すみませんでした!!
連絡無し、活動報告も無し、以前色々言っていた自分は何処へ行ってしまったのでしょうか。
自分自身の、身内の、職場の、周りの、様々な事情が重なり……ほんともう、仕事も、生活も、それ以外も、正直いっぱいいっぱいです。
それでも、こうやってキーボードをカチカチしている時間が一番好きなんですが……いかんせん、その時間もほとんど取れず、移動時間などといった本当に合間合間にしか書けていません。身から出た錆な部分もありますが……家に帰って疲れ果てて寝るだけっていう生活が実際に訪れるとは思いも…………
ようやく来たお休みでこうして書き上げたところです。
……と、書いていたらきりがないので、愚痴も含めここまでにしておきます。
今回は、まさかの三連続で、【*5-3*】となりました。
そして、書きたい事、書いておくべきことを書いていたら、とてつもなく長くなってしまいました。しかも、誰かの視点ってわけでもないので、淡々とし過ぎているという……場面転換が多すぎるのが悪いんです、そんな構想を組んだ作者が悪いんです。
途中、愚痴っぽくなってしまいましたが「お話を考えて書いていること自体はすっごく楽しんでます!」……という報告でした。
こんな読者の皆様をイライラさせてしまう小実ですが、そんな作者の『マイスのファーム』にこれからもお付き合いいただければ幸いです。……お暇なときにでもどうぞ……。
【*5-3*】
***サンライズ食堂***
「聞こえてきてる声からして、今日もコッチにいるみたいだけど……さぁて、今日はどうなってるかしらねー?」
日がほとんど沈みかけた街。
まるで、朝起きて窓にかかっているカーテンを開け、空模様を確認するかのような調子で『サンライズ食堂』の扉を開けて入ったのは、仕事を終えて来た『冒険者ギルド』の受付嬢の一人、クーデリアだった。
そんな彼女が目にした光景は……
「こ
「そう言いながら、自分が飲んでるじゃねーか」
「
「
ここ最近、『サンライズ食堂』に入り浸っていることが多くなった……今日の昼ごろにも飲んでて、一度寝落ちしてしまった後、また起きて飲みだしたロロナと、その酔払ったロロナを少し面倒くさそうな表情をしつつも対応をするイクセルの姿だった。
ロロナ以外にも一応客がいるようだが……
「
「んなこと俺に聞くなよ、オイッ。つーか、ついでのようにこの手の話題で
「……まぁ、ここ最近はこんな感じだし……でもねぇ……」
「マイスが結婚する」という噂と、その後発覚したという「マイスがお見合い」という出来事から、色々と変になってしまったロロナを見たクーデリアは、今回が初めてでは無いものの「どうしてこうなった」と思い…………それと同時に「まぁ、これはこれでカワイイんだけど」とも思っていた。
「……っと。いけない、いけない。今日はやる事ちゃんとやらなきゃね。いい加減、ロロナにも真っ当な生活に戻って欲しいし」
そう独り言を呟きながら、クーデリアはロロナの座っているカウンター席へと近づいて行くのであった……。
「今日も随分と飲んでるみたいね、ロロナ」
「ん~? あーっ、くーちゃん!」
のろ~っとしたゆっくりな動きで首を動かし、左隣へと来た人物に目をやり……それが誰なのか理解してから間の抜けた声でそう言ったロロナ。
クーデリアは呆れた顔をしつつもどこか嬉しそうにし、ロロナから特に了承を得たりすることも無く「よっ……と」と、軽く飛び乗るような感じで隣の席についた。
「いらっしゃ~い。くーちゃんは、今日は何飲んでくー?」
「あんたは店員か。……っと、今日はお酒は遠慮しとくわ。この後にも、ちょっとした用事もあるから」
「えー? そーなのー?」
クーデリアの言葉に、ロロナは心底残念そうにした後、口をとがらせて「ぶ~、ぶ~」とひとりでブーイングをしだす。
そんなロロナを見て、短くため息をついたクーデリアは「……で?」とロロナに向かって疑問を投げかける。
「それで? いつまでこんなことしてるのよ?」
「…………マイス君が謝ってくれるまで」
「いや、あいつからしてみれば、何が何だかわかんないと思うわよ?」
「そーだよねー。アトリエにも「
そう言ったロロナは、グラスに入っていたお酒……と称して出された『ブドウジュース』をそうとは知らずに一気に飲み乾してから、頬をぷくーっと膨らませた。
クーデリアのほうはといえば、カウンター奥にいるイクセルに視線で「そうなの?」と問いかけていた。
頷くイクセルを見て「ここ最近アトリエにも『サンライズ食堂』にも来ていない」というのは事実らしい。が、クーデリアは『サンライズ食堂』は少なからずマイスと取引をしていることを知っているので、全く関わりが無いというのはおかしいと思ったのだが……。
クーデリアは「それは、今聞いても意味がないのかしらね?」と一旦思考から追いやることにした。もし、そのことでなんとかできるなら、ロロナに居座られて一番被害を被っているであろうイクセルが真っ先に何かしているはずで……そんな様子が無いということは、
だが、今までの情報で、クーデリアは自分がこれからどういう風に話の方向を持っていくかを、すぐに決めることができた。
