マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 投稿時間がずれてしまい、申し訳ありませんでした。

 集中できるっていうのは良いことですけど、時間も忘れて書いてしまうのは問題ですね……。一番の問題は、投稿日になっても書き上げられていないことなんですけども。


5年目:マイス「雪に覆われた村で」

 

 

***最果ての村***

 

 

 『塔の悪魔』との決戦を終えた僕たちは、悪魔を退治したことを伝えに『最果ての村(ピアニャちゃんがいた村)』へとその足で向かったのだった。

 

 そして今、『塔の悪魔』のことを話してくれた長のピルカさんの元へとトトリちゃんが行っている。その間、残っている僕たちは適当に待機ってことになってて、僕は家から持ってきた「雪や寒さに強い作物の種」をあげたり、実際に植えてみせたりしようと思ってたんだけど……

 

「キミが色々と常識外れなのは知っていたが、まさか『魔法』などといったものを……」

 

「けど、それでも「マイス君なら」って思えちゃうのが、なんというか……普通に受け入れられちゃうよねー」

 

 おでこに手を当てて首を振るステルクさんと、「あははは」と笑うロロナ。他の人たちもそれぞれ反応をしている。

 

 

 僕は今、寒さから逃れるため村の民家の一つに入れてもらい、ピルカさんに会いに行ったトトリちゃん以外の皆と一緒にいた。

 

 そうなった理由は、『塔の悪魔』との戦闘で使った『魔法』が原因だ。

 まあ、使うかもしれないと思った最初のころからこうなる可能性については考えていたんだけど、『塔の悪魔』との戦闘で白熱し、すっかり忘れてしまってた。

 

 で、()()()()()()()()()()()()()()()()()、ここで必死に隠す必要も無いから、『魔法』という技術であることを話したんだけど……そしたら、なんだかちょっと気になる言い方ではあるけど、いちおう納得というかわかってくれたみたいだった。

 

 

「ミミちゃんとくまさんは驚いてなかったけど……もしかして、知ってたりしたの?」

 

 首を傾げているロロナが、『塔の悪魔』との戦いの時、僕の使う『魔法』に驚かずに一緒に戦っていたミミちゃんと……あとマークさんを見て疑問を投げかける。

 すると、マークさんが嫌そうな顔をして髪をかきながら、「だから、何度も言うけどその「くまさん」呼びはよしてほしいと……」って呟いてたけど、諦めたように首を振ってからそれに答えた。

 

「ちょっとした事情があってね、『魔法』についてはマイス()から詳しく解説までされてて、見たことも一応あったんだよ。……まあ、最後のヤツの威力はさすがに想定外だったけどね」

 

「私は、実際に見るのは初めてですけど話にだけは聞いてました。『火』、『水』、『地』、『風』、『光』、『闇』の属性(エレメント)と、それらにそれぞれ『初級』、『中級』、『上級』があって……あと攻撃用ではない『愛』の『魔法』や、例外、もっと特殊な古代のものも存在すると言われているとか」

 

 マークさんに続いて答えたミミちゃんが『魔法』について簡単な説明を皆にしてくれた。

 

 個人的には、昔、ミミちゃんとベッドで休んでいるミミちゃんのお母さんに聞かせていた数あるお話の中で一、二回しか話していなかったはずの「『魔法』について」をミミちゃんが憶えてくれていたことに驚かされた。

 『アーランド(こっち)』じゃあまず必要無い知識だし、かなり昔のことだから憶えていてもほんのちょこっとだけだと思っていたから、完全に予想外だ。なんだか、ちょっとだけ嬉しい気がする。

 

 

 ミミちゃんの説明に「へー」とか「そうなんだ」とか反応をしている面々なんだけど、そんな中で一人、ステルクさんが隣にいる弟子(ジーノくん)に目を向けていた。

 

「お前もさほど驚いていなかったように思えるが……『魔法』を知っていたのか?」

 

「いいや? 別に知らなかったけど?」

 

 首を振るジーノくんに、ステルクさんがその鋭い視線で「ならば何故……?」と問いかけた。すると……。

 

「だって、マイスなんだろ? オレの剣を意味わかんねぇくらいの性能にしたりするんだから、あんくらい変なこと出来ても別におかしくないなーって思って」

 

「……まぁ、確かに規格外であることは間違い無いのだがな」

 

 「単純だからこそ、深くは考えんのか……」と、妙に納得した様子で一人頷くステルクさん。そんな師匠を気にする様子も無く、ジーノくんは「あー、腹減ったー……」なんてぼやいているようだ。

 

 

 

 

 

「ねぇ、マイス」

 

 とりあえずこの場が落ちついてきたかと思ったんだけど、そんな時、不意に僕に声をかけてきた人がいた。メルヴィアだ。

 

「さっき使ってた『魔法』ってさ、マイス以外にも使えたりするのかしら?」

 

「え、うん。剣とかの扱いと同じで得意不得意はあるけど、大抵の人は使えるよ。実際に、今、()()()()()()の発表にそなえて『青の農村』の皆には『魔法』の秘密特訓をしてもらってるんだ」

 

「告知の広告には「重大発表!」って書いてて、他に詳しいことは書いてなかったけど……なんだか、次のお祭りは大事(おおごと)になりそうね……」

 

 僕の言葉を聞いてそうもらしたミミちゃん。

 実際の「重大発表」は『()()』のことだけじゃなくて、一部の部外者の耳にはすでに入っている『()()』のことも含まれているんだけど……そうなると、本当に大事というか大騒ぎになるかも……? いまさら止めたりする気はないんだけど、色々な事態を想定して準備しておかないとかな?

