マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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※あとがきにてご報告というか、お知らせがあります※

 毎度おなじみ……になってしまっている、遅刻魔「小実」でございます。
 またもや更新遅れてしまい申し訳ありません。
 人は何故睡眠をとらなければいけないのでしょう? 睡眠時間がゼロになれば、好きに使える時間が増えるというのに……でも確実に体を壊しちゃいますね、はい。


 何はともあれ、『リディー&スールのアトリエ』新情報来ましたね!!

 フィリスちゃん、うおー! イルちゃん、ぐわー!
 なんというか、顔はあいかわらずだけどそれ以外はお姉さんになった感じのフィリスは、『フィリスのアトリエ』でいろんな服装を見てきたはずなのに衝撃的な新鮮さを感じました。イルメリアは……まさかの主人公の先生枠らしいという……あと、身長は育って無さそうなのに、一部だけあのフィリスに負けず劣らずに見えるくらい成長してそうっていう……。なんて言えばいいんでしょうね? この感覚。
 とにかく、二人そろって立派な錬金術士になっているようです。
 ……こうキャラに期待を感じ出すと、ストーリーのほうがなおのこと気になってきますねぇ……。

 リディー&スールのお父さん? 美人店主の店に通って怒られる父親や、どこぞの見えるけど見えない父親、王座に座ってるだけに思えるオタンコナスな父親……彼らよりもストーリーで活躍しそうなダメ親父じゃないかなーっと。……前述の三親父も良いキャラしてますし、活躍(?)の場もちゃんとあるんですけどね?


 そして、今作の、今回のお話は……個別ルート【*5*】!
 サブタイトルが適当になっているのは、このあたりから全ルート共通で使えそうなサブタイトルが思い浮かばなくなったからです、ご了承ください。

 今回は、一言で言えば……急展開!



ロロナ【*5-1*】

【*5-1*】

 

 

 

 

 

***青の農村***

 

 

 

 

 見渡す先に見えるのは点在する建物と、その周囲にある畑。道を行きかうのは、村の住人と、荷物を背負った行商人、あとは青い布を巻いたモンスターたち。

 『青の農村』のいつもの風景に目をやりながら、わたしは一度大きく深呼吸をして心を落ちつかせる。

 

「来ちゃった……で、でも別にいいよねっ! 用があるんだから!」

 

 そうっ! 今日『青の農村』に来たのは、学校で使う『錬金術』の教科書の作製の集まりのため! じゃなかったりする。……わたしのところに大きな仕事が入ったり、それに合わせてトトリちゃんが『アランヤ村』のほうに帰ったりして、「他にもやらなきゃいけないこともあるし、そこまで急がなくてもいいから」ってことで、『錬金術』の教科書作りは一旦ストップしてる。

 

「けど、ちょっと気になるところがあるから相談したい、ってことで、会いに行っても問題無いよねっ?」

 

 そういう建前でこうしてここまで来たけど……だ、大丈夫だよね?

 

 わたしがここに来た本当の理由は、「マイスが結婚する」っていうあの噂のことを確かめるため。

 

 くーちゃんやイクセくんはああ言ってたけど、あの後、アトリエに帰ってからも「噂は嘘っていうのは本当なのかな……?」って心配になってモヤモヤした。もちろん、くーちゃんやイクセくんのことを疑うわけじゃないんだけど……でも、やっぱり気になって、どうしてもマイス君本人に確認を取りたくなったのだ。

 

 ……で、「またこの間みたいに、いつも通りに『パイ』を持って来てくれたりしないかなぁ。それで他愛のないお話をしてー……」って待ってみて一日。

 「学校の校舎のこととか他にもいろんな事しないといけないらしいし、忙しいかもしれないから、わたしの方から何か持っていってあげたほうがいいかな?」って思いながらも、なんだか一歩が踏み出せなくて悩んで一日。

 「そういえば、マイス君ってどんな女の子が好きなんだろう?」って途中考えながら作っていたせいか、ちょっと混ぜ過ぎて調合していた『パイ』を爆発させちゃって一日。

 

 ……そんなことがあって、ようやく今日、決心とさしいれの『ベリーパイ』が完成し、こうして『青の農村』まで来ることができたのだ!