そして、そのまま……考えた通りの道筋で話が進むようにと、ロロナとの会話の舵を切るのだった。
「あー、そのことなんだけどね……どうやら、ロロナが思ってるのとは随分状況が違うらしいわよ?」
「違うって、何が?」
「「お見合い相手との結婚話は破談に終わった」、あと「忙しいのはただ単純に『学校』関連のことが沢山あり過ぎるから」って話よ」
「……ふーん」
クーデリアの口から簡潔に述べられた話に、ロロナは何とも言えない返事しか返さなかった。……というのも、クーデリアの言っていることを素直に受け止められなかったからだ。
「忙しい」というほうの話はまだわかる。ロロナと……『アランヤ村』に帰省しているトトリが手伝っている『錬金術』関連は、元々マイスが大部分を準備していたことや、ロロナとトトリという強力な協力者がいるため進行具合は良い。……のだが、他は別だ。トトリがいない間は『錬金術』関係を一旦止めて他に注力するというぐらいには差があり、そこまでヒマがないというのも頷けなくも無い。
が、「お見合い相手」の話については、ロロナはほとんど信じられなかった。互いに初対面であろう相手に対してあそこまで仲が良さそうにしているマイスとその見合い相手……そんな姿を他でもない自分自身の目で見たロロナには「あれは絶対話が良い方にまとまるに決まっている」という考えがどうしても離れそうになかったのだ。
幼馴染として長年の付き合いがあるクーデリアには、色々と表情に出やすいロロナの考えていることくらい、手に取るようにわかるのだろう。納得してない様子のロロナを見てカウンターで頬杖をつき、ジトーっとした視線をロロナの方へと向けた。
「何? あたしの言うことが信用できないってわけ?」
「そういうわけじゃないけど……でも…………」
「はぁー……まぁ、今まで「こうだ!」って思ってたことを一瞬でひっくり返すっていうのは難しいかもしれないわ。でも、本人の口から……マイスの口から聞けたら、嫌でも納得できるでしょう?」
そう言われたロロナは……再び頬を膨らませた。
酔いが回ってきているロロナにでもわかる。マイスがこの場にいないことを考えると……クーデリアはロロナに「マイスに会って直接聞いてこい」と遠回しに言っているのだ。
結果が
が、クーデリアもそこをわかっていなくてこんなことを言っているわけではない。ロロナという人間をわかった上で……言葉でチョイチョイ突いてくる。
「ロロナとマイスって、ここ最近全然会えてないのねー。……そういえば前に、トトリがマイスを避けて、まともに顔を合わせなかった時があったわよね。ロロナはトトリにかかりっきりでロロナの方もマイスに会えてなかったけど……あの時のマイスってば、ロロナに会えないことでもかなりショック受けてて凹んでたわよねー?」
「…………うっ」
「まぁ? あの時はトトリから悲鳴上げられたり避けられたりして、元々弱ってたっていうのもあるんだろうけどー…………あー。でも、今は毎日のように仕事に追われる日々よね? 流石のマイスでも何日も連続で働き詰めだと、精神的にクルものがあるんじゃ……じゃあ、今も弱ってるのかしらね? だとすると……?」
「……うー」
「アトリエにも『サンライズ食堂』にも、ついでに言うと『冒険者ギルド』にも顔を出しに来れてなくって、街に来れず、みんなに会えずに一日中働いて……で、気付いたら日はとっくに暮れてて真夜中で……あとは寝るだけ。きっと、お酒を飲んで喋ったりはしゃいだりするヒマも無いんでしょうねー?」
「うー……うー!」
「今頃、何してるのかしらー? 夕食で使った食器を片付けて、日課の日記で仕事のことだけを書いて、戸締まりを確認して、ベッドに入って……「ああ、昨日と同じことをしただけだったなぁ……」なんて考えながら、独り寂しく……でも、マイスのことだから「みんなのためにも頑張らないと!」って次の日も体に鞭打って――」
「う~!! そんな無茶しちゃダメー! いっつも自分だけでできるからって、一人で何とかしようとしちゃって……もう怒った! わたしがちゃんとビシッと言ってあげないと!!」
そう言うと、ロロナは勢い良く立ち上がり店の外へと飛び出して行った。
今の話からすぐさま飛び出していくまでの流れ……アルコールが回っているため全速力は出せていない様子だが……少なくとも
飛び出して行くロロナの背中を見送ったクーデリアとイクセル、そして居合わせた客たち。
その中のイクセルは、「料金……は、
「なぁ、今ので良かったのか? なんか途中から話がすり替わって……お見合い相手のことなんか、
「別にいいのよ。今した話が、頭の片隅にでもあればどうにでもなると思うわ……というか、最悪ロロナをマイスに会わせるだけで解決するだろうっていう話だったし」
それに違和感を感じたイクセルは首をかしげた。
「……もしかして、今回の話、
「んなわけないわよ。とはいえ、人から聞いた話であたしが直接確かめたわけじゃないけど。でも「見合い相手」の話と「『学校』のことで忙しい」っていうのは本当みたいよ? それより後は、ロロナをマイスのところに行かせるための
「オイオイ、でまかせかよ。それと、人から聞いたって……ああっ、もしかしてエスティさんか?