 

 

 と、質問をしてきた本人であるメルヴィアは「ふーん……」と、何とも言えない反応をしていたんだけど……再び僕に向かって口を開いた。

 

「じゃあ、人間(ひと)じゃなくてモンスターが『魔法』を使ったりすることは?」

 

「すごく似ているのを使ってたりはするんだよ? 『アーランド』周辺でわかりやすいのは『幽霊』系や『悪魔』系の闇の攻撃とか。……というか、場合によってはモンスターのほうが凄かったりするんだよね。真似(マネ)するのが難しいくらい範囲が広かったり……」

 

 これは事実だったりする。理由はわからないけど、『シアレンス』にいたころ出会ったモンスターの中には、僕の使える『魔法』では真似できないような芸当を見せるモンスターたちがいたのだ。

 

 例えば、灼熱の『ソル・テラーノ砂漠』にいるゴースト系のモンスター『トマトーガイスト』。彼らが使う地属性魔法は、僕が今回使った『アーススパイク』によく似ている地中から尖った岩を発生させる『魔法(もの)』なんだけど……決定的に違うのがその数。一つや二つではなく、数個の岩が連続して発生するのだ。

 そういったように、他のモンスターたちも僕らが使う魔法とはよく似ているけど違うものをつかったりしている。

 

 『錬金術』のレシピみたいに自分で一から『魔法』を作り上げれば再現できるのかもしれないけど…………今度、試してみようかな?

 

 

 僕はそんな(こころ)みを思いつき考えてたんだけど……その時、メルヴィアはといえば……

 

「なら、()()()がマイスと同じ『魔法』を使っててもおかしくはないのね。でも、ちょっとねぇ……?」

 

 …………? メルヴィアは一体、何を言ってるんだろう?

 僕もなんだか少し気になるんだけど、メルヴィアのほうもこっちを横目でジッと見てきている。

 

 

 

 

 

「お、おまたせしましたーっ!」

 

 メルヴィアがまた何か言おうとしたのか口が動き始めたちょうどその時、僕らがいる民家に、ピルカさんとのお話を終えてきたのだろうトトリちゃんが入ってきた。必然的にみんなの視線と意識はトトリちゃんのほうに向いた。それは、メルヴィアも同様だった。

 

 

「トトリちゃん、お疲れさま。どうだったー? ちゃんと話せた?」

 

 トトリちゃんに「こっちおいでー」と手招きをしながら、どうなったかを聞くロロナ。それに、トトリちゃんは笑顔で答える。

 

「はい! 悪魔は倒したからもう大丈夫って、ちゃんと伝えました。……あと、ピアニャちゃんは『アランヤ村(うち)』にいてもいいけど、黙って勝手に出ていったことは怒らないといけないから、一回連れて帰ってきなさいって」

 

 『塔の悪魔』のことはもちろん、どうやら、僕らについて来てしまったピアニャちゃんのこともちゃんと話せたみたいだ。

 確か、ピアニャちゃんが『最果ての村(ここ)』を出た理由って「いたら目覚めた悪魔に食べられちゃうから」で……今回の一件で『塔の悪魔』が倒されてことで村を出ていく理由が無くなったわけだ。でも、それでもピアニャちゃんの意思を尊重し自由にさせてあげるあたり、ピルカさんは本当の意味で「優しい人」なんだろう。

 

 

 そんな、良いことしかないような話なんだけど……それにしても、トトリちゃんがやけに笑っているというかニヤついている気がする。

 そのことが気になったのは僕だけじゃなかったようで、ミミちゃんが片方の眉を跳ね上げ、ちょっとだけ首をかたむけて怪訝(けげん)そうにした。

 

「ニヤニヤしてて、変というか、気持ち悪いというか……。何かあったの?」

 

「気持ち悪いって、そこまで言わなくても……。えっとね、『塔の悪魔』を倒したことを伝えたらね、ピルカさんが「おぬしからすれば、母親の(かたき)も同然か」って言われたんだけど、わたしそんなこと考えてなくって……そう話したら「じゃあ何でそこまでして倒したんだ?」って聞かれちゃったんだ。けど、よくわかんなくって結局なんとなく「冒険者だからです!」って答えたんだ。それを思い出したら、なんだかちょっと笑えてきちゃって」

 

 ちょっと顔を赤くしながら「あははっ……」と笑うトトリ。そんな様子を見たメルヴィアが、おかしさ半分、感慨深さ半分といった感じの何とも言えない表情をする。

 

「「冒険者だから」ねぇ……言うようになったじゃない。前は魚にも負けそうな子だったのに」

 

 まあ、確かに「冒険者だから」って理由は、封印された強大な存在である『塔の悪魔』を倒しに行った理由にしてはアバウトすぎるっていうか……。そんな事を言ったら、僕なんか「トトリちゃんに誘われたから」とかしか言えないような気もして強くは言えないんだけどね。

 でも、それならピルカさんが言ったっていうような「()()()()」とかのほうが自然というか、納得できると思う。

 

 

……………………。

 

……………?

