マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 まず一言。また少しの間、音沙汰無くなってしまって申し訳ありません!

 原因は、前に活動報告等でお伝えしたアレと、それ関係で基本的に自業自得によるアレコレゴタゴタ。数日間、家に帰っては寝るだけの生活になってて、身体的にも精神的にも万全とは言い難い状態が続いていました。重要なことなのでもう一度言いますが、自業自得です。
 創作意欲自体は、『トトアト編』の話はもちろんその先の『メルアト』のイベントが『IF』のほうも含め紆余曲折しながらもドンドン構想が湧いてくる上に、別作品のネタまで降りてきてる状態なのですが、上記のように体力と時間の問題で中々駆けていない現状です。


 やらなければいけないこともありますし、体力も時間も有限ですが、その中で自分なりの全力を出し書き、投稿は続けていかせていただきます。
 イライラさせてしまうかと思いますが、よろしければ今後ともお付き合いしていただければ幸いです。



5年目:トトリ「発表祭?」

 

 

 『青の農村』。

 『アーランドの街』からそう遠くない位置にある、その名の通り農業を生業(なりわい)として生きている人たちが中心になってできている村。

 

 『アーランド共和国』の人たちにその名前を知らない人はいないと思う。けど、わたしの想定と異なり、もしかしたら知らない人がいるかもしれない……それでも、本人が知っていないだけで、きっと必ずどこかで関わっているはずだ。()()()()()()()()

 

 生産した作物が最も有名な場所。だけどそれ以外にも、街に住んでいる人や頻繁に出入りする人、行商人さんなんかには、また別の有名な部分がある。

 それは、月に一度行われる『お祭り』。月ごとに別のお祭りが盛大に行われるため、他人を飽きさせず、毎回のように沢山の人が集まる。その影響力は、「お祭りの日には街の店の客が半分以下に激減する」っていう話を聞けばすぐに理解できると思う。

 

 

 そんな『青の農村』の代名詞の一つと言える『お祭り』が、今日開催されるんだけど……今回はどうなるんだろう?

 

 

――――――――――――

 

 

***青の農村***

 

 

「うーん……ここから見える景色はいつも通りだけど……」

 

 わたしは『青の農村』の入り口付近から村全体を見渡してみた。そこから見えるのは、大抵のお祭りで目にする食べ物やお土産ものを扱っている露店が、村の中を通っている道の脇に何軒も出ているいつものお祭りとそう変わらない光景。

 ()()()()()()()()()()()()()()、今日のお祭りが気になっていたわたしはこうして『青の農村』に立ち寄ってみたんだけど……。

 

「これは、やっぱり宣伝の仕方が問題だったんじゃないかなぁ?」

 

 というのも、普段はお祭りの名前とその中でのイベント、その参加条件や開催時間、詳しい内容を書いた広告やチラシを張ったり配ったりしてるんだけど……今回はそのほとんどが()()にされた状態で告知された。

 あえて言うならデカデカと書かれた「重大発表あり」という文字が印象的だったけど、逆に言うと、そんなふんわりとしたことしかわからなかったわけなんだけどね。

 

 そんなふうに宣伝されたのには理由があるのは、さっきも言った通り、わたしはマイスさんからお祭りの内容を聞く機会があったから事前にわかっている。

 

 その理由っていうのが、「サプライズ」っていうのと「混乱になりかねないから」。

 前者のほうはマイスさんが「お楽しみはとっといたほうがいいよね?」という考えを押したかららしく……後者の方はコオルさんが「こんな()()の情報を中途半端に出したら、村に押しかけてくるヤツもいるだろうから」ってことで止めたからで、その二つの意見から、内容を限りなく最小限にした宣伝にしたそうだ。

 ……村長のマイスさんよりもコオルさんのほうがちゃんと考えてる気がするけど……でも、それを含めていつも通りといえばいつも通りなんだよね……。

 

 

 そんなことを考えながらわたしは歩きはじめ、おそらく今回もイベントの中心部になっているだろう『集会場』前の広場へと向かうことにした。

 

 普段よりも道は人通りが多いけど、いつものお祭りの時よりは少ないから、他人にぶつかったりしてしまうことも無くスムーズに進むことができた。

 ……できるのは助かるんだけど、人が少なくっていうのはちょっと心配になってきちゃうなぁ……よく知っているマイスさんが中心となって開催してるわけだし、自分のことでも無いのにどうしても成功・失敗を意識してしまう。まぁ、お客さんが少なくて村に損失が発生したところで、マイスさんならなんとでも出来てしまいそうなんだけどね?

