、準備してすぐに……」
「ただし、わかっているとは思うが、一人で討伐に出たりするような勝手な行動は控えておくように。敵の群れの数はかなり多いらしい。そんな中に特攻するのはいくらなんでも無謀だからな」
そう言うと、ステルクさんは「では、私は街に行く」と僕の家から出ていった。
そのステルクさんの背中を少しだけ見送った後、僕は振り向いてフィリーさんとリオネラさんたちの方を向く。
「色々やってた途中でごめんなさい! そういうことだから僕は今から出掛けるんだけど……みんなはここで好きなだけくつろいでて! あっ、もしあれだったら、冷蔵庫の中のものは勝手に食べてもいいからっ!」
「私たちもちゃんとお話は聞いてたから、そんなに気にしないで。それに、マイス君が帰ってくるまで、ここのことは任せてよ!」
胸を張ってそう言うフィリーさん。ステルクさんは相変わらず苦手だけど、昔と比べたらいろんな人とお話しできるようになっているし、お留守番をしてくれるのなら、とても頼りになる。
「うん。だから、マイスくんは『アランヤ村』に行ってあげて。……ピアニャちゃんもきっと不安になってると思うから……ね?」
リオネラさんのほうはといえば、前に『
僕は家の事を二人に任せることにして、ササッと最低の準備をして、家の外へ出た。
そして、僕は初めて使うアイテムを取り出し、かかげる。
「『トラベルゲート』!」
読み返してみると、日にちの経過がわかり辛くて、いつ何があったかがわかり辛い感じが……。
次回ぐらいに補足説明を加える予定です。