「違うわよ?」
昼間に来た
「じゃあ誰が?」とイクセルが言うよりも先に、クーデリアがそのことについて口にする。
「どこぞの元騎士よ、「手伝ってくれ」って。ロロナをどうにかするのはあたしとしても悪いことじゃなかったし、それでこうして伝えて、マイスのところに行かせたのよ」
「ステルクさんが? いやまあ確かに、ロロナ様子を見に来たりして気にしてる感じはあったけど……。んで、その本人じゃなくて何でお前が? ステルクさんは何してんだよ?」
「さぁ? あいつが何考えてるかとか、そこまではあたしも聞いてないけど……今回の
「黒幕?」と、話についていけずに首をかしげるイクセルをよそに、クーデリアは席から立ち上がる。
「さてっと。送り出したけど、色々心配だし後を追ってみようかしらね……
そう言って店内のとあるテーブルに目を向けるクーデリア。そのテーブルについている人物……酔払っているロロナをハラハラとして見ていた二人の客……似合わない帽子とローブを纏っている
「え、ええっと……クーデリア先輩? いつから気づいてたんですかぁ……?」
「いつからって、最初からよ。そんな「気にしてください」っていう変装してれば目はいくし、それに……二人して膝の上にそんな人形抱えてれば、ねぇ?」
クーデリアの言う通り、フィリーとリオネラの膝の上にはそれぞれアラーニャとホロホロが抱えられている。それで気付かない方が難しいかもしれない。
……が。
「ロロナは全く気づいてなかったみたいだけど」
「あはははっ……ま、まあロロナちゃんは酔払ってたし、マイスくんのことでいっぱいいっぱいだったみたいだから仕方ないような……?」
ちょっと苦笑いを浮かべたリオネラがそう言い、クーデリアも小さく頷いて「よねー」と声を漏らす。……と、それとほぼ同時に、納得したような顔をする。
「あんたらはロロナの事……というか、ロロナがマイスのことどう思ってるのか気になって、こんなことしてたんでしょ? まっ、はたから見ても酔払っているロロナは
「「ぎくっ!?」」
「本人たちに直接聞けないあたり、あいかわらず引っ込み思案というか、へたれてるっていうか……」
「「う、うう……」」
二人して自覚があるのか、クーデリアに言われたことがグサリと来ているフィリーとリオネラ。
ちょっと凹んだ様子の二人をチラリと見ながらも、クーデリアは自分が言いたいことをサラッと伝える。
「……で? もう一回聞くけど、あんたたちはどうすんの? ロロナとマイスのことが気になるなら、追いかけた方が良いし……それに、長年
「……先輩はそれでいいんですか?」
クーデリアの言わんとすることを理解したフィリーが、逆に問いかけた。リオネラもフィリーと一緒にクーデリアの顔をジッと見つめている。その視線は何をうったえかけているのだろうか……?