 

 

 

 そこそこの人混みをかき分けて『集会所』前の広場までたどりついたんだけど……わたしの心配とは裏腹に、今日のお祭り用にセッティングされているのだと思うステージがある広場にはかなりの人が集まってて、そこだけはいつものお祭りと比べても劣らないくらいの人の多さだった。

 

「あぁ、よかったー。さすがにイベントをする場所にはちゃんと人があつまってるんだ……って、あれ?」

 

 もうじき始まる()()()()()()()()()()のために集まっているのだろう人たちをなんとなく見渡してたんだけど、その中に見知った姿があって……その人が誰なのか気付き、わたしは驚いてしまう。

 

「め、メルお姉ちゃん!?」

 

「あら、トトリじゃない。奇遇ね……って言っても、もしかしたらとは思ってはいたけど」

 

 わたしが近くまで駆け寄って声をかけると、メルお姉ちゃんはいつもの軽快な笑顔で手をヒラヒラと振って応えてくれた。

 それにしても、メルお姉ちゃん『アランヤ村』にいるって思ってたのに……

 

「メルお姉ちゃん、どうして『青の農村(ここ)』に……って、お祭りだからなんだろうけど……でも、ここまで来るの大変じゃなかった? 言ってくれればわたしが『トラベルゲート』で連れてきてあげたんだけど……」

 

「ありがと。でも、そのあたりは大丈夫よ。マイスに事前に事前に頼んでたから」

 

 マイスさんにって、いつの間に……。

 たぶん、あの時……『塔の悪魔』を倒しに行った後、わたしがピルカおばあさんと話に行っていた間か……それか、合流した後にわたしとマイスさんでお母さんの最後のことやわたしが聞きそびれていた『魔法』のことを話した、そのまた後に……?

 いや、でも、いつに約束をしたとしても……

 

「お祭り目前で忙しいはずなのに、よくマイスさんもいいって言ってくれたね」

 

「そこは正直ダメもとだったから、あたしも驚いたわ」

 

「ダメもとって。そんな風に思ったなら、わざわざマイスさんに頼まなくてわたしに言ってくれたらよかったのに」

 

「あはははっ……。でも、やっぱりマイスとは一回、面と向かって話しておきたかったし、多少無理を言ってでも迎えがてらに時間を作って貰うにはしかたなかったかなーって」

 

 メルお姉ちゃんの言葉を聞いて、わたしは「ん?」と首をかしげる。

 

 

 言ってることが何かおかしかったとか、そういうことはなかった。話の流れから、メルお姉ちゃんがマイスさんに前々から何か用があって会おうと思っていた……ってことはわかった。でも、ただ単純に「メルお姉ちゃんがマイスさんに用事……?」と不思議に感じ疑問に思っってしまった。

 

「メルお姉ちゃんがマイスさんに用事があったなんて、なんだか珍しいね? どうかしたの?」

 

「どうかしたっていうか……まぁ、ちょっとね」

 

 不意にいつものメルお姉ちゃんらしい軽快な笑顔から、少しだけ申し訳なさそうな……でも、誤魔化そうとするような笑い方に変わった。言ってることからしても、あからさまにお茶を濁していて何かを隠そうとしていることはすぐにわかる。

 自分で言うのもなんだけど、そんなふうに「何かありますよー」って感じの反応をされてスルー出来るほど、わたしは我慢強くはない。だから、メルお姉ちゃんにそこのところを問い詰める以外の選択肢はなかった。

 

「むー……何か隠してるでしょ!」

 

「うん」

 

「うんって……えぇ……?」

 

 特に悪びれたりせずに、メルお姉ちゃんは素直に頷いてきた。その素直さに毒気を抜かれたというか、肩透かしを受けたかのような感覚になって、わたしは勢いを削がれてしまう。

 

 でも、やっぱりなんだか納得がいかなくて、メルお姉ちゃんをジッと睨みつける…………けど、メルお姉ちゃんはひるんではくれず、むしろおかしそうにケラケラと笑ってきた。

 