 

 

 

「ここまで来たんだから、いまさら引き返すわけにはいかないよ、わたし! それに、アレは嘘なわけだし、あくまでそれの最終確認っていうか、そんな感じのをするだけで、緊張する必要は……!」

 

「いや……こんなとこにつっ立って、ひとりで何ブツブツ言ってるんだよ、ねーちゃん?」

 

「わひゃぁ!? ……って、コオル君?」

 

 いきなりかけられた声に驚いて跳び上がってしまう。その驚きで高鳴ったドキドキを抑えつつ、わたしがその声のしたほうへと目を向けると……『青の農村』を中心に活動している行商人のコオル君がいた。

 わたしがアトリエを始めてからの付き合いで、当時の名残で未だにわたしのことを「ねーちゃん」と呼んでいるコオル君。本人も「行商人」って名乗ってはいるけど、最近は昔みたいに自分の足であちこち行っている様子は無く、村での交渉や売買が主な仕事になってるみたいで、普通の商人みたいになってたりする。……陰では『村長補佐』とか『村長代理』とか言われてたりもするみたい。

 

 そのコオル君が、わたしを見ながら呆れたようにため息をついている。……そ、そんなにわたし変だったかな?

 

「んで、どうしたんだ? 今日は学校のアレは無いはずだし、買い物にでも来たのか?」

 

「えっと、そういうわけじゃなくってね。ちょっとマイス君に用があって……」

 

 わたしがそう言うと、何故かコオル君は明後日のほうを見て「あー……」ってなんだか声をもらしながら、髪をかいた。

 

「んっとな……今日はアイツ色々あってさ、用があるなら明日とかにした方がいいぜ?」

 

「あっ、やっぱり学校のことで忙しかったりするの?」

 

「そういうわけじゃないんだけどな……面倒事っつーか、なんて言うか……」

 

 なんだから煮え切らない感じって言うか、何なのか具体的には言ってくれないコオル君。

 

 ……? どうしたんだろう?

 もう次のお祭りの準備でも始まってるのかな? それなら、内容を秘密にするために隠したりしてもおかしくなさそうだけど……。

 

 

 不思議に思いながら、なんとなく遠目に見えるマイス君の家のほうへと目を向けてみて……

 

「あれ?」

 

 遠目に見えるマイス君の家の玄関から、マイス君と……()()()()()()()()()()()()が出てきた。

 『青の農村』の人ならわたしも大体知ってるし、違うと思う。じゃあ、作物とかの取引をしに来た人? ……それにしては、服とかが煌びやか(キラキラしてる)ような気がして、商人さんって感じでもない気がする。

 

 そんな見たことの無い女の人は笑顔を浮かべながらマイス君に手を引かれて、わたしのいるほうとは逆方向、『集会場』のある広場の方へと歩いていっていた。

 

 その遠目に見える後姿を指差して、コオル君に聞いてみた。

 

「ねぇ、コオル君。あの人初めて見るんだけど……『青の農村(ここ)』の人?」

 

 そっちに目をやったコオル君は「ああ」と言ってから続けて……

 

 

 

 

 

「あれはマイスの()()()()()だよ」

 

 

 

 

 

「えっ…………みあい、あいて?」

 

「ああ。確か、どっかの『貴族』の御令嬢らしいぜ? つっても、話を聞いたのはマイス本人で俺も詳しいことは知らねぇんだけど……まぁ、大方、こないだの噂で色々あった関係だと思うぜ? なんでも、国のほうから話が来たみたいで……って、ねーちゃん、聞いてるか?」

 

 

 

――――――――――――

 

***職人通り***

 

 

 

 

「……あ、あれ?」

 

 気付けば、目の前にはアトリエの玄関が。アトリエの外壁を照らしているのは夕日で、空は赤く、端のほうは黒くなりはじめていた。

 昼間なら人も行きかっている『職人通り』。でも、あたりを見渡してみたけど、時間の問題か人通りも少なくなり始めているみたいで、誰も歩いていない。

 

 

 わたし、いつの間に帰ってきたんだろう?