視線を浴びながらも、クーデリアは
「いいも何も、本人たちがそれがいいって言うなら、あたしは何も言わないわよ。……それに、どこの馬の骨とも知れない奴ならまだしもマイスなら、ね」
「そう、ですか……」
何とも言えない顔で、どう思っているのかわからない相槌を打つリオネラ。
そんな様子を見て、ため息をついた後……クーデリアは『サンライズ食堂』を後にするのだった……。
―――――――――――――――
その少し前のこと……
―――――――――――――――
***職人通り***
「……って、ことがあってですね……」
「ほぉ。私のほうでも「お見合い」については噂程度で聞いてはいたが……まさか「国から」という話だったとは……」
「マイス君のほうから話を聞こうと思って行ってみたんですが……タイミングが悪くて、学校の事と今月のお祭りの準備とが重なっちゃって村全体が大忙しみたいで……」
「聞けそうにも無かった……と」
アトリエの横……階段を下った先の井戸のあるスペースで情報交換をしているのは、エスティとジオ。二人とも国の上層部に関係する人物なのだから「国の施設の中で話せばいいのでは?」と思うところだが……ここ数年間、街の外で活動してばかりでその最中にする情報交換が道端で、ということもあってか、街でもこうしてフラッと道端で話すことが多くなっていた。
ジオはその整った
「国の運営に関わっている上層部のほうで確認を取ってみればいいのかもしれんが……見合い話だとという事を考えると、その相手である『貴族』を特定して調べた方が早い気がするなぁ」
「それもそうですね……。
そう言って頷き合うジオとエスティ……だったのだが、不意に二人の耳に別の声が聞こえてきた。
それはすぐそばというわけではなく……どうやら、階段を上がったほう……アトリエの前のあたりだろうか? 二人は静かにして、その声に耳をかたむけるのであった……。
――――――――――――
「
アトリエの前でそう呟いたのは、国の大臣を務めているトリスタン。ここ最近、いつもと調子が違うロロナを気遣っている人の一人である。
と、『サンライズ食堂』のほうへと向かおうとするトリスタンだったが、そちらから近づいてくる影が一つ。トリスタンはそれに気づき……暗がりの中でうっすらと見えてきた顔が見知ったものである事を理解し……「うげっ」と嫌そうな顔をした。
しかし、特に何をするわけでもなく、通り過ぎようとしたものの……その人物はトリスタンの前に立ちはだかるようにして立ち止まり、トリスタンも立ち止まらざるを得なくなった。
「何? 僕はあんたに用は無いんだけど?」
「こちらもわざわざ話す気は無かったんだが……一応、言っておくべきだろうと思ったからな」
不機嫌さを隠そうともせずに言うトリスタンに対して、相手は……
「手短に済ませてくれないかな? どっかの自称で仕事してる人とは違って、こっちは国勤めの仕事がやっと終わったんだ。時間を無駄にはしたくないんだよ」
「……その立場を上手く使ったようだな。
ステルクの言葉を聞いて、トリスタンは一瞬
「へぇ、わざわざ調べたのかな? それはどうもお疲れ様です……で? 何かな? 別に何か悪い事をしたってわけじゃないだろう?
「……まぁ、喜んではいたな。だが、お前の思った通りには行かなかったようだが?」
調べた時にその貴族の
「そうだった? まぁ別にそれでも構わないけど。最悪、彼を足止め出来ればいいだけだし」
「やはり、目的はあくまで
「そこにすぐ気づくあたり……そういう点では、あんたもコッチ側じゃないの? だから、わざわざ調べたりしてまで、邪魔してこないと考えてたんだけど……というか、僕以上に二人のことを間近で見る機会の多いあんたなら、僕以上に思うところはあったんじゃないかな? 僕の勘違いだったなら、それはそれでライバルがいないわけだし、僕は嬉しいんだけど」
そのトリスタンの問いに、ステルクは何を思ったのか何も言わなかった。
が、数秒間を空けてから静かに口を開いたのだった。
「……私がこうして動いているのは、彼女のあんな姿は見てられんかったからだ。そして……それを解消するには、原因である「見合い話」の真偽を確かめるのが最も最短だと踏んだから。ただそれだけだ」
「それはまた随分と献身的なことで」
いつもの仏頂面を保って言うステルクに対して、やれやれといった様子で首を振るトリスタン。
そんな会話を陰で聞いていたエスティとジオが、顔を見合わせコソコソと話しだした。
「……なんか、知らないうちに話が進んじゃってますね? 私たちよりもよっぽど早くステルク君が動いてたみたいですし……」
「そのようだな、予想外だ。にしても、トリスタンはメリオダスの奴に似てきたんじゃないか? なんというか、妙にコスい手を考えるというか、そういったことをするところが……」
「ああ、まぁ、たしかに……」
二人はトリスタンの父親であり、アーランドで以前に大臣を務めていたメリオダスのことを思い出していた。メリオダスもメリオダスで裏で動くこともあったのだが……アトリエの取り潰しを進めていた時の妨害策略といい、なんかこう「もっと直接的で効果の強いモノが他にあったんじゃないか?」と思えることばかりだったのだ。
今回のトリスタンが裏で動いた「お見合い」の一件ももっとストレートなやり方もありそうなきもするのだが……?