「まぁまぁ、そんな顔しなさんなって! そうねぇ……今言えるのは、あたしが隠してることは()()()()()()()()()()ことのこのお祭りの内容に関係がある…………かもしれないし、無いかもしれないってことくらいかしら?」

 

「またそんなこと言って、また誤魔化そうとしてるよね……」

 

「そんなことないわよ? …………それに、トトリも勘付いててもおかしくないくらい判断材料はあると思うんだけどねぇ?」

 

「材料? えっ、調合の話なの?」

 

「いや、違うわよ?」

 

 あれ? 違った? ……でも、ちょっと間違えたからって「何言ってるの、この子」って呆れ顔しなくても……。

 ……それで、結局何の話だったんだろ?

 

 

 

 わたしが改めて問い詰める……それより前に、周りから「わぁ!!」と歓声が上がった。

 人が多いから、多少ざわついているのが普通だったんだけど、そんな中でいきなり上がった歓声にわたしは驚いてしまい、悲鳴とかは出さなかったけど肩をちょっとだけビクリと震わせてしまった。

 

 何事かと、慌てて周りを見渡してみると……『広場』の中央あたりに設置されているステージの上に、いつの間にかマイスさんが上がっていた。

 

 ってことは、ついに今から今日のお祭りのメインイベント……と言っていいモノなのかは置いといて……例の「重大発表」が始まるみたい。

 わたしとそばにいたメルお姉ちゃんは、さっき歓声をあげた周りの人たちと同じく、ステージの上に立っているマイスさんへとその視線を向けた。

 

 

 『魔法』と『学校』、そのふたつに関する発表。

 それにわたしは期待感を抱きつつも、「もしかして、あまりにも常識外れで受け入れられないんじゃ……」という主に『魔法』に対する不安感を(ぬぐ)えないまま、わたしはその発表を最後まで見届けるために真っ直ぐにステージのほうを見続けるのだった……。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「絵本など物語で描かれた『魔法』。それが今日、夢物語などではなく、実在のものとなります! ……こんな感じに!!」

 

オオォゥー!!

 

「一言で『魔法』と言っても色々あって……日、水、地、風といった属性の他にも…………」

 

オオォゥー!!

 

「そしてこの『魔法』、多少の得意不得意はあっても大抵の人が扱うことが出来ます! ほらっ、コオル、みんな。せーのっ!!」

 

オオォゥー!!

 

「安全面も配慮されてます。人はもちろん、敵対してないモンスターや動植物、建物などにダメージといった影響を与えることは無いです、ご安心を!」

 

オオォゥー!!

 

 

「この『魔法』を……それだけでなく、学問の基礎や『農業』、『鍛冶』、『薬学』、『機械学』、『錬金術』といった様々な知識や技術を学べる場を……『学校』を設立しようと思います!!」

 

オオォゥー!!

 

「子供たちの学び舎となる『学校』ですが、それだけでなく、学習意欲のある人ならだれでも受けられる授業を開くことも計画していて、いろんな人が自分の学びたいことを学べる場となります!」

 

オオォゥー!!

 

「どのような強化があるのか、費用や設備の詳細、校舎の完成、授業の開始……等は、今後、順を追って公開・発表していきますのでお楽しみに!」

 

オオォゥー!!

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 マイスさんによる挨拶から始まって、説明の後に『青の農村』に住んでいる人たちの協力もありながらの実演……そんなことを織り交ぜながらの小一時間の発表だったんだけど…………

 

「あれ?」

 

 拍子抜けというか、アッサリし過ぎている気がした。

 

 もちろん、ステージのある『広場』に集まっている人たちは『魔法』にも『学校』にも驚いているように見えた。

 見えたんだけど……なんていうか、その、取り乱したり、怖がったりすることも無く驚きながらも盛り上がってて、普通に受け入れている感じが……。

 

 いや別に、嫌がったり、『魔法』のことを悪く言って欲しいわけじゃないんだけど……でも、『塔の悪魔』との戦いの時に、戦闘中なのに固まってしまうほど驚いてしまったわたしたちが変だったように思ってしまいそうで……この周りの人たちの反応がなんだか納得いかなかった。

 

 一瞬、頭に「わたしが気付けてないだけで、実は周りの人たちはもの凄く驚いてたり……?」っていう考えがよぎった。

 けど、いちおう周りを見渡して見た時に、隣にいたメルお姉ちゃんと目が合って……その表情から、私だけじゃなくてメルお姉ちゃんもお祭りに来ている人たちの反応に疑問を持っているんだとわかったから、「わたしの気のせい」じゃないんだと確信した。

 

 ……でも、じゃあなんでそんなに驚いてないんだろう?