 

……。

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

「ええぇーーーーっ!?」

 

 

「ひゃわぅっ!? ど、どうしたんですか、マイスさん!?」

 

 僕があげてしまった大声にみんなが驚き、トトリちゃんなんかはビクッと跳び上がって、目をパチクリまん丸にして僕を見て…………って、そんなことよりっ! どうしたも、こうしたも……!!

 

「いや、えっ、ちょ!? 何? どういうこと!?」

 

「落ち着け。そんなに慌てるとはキミらしくない……キミは慌てさせる側だろう」

 

「ステルクさん、そういう話じゃ……と、とにかく落ち着いてくださいっ、マイスさん!」

 

 トトリちゃんがそう言うけど、落ち着くって、そんな場合じゃないというか、どう考えても聞かずにいるわけにはいかない話だから、落ち着くわけにもいかない!

 

 

 

「そんなこと言われたって! だって、その……! 母親の……「母親(ギゼラさん)の仇」ってどういうこと!? 」

 

「「「「「「えっ」」」」」」

 

 僕の言葉を聞いたみんなが一瞬真顔になり……空気がピタッと固まる。

 その様子に、僕はなお混乱してしまい「えっ、えっ」とみんなの顔をキョロキョロ見渡すことしかできなかった。

 

 

 謎の空気の中、一番最初にオズオズと……というか、まるで頭の中で現在進行形でゆっくり整理しながら話しているかのように話し始めたのはトトリちゃん。

 

「ええっと……どういうことって言われても、そのままの意味と言うかー……あれ? 何がどうしてこうなってるの?」

 

 ……そのままの意味って……というか、トトリちゃんも何だか混乱しているというか、こんがらがっているというか、そんな感じが……。

 

 と、ここで「あっ」と声を上げたの人が一人。ロロナだった。

 

「そういえばマイス君、トトリちゃんたちと行った東の大陸(こっち)への冒険の後にあった飲み会で、「お墓は見たけど、聞くタイミングが無くってギゼラさんがどうなったかは知らない」って言ってたっけ……」

 

「ああ……あったな、そんなことも。まさか、私ですらおおよその話は聞いたというのに、まだ知らなかったとは……」

 

 ロロナの話を聞いて何か思い出したのか、ステルクさんも目をつむって眉間にシワを寄せて言った。その二人の話を聞いて、トトリちゃんをはじめとした他のメンバーが「えっ!?」と目を見開いた。

 

 

「……って、ステルクさんは知ってたんですか!?」

 

 僕の驚きに、ステルクさんは短く「まあな」とだけ答えてきた。そして、驚かされてばっかりな僕に、他の人たちも各々口を開きはじめた。

 

「いや、むしろなんで知らないの? 逆に驚きなんだけど……」

 

「オレでも知ってたぜ? なんでマイスは知らねかったんだ?」

 

「『アランヤ村』の人たちの次か同じくらいに知っておくべきだろうあんたが、何で今の今まで……はぁ」

 

 ……ミミちゃんには呆れたようにため息までつかれてしまった……。

 

「す、すみません、マイスさん。わたしが最初に気付かないといけなかったのに……! えっと、また今度、機会を見てお話しますね?」

 

「……うん。お願い」

 

 僕が気を遣うべき相手のトトリちゃんから、ものすごく気を遣われてる。

 なんだか少し泣きたくなってきたかも……。

 

 

 

「それに、ギゼラさんの仇って知ってればもっと色々……効くかわかんないけど、()()()()とかも用意したのに……」

 

「何よ、最終兵器って」

 

「というか、あの火だるまじゃ気がすまないのね……」

 

 ミミちゃんとメルヴィアにツッコミを入れられてしまった……。いつもならそう気にしないんだけど……今日は早く家に帰ってベッドで寝たくなった。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「……僕も知らなかったんだけど、なんだか言い出すには難しい空気だね、これは」

 

「えっ……でも、くまさんは別にいいような……?」

 

 

「だからその呼び方は……まあ、確かにトトリ(あのお嬢さん)のお母さんとやらと僕はほとんど接点も無いし、僕も別に構わないんだけども。…………にしても、キミもなんだかうかない表情(かお)をしているような気がするけど……」

 

「いやぁ、その、『魔法』って前にもどこかで聞いたことがあったような気がして、ずっと引っかかってて……いつだったけ? 確か、マイスくんが言ったんじゃなかった気がするんだけど……?」

 





 かわいそうなマイス君。ついでに異能の天才マー「ク・マ」クブラインさんも。
 そして……ロロナは良くも悪くもウッカリサンだと思います。ここであのことを明かしたら明かしたで複雑になりますしねぇ……。

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