そんなやりとりをしていたエスティとジオだったが……
「で、どうします? 今、トリスタン君たちの前に出ますか? それとも……」
「フム……知ったからには動くべきだろうが……んん?」
ジオがその先を言うよりも先に……どうやら、怪談上のほうで別の動きがあったようで……ジオたちは再び意識をそちらへと向ける。
その変化は単純明快だった。
日も沈み、人通りもほとんどなくなった道にいたトリスタンとステルクのほうへ、駆け足で向かってくる人影があったのだ。その人物が……
「……あっ、ロロナ?」
「むっ……」
少し赤くなった顔をしてこちらへと駆けてくるロロナに気がついたふたりは、それぞれ声を漏らした。
その声で誰なのか気付いた様子のロロナは……ちょっと一瞬だけ目を見開いた後……勢い良く頭を下げた。
「こんばんは! えっと……! お仕事が大変でっ、マクラぎゅ~ってしてっ、泣いててっ、最近全然会えてなくってっ、お酒も飲んでなくって! あと、それから、それからっ、お見合い相手はいなくってっ、学校が大変でっ、結婚するって! ええっと……と、とにかく!
「えっ、ちょ……!?」
「ごめんなさいっ! わたし、いますぐ
通り過ぎて行くロロナに、トリスタンは制止をかけようとする……が、ロロナはそう言い放ち、そのままの勢いで行ってしまう。二人を通り過ぎたロロナはそのまま階段を下って行くのだが、盗み聞きをしていたエスティとジオは、物陰に隠れて走っていくロロナをやり過ごすのだった……。
……残されたのは、ポカンとした様子のトリスタンとステルクだけ。
そんな二人の耳に、石畳を叩く数人の足音が段々と近づいてくるように聞こえてきた。二人が『
「偶然……というか、もしかして待ち伏せでもしてたの?」
そう言ったのは、クーデリア。その後ろにはフィリーとリオネラが少し不安そうな顔をしてついてきていた。
クーデリアの言葉に、ステルクが小さく首を振る。
「偶然だ。たまたま
「さぁ? 「マイスに会わせられさえすれば何とかなる」って言ったのはあんたでしょ? あたしもそんな気はするし、大丈夫じゃないかしら?」
「いや、そっちではなく、アレで無事に『青の農村』までたどり着けるのかどうかという……」
「あー……追いかける身としてはありがたいけど、あの子『錬金術』のアイテムで移動するなんて考えがすっぽ抜けちゃってるくらいだからねぇ。それにお酒も入ってるから……」
クーデリアが言うにつれて、クーデリア本人を含め全員が段々と不安顔になっていく……が、クーデリアは途中で手をパンッと叩いて「まっ!」と切り替えるように声をあげた。
「なんかあったときの「もしも」のためにも、あたしたちが後をついてけばいいってだけの話よ」
「そうだよね! 何かあった時のためについていかなくちゃ!」
「う、うんっ! 早くロロナちゃんを追いかけないと!」
クーデリアに続いて、フィリーとリオネラがそう言うのだったが……
「まー、んなこと言ったところで、どう考えても建前なんだけどな」
「そうよねぇ。特にリオネラとフィリーはどう考えても……ていうか、何かあった時、フィリーって何が出来るのかしら?」
ホロホロとアラーニャから、ビシッとツッコミを入れられるのであった……。まぁ、仮に凶悪なモンスターが襲いかかってきたとして、冒険経験もまるで無いフィリーには何もできないだろう。
なお、『アーランドの街』~『青の農村』間の街道というのはアーランド共和国の中でも最も「安全」と言える街道であるため、
なにはともあれ……クーデリアたちはロロナの追跡を再開するのであった……。
フィリーとリオネラの後ろには……
「……そういえば、僕が独断でしたことだって、
「私からは話していないから、まだ知らんだろう。……まぁ、仮に知ったところで彼は気にしないだろうがな……」
トリスタンとステルクが続き……そのまた後ろを……
「無関心ってわけでもないだろうけど「へー、そうだったんですかー」で済ませちゃいそうなのよね、マイス君って」
「心が広いというか、広すぎてあまり理解してないというか……それが彼の持つ美徳でもあるのだろうがな」
エスティとジオが隠れながらついて行く形で、一団はロロナの後を追って『青の農村』を目指すのであった……。
―――――――――――――――
***マイスの家***
「……ひとまず、こんなところかな?」
まとめ上げた書類の整理をしていたマイスが、ひと息ついてから背もたれに体重を預けて「うーんっ!」とイスに座ったまま伸びをした。
街での取引なんかは、別の用で街に行く村の人……例えばコオルとか……に頼んでしまい、学校関連とお祭りの準備に集中しているマイス。
そのふたつに絞ったところで、やるべきことは沢山あり過ぎるくらいなのだが……特に、学校のほうは『錬金術』関係はまだしも他はやることが多すぎるくらいで、終わりが見えないというのが実の話だ。
それでも、おおよその目安を立てておき、一区切りついたところでマイスは「今日はそろそろ切り上げようかな?」と片づけを始めることにしたのだが……。
バアァンッ!