 一人で考えてもわからないままのような気がするから、わたしはとりあえずメルお姉ちゃんに聞いてみることにした。メルお姉ちゃんも「なんで?」って顔をしてるけど、わからない同士で話してみたら何か思い当たることを思い出したり、きっかけが生まれるかもしれないし……。

 

「ねぇ、トトリ」

 

 ちょっと悩みながら口を開こうとしたところで、わたしよりも先にメルお姉ちゃんがわたしに声をかけてきてくれた。

 

「んーと。なんていうかさ、あたしはもうちょっと混乱したりするものかと思ってたんだけど……みんな普通に楽しそうにしてるっていうか、期待ばっかで不安そうじゃないっていうか」

 

「あっ、だよね。やっぱりメルお姉ちゃんも同じようなこと考えてたんだ……。何か問題が起きてほしいわけじゃないけど、塔で戦ってる時に見て驚いた自分がおかしかったのかなって思えてきちゃうよ……」

 

「そうよねぇ。マイスも喜んでるっていうか()()してるだろうし、それに関してはあたしだって喜ばしいことだと思うし水を差したりする気はないんだけど。でも、なんか納得いかないのよねぇー」

 

 メルお姉ちゃんが少し口をとがらせて言ってることの大半が、さっきわたしが考えてたことと同じで内心ホッとする。

 でも、メルお姉ちゃんも「何故そうなのか」というところはサッパリみたいで、眉間にシワを寄せて首をかしげてた。

 

 

 

「フム。それは(ひとえ)に「経験の差」というものだろう」

 

 ふたりして頭を悩ませてたところに、不意にそんな聞き覚えの無い声がかけられた。

 

 声のしたほうへ目を向けてみると……そこにいたのは、『アランヤ村(うち)』でも『青の農村(ここ)』でも見かけ無いようなカッチリとした服を着て、きれいな装飾がされた杖をついた、鼻下とあごに整った(ひげ)をたくわえたおじさん……おじいさん? だった。

 

 このおじさん、どこかで見たことがある気がするんだけど……?

 

 そう思い、必死に記憶の中から目の前のおじさんのことを思い出そうとして……はたとあることに思い当たった。

 いつだったか、『青の農村(ここ)』で開催された『大漁!!釣り大会』っていうお祭りにわたしがたまたま参加して優勝しちゃった時、二位だったのがこのおじさんだった。

 

 

 思い出したところで、そのおじさんが言ったことをわたしは聞き返してみることにした。

 

「経験の差、ですか?」

 

「そう。ここまでそう短くない付き合いがあるのだ、マイス()と共に『魔法』の実演をしてみせた『青の農村(この村)』の住人はもちろん、何の祭りかわからなくとも来る者や常連は、彼が何かしたところで今更(いまさら)そう驚いたり恐れたりはせんさ」

 

 アゴ髭に手をやってそう言うおじさんに、わたしとメルお姉ちゃんは目を細める。

 

「いやまあ、マイスさんは()()()()だし、言いたいことはわからなくもないんですけど」

 

「だからって、ここまで許容できるっていうのはちょっとね?」

 

 

 

「逆に聞くが、一人で街に出回る作物のその多くを生産し、凶暴だと認識されているモンスターたちと共に暮らし、そのモンスターたちと意思疎通が可能で、農具・調理器具・野菜などで戦い、『カブ』を投げ合うような変な祭をはじめとした様々な祭を開催し、野菜コンテストや釣り大会では一人だけ桁外れな成績を残して「殿堂入り」と言う名の「出場禁止処分」を受ける…………そんな人物に常識を求めることなどできないだろう?」

 

 

 

「「あぁ……」」

 

 そうおじさんに言われて、わたしもメルお姉ちゃんも納得することしかできなかった。

 で、そういう結論にたどり着けば……

 