 えっと、確かあの後……歩いて帰ってきたっけ? それとも『トラベルゲート』で? 経っている時間からして歩きっぽいけど……うーん、憶えてない。

 

 あと、()()は……

 

「夢……とか、そういうわけじゃないよね……」

 

 それはなんとなくわかってる。それに、遠目で見ただけなのに焼き付いて離れないくらい憶えてる。

 マイス君に笑顔で手を引かれていた女の人。その手を引くマイス君も笑顔だった。

 

「……とりあえず、中に入ろ」

 

 不意に吹いた、冷たくなり始めた風に身を震わせながら、わたしはアトリエのカギをあけて中へと入った……。

 

 

 

――――――――――――

 

***ロロナのアトリエ***

 

 

 

 夕日の差し込む窓のそば。ソファーに何をするわけでも無く座る。そんなわたしの隣には、『青の農村』まで持って行ってたカゴが……。

 

「『ベリーパイ』……美味しくできたはずなのになぁ……」

 

 カゴの中には、さしいれ用に作ってた『ベリーパイ』が出ていった時と同じ数だけそっくりそのまま残っていた。

 

「もったいないし、晩ゴハン代わりに食べちゃお……」

 

 一緒に用意していたお皿に『ベリーパイ』を一ピース取り出し、ソファーから立ち上がって『香茶』も自分の分だけ用意してから戻って来て座る。

 

 

「それじゃあ……いただきまーす」

 

 一口、『ベリーパイ』に口をつけてみる。

 うん、おいしい。『香茶』にもよくあってる。やっぱり今回の『ベリーパイ』は過去最高の出来な気がする……するんだけど……。

 

でも(ふぇぼ)なんでだろ(ふぁんふぇだお)……」

 

 味も、品質も申し分無いはず…………なのに、何故かわたしの頭の中に浮かぶのは、口の中と目の前にある『ベリーパイ』じゃない、全く別の『ベリーパイ』。

 

 『アーランド共和国』がまだ『アーランド王国』だったころ。まだまだ一人前とは言えないわたしとホムちゃんで忙しくしてた時に、マイス君が手伝いに来てくれたあの日。依頼の調合ついでに追加で三人分作った『ベリーパイ』。

 後に依頼主さんからは「最高の『ベリーパイ』だった!」って大好評をもらったんだけど、調合後のティータイムに食べたほむちゃんには「これより美味しい『ベリーパイ』をホムは知ってます」ってダメだしされて、それにショックを受けてるとマイス君が慰めてくれて……。

 

 口の中にあった『ベリーパイ』を飲み込み、「ふぅ……」と小さく息をつく。

 

「こっちの『ベリーパイ』のほうが上手く出来てるはずなのに、なんであの時の『ベリーパイ』が食べたいって思っちゃうんだろ……」

 

 なんで? わからない。わからないけど……なんだか、自分の手元にある『ベリーパイ』にもう一口、口をつける気にはなれなかった。

 

 

 

 

「どうしたんだい、ロロナ? そんな、涙なんて流しちゃって」

 

「ひゃぃ!?」

 

 不意に耳元で聞こえてきた声に跳び上がってしまいそうになり……手元にあった『ベリーパイ』と『香茶』に気がついて、それをなんとか抑え込んだ。……『香茶』のほうはちょっと跳ねちゃったけど……。

 

 そして、声の主を探して目をやると……

 

「って、タントさん!? なななっ、なんでいきなり……!? ちゃんとノックして入ってきてください!」

 

「したよ? けど、返事がなくてさ。「留守かな?」って思ったんだけど、ドアは開いててね、気になって入ってみたんだけど……まさか、ひとり黄昏(たそがれ)てるロロナが泣いてるなんて思わなかったよ」

 

「な、泣いてなんかいません! これは……そう! この『ベリーパイ』が美味し過ぎて感動しちゃったから涙が出ちゃっただけです!」

 

 タントさんに「それって、やっぱり泣いてるんじゃ」ってツッコまれたけど、そんなのよりもなんでかはわからないけど「誤魔化さないと!」って思ったわたしは、そう言って手元の『ベリーパイ』を口に詰め込んだ。美味しい、美味しいんだけど……やっぱり何かが違う気がする。

 

 

それで(しょふぇで)? モゴモゴ…… タントさんは(ふぁんとぅふぁんふぁ)こんな時間に何の用ですか(こふはじふぁんにのんのふぉうでぃふふぁ)調合の依頼なら(ひょーほーのんらんはふぁ)今なら絶対に(いふぁふぁらへっはいい)大爆発を起こせる(ふぁいだふはふおおふぉふぇう)自信がありますけど(ふぃふぃんのはひはふふぇほ)? ングッ……」

 