「えっ!?」
ノックも無く、勢い良く開け放たれた玄関戸。それに驚いて声をあげてしまったマイスが見たのは……
「ふー、ふー……! はっ、ま、マイスきゅ…けほっ!? こほっ!?」
肩で息をしながら、何やら息苦しそうにしているロロナだった。
何か言おうとしたようだったが、息が整っておらず、むせてしまったようだ。
「ええっ!? ちょ、どうしたのロロナ!? 何かあったの!? と、とりあえず、落ち着いて……深呼吸してっ」
「すぅー……はぁー……すぅー……」
何ななんだかわからず焦った様子のマイスがうながすままに、ロロナは深呼吸を数回しながら自分の息を整えていった。
「どうかな? もう大丈夫? もしダメだったら、何かお薬でも……」
「だ、大丈夫だよ……もう、落ち着いてきたから」
そう言って……まだちょっと辛そうにしながらも笑顔を見せるロロナ……だったが、「はっ……!?」と声をあげて目を見開いたかと思うと、笑顔を消してマイスのほうを見て大きく息を吸い…………その分の空気を「声」として発した。
「マイス君っ!
「……ん?」
ロロナが全身全霊を込めて発したであろう言葉に、マイスは首をかしげ……
「「「「「「「えっ?」」」」」」」
マイスの家の外からは、複数人の声が聞こえてきた。
幸い……かどうかはわからないが、家の外からの声には、マイスは目の前のロロナの言葉に思考も意識も持って行かれたため気づかず、ロロナも……
「マイス君みたいな純粋な良い子にはわかんないかもだけどね、世の中には『せーりゃく結婚』っていうあんまり良くないものもあってね、そうじゃなくってこう……やっぱり結婚はちゃんとお付き合いをした『恋愛結婚』のほうが良いと思うよ! それにそれに…………んぇ? あ、あれ?」
自分が思ったことを口にしているはずなのに、自分自身でもズレを感じたようで……途中で止めて首をかしげて悩みだしてしまっていて、外の声なんてものには全く気付いていなかった。
……さて、面と顔を合わせている
そんな状況で真っ先に動いたのは、唐突のことでそもそもの状況がわからず情報量が少なく早く処理出来たマイスだった。
「え、ええっと……もしかして、僕が結婚するって話を聞いて……? ロロナ? アレは誰かが勝手に流した噂話でウソなんだ」
「とっくに誤解は解けたと思ってたし、おすそわけ持っていった時のロロナ、いつも通りだったから、とっくに知ってるものだと」……そうマイスは思っているのだが……。
実際はまだ「マイスが結婚する」という噂は消えきっていないし、マイスが思っている「おすそわけを持っていった時」は、まだロロナが噂のことを知っていない時なので、今のマイスの考えは絶妙にハズレてしまっていた。
「あっ、それはくーちゃんたちに教えてもらったから……じゃなくて! それじゃなくってあっち! 『貴族』の女の子とお見合いしてラブラブって話っ!」
「らぶらぶ? そんなことはしてないんだけど……? そもそも、あの娘と会ったのは断るためだったわけで……」
「へっ? 断るって…………で、でもでもっ! あんな仲良く手繋いで歩いて行ってー!」
「手を繋いで……ああっ、もしかして
次々に出てくるワードに目を白黒させながら「えっ? えっ?」とドンドンこんがらがって来てしまっているロロナ。
「い……いじゅ、移住って……も、もしかしてっ同棲!?」
「……とりあえず、このまま立ち話って言うのもなんだし、『香茶』を……いやっ『リラックスティー』淹れてくるからソファーに座って待っててくれる?」
「ぇ、うん、ハイ……オネガイシマス」
目を回して頭から煙を出すんじゃないか? と思ってしまいそうなほど混乱して頭を悩ませ始めたロロナは、マイスの申し出に素直に頷くことしかできなかった……。
――――――――――――
マイスが淹れてきた『リラックスティー』を飲み、少し落ち着きを取り戻したロロナ。
そんなロロナに、マイスは「国から紹介されたお見合い相手」について説明していったのであった。
そして……
「えっと、つまり? お見合い話は相手が準備をしてしまってたから一応は受けたけど最初から断るつもりで……断る理由として『学校』のことで色々ある事を説明したら……」
『子供たちが集い学び……それだけでなく、望めば誰でも専門技術を学べる施設……素晴らしいですわ! 街で噂話程度で聞いてはいましたが、こうして直接詳しく聞いてみると、この上なく興味深く、理想的でもありますわ! その計画、