「常識を求めようにも、彼はそう簡単にはまがらん。それに、彼は色々と飛び抜けたりズレたりしているものの、幸いにも彼のそういった点は基本的には他人の利益にもなるようなことばかりだ。なら受け入れてしまったほうが楽だろう」

 

「そうなりますよね」

 

 そして、そうなったら後は多少驚いたりしても「でも、マイスなら……」って受け入れられる形になって、それが続いていくにつれて、マイスさんの周りの人たちは常識外れのことに対して耐性がついていって…………で、今の……今日の『魔法』への反応みたいに驚きながらも普通に受け入れられるようになった、ってことなんだと思う。

 

「わたしも、これまでの付き合いで慣れてたつもりだったけど、まだまだだったんだなぁ……」

 

「トトリ。コレは「慣れちゃいけない」ってほどじゃないけど、慣れなくっていいことだと思うわよ?」

 

 苦笑いをしながら首を横に振るメルお姉ちゃん。

 まぁ、わたしも慣れるべきだなんて思っては無いんだけど……でも、わたしたちももう膝上(ひざうえ)か腰のあたりまで()かってる気がするんだよなぁ……。

 

 

 

「……ところで、だ。盗み聞ぎのようで悪いが、先程の話からすると君たちはマイス()が『魔法(アレ)』を使って戦っているのを間近で見たことがあるようだが……どうだったかな? できれば感想を聞かせてほしいんだが」

 

 内緒話でもするように、手を口元に持って行きつつ少しだけ顔を近づけてこころなしかさっきまでよりも声を小さくして、おじさんは問いかけけてきた。

 

 どうって聞かれると……

 

「本当に凄くて、とっても不思議でした。威力って意味では……相手が『塔の悪魔(相手)』だったから最後の以外はパッとしない感じでしたけど、それでも下から横から不意打ちありで臨機応変に戦えてたと思います」

 

「んー、あたしも(おおむ)ねトトリと同じ感じかしら。あえて付け足すなら、あたしらが見た時はいろんなのつかってたけど、『魔法』にも『属性』ってのがあるらしいから本来は相手の弱点に合わせて戦う(使う)んだと思うわ。そう出来てれば、強い奴相手でも上手く立ち回れるんじゃないかしら?」

 

 メルお姉ちゃんの言ったことを聞いて、わたしも納得して頷いた。というのも、わたしたち『錬金術士』が使う爆弾等の攻撃用アイテムにも『属性』があって、それを敵の弱点を見極めて使うのが『錬金術士』の戦闘のキモで……それと同じだと思うとあの多彩な『魔法』の意味がよくわかったからだ。

 

 

「フム、なるほど。『魔法』は中々のもののようだな。……しかし、大抵誰でも使えるようになるというのは、利点でもあるが同時に気がかりな点でもある。そのための先程見せた安全性なのだろうが……やはり()()伝いの情報だけでなく、一度マイス()から直接話を聞いてみるべきだろうな……」

 

 わたしたちが言った内容で満足してもらえたかはわからないけど、おじさんが何か図呟きながらも一人頷いているところをみると、とりあえずは満足してもらえた……のかな?

 

「ん、時間を取らせてしまい、すまない。そしてありがとう。私が言うのもおかしいかもしれないが、今日はこのお祭りを楽しんでいってほしい」

 

「あっ、はい! おじさんも楽しんでいってください」

 

「ああ、そうさせてもらおう」

 

 そう言って「では」と言い残したおじさんは、発表が終わってまだ余韻が冷めやらない『広場』の人混みの中に消えていった……。

 

 

 

 

 

「……で、トトリ? あの人、誰だったの? 知り合い?」

 

「知り合いと言えば知り合いなんだけどー……実はわたしが話したのは初めてなんだ。前に釣り大会の時に話してるのを見かけたから、ロロナ先生やステルクさんのお友達か何かだと思うんだけど……?」

 




 『ロロナのアトリエ』時代も大概だったけど、あの人の知名度が低すぎる件について。


 そして、途中にしれっとメルヴィアの口から出てきたあの事については……詳しくは次のお話で詳しく触れることとなる予定です。「大きく」ではありませんが、今後の展開のきっかけの一つになるかと……。

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