「いや、別に依頼ってわけじゃないんだけどね?」

 

 ちょっとだけ苦笑いをしてたタントさんの顔が、ふと優しい微笑みに変わり……その右手に持っている()()を前に出してわたしに見せてきた。

 

 

「ちょっと仕事の都合で良いお酒が手に入ってさ。一人で飲むのもあれだし、よかったら一緒にどうかなって思って……」

 

 

「……『ベリーパイ』にあうお酒ならいいですよ」

 

「あーうん、それはどうだろう?」

 

 ……なんでだろう? また苦笑いされた……。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「失礼する。以前に出してもらった報告書と品物の件で少々……なんだ、この状況は……」

 

 所用で『ロロナのアトリエ』に踏み込んだステルクは、アトリエ内の様子を見て眉間にシワを寄せた。

 というのも……

 

 

 

「だからですね! マイス君が、女の子に興味を持ったり「結婚したいー!」って思ったりするのは男の子だから仕方ない事だっていうのはわかってるんですよ!? 特に、くーちゃんたちも言ってましたけど、永遠の青少年って感じでももういい歳ですし、結婚の事を考えるのもいいと思うんです……でもっ! それをなんでわたしに相談しないで、お見合いなんてするんですかー!!」

 

「ああ、うん、そうだねー」

 

「そもそも、初めて会う貴族の子なんかじゃダメですよ! マイス君、良い子だから騙されちゃいますよ!! それにっ! 結婚なら、昔っからマイス君と仲が良いりおちゃんとかフィリーちゃんとか……『貴族』がいいなら、あんな子よりくーちゃんのほうが百倍カワイイじゃないですか! そこから間違えてます!! その後も、相談してくれれば、付き合うきっかけ作りとか、いい雰囲気作りとか、デートプランとか、告白の練習とかいっぱい手伝ってあげるのにー!!」

 

「はははっ、その通りだね。……おかしいなぁ? 予想してたのとかなり違うんだけど……」

 

「タントさん! 聞いてますか!?」

 

「ああ、はいはい。聞いてますよーっと」

 

 

 明らかに酔っぱらっていて普段より二割増しの音量で喋るロロナと、そのロロナに絡まれて心なしかげんなりしているタント……もといトリスタン。

 

 さすがのステルクも、これはメンドクサイことだとすぐに理解するが……放置することもできず、また、ロロナ(あっち)がこちらに気付いたこともわかったので、一人諦めたようにため息を吐いた。

 

「あーっ! ステルクさーん!! いいところにー、一緒に飲みましょう! のんじゃいましょう!!」

 

「……断る理由は無いが、何故酒と一緒にパイを……とてもではないが、良い組み合わせとは思えないのだが……」

 

「なんですか……わたしの『ベリーパイ』が飲めないって言うんですかー!?」

 

「パイは飲み物ではないだろう……」

 

 事の経緯はともかく、これは重傷だ。そう判断したステルクは今後どうするか頭を悩ませつつ改めて大きなため息を吐いたのだった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初は良いタイミングに会えたと思ったけど……ここで、よりにもよってコイツが来るなんて……運が良いのか、悪いのか…………」

 




 なにしてるんだ、マイス君。
【*4*】でも大概急展開だったのに、今回はそれ以上……。作者なのに、メタァ……な意味も含めて色々と心配です。


 そして!
 お知らせですが、誠に勝手ながら、少しの間……明確に言うと『IF』のほうが全て【*4*】に行くまでの間、こちらの更新をちょっとだけお休みさせていた抱きたいと思います。
 理由として、時間の問題以上に、「各ルートの時間進行と共通ルートの整合性の整理が追い付かないから」というのが第一に挙げられます。あと、本編である『ロロナルート』だけが圧倒的に先に進んでしまった場合、共通ルートのクライマックスに続く一部のお話が他のルートにおいても大きな影響が出てしまうため……って詳しく説明したいんですけど、重大なネタバレになってしまうため、控えます。
 とにかく、本編『ロロナルート』がクライマックスに差し掛かる際の『IF』との差を1~2程度にしておきたいので、今、少しだけ調整のためにお休みをさせていただきたいのです。

 具体的には、次回の本編の投稿は10/15を予定しています。
 今回の後編とも言える【*6*】ですので、今しばらくお待ちください……。

 『IF』の次回の更新は10/2予定です。

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