「……って、『
『先生になるのであれば、『
「……で、頻繁に村に来るようになった……ってこと?」
話を聞き終えたロロナが、未だに少し疑い気味にマイスに聞き返した。
それに対して、マイスは大きく頷いた。
「あはははっ……科目によっては、建物や道具以上に
「それで、教育に熱意のあるその娘が来てくれたのが嬉しくってはしゃぎ気味で案内してた……って…………うん。経緯からして、どうしてそうなったのかよくわかんないよ……」
そう言って苦笑いをするロロナ。
……だが、一番よくわからなくなったであろうは、娘を見合いに出した親だろう。婿を取ってくるわけでもなく、嫁に出るわけでもなく、娘が勝手に独り立ちをしだしたのだから困惑する他無い。
そんな人がいることなど知らず、マイスは「まぁ……」と少しだけ話題を変えて、その貴族の娘について話しだした。
「なんでもその子、小さい頃から家で教育を受けているのが
「まあ、それは……わからなくもないような?」
『錬金術』をほとんど独学で学んできて、これまでに成功例は少ないものの『錬金術』を教えてきたロロナには、どこかしら少なからず思うところはあったようで、すぐにではないものの納得した様子で頷いた。
話が一段落し、今一度『リラックスティー』でのどを潤したロロナは、再度マイスに確認をし始めた。
「まとめると……「お見合い相手」は「
「うん、そうなるね。特に後半のほうはお祭りのこともあって色々と予定の調整が難しくって……あっ、でもお祭りが終わったらちょっとは余裕ができるんだけどね? だがら、『錬金術』の授業とかの話は、それからトトリちゃんがこっちに来てから……ってことになるかな?」
「そのあたりは、前に確認した通りだね。その気になれば『トラベルゲート』で呼びにもお邪魔しにも行けなくもないし、それでいいと思うよ」
ひっかかっていたことの真偽を確かめ、今後の事も確認し、これで一件落着……
……とはならなかった。
ふと、何かを思い出したように、マイスが「そういえば……」と口を開いた。
「今日来た時「結婚しちゃダメ」って言ってたけど……アレって「結婚する」って噂のことじゃなかったのなら、結局なんだったの?」
「ふぇ? えっと、だからそれは『青の農村』に来てた「お見合い相手」のことで…………って、あれ?」
ここで、ロロナもある事を思い出した。
というか、ロロナがマイスのところに急いできたのは結婚
しかし、もっと大元を言えば、今日クーデリアから聞いた「お見合い相手との結婚話は破談に終わった」、「忙しいのはただ単純に『学校』関連のことが沢山あり過ぎるから」という話が信じ切れず、本当かどうかという話で……。
だがここでロロナは、初めて
(
今日、クーデリアと話す前……昼間にエスティと会ったころには、マイスのことが心配でどうこう言っていたりはした。だが最初は、「お見合い相手」のことを知った時、その人と笑顔で歩いていたマイスを見た時は、ロロナ自身も理解できないようななんかモヤモヤした感じで……そこから少しして「お見合いなんて! その前にわたしに相談しろー!」て考え始めたわけで…………でも、この時点でもう
ロロナは気づいた。その初期の時点で
そう、ロロナは
そして、改めてロロナは考える。「なんで
友達が、弟分が
思考の末、
「えっ…………あ……あぅ~……!?」
顔を耳まで真っ赤にし、頭からぷしゅーっと蒸気を出し、口をぱくぱくさせ、ぷるぷると体を震わせだした。
「えっ、ちょっ……ロロナ!? どうしたの!?」
ロロナの急変っぷりに慌てるマイスだが、ロロナを心配して彼がイスから立ち上がりソファーに座っているロロナの方へと駆け寄ろうとし……結果、その行動がロロナの顔をなお赤く染め挙げてしまう。
「うぇぅ!?」
「熱? 風邪? でも、さっきまではそんな感じはしなかった気が……もしかして、何か急性の病気だったり!?」
「いやっ、これはっ、えっとーそのっ! う~……はっ!? そ、そうっ! ここに来る前に『
マイスに今の状態を、そうなった感情を伝えるのは躊躇われたのか、言葉を濁そうとするロロナ。その途中で、いかにも今何かを「閃いた!」といった感じにハッとした顔をした後……言い訳にしてはあまりにもうそ臭いことを言って誤魔化そうとした。
外で盗み聞きをしている面々も「それは流石に……」といった様子で聞いていたのだが……
「ええっ!? 走ってきてってことは、街から村までの夜道をアイテムも使わないで一人で走って来たの!? それもお酒を飲んでからって……!!」
マイスは「酔いがぶり返す」云々の話ではなく、別のところにもの凄く驚いていた。……マイス自身も似たようなことがないわけでもなかったりするが、そういう時は基本、アクティブシード『ハスライダー』を使い自分の足は使わずにすいすい滑って帰るため、マイス曰く「酔っていてもいなくても関係無い」らしい。
なお、ロロナは「アイテム? ……ああっ!!」とマイスの言葉を聞いてようやく『錬金術』で作った道具……主に『トラベルゲート』のことを思い出していた。
「そんなの、危ないよ! こんなに酔払っちゃうまで飲んだのに街の外に出るだなんて、ダメじゃないロロナ! いくらこのあたりには襲ってくるようなモンスターはそうそういないって言っても、夜道は暗くて危ないし、一人だったら何かあった時どうにもできなかったりするんだよ!?」
「ひゃい! ご、ごめんなさい……」
珍しく怒気のこもった声を発するマイスに、ロロナは驚き委縮してしまう。それに、その雰囲気だけでなく言ってることも最もなことであるため、素直に謝るしかない。
「まったく……そんな状態で帰しても心配なだけだし、『トラベルゲート』も酔払ってたら上手く使えそうに無いし、もう遅いから、ロロナは今日はウチに泊まっていって。いい?」
「はい…………へ? お泊まり?」
「『離れ』はいつ誰が来ても良い様にしてるから、たぶん大丈夫だと思うけど……ちょっと待ってて、確認してくるから! あっ、酔払っちゃってるんだから、危ないし、勝手にどっかに行ったらダメだよ?」
そう言ってマイスはそのまま外に出ていき『離れ』の方へと行ってしまった。
そして、残されたロロナはと言えば……
「い……いきなりお泊まりって、そんな……! でも、この前にはトトリちゃんたちが泊まったって言ってたし、りおちゃんとかフィリーちゃんなんてしょっちゅうだって言うし……わたしがお泊まりしても何にもおかしくは無いよね……!? それに……ま、マイス君だからっ、マイス君だから、本当に心配してくれてるだけで別に他意は無いはず…………あれ?それはそれで、ちょっとモヤッてするっていうか、なんて言うか……う~! ど、どうしたらいいの~!?」
独り言をブツブツ呟きながら、真っ赤になった顔を両手で隠してブンブン首を振って悶えていた……。
――――――――――――
いっぽう、『離れ』があるほうとは反対側……マイスの家の正面側の外では……
「あたしの予想通り、ロロナはああなちゃったわけだけど……マイスは悪い意味で予想を裏切らないわねぇ」
「…………」
「…………」
「リオネラと騎士のにいちゃんが固まっちまってるんだが……どうすんだ、これ?」
「……どうしようもないんじゃないかしら?」
「ああっ……どうしてこんなことに……!? それに、僕があの立場にいれば、あそこでロロナに言い寄って……!」
「そんなこと言って、昔っからいざという時に一歩引いちゃったり、「彼女のアトリエのために」ってカッコつけてロロナちゃんの前から去ったくせに会えないことを後で一人で後悔しちゃったりするへたれだからなぁ、トリスタン君ってー」
「まだまだどうなるかわからない状態ではあるようだから、そう悲観することは無い。……まぁその前に、君には少々話があるのだが……」
「え、ええっと、色々あり過ぎて頭がごちゃごちゃしてきてるけど……なんでお姉ちゃんとジオさんがここにいるんですかぁ!?」
外も外で騒がしくなってきていた……。
色々と詰め込みすぎた感が……それでも綺麗に消化しきれていないという……。
ステルクさん、トリスタン、フィリーやリオネラ等々のキャラが、本編『ロロナルート』ではどうなっていくのか……その辺りや、これまでの裏側も今後触れて行くこととなる予定……ですが、書いていたら本筋から外れ過ぎてしまいそうなうえに本筋よりも長くなりそうで、折り合いの付け方を考えている今日この頃です。
今更ながら、自分の頭で考えた事を文字に起こすことの難しさを痛感しています。……そもそも、これまでも上手く思った通りに表現できたことって、片手で数えるほどしか無いような気もしなくも無いような……?